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昭和二十七年(1952)

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荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻(荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻) あらきまたえもんけっとうかぎやのつじ
監督 森一生
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、三船敏郎主演の『荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻』を観た。監督は森一生で、昭和二十七年(1952)の作品。

 講談などで有名な“鍵屋の辻”の仇討。しかし、渡辺数馬(片山明彦)とその助太刀をした荒木又右衛門(三船敏郎)、仇の河合又五郎(千秋実)とその助太刀で荒木又右衛門の親友でもある河合甚左衛門(志村喬)を中心とした戦いの実相は、今に伝えられる巷談俗説から遠くかけ離れたものであった。

 脚本は黒澤明。ファーストシーンで白塗りのメイクをした三船たちが講談調の立ち回りをしてみせ、ナレーションに続いて実説の再現が始まったり、劇中の経過時間と映画の経過時間がほぼ同一でありながら又右衛門たちの従者(加東大介)の回想として過去を描くなど、凝った構成。真剣での戦いの描き方も大変リアル
 ただし、回想と現時点との切り替えのテンポが今ひとつ良くないように感じた。また、リアリティを増すために劇中の経過時間を全て“今”として描いたため、かえって一エピソードで終わってしまったような物足りなさもある。この辺は受け手それぞれで感じ方が異なるかもしれないが。
 又右衛門と河合甚左衛門の友情や二人の従者(加東大介と小川虎之助)の緊張の様子といった登場人物の感情の描き方は、なかなか細やかで良かった。(2003/12/14)

三萬両五十三次(三万両五十三次) さんまんりょうごじゅうさんつぎ
監督 木村恵吾
公開年 1952年
評点[A’]
感想  今日は、大河内傳次郎主演の『三萬両五十三次』を観た。監督は木村恵吾で、昭和二十七年(1952)の作品。

 幕末、幕府は対公家工作などの費用として三万両を京都に送ることにした。なぜか担当の老中・堀田備中守(沢村国太郎)は、失態を犯して浪人になった元家臣の馬場蔵人(大河内傳次郎)を責任者とする。京に向かう三万両と蔵人を、尊皇派の浪人や蔵人を個人的に恨む山際三左衛門(河津清三郎)や盗人の牛若小僧(加東大介)など、様々な思惑の連中が追いかける。

 『銭形平次』の野村胡堂の原作を狸映画で有名な木村監督が映画化。脚本も木村恵吾。
 大河内傳次郎が“ひょうたん”というあだ名のとぼけた男を好演。演技はいつもどおりで超オーバーだが、あの独特の台詞回しが活かされている。全体に漂う“道中もの”らしいのんびりした雰囲気と小道具の瓢箪(実物)の使い方は、戦前の時代劇を彷彿とさせる味わいがある。
 河津清三郎のエキセントリックな侍(どう見ても優秀な家臣には見えないが)や轟夕起子演ずる年増女も良く、小佳作になっていると思う(上映時間は1時間5分強)。

 サイレント時代にも大河内傳次郎が出演して映画化されているが、それでは蔵人ではなく牛若小僧を演じていたらしい。牛若小僧が主人公のストーリーだったのだろうか?(2005/08/07)

元禄水滸伝(元祿水滸傳/元禄水滸傳) げんろくすいこでん
監督 犬塚稔
公開年 1952年
評点[C]
感想  今日は、犬塚稔監督の『元禄水滸伝』を観た。昭和二十七年(1952)の作品。

 時は元禄十五年の年の暮。赤穂浅野家の足軽だった寺坂吉右衛門(月形龍之介)は同志の一員に加えてもらうことを望みながら堀部安兵衛(小堀明男)など赤穂浪人の世話をしていた。その頃、元浅野家家臣の一人である小山田庄左衛門(徳大寺伸)は生活に困っている武家の娘お初(浅茅しのぶ)を助け、毛利小平太(坂東好太郎)は他の赤穂浪人が自分を軽んずることに不満を抱いていた。

