Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE
昭和六年(1931)
淑女と髯 しゅくじょとひげ
監督 小津安二郎
公開年 1931年
評点[A’]
感想
Amazon
小津安二郎 DVD-BOX 第四集
小津安二郎
DVD-BOX
第四集

 今日は、小津安二郎監督の『淑女と髯』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 大学の剣道部の主将である岡嶋(岡田時彦)は、ひげぼうぼうの猛者。本人はひげを気に入っているが、そのせいで友人(月田一郎)の妹やその女友達には嫌われ、就職試験にも合格しない。ついに、ふとしたことで知り合った女性(川崎弘子)の薦めで剃り落とすことを決心する。

 小津監督のサイレント時代中期の作品。同年の『東京の合唱』と同じく岡田時彦の主演で、サイレント時代の小津作品に多い学生もの。
 ひげの有無で容姿がガラッと変わるというのはシンプルな発想のようだが、いざ映像にして見せられると意外と面白い。それに、岡田時彦は喜劇の演技が実に上手い。特に友人宅で見せるヘンテコな剣舞が面白い。パントマイム的なギャグが出来る二枚目で、サイレント期の名優といって良いかもしれない。小津監督が夭折を惜しんだのもわかる。
 岡嶋がひげを剃ってからちょっと長く終盤に少しシリアス風味が入るので、最後までコメディで通しても良かったかな……とも思うが、あの終盤があるから余計に心に残るのかもしれない。小津サイレント作の佳作の一つ。(2003/10/27)

番場の忠太郎 瞼の母 ばんばのちゅうたろうまぶたのはは
監督 稲垣浩
公開年 1931年
評点[A’]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『番場の忠太郎 瞼の母』を観た。監督は稲垣浩で、昭和六年(1931)の作品。

 幼い頃に母と生き別れ父を亡くして渡世人になった江州番場生まれの忠太郎は、いつも母の面影を追い求めていた。噂を頼りに江戸に出て数年、これはという人に出会ったが……。

 御存知、長谷川伸の原作(脚本:稲垣浩)の最初の映画化。有名な加藤泰監督版の中村錦之助は美青年という雰囲気だったが、この作品の若き日の千恵蔵は、若さと渡世人らしい鋭さも兼ね備えていて大変良い。弟分を助けるシーンは実にカッコイイ。そして母を求める弱さも見せる。忠太郎の妹役の山田五十鈴も可憐。
 サイレント完成期の作品のためか、映像と字幕のリズムが心地よく、田舎の牧歌的な描写や江戸の雪が印象的。プリントの傷で始終雨が降りまくりの古い画面だが、それが効果的になっている面もあるかも? ラストは、確か原作者の許可を得たという話を聞いたことがある。(2001/01/12)

御誂次郎吉格子 おあつらえじろきちごうし
監督 伊藤大輔
公開年 1931年
評点[A]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『御誂次郎吉格子』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 江戸から上方に逃れた鼠小僧こと次郎吉(大河内傳次郎)は、悪党の仁吉(高勢実乗)から薄幸の少女お喜乃(伏見信子)を救おうとする。次郎吉に惚れているが振り向いてもらえない商売女お仙(伏見直江)は次郎吉のために……。

 伊藤大輔監督のサイレント作品の中で完全に近い形で現存するのはこれだけだと言われている(近年発見された『忠治旅日記』は欠落が多い)。原作は吉川英治(脚本:伊藤大輔)。
 サイレント映画らしく小気味良いリズムでショットを積み重ねてテンポ良く進む一方で、情感ある場面ではじっくりと見せる。その対比が効果的で、映像作家としての伊藤大輔の力量を知ることができる。伊藤大輔作品で有名な移動撮影や立ち回りはほとんどないが、終盤に押し寄せる御用提灯の迫力は圧倒的。
 まだ若さを残している大河内傳次郎はもちろん良いし、伏見信子やヴァンプ的女優として有名だった伏見直江も好演。高瀬実乗も小悪党的いやらしさを存分に見せ付けてくれる。
 やはり、伊藤監督のサイレント作品がほとんど残っていないことが残念だ。(2004/10/08)

マダムと女房 まだむとにょうぼう
監督 五所平之助
公開年 1931年
評点[C]
感想  今日は五所平之助監督の『マダムと女房』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 郊外の借家に引っ越してきた劇作家の芝野新作(渡辺篤)。締め切り間近の脚本を書こうとするが、子供は夜鳴きするわ隣の文化住宅から流れてくるバンド演奏の音楽がうるさいわで、なかなか進まない。芝野は隣に苦情を言いに行ったけれども、そこのマダム(伊達里子)にたちまち篭絡されてしまう。それを知って彼の妻(田中絹代)は嫉妬する。

