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昭和二十八年(1953)

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雲ながるる果てに くもながるるはてに
監督 家城巳代治
公開年 1953年
評点[A]
感想
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雲ながるる果てに
雲ながるる果てに

 今日は、家城巳代治監督の『雲ながるる果てに』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 昭和二十年四月、九州南端の基地で出撃の時を待つ特攻隊員たち。学徒出陣で海軍に入った若者たちは、生真面目な大瀧(鶴田浩二)・繊細な深見(木村功)・無頼の松井(高原駿雄)・ひょうきんな笠原(沼田曜一)など各々個性に溢れていたが、待ち受ける運命は一つであった。

 戦没飛行予備学生の遺稿『雲ながるる果てに』を基にした作品(脚本:直居欽哉・八木保太郎・家城巳代治)で、初めて特攻隊を正面から採りあげた映画だという。レッドパージで松竹を追われた家城監督が独立プロダクション製作(重宗プロ)で復活した第一作。
 終戦からわずか8年後に登場人物と同世代の俳優たちが演じていることもあって、特攻隊員たちそれぞれの個性ある人間像の描き方が実に見事。ストーリーがあるわけではない原作を基にして、いくつものエピソードを作り巧みに構成している。カラリとした性格で無頼を気取る松井が一番の儲け役だが、確実な死に直面して悩む大瀧や深見の姿には感動させられざるを得ない。そして終盤は……ただ涙。
 独立プロ製作映画の一つではあるが、人間の描き方が紋切り型ではなく左翼映画とか反戦映画という枠を越えるものがある作品だと思う。家城監督の演出はかなりパセティックというかセンチメンタルなものを感じさせ、日本人好みの“情”に訴えてくる作品。
 ただし、一部の高級士官の描き方は図式的で、ラストシーン近くでリアリティを損ねて最後に画竜点睛を欠いてしまった感があるのは、ちょっと残念だ。
 映像的にはオーソドックスだが(撮影:中尾駿一郎・高山弥)、飛行機の飛行シーンがほとんどないのは技術的・予算的にいたしかたないのだろうか。

 松竹の二枚目スター俳優だった鶴田浩二が意欲的に出演し、彼が特攻隊出身だと自称するきっかけとなった作品でもある。深見に思いを寄せる女性の瀬川(山岡比佐乃)を演じているのは、のちの山岡久乃だというのでビックリ。若い!(2005/01/10)

次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港 じろちょうさんごくしだいよんぶせいぞろいしみずみなと
監督 マキノ雅弘
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『次郎長三国志 勢揃い清水港』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 清水港に戻った次郎長(小堀明男)一家は、新たな住まいで正式に一家を構える。そこに石松(森繁久彌)と三五郎(小泉博)がやってきて、お調子者の三五郎は黒駒の勝蔵(石黒達也)との揉め事に次郎長を巻き込んでしまう。

 シリーズ第四弾で、新たなキャラとして三保の豚松(加東大介)が初登場。また、黒駒の勝蔵との対決も初めて描かれ、ますます娯楽性たっぷりの楽しい作品。この作品では石松よりも三五郎が目立っていて、彼は本当にどうしようもないヤツだが、根っからの悪ではなくなんとなく憎めないところも表現されているのが良い。豚松も、ちょっと演技が濃くてわざとらしく見える面もあるが、上手い。(2002/10/26)

都会の横顔 とかいのよこがお
監督 清水宏
公開年 1953年
評点[B]
感想  今日は、清水宏監督の『都会の横顔』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 銀座でサンドイッチマンをしている上田(池部良)は、靴磨きのトシ子(有馬稲子)が見つけた迷子のミチコ(熱海幸子)を連れて歩いて一緒に母親(木暮実千代)を探してやる。しかし、銀座中を歩き回ってもなかなか見つからず、その上ミチコとはぐれてしまう。

 清水宏のオリジナル脚本。地方を舞台とした清水作品のように、銀座の歩道を歩く人物を長い縦移動のカメラで捉えている。
 とにかく清水監督は銀座という街の風景を撮りたかったようだ。池部良・有馬稲子・木暮実千代のほかにも森繁久彌や伴淳三郎・トニー谷といった大物が出演しているが、あくまで主役は銀座。銀座の女たちの間を飛び回る森繁の三等重役(?)ぶりは、銀座の風景に合っているような気がする。トニー谷は特異なキャラクターで、明らかに作品の雰囲気とは異質だが不協和音を通り越して、それだけでも見ものになってしまっている。伴淳はちょっと目立たなかった。
 いきなり終盤に人情噺的になったのは木暮実千代の見せ場を作るためだと思うが、最後に作品の雰囲気を崩してしまったような気がする。それと、ストーリー性が薄いので、さすがに中盤はダレ気味。
 ただし、清水流の文法で銀座を捉えた映像が面白いし、今となっては風俗資料的価値が高いと思う。(2004/09/15)