 100歳を越えていまだ健在で(2005年6月現在)映画界の最長老である犬塚稔の脚本・監督作品(原作:郷田悳)。宝塚映画の第一回作品で、浅茅しのぶの他にも浅野未亡人の瑶泉院の役で戦前の宝塚スター春日野八千代が出ていたり 大石主税に寿美花代、矢頭右衛門七に南風洋子と、男役スターが少年を演じていたりする。
 しかし、不忠臣・不義士と言われる人々がメインキャラ(寺坂吉右衛門は意見が分かれるが)であることが示しているように、既存の忠臣蔵に対して疑問を呈する作品になっていて、甘い作品ではない。戦後の風潮を反映した面もあるかもしれないが、“傾向映画”の時代が監督としての全盛期だった犬塚監督の元々の思想を反映しているのだろう。
 ただし、脚本家としての作品の方が多い犬塚監督が脚本に凝り過ぎたのか、主人公が三人というのはやはりどっちつかずになってしまっているし、1時間24分ほどの作品では描写が足りず、寺坂はともかく小山田と毛利にはなかなか共感できない。それに、現代人的な考え方をしているように見えてしまうキャラが多く、忠臣蔵批判するにしても監督の思想を生で出しすぎたのではないだろうか。
 寺坂の月形龍之介は小身者の哀しさをにじみ出させていて、なかなか良かった。(2005/06/06)

とんかつ大将 とんかつたいしょう
監督 川島雄三
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『とんかつ大将』を観た。昭和二十七年(1943)の作品。

 浅草の亀の子横丁に住むとんかつ好きの医師・荒木勇作(佐野周二)は皆から“とんかつ大将”と呼ばれて慕われていた。とんかつ大将は、若い女院長(津島恵子)が経営する長屋裏の病院の拡張による長屋の立ち退き問題や、かつての恋人(幾野道子)との再会など様々な事件に巻き込まれる。


 あの『姿三四郎』の作者・富田常雄の原作の映画化だという(脚本:川島雄三)。
 下町人情物のフォーマットにのっとったストーリーという感じで、坂本武などが演ずる長屋の住人たちや元恋人とその夫とのエピソードなどは、今の目で観てしまうとちょっと類型的。しかし、主人公に影があるように見える理由や女院長のと関係はオリジナリティを感じさせ、とんかつ大将の同居人である艶歌師(三井弘次)がいいキャラクターになっている。
 この作品も川島監督が職人としての腕を見せたという感じでエキセントリックなところはないが、一見人情家で実はいい加減なところが強調されているような長屋の住人の描き方に彼らしさが出ているだろうか。原作どおりかもしれないが。
 とんかつ大将を慕う女性(角梨枝子)の弟として高橋貞二が出演。このころはまだ主役を張る前の段階だったのだろうか。(2005/08/01)

本日休診 ほんじつきゅうしん
監督 渋谷実
公開年 1952年
評点[A’]
感想  今日は、渋谷実監督の『本日休診』を観た。昭和二十七年(1952)の作品。

 三雲医院の老医師・三雲八春(柳永二郎)は戦後の新装開院一周年の日を休診日にした。院長の座を譲った甥・五助(増田順二)や看護婦たちは遊びに出、八春と婆や(長岡輝子)はのんびり昼寝しようとしていた。しかし、婆やの子で戦地で精神を病んだ勇作(三國連太郎)が騒ぎ出したのを皮切りに、松木巡査(十朱久雄)が暴行された娘(角梨枝子)を連れてきたり、指詰めしてくれというやくざ加吉(鶴田浩二)が来たり、訪問者や往診の依頼がひっきりなしで休む暇もないのであった。

