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昭和十二年(1937)

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エノケンのちゃっきり金太 えのけんのちゃっきりきんた
監督 山本嘉次郎
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、エノケン主演の『エノケンのちゃっきり金太』を観た。監督は山本嘉次郎で、昭和十二年(1937)の作品。

 明治維新前夜の江戸。巾着切り(=ちゃっきり)の金太(榎本健一)は彼を追いかける岡っ引の倉吉(中村是好)の目を盗んで薩長の侍ばかり狙ってスリをしていたが、財布と一緒に密書まで盗んでしまい、薩摩の侍・小原(如月寛太)に命を狙われて逃げ回る。

 原作・脚本ともに山本嘉次郎。アメリカ映画の『地下鉄サム』からヒントを得たと言われている。歌やアクションにはエノケンの持ち味が生かされているのだろう。切れ味とテンポが良く楽しい作品。中村是好との息も合っている。
 逃げ回る金太と倉吉がなぜか一緒に旅をするのでロードムービーの趣があり、旅館の中を走り回るアクションも面白い。
 現在残っているのは各々1時間強の前後編を合わせて1時間13分ほどにした総集編なので、所々話がちょっと飛ぶようなところがあるのが惜しい。ただし、そんな総集編だからこそ余計にテンポが良く見えるのかもしれないが……。(2004/10/11)

恋山彦(戀山彦) こいやまびこそうしゅうへん
監督 マキノ正博
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は阪妻主演の『恋山彦(総集編)』を観た。監督はマキノ正博(雅弘)で昭和十二年(1937)の作品。原作は吉川英治、脚本は比佐芳武。

 伊那の里の主である伊那の小源太(阪東妻三郎)は、お品(花柳小菊)という旅の女を妻に迎えることになる。彼女は三味線の名人の娘で、三味線の名器“山彦”を柳沢吉保(河部五郎)に所望され拒んで殺された父親の遺志を継ぎ、“山彦”を守ろうとしていた。将軍綱吉(尾上菊太郎)の失政と柳沢吉保の専横に憤った小源太は、ついに幕府に対して反旗を翻すが…。

 これは“総集編”と銘打ってあるように、本来は2編あった作品を編集したものらしい。それゆえ、展開が雑で話が見えづらいところがあるのが残念。この総集編は1時間と四十数分だが、2時間くらいは欲しかった。
 阪妻たちの演技は、今観ると少々オーバー。将軍や柳沢吉保を非難するときに声が裏返っちゃうのは、ちょっと変。立ち回りや合戦、そしてモブシーンなどにはマキノ監督らしいダイナミックさがあると思う。(2001/01/06)

婚約三羽烏 こんやくさんばがらす
監督 島津保次郎
公開年 1937年
評点[B]
感想  今日は、島津保次郎監督の『婚約三羽烏』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 長らく失業していた加村週二(佐野周二)は、やっと繊維会社のサービス・ステーション(今で言うショールーム)の従業員として採用され、一緒に採用されたバンカラ風の三木信(佐分利信)と優男の谷山健(上原謙)と友人になる。加村には同棲していたカフェーの女(三宅邦子)、三木と谷山には婚約者がいるにもかかわらず、社長の美しい令嬢・玲子(高峰三枝子)に夢中になってしまう。

 “松竹三羽烏”と高峰三枝子が顔を合わせた超豪華キャストの作品。この4人のスケジュールを合わせるのは至難の技だったそうで、尺の長さは1時間5分ほどの小品。内容も他愛ないラブコメだが、テンポ良い展開と、くどくないアッサリとした喜劇的な演出で、そこそこ楽しめる娯楽作にはなっていると思う。(2002/11/21)

南国太平記(南國太平記) なんごくたいへいき
監督 並木鏡太郎
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は、大河内傳次郎主演の『南国太平記』を観た。監督は並木鏡太郎で、昭和十二年(1937)の作品。

 幕末、薩摩の島津家は跡継ぎ問題で揺れていた。益満休之助(大河内傳次郎)ら若者は開明的な斉彬(大河内傳次郎・二役)を推し、対する保守派は主君の側室お由羅(五月潤子)の子・久光(沢村昌之助)を世子にしようと図っていた。益満たちは斉彬を調伏(ちょうぶく)しているという牧仲太郎(進藤英太郎)やお由羅を討とうとするが……。

 勤皇の志士・益満休之助が主人公の直木三十五の同題小説を原作とした作品(脚本:三村伸太郎)。大河内傳次郎の東宝入社第一作とのことで、二役を演じている。
 どうしても現代人の目で観ると調伏(呪術で人を呪い殺すこと)云々で真面目に騒いでいるのが奇妙に思えてしまうし、恋愛話などとの噛み合せが上手くいっていないように感じた。後半に益満が尊王倒幕運動に目覚めるのも唐突。むしろ、映画では最初からお家騒動ではなく尊王倒幕運動をメインに据えた方が良かったのではないだろうか。また、音声の状態が悪いので会話がよく聞き取れないのも不利な材料。
 益満の同志として黒川弥太郎、その妹として花井蘭子と桜町公子が出演。(2004/05/31)