木曽路の子守唄 きそじのこもりうた
監督 加戸敏
公開年 1953年
評点[B]
感想  今日は、加戸敏監督の『木曽路の子守唄』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 国定忠次(黒川弥太郎〔彌太郎〕)は自らの猜疑心から子分の浅太郎(南条新太郎)に彼の伯父の勘助(荒木忍)を斬らせた。すぐ自分の過ちを知った忠次は深く悔い、子分たちとも別れて勘助の一人息子の勘太郎(毛利充宏)を背負って、あてどのない旅に出る。

 定番の国定忠次(忠治)ものの一編で(原作:萩原四朗/脚本:木下藤吉)、田端義男の主題歌や浪曲(伊丹秀子)が流れたりする歌謡&浪曲映画でもある。
 基本は定番のストーリーだが、様々なキャラクターを作り出してオリジナリティを出そうとしている脚本になっている(ちょっと偶然が作用しすぎだが)。モノクロ撮影の木曽路の風景が美しく(撮影:武田千吉郎)、忠次と勘太郎の絡みや別れのシーンではそれなりに感動させられる。『無法松の一生』や『関の弥太ッぺ』などと同様の仮の親子の物語というのも、物語の一つの類型なのだろう。
 ただ、今の目で観るとちょっとウェットすぎるし、子役に頼りすぎじゃないかな〜と思えてしまう面もあるので、時代劇ファン以外には受けないかも。(2006/01/08)

あばれ獅子 あばれじし
監督 大曽根辰夫
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『あばれ獅子』を観た。監督は大曽根辰夫で、昭和二十八年(1953)の作品。

 貧乏御家人の勝小吉(阪東妻三郎)は無頼が祟って若くして隠居させられていたが、のちに勝海舟と呼ばれることになる息子の麟太郎(北上弥太郎)には剣術と学問を学ばせ親の徹を踏ませまいとしていた。ある日、麟太郎がまだ妖しいものと思われている蘭学を学びたいと言い出す。

 阪妻の遺作。立ち回りや後ろ向きのシーンは代役が演じていて、声もしゃがれていて痛々しいところもあった。もしかすると、声も別人が真似ていたのかもしれないが。吹替え部分と本人が演じた部分との繋ぎ方があまり上手くなく、違和感を覚える。
 しかし、以上のような点はマイナスになるものの、『無法松』や『破れ太鼓』などと同様、阪妻の演ずる暖かくたくましい父親像は素晴らしい。ちょっと息子に甘すぎるような気もするが、麟太郎の婚礼で浮かれて踊る姿には感動……。最後まで阪妻は童心を失わなかった俳優だった。
 子吉の妻お信を演じた山田五十鈴は、この作品では少し押さえて阪妻を立てた演技が上手い。麟太郎の剣術の師・島田虎之助の月形龍之介も合っていた。麟太郎にはもう少し強さが欲しかったような気もする。
 子母澤寛の『勝海舟』が原作(脚本:八住利雄)。『父子鷹』というのは読んだことがあるが、その作品は麟太郎が幼少の頃に終わっていたので、『勝海舟』はその続編的な作品なのだろうか。(2004/07/22)

祇園囃子(祗園囃子) ぎおんばやし
監督 溝口健二
公開年 1953年
評点[A’]
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溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954
溝口健二
大映作品集Vol.1
『お遊さま』
『雨月物語』
『祇園囃子』
『山椒大夫』
『噂の女』

 今日は溝口健二監督の『祇園囃子』を観た。溝口得意の花柳界もの。

 昭和二十八年(1953)作で、『雨月物語』と同年の作品ですな。溝口自身が「間に合わせの仕事です」と言っているけど、間に合わせでこれだけの作品を作られたら、後世の人はたまりません(笑)。確かに『雨月』には及ばないが、傑作とは行かずとも佳作とは言えるのでは。若い頃の若尾文子は可愛い。木暮実千代は大人の女性の魅力が。
 若尾文子を悪女にするつもりが会社側の意向で不可能になって、最後が『祇園の姉妹』とチョット似た感じになってしまったのが溝口としては不満だったのかな。

 小津作品のあとで観ると、ずいぶんと自由に撮っているように見えるから不思議だ。溝口は移動とかクレーンは大好きだったけれども、それほど派手に使っているわけでは無いのだが。
 画質がまぁまぁ良いので、白黒でも着物の美しさが伝わってきた。撮影が宮川一夫だし。舞妓の修行を撮す前半は、なんだか京都の観光案内映画みたいな感じもしたけど。だから英題はA Geishaで海外版ビデオの値段も高いんだな(笑)。(2000/04/11)

蟹工船 かにこうせん
監督 山村聡
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、山村聡監督の『蟹工船』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 カムチャツカで蟹を獲り、船上で加工して缶詰にする“蟹工船”に、今年も様々な事情を持つ労働者たちが乗り込んできた。漁業会社の代表である監督の浅川(平田未喜三)は悪条件の中で漁を強制し、犠牲者も出る。労働者の蜂起とそれに対する弾圧。