 井伏鱒二の原作の映画化(脚本:斎藤良輔)。新派出身の柳永二郎が主演で、ちょっと演技が濃いかな? と思うこともあったが、柳や渋谷監督はコメディ作品として作ったのだろうか。
 戦後しばらくの社会を反映する多彩な人物が登場して、柳永二郎は文字通り大活躍。原作のせいか、渋谷監督らしい毒気はちょっと薄めのような気がする。ただし、全体のテンポの良さはこの監督らしいし、終盤の急展開と最後にちょっとホロリさせられる味を楽しめる。
 出演者は、精神に異常をきたした役の三國連太郎は、これが異常な人物を演ずることが多い彼の原点なのかと思った(笑)。のちの役柄を考えると、チンピラ役の鶴田浩二が弱っちいのが面白い。松竹時代は二枚目俳優として売っていたので意外な役ではないのかもしれないが。加吉の情婦役として淡島千景、旧知の患者の息子として佐田啓二が出演。(2004/12/09)

お國と五平(お国と五平) おくにとごへい
監督 成瀬巳喜男
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『お國と五平』を観た。昭和二十七年(1952)の作品

 ある街道を、行き交う人々の目を惹く美しい武家の妻女風の女と若い男の従者が歩いていた。その女お國(木暮実千代)は、夫の伊織(田崎潤)を彼女に想いを寄せる友之丞(山村聡)に闇討ちされ、若党の五平(大谷友右衛門、のち中村雀右衛門)を連れて仇討ちの旅に出たのだ。しかし、お國はそんな生活に疑問を感じはじめて……。

 成瀬監督には珍しい時代劇で、谷崎潤一郎原作の映画化(脚本:八住利雄)。時代劇とはいっても、もちろん殺陣が繰り広げられるわけではなく、男女の心理のせめぎあいの描写が続く。重苦しい展開が連続して正直結構きついものがあった。しかし、説明的な台詞は少なく演技と行動で揺れる男女の心理を表現するのは、演出の賜物というべきだろう。
 ただし、溝口作品のキャラクターのような内に秘めた情熱を暗示させるような面がないので少々物足りないような気がする。後味の悪い結末は原作のせいだろうから(未読)しかたないだろう。
 山村聡が情けない男の役をやっているのは珍しい。若者役というのも、ほとんどないのでは?(2004/07/07)

西鶴一代女 さいかくいちだいおんな
監督 溝口健二
公開年 1952年
評点[超A]
感想
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西鶴一代女


西鶴一代女

 先日、amazon.comで通販申し込みをした『西鶴一代女』(The Life of Oharu)が届いたっす!イエ〜!!(ここでビルとテッドの如く“エアギター”のゼスチュア)2月22日の深夜(正確には23日の早朝)に申し込んだから、10日ほどで届いたのか。
 いや〜、田中絹代という名優に名監督、色んな意味で濃い映画だ。溝口健二作品の中でも濃さは一番かも(笑)。
 最初の方に三船敏郎が出てきて、これが多分生涯唯一の色男役で、ミフネなのに暴れない!(爆)彼はロバート・デ・ニーロと同じく何をやっても“ミフネ”になってしまうタイプなのに、この作品は三船敏郎らしく見えなかった。溝口健二の演出力はさすがだ。(2000/03/04)

虎の尾を踏む男たち とらのおをふむおとこたち
監督 黒澤明
公開年 1952年
評点[A’]
感想
Amazon
虎の尾を踏む男達
虎の尾を踏む男達
Amazon
黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 3

 今日は、黒澤明監督の『虎の尾を踏む男たち』を観た。昭和二十七年(1952)の公開だが、製作は昭和二十年(1945)。

 平家を滅ぼした源義経(仁科周芳)は梶原景時の讒言を信じた源頼朝によって、全国で追われる身となった。義経主従は山伏に姿を変えたが、義経を捕らえるための安宅の関所にさしかかると、土地の
地頭・富樫(藤田進)に見破られる。しかし、弁慶(大河内伝次郎)は機略で切り抜けようとする。

