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昭和二十二年(1942)

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象を喰った連中 ぞうをくったれんちゅう
監督 吉村公三郎
公開年 1947年
評点[A’]
感想  今日は、吉村公三郎監督の『象を喰った連中』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 ある動物園で象が病死した。飼育係(笠智衆)は悲しむが、治療していた獣医学者たち(原保美・日守新一・阿部徹・神田隆)は肉を焼いて食べ始め、騙して飼育係にも食べさせてしまう。しかし、象の病死体を食った人間が死んだ話を飼育係が思い出すと、症例がピッタリ合うので大騒ぎになる。

 吉村公三郎監督の戦後復帰第一作。笠智衆がチョビひげを生やしてちょっとだけチャップリンを彷彿とさせるような演技をしているのが珍しい。オチは予想できちゃうし、大笑いするような作品ではないが、クスリと笑えるコメディ作。「科学と生命に関する一考察」という副題が付いているが、むやみに諷刺色が濃いわけでもなく、後味は良い。もうちょっとテンポがあったら、さらに良かったかも。
 吉村公三郎は陸軍将校として従軍したことがあり、戦中は国策映画も撮ったので、戦後第一作は進駐軍をはばかってコメディ作にした、つまり韜晦した作品だという話を聞いたことがあるが、本当だろうか。(2004/04/19)

四つの恋の物語 よっつのこいのものがたり
監督 豊田四郎・成瀬巳喜男・山本嘉次郎・衣笠貞之助
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、『四つの恋の物語』を観た。四人の監督によるオムニバスで、昭和二十二年(1947)の作品。

 第一話は豊田四郎監督の「初恋」。脚本は黒澤明。父(志村喬)と母(杉村春子)と三人暮らしの高校生・正雄(池部良)の家に、父の知り合いの娘・由紀子(久我美子)が預けられてくる。彼女によって正雄の生活はすっかり変わり、母親はそれを心配する。まだ蛮カラを気取る気風の残っていた高校生とその家族が若い娘の登場に惑わされるという、戦後らしい作品。黒澤脚本だが、それらしいところは無く、舞台が家を出ないのでホームドラマの小品といった感じ。
 第二話は成瀬巳喜男監督の「別れも愉し」。脚本は小国英雄。離婚歴のある年上の女(木暮美千代)が、男(沼崎勲)に若い恋人(竹久千恵子)ができたと知り、身を引こうとする。これも部屋を出ることなく、ほとんど男と女の会話のみで終始する。正直言って古臭いメロドラマで、成瀬作品として観ると、かなり出来の悪い方ではないだろうか。
 第三話は山本嘉次郎監督の「恋はやさし」。脚本は山崎謙太。ある劇団の下っぱ役者・金ちゃん(榎本健一)は、同じ劇団のナミちゃん(若山セツコ)が劇団を辞めて大阪へ行くと聞いて気が気ではない。だが、金ちゃんは劇に出番があって彼女を見送りに行くこともできず……。エノケンが劇中劇の『ボッカチオ』を演じていて、その歌はいかにも昔の日本の翻訳劇っぽいが、エノケンだけに巧みで面白い。
 第四話は衣笠貞之助監督の「恋のサーカス」。脚本は八住利雄。あるサーカス団で、空中ブランコの最中に富蔵(河野秋武)という男がわざと手を離して仲間を落とすという殺人事件が起こった。刑事や検事たちが立ち会っての実況検証の最中、そのサーカス団の女まり子(浜田百合子)を中心とした複雑な人間関係が浮かび上がってくる。これもサーカスのテントの中が舞台。昔のサーカス団の貧乏くさい雰囲気が出ている。全体に、出演者の演技がちょっと過剰気味に見えた。

 監督に豪華な顔ぶれを揃えたせいか、皆一つの部屋やセットを舞台とした会話中心の物語で、低予算作品という感じがした。また、全体に時代を感じさせられるストーリー。中では、エノケン出演の第三話が、彼の芸の片鱗をかいま見ることが出来て面白いと思った。(2000/02/16)

深夜の市長 しんやのしちょう
監督 川島雄三
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、川島雄三監督の『深夜の市長』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 戦中に冤罪で死刑になった兄の無実を明かすため奔走する黒市憲三(安部徹)は、事件の裏を知る溝呂木文吉(山内明)を探す。そのころ街で偶然知り合った旗江(空あけみ)は偶然にも文吉の妹だった。そんな彼らを“深夜の市長”と呼ばれる謎の男・室戸(月形龍之介)が見つめる。