人情紙風船 にんじょうかみふうせん
監督 山中貞雄
公開年 1937年
評点[超A]
感想
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人情紙風船
人情紙風船

 今日は、山中貞雄監督の『人情紙風船』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 この作品、ビデオがレンタル禁止なので観る機会が無かったのだが、ある図書館に収蔵されているのをみつけて、やっと鑑賞することができた。ただし、貸出禁止で、図書館のモニタで観ることになり、じっくり見直すことができないのがチト残念。

 場所は、その日暮らしの行商人などが住む裏長屋。浪人の海野又十郎(河原崎長十郎)や地回りのヤクザに目を付けられている遊び人の髪結新三(中村翫右衛門)もまた、あがくように生きている。
 ヤミの賭場を開いたりしてヤクザの源七親分(市川笑太郎)に痛めつけられていた新三は、ある時、源七たちが用心棒として出入りしている白子屋の娘お駒(霧立のぼる)と偶然出会い、源七を困らせるため誘拐して自分の家に連れてきてしまう。新三の隣に住んでいる海野も否応なしに巻き込まれ…。

 暗い作品だが、前進座のメンバーの演技と撮影が素晴らしい。死人の通夜を口実にして酒を飲み乱痴気騒ぎをしてしまう長屋の連中。その自暴自棄に近い明るさ。また、梅雨の雨の中、仕官の夢破れた海野が立ちつくすシーンが忘れがたい。そして、人の手から落ちて転がる紙風船。
 山中貞雄は「『人情紙風船』が遺作ではチトサビシイ」の言葉を残したしばらくあとに戦病死。本当に若き天才の遺作となった。なお、現存する作品は『人情紙風船』を含めて3本のみ。嗚呼。(2000/09/02)

裸武士道 はだかぶしどう
監督 久保為義
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は、黒川弥太郎主演の『裸武士道』を観た。監督は久保為義で、昭和十二年(1937)の作品。

 浪人・江田左門(黒川弥太郎)は言いがかりをつけてきた武士を斬った上、逃亡の途中に百姓のせがれ熊右ヱ門(鳥羽陽之助)まで斬ってしまう。江戸へ逃れて旧友の白川主水(清川荘司)一家に歓待されるが、左門は自分は武士の廃れ者だと深く悩む。

 長谷川伸の『三番敵』の映画化(脚本:入江一夫)。単なる仇討ものではなくユニークな設定になっているが、黒川弥太郎の演技が硬く演出も平凡なので、左門の苦悩がよく表現されておらず単に行き当たりばったりの行動をしているように見え、あまり共感できないキャラになっている。対して、主水の母(常盤操子)の武士の母らしい潔い態度が美しく見えた。
 また、熊右ヱ門を序盤にたっぷり描写してしすぎてしまって、観客に与える印象が強くなりすぎたのも失敗だと思う。観終わって今ひとつスッキリしない作品。
 ただ、仇討ものなので旅のシーンが多く、昭和十二年の映画としては映像がシャープでフィルムの保存状態も良いので、空やそこに浮かぶ雲が美しく、見とれてしまうほどだった(撮影:河崎喜久三)。雲の表情が豊かで、ロケ中はよほど天候に恵まれたのではないだろうか。(2005/03/08)

美しき鷹 うつくしきたか
監督 山本嘉次郎
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は、山本嘉次郎監督の『美しき鷹』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 親を亡くし、華族である親戚の池野家で育てられている安宅弓子(霧立のぼる)は、自由奔放な性格で学校や家庭でトラブルを起こしてばかりいる。池野家の娘・雅子(神田千鶴子)の婚約者であるピアニストの真庭英二(北澤彪)と屈託無く会ったつもりが、雅子と真庭との間に亀裂を生じさせてしまい……。

 菊池寛の原作を映画化した作品(脚本:飯田正美)。戦前の宝塚スターの霧立のぼるが主演。
 菊池寛お得意のブルジョア家庭を舞台にした物語だが、どうにもヒロインには共感できないので困ってしまう。悪気は無いのに男を惑わせてしまう“魔性の女”的な女性だし、本人もそれをある程度自覚して、良いことではないと思ってはいるのだが。それと、オチが唐突。この原作、何度も映画化されているようだが、そんなに人気があったのだろうか?
 出演者の演技は皆まあまあ。霧立のぼるがブリッコ的なのは、役に合わせたのか地なのか。(2003/01/27)