 能の『安宅』と歌舞伎の『勧進帳』を基にした作品。終戦直後の作品なので、上映時間は一時間ちょうど、撮影も簡単なセットのみの商品だが、黒澤明自らによる脚本は古典を巧みに翻案し、オリジナルキャラである強力(榎本健一)を登場させたことによって、観客を飽きさせない作品になっていると思う。
 エノケンはよく動きよくしゃべり面白いが、今から観ると表情の演技がサイレント的というか少々過剰に見えるところもあった。大河内傳次郎も弁慶にしては小柄だが威厳があり、ラストの酔う演技が上手い。ただ、滑舌が悪くて何を言っているのかわからないところも多かった。(2002/08/30)

乞食大将 こじきたいしょう
監督 松田定次
公開年 1952年
評点[A’]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『乞食大将』を観た。監督は松田定次で、昭和二十七年(1952)の作品。

 黒田長政(月形龍之介)は手ごわい配下の豪族・宇都宮鎮房(羅門光三郎)を罠に誘い込み、豪遊無双の後藤又兵衛基次(市川右太衛門)に討ち取らせた。だまし討ちに加担させられて大いに不本意な又兵衛は、黒田家から去り流浪の旅に出る。

 大佛次郎原作の映画化で(脚本:八尋不二)。実は昭和二十年に製作されたがGHQの検閲により公開不許可とされ、講和条約締結と同時に上映された作品の一つらしい。確かに、内容は娯楽に徹して武士道・封建制に対する批判の色は全く無く、多くはないが殺陣もある。
 序盤、黒田家の城内でだまし討ちに遭い憤怒に燃える宇都宮鎮房の迫力がものすごく、月形龍之介も市川右太衛門も圧倒されそうな勢い。さすがに羅門光三郎は無声映画時代のスターだっただけのことはあると思った。中盤はコミカルな展開もあり、今観ると笑えるほどではないものの、ほのぼのとしたユーモアを感じさせてくれる。
 まだ製作条件が良くなかったためか1時間強の小品で、上記のようにメッセージ性は皆無だが、どことなく戦争が終わった開放感が漂う一作。(2005/10/07)

おかあさん おかあさん
監督 成瀬巳喜男
公開年 1952年
評点[A’]
感想  『おかあさん』は昭和二十七年(1952)の作品。香川京子と田中絹代の主演。

 福原年子(香川京子)は、クリーニング屋の両親(三島雅夫&田中絹代)・兄(片山明彦)・妹(榎並啓子)、そして甥(伊東隆)と共に暮らしている。兄は奉公先で病気になって帰って来て、父もしばらくして過労で倒れるなど、生活は厳しい。そんな家族を見守り続ける“おかあさん”の姿。

 戦前からおこなわれていた児童作文指導の、『綴り方教室』の一編を基にした作品(脚本:水木洋子)。終戦直後の貧しい庶民の暮らしが克明に描かれていて、小綺麗な小津作品とは全く異なる世界が繰り広げられている。
 香川京子は長身で顔が小さくスタイルが良すぎて、貧しい下町の中ではちょっと浮いて見え、文字通り“掃きだめに鶴”って感じ(笑)。でも、美しい。“おかあさん”の田中絹代はまさにハマり役。彼女は実際に母になったことはないのに、不思議。
 ジャンルとしては“母もの”で、湿っぽい話ではあるが、所々に笑いがあるので娯楽性は保っている。これが、今井正作品とは異なるところかも。成瀬監督に、これほどユーモアの感覚があるとは思わなかった。
 特に、ヒロインに惚れている近所の平井ベーカリーの息子・信二郎を演じた岡田英次の三枚目っぷりは爆笑もの。岡田英次に、こんな面があったとは…。また、途中で観客の誰もがアッと驚く1カットがある。ネタバレになるので説明しようがないが、これは必見かも。
 成瀬作品の中では特に名作とはされていないが、意外な掘り出し物だったかも。(2001/06/11)

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