 川島監督の4本目で、デビュー作『還って来た男』に告ぐ長編2作目。といっても73分ほどの中編。海野十三の同題小説が有名だが、この作品と関係はないらしい(脚本:陶山鉄)。
 のちに悪役俳優として活躍する安部徹が二枚目の主役を演じているので驚かされる。金子信雄や名和宏や南原宏治もキャリア初期は二枚目役を演じていたから、二枚目→悪役というのは、びっくりするようなことではないのかもしれないが。
 安部徹はまだデビュー数年目で演技が硬いのは別として、女性よりも背が低いような三井秀男が頑張って悪の一味を演じていたりして、まずミスキャストが気になる。その上、演出が一本調子でテンポが悪い。旗江の空あけみと室戸の情婦役の村田知英子、ヒロイン級の女優二人が双方とも魅力がないのも厳しい。本当にその辺の姉ちゃんにしか見えないのだもの。松竹もこの頃はスター以外の中堅層が手薄だったのかしら。
 出来が今ひとつなのは自他共に認めていたそうで、この作品のあと監督から助監督に戻され、1年あまり自分の作品を作らせてもらえなかったらしい。ありふれた言い回しだが、まだ若書きの域という感じがする。(2006/01/15)

大江戸の鬼 おおえどのおに
監督 萩原遼・志村敏夫
公開年 1947年
評点[B]
感想  今日は、萩原遼・志村敏夫監督の『大江戸の鬼』を観た。昭和二十二(1947)の作品。

 江戸の町は、ゆえなく人を殺す通り魔の恐怖に震えていた。なかなか尻尾をつかめず遠山金四郎(黒川弥太郎)以下の町方役人が焦りを見せる中、腕利き岡っ引の伝七(大河内傳次郎)と島流しから帰ってきたばかりの清吉(長谷川一夫)は、いわれのある般若の面に注目する。

 江戸の町を舞台にした推理サスペンスものといった感じの作品(脚本:三村伸太郎)で、江戸の闇の表現や夜中の追跡劇はなかなかの出来(撮影:安本淳・岩佐一泉)。いわくありげな面打ち師を演じた上山草人も雰囲気を出している。
 しかし、まだ昭和二十二年の段階では立ち回りを自粛していたのか捕物は割りとアッサリ目で、登場人物どうしの会話や思い入れの演技(?)が中心になっていて、展開がかなり遅い。特に面打ち師の娘を演じた高峰秀子の見せ場がたっぷりありすぎて……。
 内容がスリラー物でもあるためか、戦前戦中の萩原作品に観られたしっとりした感性や小粋な演出があまり観られなくて残念。(2004/09/29)

安城家の舞踏会 あんじょうけのぶとうかい
監督 吉村公三郎
公開年 1947年
評点[B]
感想  今日は、吉村公三郎監督の『安城家の舞踏会』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 終戦直後、時代の変化で、由緒ある華族の安城伯爵家も風前の灯となっていた。その衝撃で呆然としている当主の忠彦(滝沢修)や長女の昭子(逢初夢子)、放蕩息子の長男・正彦(森雅之)に代わって次女の敦子(原節子)が善後策のために奔走し、安城家の最後を飾る舞踏会を開く。

 敗戦による社会の変化を華族の崩壊に象徴させて劇的に描いた作品(原作:吉村公三郎/脚本:新藤兼人)。
 登場人物が、没落華族・資本家・成り金の元運転手など、どんな役割か非常にわかりやすくキャラクター付けされている。そのため、今の目から観るとステロタイプ気味な点もある。演出も時々ビックリするくらい大芝居なところがあって、昭子が砂浜で男を追いかけて靴が脱げ(ディートリヒの『モロッコ』の影響?)、さらに転倒してゴロゴロ転がるのには驚いた……というか失笑。成金の元運転手(神田隆)や正彦の婚約者(植田曜子)、正彦とデキている女中(幾野道子)などは、もうちょっと演技が何とかならなかったかと思う。演出の問題だろうか。ちょっと時代を感じさせられる作品。
 ただし、森雅之の退廃的な雰囲気や忠彦と家令(かれい)の吉田(殿山泰司)の別れのシーンなど、所々良いシーンもあるし、有名な“二人だけの舞踏会”のラストは後味が良かった。(2003/08/11)

長屋紳士録 ながやしんしろく
監督 小津安二郎
公開年 1947年
評点[A]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第三集
小津安二郎
DVD-BOX
第三集

 今日は、小津安二郎監督の『長屋紳士録』を観た。昭和二十二年(1947)年の作品。

 東京の下町の長屋に住む、辻占いの易者(笠智衆)が父親にはぐれた子供(青木放屁)を拾ってくる。生活に苦しい長屋の住人は互いに押しつけ合い、“かあやん”と呼ばれる、おたねおばさん(飯田蝶子)が面倒を見ることになってしまう。
 いやぁ、ええ話や。全体に小津流の淡々とした演出でベタベタしたところは無いのだが、しっかり胸に響いてくる。全然可愛くないガキや口では邪険なことを言う大人たちなどが独得のリアルさを生み出している。さすが小津だ。
 ドナルド・リチーが『小津安二郎の美学』(社会思想社 現代教養文庫1993年)でこの作品に与えた批判は誤解に基づくものだと思う。彼の記憶違いか、深読みのしすぎか、あるいは英語字幕のせいか。

 笠智衆の隠し芸の“のぞきからくり”の口上も最高。活字で読んで、どんなのかと思っていたが、ああいうのだったのか。(2000/10/14)

