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山村聡
蟹工船 かにこうせん
監督 山村聡
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、山村聡監督の『蟹工船』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 カムチャツカで蟹を獲り、船上で加工して缶詰にする“蟹工船”に、今年も様々な事情を持つ労働者たちが乗り込んできた。漁業会社の代表である監督の浅川(平田未喜三)は悪条件の中で漁を強制し、犠牲者も出る。労働者の蜂起とそれに対する弾圧。

 プロレタリア文学の代表作として有名な小林多喜二の原作を映画化した、俳優の山村聡の初監督作品で、脚本も山村聡が担当。
 ストレートに原作をそのまんま映画化したという感じで(実は原作は未読だが)、企業=体制=悪という構図が徹底して貫かれている。当時の劇団に所属している俳優たちの思想がよくわかる作品(前進座なども協力)。でも、誇張されているとはいえ、舞台となっている昭和初期には似たような状況だったのだろうから、笑ってはいけないのだろう。むしろ、内田吐夢の『逆襲獄門砦』などと同様、本気で社会主義・共産主義を理想化していたことに痛々しささえ感じられるが。
 終盤は、『戦艦ポチョムキン』を彷彿とさせるカタストロフィーが繰り広げられる。大真面目に作っているがゆえの映像の力強さは素晴らしい。
 山村聡は前科者である弱みに付け込まれて労働者たちをスパイする役。森雅之が後半に登場する飲んだくれの船医として登場しているというが本当か? 監督役の平田未喜三は、本物の漁師の網元だという。まさにそのものの迫力だと思った。(2003/07/21)

黒い潮 くろいしお
監督 山村聡
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、山村聡監督の『黒い潮』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 雨が降る夏の晩、綾瀬駅近くの線路で秋山国鉄総裁(高島敏郎)の轢死体が発見された。3日前に国鉄が大量解雇を発表していたため多くのマスコミが他殺説を採る中、『毎朝新聞』社会部の速水デスク(山村聡)以下の記者たちは自殺説を固持した記事を書きつづけるが、世論は他殺説に同調し速水や山名部長(滝沢修)の立場は苦しくなる。

 昭和二十四年に連続して発生した国鉄の事件の一つである下山事件を題材にした井上靖の小説が原作(脚本:菊島隆三)。山村聡の監督第2作。
 自殺説を採った『毎日新聞』の記者をモデルにしているが、第一作の『蟹工船』がセミドキュメンタリータッチだったのに比べると、主人公の速水の過去などかなり作りこまれたドラマという感じになっている。
 山村聡に協力して滝沢修のほか千田是也・東野英治郎・芦田伸介・信欣三など演劇人が総出演の豪華キャストで皆熱演を繰り広げているが、そんな中で懐が広い感じの滝沢修が印象に残る。また、大真面目な内容と演技の中で、新聞社を訪れる政治家役の進藤英太郎が一服の清涼剤というか箸休めというか(笑)。ホント、いい味出す人だよな〜。
 脇役だった『蟹工船』と異なり主役と演出を兼ねたためか、この作品ではちょっと力みを感じたが、力作と言うことはできると思う。『蟹工船』でも『黒い潮』でも、クレジットには出ないものの有能なスタッフ陣が協力したらしいが。
 映像(撮影:横山実)はシャープだが録音は聞き取りづらいところがかなりあるのが惜しい。なぜ迫力を出そうとして人の声を割れ気味で録音しちゃうのかなぁ。(2004/06/16)

山村聡
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