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山本嘉次郎

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四つの恋の物語 よっつのこいのものがたり
監督 豊田四郎・成瀬巳喜男・山本嘉次郎・衣笠貞之助
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、『四つの恋の物語』を観た。四人の監督によるオムニバスで、昭和二十二年(1947)の作品。

 第一話は豊田四郎監督の「初恋」。脚本は黒澤明。父(志村喬)と母(杉村春子)と三人暮らしの高校生・正雄(池部良)の家に、父の知り合いの娘・由紀子(久我美子)が預けられてくる。彼女によって正雄の生活はすっかり変わり、母親はそれを心配する。まだ蛮カラを気取る気風の残っていた高校生とその家族が若い娘の登場に惑わされるという、戦後らしい作品。黒澤脚本だが、それらしいところは無く、舞台が家を出ないのでホームドラマの小品といった感じ。
 第二話は成瀬巳喜男監督の「別れも愉し」。脚本は小国英雄。離婚歴のある年上の女(木暮美千代)が、男(沼崎勲)に若い恋人(竹久千恵子)ができたと知り、身を引こうとする。これも部屋を出ることなく、ほとんど男と女の会話のみで終始する。正直言って古臭いメロドラマで、成瀬作品として観ると、かなり出来の悪い方ではないだろうか。
 第三話は山本嘉次郎監督の「恋はやさし」。脚本は山崎謙太。ある劇団の下っぱ役者・金ちゃん(榎本健一)は、同じ劇団のナミちゃん(若山セツコ)が劇団を辞めて大阪へ行くと聞いて気が気ではない。だが、金ちゃんは劇に出番があって彼女を見送りに行くこともできず……。エノケンが劇中劇の『ボッカチオ』を演じていて、その歌はいかにも昔の日本の翻訳劇っぽいが、エノケンだけに巧みで面白い。
 第四話は衣笠貞之助監督の「恋のサーカス」。脚本は八住利雄。あるサーカス団で、空中ブランコの最中に富蔵(河野秋武)という男がわざと手を離して仲間を落とすという殺人事件が起こった。刑事や検事たちが立ち会っての実況検証の最中、そのサーカス団の女まり子(浜田百合子)を中心とした複雑な人間関係が浮かび上がってくる。これもサーカスのテントの中が舞台。昔のサーカス団の貧乏くさい雰囲気が出ている。全体に、出演者の演技がちょっと過剰気味に見えた。

 監督に豪華な顔ぶれを揃えたせいか、皆一つの部屋やセットを舞台とした会話中心の物語で、低予算作品という感じがした。また、全体に時代を感じさせられるストーリー。中では、エノケン出演の第三話が、彼の芸の片鱗をかいま見ることが出来て面白いと思った。(2000/02/16)

春の戯れ はるのたわむれ
監督 山本嘉次郎
公開年 1949年
評点[C]
感想  今日は、山本嘉次郎監督の『春の戯れ』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 明治維新直後、美人で評判の品川の貝屋の娘お花(高峰秀子)は居酒屋の息子・正吉(宇野重吉)と幼なじみで、彼を憎からず思っていた。しかし正吉は、反対する自分の父親(徳川夢声)や近所の金持ちの中年男・越後屋(三島雅夫)との縁談がもちあがっているお花をよそに、西洋への憧れを押さえきれない。

 この正吉という登場人物、ウジウジしていて自分勝手で、観ていて「なんだこいつは!(釘バット)」と怒鳴りたくなるほど(笑)。オープニングで原作の表記がないので山本嘉次郎自らのオリジナル脚本のようだが(補注:実際には、この作品の原案はフランスの劇作家マルセル・パニョルの『マリウス』という戯曲だそうだ)、何を意図してこんなキャラを作ったのだろう。終戦後、民主主義の大義名分のもとに誰もが利己主義的になった日本社会を風刺するためなのだろうか……とでも考えてしまう。
 お花は逆に男に惚れぬく女という古典的な女性像で……高峰秀子は相変わらず上手い。宇野重吉の演技は、なんだか甘ったるい台詞回しが気になったが、正吉というキャラを作るため意図的にしていたのだろうか。
 山本監督ならではの細やかな生活描写や明治初期の時代考証の確かさは見るべきものがあると思う。しかし、正直言って楽しい気分では観られない作品だった。私が狭量すぎるのかもしれないが。(2002/12/29)

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