 プロレタリア文学の代表作として有名な小林多喜二の原作を映画化した、俳優の山村聡の初監督作品で、脚本も山村聡が担当。
 ストレートに原作をそのまんま映画化したという感じで(実は原作は未読だが)、企業=体制=悪という構図が徹底して貫かれている。当時の劇団に所属している俳優たちの思想がよくわかる作品(前進座なども協力)。でも、誇張されているとはいえ、舞台となっている昭和初期には似たような状況だったのだろうから、笑ってはいけないのだろう。むしろ、内田吐夢の『逆襲獄門砦』などと同様、本気で社会主義・共産主義を理想化していたことに痛々しささえ感じられるが。
 終盤は、『戦艦ポチョムキン』を彷彿とさせるカタストロフィーが繰り広げられる。大真面目に作っているがゆえの映像の力強さは素晴らしい。
 山村聡は前科者である弱みに付け込まれて労働者たちをスパイする役。森雅之が後半に登場する飲んだくれの船医として登場しているというが本当か? 監督役の平田未喜三は、本物の漁師の網元だという。まさにそのものの迫力だと思った。(2003/07/21)

地獄門 じごくもん
監督 衣笠貞之助
公開年 1953年
評点[B]
感想  今日、衣笠貞之助監督の『地獄門』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 時は平治の乱の頃。合戦の中で助けた人妻の袈裟(京マチ子)に横恋慕した粗野な遠藤武者の盛遠(長谷川一夫)が、自分のものにならなければ夫(山形勲)や伯母を皆殺しにすると袈裟を脅すと、彼女はうなづいたが…。
 この作品はカンヌ国際映画祭のグランプリを獲ったが、ネット上で検索してみると意外と評価は高くない。私も以前から観たかったのだけれども、実際鑑賞するとその評価もうなづけた。ストーリーと、オチもちょっとね。衣笠貞之助作品を観るのは初めてだが、溝口健二なんかと比べるのはキツイかな。
 でも、衣装やセットは本当に超豪華なので観て損した気はしなかった。出演者も立ち居ふるまいが美しいし、今のNHK大河ドラマあたりよりはずっとレベルは高いから、名作とまでは行かなくとも記憶に残すべき作品か。(2000/05/19)

次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路 じろちょうさんごくしだいごぶなぐりこみこうしゅうじ
監督 マキノ雅弘
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『次郎長三国志 殴込み甲州路』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 清水港は祭の季節で、みんな楽しく踊ったり酒を飲んでいる。一方、兄貴分にあたる大熊(沢村国太郎)と、甲州の黒駒の勝蔵や猿屋の勘助との対立が激しくなり、次郎長(小堀明男)も巻き込まれざるを得ない雰囲気になってくる。そんな中、一人で甲州へ偵察に赴いた投げ節お仲(久慈あさみ)は勘助一味に捕まってしまう。

 村上元三原作の『次郎長三国志』第五弾(構成:小国英雄/脚本:松浦健郎)。冒頭シーンのお祭りのシーンや、ラストの出入り(喧嘩)のシーンまで、モブシーンの迫力が凄い。また、みんな演技が上手すぎるくらい上手い。酒を飲んで語り合うシーンは最高。このエピソードは誰が主役というわけではなく(お仲が一番目立つが)、次郎長一家を演ずる俳優たちの息がピッタリあっていて、彼ら全体を楽しむ作品なのだろう。(2002/11/06)

東京物語 とうきょうものがたり
監督 小津安二郎
公開年 1953年
評点[超A]
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東京物語
東京物語
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
DVD-BOX
第一集

 小津安二郎監督の『東京物語』は昭和二十八年(1953)の作品。小津ワールドの金字塔。

 尾道に住む平山周吉(笠智衆)・とみ(東山千栄子)の老夫婦は、東京に住む子供たちに会いに行く。物見遊山の旅のようだが、老夫婦には「今のうちに会っておかんと」という切実な思いがある。しかし、それは子供たちには伝わらない。当初歓待してくれたものの、既に中年を過ぎて家庭を持つ子供たちには彼らの世界があって、老夫婦は決してその中へ入れないことに気づくのであった。
 子供たちは老夫婦の気持ちを思いやることなく、老人たちもそれを受け入れる。新たな命を産み育て次代へ伝えていくという生物の本能なのか。仕方が無いのだろうか。そんな中で唯一の安らぎは、戦死した次男の嫁(原節子)だった。

 小津作品の中でも特に完璧な構成のこの作品。“伏線”などというワザとらしいものではなく、登場人物の全ての行動・台詞が、あとのシーンに繋がっていく。小津と野田高梧の脚本と、小津による絵作り、全てが完璧。溝口ファンの私も、この作品の完成度は認めざるを得ない。

 もし、数時間と数百円の余裕があるならば、レンタルビデオ屋に足を運んで全ての人に観てほしい。そして、記号化されたものではない本物の感動を味わってほしい。これぞ映画、これぞ邦画。昔の日本映画って本当に凄かったんスよ。
 ヴィム・ヴェンダースが言うように、人はこの中に自分の家族の誰かと将来の自分自身の姿を見いだす。絶対観て!(2000/09/16)

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昭和二十八年(1953)
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