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昭和十一年(1936)

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一人息子 ひとりむすこ
監督 小津安二郎
公開年 1936年
評点[A’]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第三集
小津安二郎
DVD-BOX
第三集

 今日は、小津安二郎監督の『一人息子』を観た。昭和十一年(1936)の作品。

 信州の田舎に住む野々宮つね(飯田蝶子)は、製糸工場で働きながら女手一つで息子の良助(葉山正雄)を育てていた。つねは、良助が中学へ進学したがっていることに当惑するが、その希望をかなえてやる。十数年後、つねが成長した良助(日守新一)に会うため上京すると、そこには苦い現実が待っていた。

 かなり遅くまでサイレントを通していた小津監督の初トーキー作品。映像表現の面では、早くも小津作品の原型ができている。内容的には、『生れてはみたけれど』などの流れを汲んだ社会派的なもの。ただし、のちの家庭を扱った作品の萌芽も感じさせる。
 田舎から親が上京し子供に会って現実を知る、というストーリーは『東京物語』の祖型と見なすことができる。『一人息子』は時期が早いだけにメッセージ性がかなり直截的に表現されていて、息子は親に対して済まなそうにしているし、母親は失望をあらわにする。17年後の『東京物語』では、東京の子供たちは親に対して済まないという気は全く無いし、親の思いも失望から諦観になっている。
 戦前の不景気の時代を描いた『大学は出たけれど』の後日談的なシビアな話で、今の人が観ると身につまされるかもしれない。
 保存状態は映像は意外と良いが、音声がイマイチなのは残念。ちなみに、笠智衆が良助の恩師役として初めて老け役を演じている。(2002/01/20)

人妻椿(前篇・後篇) ひとづまつばき
監督 野村浩将
公開年 1936年
評点[A’]
感想  今日は、野村浩将監督の『人妻椿』を観た。昭和十一年(1936)の作品。

 矢野昭(佐分利信)は妻子と幸せな家庭を築いていたが、大恩ある社長(藤野秀夫)の罪をかぶって海外へ逃亡。後事を託された社長は心労で急死してしまい、残された矢野の妻・嘉子(川崎弘子)と息子(小島和子)は運命の荒波の中に投げ出されたのであった。

 『主婦之友』に連載された小島政二郎の小説を『愛染かつら』で有名な野村監督が映画化(脚本:柳井隆雄)。主人公がドラマティックな展開に翻弄されるジェットコースター・ドラマ。現在の奥様向けドラマの元祖。
 この世界では悪人と善人とがはっきり区別され、出演者はわかりやすい演技を繰り広げ、それをわかりやすい映像で捉えている。しかしこれが結構おもしろい。現在残っているプリントで前後編合わせて2時間22分ほどで原作を消化しているためか、展開のテンポが良い。名作や傑作として評価されているわけではないが、観客を楽しませる力は持っている作品だと思う。
 出演者たちも、ステロタイプ的なキャラクターを典型的な演技でこなしていて、手堅い上手さを見せている。中でも主人公の嘉子に恋する男の一人を演じた笠智衆が三枚目的な役で大活躍して妙味を感じさせてくれる。笠マニア必見! 常に嘉子を助ける矢野家の女中を演じた飯田蝶子とその兄の坂本武も安定した演技で、そのキャラクターも好感が持てる。上原謙も出演しているが、印象の薄い役。社長の娘で嘉子をいびる三宅邦子はかなり損な役(笑)。(2004/11/15)

祇園の姉妹(祗園の姉妹) ぎおんのきょうだい
監督 溝口健二
公開年 1936年
評点[超A]
感想
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祇園の姉妹
祇園の姉妹

 またまた溝口健二監督作品を観る。昭和十一年(1936)製作の『祇園の姉妹』。主人公の芸妓「おもちゃ」を演じた山田五十鈴は恐ろしいほどの演技力。まだ十代で、天才なんだな〜。
 冒頭では大胆なスリップ姿で登場。今ではなんでもないけど、昭和十年代の観客は山田五十鈴の当時としては長身のスレンダーな肢体にドキドキ?(笑)しかし、この当時すでに子持ちだったそうな…(爆)。その子が、今の高校生以下くらいの子供の爺ちゃん婆ちゃんの世代なんだなぁ。昭和は遠くなりにけり。(2000/01/26)(補注:『祇園の姉妹』に関してはこちらも参照)

朝の並木路 あしたのなみきみち
監督 成瀬巳喜男
公開年 1936年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『朝の並木路』を観た。昭和十一年(1936)の作品。

 田舎に住む千代(千葉早智子)は都会にあこがれ、就職のあても無いのに旧友の久子(赤木蘭子)だけを頼りに上京する。しかし、会社勤めをしているはずだった久子はカフェーの女給になっていた。