消えた死体 きえたしたい
監督 瑞穂春海
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、瑞穂春海監督の『消えた死体』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 ダンスホールのダンサー中山美枝子(木暮実千代)は、闇屋を辞めて故郷に帰るという城三平(上原謙)と、ふとした偶然から親しくなった。美枝子は、社長(村田知英子)のバッグから金を抜いてきたという三平を諌めて一緒に社長の家へ返しに行くと、そこには社長の死体が。三平が第一容疑者にされるのは間違いないので、二人は独自に犯人を探そうとする。

 オープニングで“原案”として渋谷実の名が出てくる(脚本:清島長利)。それで期待して観始めたのだが……。
 サスペンスタッチの粗筋の割りには登場人物の演技に緊張感ゼロで、当然観ている方にも緊迫感は伝わってこない。サスペンスといってもコメディ的な要素もある脚本だが、ギャグが面白くない。67分強の短い作品なのに途中で退屈してしまい、渋谷実自らの演出だったらな〜と思いながら観てしまった。
 ただし、登場人物はメインキャストから脇役に至るまで松竹の経験豊富な俳優たちで、拙さを感じさせるところはない。やはり演出の責任が大きいような気がする。粘らず全て一発OKで撮りあげてしまったような。上映時間が短いし、映画館の番組の埋め草的作品だったのかしら。(2005/05/15)

戦争と平和(戦爭と平和) せんそうとへいわ
監督 山本薩夫・亀井文夫
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、『戦争と平和』を観た。監督は山本薩夫と亀井文夫で、昭和二十二年(1947)の作品。

 戦時中、人妻の町子(岸旗江)は夫の健一(伊豆肇)が戦死したとの報を受け、子供を抱えて途方にくれる。そんな時、町子と健一の幼なじみである康吉(池部良)と再会し、町子は彼と再婚する。しかし、実は死んでいなかった健一は復員してきて、夫婦になった町子と康吉を見てしまう。

 “社会派”監督の二人が組んだだけあって、今から観ると娯楽性の無さは見事なほど(笑)。確かに当時は実際にあったことかもしれないし、当時の社会の一段面を忠実に描いているのだろうが、不幸のオンパレードを見せられつづけるのはちょっとしんどい。充分エピソードで語られているのに、健一が演説してしまうのはくどいし。
 それで映像で観るべきものがあれば良いのだが、それも画面が暗く、人物のアップが多いので重苦しい。ただ、輸送船が沈むところと空襲のシーンは、東宝の作品だけあって当時の作品にしてはリアル。(2002/05/02)

銀嶺の果て ぎんれいのはて
監督 谷口千吉
公開年 1947年
評点[C]
感想
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銀嶺の果て
銀嶺の果て

 今日は、谷口千吉監督の『銀嶺の果て』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 銀行を襲って大金を奪った野尻(志村喬)・江島(三船敏郎)・高杉(小杉義男)の三人組は、長野の温泉地に逃れる。そこからさらに山奥に入った野尻と絵島は山小屋で、その主の爺さん(高堂国典)と孫娘(若山セツコ)、そして登山家(河野秋武)といった自分たちの正体を知らない人々と同宿することになる。

 三船敏郎の初出演作として知られる作品。現在残されているプリントは最初のタイトルに『銀嶺の果て(新版)』と表示されるように再公開時のものなのか、出演者としては三船敏郎の名が最初に出る。しかし、主役は志村喬。この作品の三船敏郎は凄いハンサムだが単なる悪人で、のちの黒澤作品におけるような厚みは無い。志村喬の演技はオーバー気味だが上手い。
 この作品の脚本は黒澤明による。しかし、演出がオーソドックスで映像的にも目新しいところは無いので、黒澤監督作品とは印象が異なる。(2001/12/14)

女優須磨子の恋(女優須磨子の戀) じょゆうすまこのこい
監督 溝口健二
公開年 1947年
評点[B]
感想  今日は溝口健二監督の『女優須磨子の恋』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 これは題名通り、明治末〜大正時代にかけて新劇運動を推し進めた島村抱月と松井須磨子の恋とその結末を描いたもの。溝口作品としては、あまり評価は高くないが、ある邦画評サイトで傑作と言っている人もいたので興味を惹かれて借りて観た。
 ん〜、確かに松井須磨子を演ずる田中絹代は“熱演”だけれども、チョットやりすぎな感じもあるかも。対する島村抱月の山村聰が結構良かった。堂々たる風采と教養を持っていながら、婿養子という引け目のあるインテリ像をよく演じていたと思う。山村聰ってまだ生きてたっけ?(補注:2000年5月26日没)
 あと、上で言ったのとは別のサイトを作品を観たあとに覗いてみると、そこでは画面の端正さに注目して、光は基本的に左に置かれていて人物の構図は基本的に三角形、と書かれていた。う〜、全然気づかなかった…。

 これと同年に、やはり島村抱月&松井須磨子を描いた『女優』(監督:衣笠貞之助/主演:山田五十鈴)という映画も作られて、こちらの方が一般には出来が良いとされているが、『女優須磨子の恋』を誉めていた人は溝口版の方を推していたので比較してみたいと思ったのだけど、『女優』はキネマ倶楽部発売でレンタルは無かった。残念。(2000/04/18)

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昭和二十二年(1942)
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