江戸の白鷺 えどのしらさぎ
監督 石橋清一
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は、石橋清一監督の『江戸の白鷺』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 薩摩藩の江戸屋敷で南蛮渡来の“金龍の鍔”が盗まれると、島津家は面目にかけて犯人を捕らえるため三百両の賞金を懸けた。腕は良いが仕事が嫌いで植木職人の真似事をしている町方同心・不動重四郎(小林重四郎)は我関せずだったが、植木屋の親方が容疑者として捕らえられると事件の究明に乗り出した。

 主演の小林重四郎という俳優の名は初耳だったのでちょっと調べたら、戦前から戦後まで出演作はかなり多いようだ。主演級の役を務めた期間は短いようだが。監督も知らなかったが、監督作は数本のみのようだ。
 小林重四郎は小柄だが鋭い良い雰囲気を持っているし、小唄の師匠役の清川玉枝もちょっと裏のありそうな女をよく演じていて、俳優陣の演技はまずまず良かった。三島雅夫も出演しているが、まだ純然たる脇役。また、映像も江戸時代の家屋の雰囲気を出しているし、切れ味鋭いカットもあり、戦前の作品としては夜の場面もリアル。さすがに山の中では擬似夜景というのがバレバレだが。
 しかし、全体にテンポが一様で謎解きも特に眼を見張るものはなく、ほとんどアクションシーンがないのも物足りない。同心が主役なのに捕物がないのは……。演技と映像が良く脚本と演出がイマイチという珍しい映画。
 観終わってから気づいたのだが、撮影は『切腹』などの宮島義男(宮嶋義勇)なのか。(2004/06/13)

権三と助十(權三と助十) ごんざとすけじゅう
監督 伊丹万作
公開年 1937年
評点[A]
感想  今日は、伊丹万作監督の『権三と助十』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 長屋の大家・六兵衛(高堂国典)は家賃を集めに回るが、図々しい店子(たなこ)どもは全く払おうとはせず、中には逆に六兵衛から金を貸りるやつもいる始末。ある日、店子の政(横山運平)が高利貸を殺した容疑で捕らえられる。政の娘おとわのために駕籠かきの権三(鳥羽陽之助)と助十(小笠原章二郎)は、なんとかしてやりたいが……。

 『半七捕物帖』で有名な岡本綺堂の原作を伊丹万作が脚本・演出。
 冒頭でちょっとのんびり展開される大家と長屋の住人たちとのやり取りがユーモラスで、これは終始コミカルな作品かな? と思ったら中盤で事件発生、後半はまた捕らえられた政をなんとか救おうとする長屋の住人と大家、という抑揚のある展開。
 テンポが遅いとは思わないが少しのんびりしているような展開は『赤西蠣太』の雰囲気を感じさせるので、これが伊丹万作監督の持ち味だろうか。脚本も巧みだし、映像もオーソドックスなようで目立たない細かいテクニックも使われているように感じた(撮影:三木茂)。
 お人よしの大家を演じた高堂国典が素晴らしいし、長屋の住人たちも人が良いだけでなく図々しさも併せ持ち、各々個性豊かで面白い。進藤英太郎も意外な役で登場。大岡越前(深見泰三)を完全に単なる脇役にしたのは映画オリジナルだろうか。謎解きはちょっとあっけないが、それはそれで良いように思う。ちょっと山中貞雄の『百万両の壺』を彷彿とさせる良質の明朗時代劇。
 現存する数少ない伊丹万作作品の中でもコメディ作だという『気まぐれ冠者』も観たくなった。(2004/05/19)

花形選手 はながたせんしゅ
監督 清水宏
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、清水宏監督の『花形選手』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 大学の競技部(陸上部)に所属する関(佐野周二)は、昼寝好きの練習嫌いだが本番に強い“花形選手”。彼は大学の軍事教練の一環としておこなわれた野外演習でもマイペースで行動し、行軍の途中で門付け女(吉川満子)と知り合ったりするが……。

 清水監督お得意の野外ロケ中心の作品(脚本:鯨屋当兵衛=清水宏・荒田正男)。序盤から中盤まで学生たちの行軍シーンがほとんどなのだが、彼らが田舎道で様々な人々とすれ違ったり追い抜かれたりする情景が楽しく全く飽きない。人間が「歩く」ことに執着する清水作品の中でも特に楽しい“歩き”のシーンだ。
 水商売の女(門付け女といっても芸だけで稼いでいるわけではないらしい)や旅に暮らす行商人への興味も描かれて独特の風情がある。日中戦争が勃発して国策的な作品を撮ったように見えても、それは器だけで中身は完全に清水監督の世界となっている。
 笠智衆が関に対してライバル心と友情を併せ持った良き学友を演じ、近藤敏明や日守新一がコミカルな部分を受け持っている。(2005/02/26)

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