 脚本も成瀬監督自身によるオリジナル作品。カフェーの何人かの女給たちをも描いてはいるものの、特に独立したエピソードとして描いているわけではなく、かなりアッサリした展開。激しいドラマが無く、テンポも早くはないので、ちょうど一時間の上映時間の割りに長く感じた。ただ、場末のカフェーのけだるい雰囲気は表現されているのかもしれない。
 その中でも、終盤は話が動くが……あの展開は反則かも? 最後のオチは、割りといい感じ。(2002/09/20)

東京ラプソディ とうきょうらぷそでぃ
監督 伏水修
公開年 1936年
評点[A’]
感想  今日は、藤山一郎主演の『東京ラプソディ』を観た。監督は伏水修で、昭和十一年(1936)の作品。

 東京は有楽町でクリーニング屋を営む若原一郎(藤山一郎)は、偶然その歌を聴いた女性ジャーナリスト(伊達里子)と好事家の伯爵(御橋公)によって一躍流行歌手の座に祭りあげられる。しかし、仲の良かった鳩ポッポこと鳩子(椿澄枝)との距離は遠くなるばかり……。

 当時大流行した藤山一郎の『東京ラプソディー』(作曲:古賀政男)を基にして作られた映画(原作:佐伯孝夫/脚本:永見隆二)。題名通り、東京の有楽町や銀座、神田のニコライ堂周辺などが映し出される。この歌は当時35万枚もレコードが売れたという。現在に換算すれば、ミリオンセラーどころではないだろう。
 いわゆる歌謡映画ではあるが、歌の挿入の仕方が巧みで、登場人物がいきなり会話の途中で歌い出すような不自然さは無い。ストーリーは新味のあるものではないが、展開のテンポが軽快で映像の歯切れも良く、観る前の予想よりもずっとしっかりした映画だったので、かえって驚いた。意外な佳作。特に、映像は非常に現代的というか洋画的というか、今の目で観ても不自然さはほとんど無い。ハリウッドに行った経験のある三村明が撮影を担当したことが大きな要因なのだろうか。
 登場人物やその他東京の街の人々がメドレー形式で歌いながら登場するラストシークエンスが特に心に残る。
 藤島一郎の演技は、時々台詞回しに拙さを覗かせることもあったが、観るに堪えないほどではなかった。(2004/01/14)

エノケンの江戸っ子三太 えのけんのえどっこさんた
監督 岡田敬
公開年 1936年
評点[C]
感想  今日は、榎本健一主演の『エノケンの江戸っ子三太』を観た。監督は岡田敬で、昭和十一年(1936)の作品。

 江戸の鳶“ほ組”の一人である三太(榎本健一)は、芝居が大好きで妄想癖があり、自分は一人前の男伊達だと思い込んでいるが、いつも失敗ばかりして兄貴分の清吉(二村定一)や親方の娘お初(山懸直代)に心配をかけてばかりいる。そんな折、親方が田舎侍(中村是好)に斬られてしまい、三太は自分ひとりの力で仇を討とうとして渡世人の子分になるが……。

 エノケン主演のコメディ作の一本。エノケン出演作を多く監督している山本嘉次郎が原作・脚本を担当。
 時々台詞が歌になるミュージカル仕立てだが、曲に歌詞があまりうまく乗っていないし、反復ギャグのテンポも良くない。演出と編集が今ひとつに感じられた。終盤の盛り上がりも肩透かし気味に終わってしまうし。(2004/05/10)

武士道朗らかなりし頃 ぶしどうほがらかなりしころ
監督 松井稔
公開年 1936年
評点[B]
感想  今日は、柳家金語楼主演の『武士道朗らかなりし頃』を観た。監督は松井稔で、昭和十一年(1936)の作品。

 山奥で修行する若武者・岩見重太郎(柳家金語楼)は怪仙人(徳川夢声)から極意を授けられ、天下無双の勇者となって里に帰ってきた。しかし、すぐまた武者修行の旅に出て、雲助から若い娘お君(清水美佐子)を助けたり、ある村では猅々(林家染團治)退治をしたり、大冒険を繰り広げる。

 原作は徳川夢声(脚本:八住利雄)で、P.C.L.と吉本の提携作品だという。金語楼以外は知らないが、林家染團治という人も吉本の人気のある芸人だったのだろうか。
 基本的に柳家金語楼を見せるための作品のようで、序盤からゆる〜いテンポのコメディが展開される。最初は、いくらなんでも現代人が見るにはのんびりしすぎていると思ったが、慣れると段々面白く感じてくるから不思議だ。金語楼のあの喋り方や表情の動きが楽しい。また、撮影の宮島義男(義勇)が工夫したのだろうか、素朴な特撮も多用されている。
 今の人が観てウケるかどうかよくわからないが、古い邦画好きの人ならそこそこ楽しめると思う。私は名前くらいしか知らなかったのだが、岩見重太郎についての知識があればもっと楽しめたかも。(2005/06/30)

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