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昭和十七年(1942)

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おもかげの街 おもかげのまち
監督 萩原遼
公開年 1942年
評点[A’]
感想  今日は、萩原遼監督の『おもかげの街』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 大阪の呉服屋・河内屋は、一人娘お美代(山根寿子)の婿・万吉(田中春男)の放蕩が過ぎるため離縁させ、お美代を寺に預け、佐七(長谷川一夫)とお千代(入江たか子)の二人を夫婦養子にしてしまった。しかし、順風満帆に見える佐七とお千代にも思わぬ運命の波が待ち受ける。

 江戸時代の大きな商家を舞台にしていて、そこにあるのは“義理と遠慮”の、現代人からすると古臭い価値観だが、その描き方は様式的ではなく登場人物が生きたキャラクターになっている。そのため、現代の鑑賞にも堪える作品だと思う(脚本:八住利雄)。
 雰囲気は明るくなく登場人物がよく泣くが、現在から過去の社会を断罪する描き方ではなく、同じ視線の高さで描いているため、不快になることはなかった。もう少し展開が早くても良いとは思ったが。
 長谷川一夫が色男風ではない押さえた演技で、苦悩する若旦那をリアルに演じていた。若い頃の田中春男もなかなかいい男で、こちらの世をすねた若者の演技も良い。
 入江たか子が眉を落として浮世絵を再現したようなメイクをしていたが、不気味ではなく美しかった。彼女の顔立ちが非常に整っているためでもあるだろうが、メイクの巧みさが大きいかもしれない。オープニングで化粧担当のクレジットは出なかったので誰がやったのかはわからないが。
 常に少し経年変化のノイズが乗るが、映像そのものは戦中作にしてはかなりシャープ(撮影:安本淳)。(2004/03/14)

ハワイ・マレー沖海戦 はわいまれえおきかいせん
監督 山本嘉次郎
公開年 1942年
評点[B]
感想
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ハワイ・マレー沖海戦
ハワイ・マレー沖海戦

 今日は、山本嘉次郎監督の『ハワイ・マレー沖海戦』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 昭和十一年、海軍の士官候補生を親類に持つ飛行機好きの少年・友田義一(伊藤薫)は海軍航空予科練習部(いわゆる予科練)に志願した。厳しい訓練を経て雷撃機の搭乗員として実戦部隊に配属されると、昭和十六年十二月八日、ついに太平洋戦争が始まる。

 大本営海軍報道部の企画により、開戦一周年記念の日に上映された作品。海軍の協力を得て、予科練
の訓練風景など一部が実写。また、真珠湾攻撃やマレー沖での英戦艦レパルスとプリンス・オブ・ウェールズの撃沈シーンなどは特撮で、むしろ円谷英二が参加した作品として名高い。
 ただし、米軍も実写だと思ったといわれる特撮シーンばかりが有名だが、実際には少年飛行兵の成長を丹念に追った作品で、戦闘シーンに至るまで1時間以上かかる。私は軍隊生活に興味があるので飽きずに観られたが、関心の無い人には退屈かも。展開のテンポは速いとはいえないし。“本物”の海軍の訓練風景を観られる作品として貴重かもしれない。創作部分は妙に教官と少年兵たちが仲良さ過ぎるのが嘘くさいけど。
 特撮シーンは、なかなかリアル。質感の違いがわかりづらいモノクロに助けられた部分もあるとは思うが。(2003/07/31)

富士に立つ影 ふじにたつかげ
監督 池田富保・白井戦太郎
公開年 1942年
評点[A’]
感想
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阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日は、池田富保・白井戦太郎両監督の『富士に立つ影』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 江戸時代後期、将軍家斉(南條新太郎)は老中・松平定信(北龍二)の建議により、国防強化のため富士の裾野に調練城(軍事演習のための城)を作らせることにした。建設にあたる水野出羽守(沢村国太郎)は兵学の各流派から賛四流の佐藤菊太郎(阪東妻三郎)と赤針流の熊木伯典(永田靖)を候補として選び、両者の熾烈な戦いが始まった。

 サイレント時代と戦後に各一度ずつ映画化されている白井喬二の原作を、サイレント時代からのベテランである両監督が演出(脚本:八尋不二)。
 監督のキャリアが古いためか、登場人物が論争する場面は古典的な大芝居で台詞も難解な言葉を用いるため、よくわからないところも多い(笑)。しかし、中盤以降の富士山麓のロケシーンが素晴らしい。佐藤と熊木が実地検分する“逆さ富士”が移る湖の様子(どの湖だろう?)や、なんといっても木材を運ぶ馬車競争の迫力がもの凄い。日本映画らしからぬシーンでカメラアングルも工夫されており、アメリカの西部劇などを研究したのだろうか(撮影:石本秀雄・松井鴻)。私は戦後版しか観たことないが、戦前のサイレント版の『ベン・ハー』(1926年)の戦車競争に影響されたのかな?
 馬車競争の印象が強烈なので、そこで活躍する名主の娘お雪(橘公子)が儲け役で、戦後は脇役専門になってしまう(大映から独立しようとしたことがあるからだという)橘公子の演技も悪くない。三平(島田照夫)というキャラクターもメインの佐藤と熊木以上に活躍して印象的。

 モブシーンや両国の花火のシーンも非常に大がかりで、戦中ながら娯楽に徹した大作。(2005/04/06)

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