 日本の本格的トーキー作品第一号。それまでもトーキーと称する作品はあったが、サイレント部分が中心で一部のみトーキーであるパート・トーキーだった。
 内容は特筆すべきところの無いナンセンスコメディで、後半は音楽を聞かせることが中心になりテンポが落ちる。また、上映時間も一時間足らずなので、プログラムピクチャーという感じ。出演者の発声も、まだ慣れてない雰囲気。しかし、当時とすれば音が出るだけでも凄いと感じられるだろうし、当時のアイドル田中絹代の肉声を聞けるだけでも、観客は感動したのだろう。
 ただし、資料的価値はあるだろうし、トーキー第一作としては完成度はまずまず高いと思う(既に洋画はトーキー化してしていたにしても)。(2001/09/28)

腰弁頑張れ(腰辨頑張れ) こしべんがんばれ
監督 成瀬巳喜男
公開年 1931年
評点[A]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『腰弁頑張れ』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 保険勧誘員(保険外交員)の岡部(山口勇)は安月給を妻(浪花友子)になじられ、息子(加藤精一)には玩具の模型飛行機を買ってくれとせがまれながら、今日も保険の勧誘で資産家の邸宅を訪れていた。ライバル会社の外交員(関時男)も同じ家に勧誘をかけているため、岡部は資産家の子供たちにまで媚を売らねばならぬ悲哀を味わう。

 成瀬巳喜男監督の松竹時代のサイレント作で、現存作品の中では最古だという。脚本も成瀬監督のオリジナル。現存するプリントはわずか29分弱の短編であるものの(欠落はほとんどないようだ)、ドラマティックな展開をコンパクトにまとめて充実した作品になっている。
 今回は活弁も音楽もない完全なサイレント状態で観たのだが、活弁や字幕での解説がほとんど必要ないくらい映像で語っているのが実に巧み(撮影:三浦光男)。特に、岡部の息子と資産家の子供たちとの喧嘩の場面の躍動感は見事だった。のちの成瀬作品にはないモンタージュなどの特殊な表現も面白い。
 人に頭を下げなければならぬサラリーマンの悲哀とわんぱくな子供たちというテーマは小津安二郎の『生れてはみたけれど』を彷彿とさせる(ただし製作・公開は『腰弁頑張れ』の方が先)。(2005/11)

東京の合唱 とうきょうのこおらす
監督 小津安二郎
公開年 1931年
評点[A’]
感想
Amazon
小津安二郎 DVD-BOX 第四集
小津安二郎
DVD-BOX
第四集

 今日は、小津安二郎監督の監督の『東京の合唱(コーラス)』を観たと記憶しています…(←なんちゅう言い回しぢゃ)。昭和六年(1931)の作品だから、ホント昭和初期って感じだな〜。

 松竹版なので全くの無音なのがチト残念。『生れては〜』よりも映像の状態は良くなかった。でも、観るのに努力がいるほどではない。
 冒頭はスラップスティック風のギャグがあったりして、だんだんシリアスになるがユーモアの要素を忘れないのが良いと思った。題名のコーラスって、そういうことだったのか!(謎)
 しかし、長女役が高峰秀子なのか…。(2000/04/17)

鯉名の銀平 雪の渡り鳥 こいなのぎんぺいゆきのわたりどり
監督 宮田十三一
公開年 1931年
評点[A]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『鯉名の銀平 雪の渡り鳥』を観た。監督は宮田十三一で、昭和六年(1931)の作品。

 伊豆は下田の貸元の子分だった鯉名の銀平(阪東妻三郎)は、恋しい茶屋娘お市(望月礼子)が兄弟分の爪木の卯之吉(岡田喜久也)と好きあっているのを知り、わらじをはいて旅に出る。4年後に帰ってくると、自分の親分と対立していた帆立の丑松(堀川浪之助)が下田を支配していて……。

 原作は長谷川伸(脚本:きよし・ささを)。お決まりの股旅物だが、前半で情けないくらい煩悩に苦しむ主人公の姿と、ふっきれた後半での姿との対比が効果的。お市と卯之吉はまぁまぁという感じだが、お市の父親の五兵衛(児島三郎)が、役柄・演技ともに良かった。
 サイレント作品だが、タイトル画面(台詞画面)が全く無い。弁士中心で“声色・鳴物入り”で見せる作品だったのだと思うが、最初からタイトル画面が無いのか上映時にカットしてしまったのかどうかはわからない。
 映像は繋ぎ方などオーソドックス。殺陣はコマ落としで古さを感じさせるが、多数対多数の出入り(喧嘩)の場面ではシルエット処理していて面白かった(撮影:永井政次)。

 長谷川伸作品の中でもキャラクター/ストーリーともに上質の作品ではないだろうか。こういうタイプのストーリーが好きではない人には面白くないだろうが。幾度もリメイクされているので、トーキー作品も観てみたい。(2004/08/19)

昭和六年(1931)
掲示板 Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE