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昭和二十八年(1953)

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にごりえ にごりえ
監督 今井正
公開年 1953年
評点[B]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 3 女性編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 3 女性編
にごりえ
婉という女
女ひとり大地を行く

 今日は、今井正監督の『にごりえ』を観た。昭和二十八年の作品。全3話のオムニバス。

 第一話「十三夜」:せき(丹阿弥谷津子)は長屋住まいの娘から高級官吏の妻となり、婚家で手ひどい仕打ちを受けて実家へ帰ってきたが、家族のことを思って婚家へ戻ることを決意する。その帰り道で乗った人力車の俥夫は幼なじみの録之助(芥川比呂志)だった。
 第二話「大つごもり」:両親を失って叔父(中村伸郎)に育てられた娘みね(久我美子)は、叔父の家を救うために女中奉公先の主人の奥方に借金を頼むが、相手にされない。思いあまって奉公先の家の金に手をつけてしまうが……。
 第三話「にごりえ」:新開地の銘酒屋の酌婦おりき(淡島千景)は、美貌と客あしらいの上手さでNo.1だった。彼女は、妻(杉村春子)も子もありながら自分に入れ込んで身代を潰した源七(宮口精二)から二枚目の結城(山村聡)に乗り換えようとして……。

 樋口一葉作品の映画化(脚本:水木洋子・井手俊郎)。脚本監修として久保田万太郎が名を連ねている。レッド・パージで東宝を追われた今井監督が文学座と提携して作った作品なので、出演者の多くが文学座の俳優。それだけに、長台詞は上手すぎて舞台演劇的に見える部分もあった。絵的には、長屋や和服姿の登場人物をとらえた白黒画面が美しい(撮影:中尾駿一郎)。
 「十三夜」の前半は長屋の部屋での会話が続くため、特に舞台的。それに、暗い雰囲気が続くので、ちょっときつかった。「大つごもり」も明るい話ではないが、久我美子の魅力で助けられる。また、ストーリー自体も3話の中で最も抑揚があって面白い。時代劇で観たことがあるような筋だったが、元ネタは樋口一葉だったのか。
 「にごりえ」は1時間ほどあって、一番長い(映画全体は131分ほど)。淡島千景がハマり役。めずらしく底意地の悪い人間の役ではない杉村春子は、上手いが長台詞で源七を攻めたてるので、そこはちょっときつかった。

 この作品は溝口健二の『雨月物語』や小津安二郎の『東京物語』といった超名作を押さえて昭和二十八年度のキネ旬ベストワンに輝いている。昭和二十年代の観客は、明治初期の貧しい人々の暮らしが描かれた『にごりえ』に深く共感したのだろうか。時代の流れを感じさせられる。
 今観ると、良い作品だとは思うが、暗い雰囲気が続いてちょっと重いし(原作がそうなのだが)、溝口・小津両監督の作品には及ばないような気がするのだけど……。(2002/03/06)

恋文 こいぶみ
監督 田中絹代
公開年 1953年
評点[C]
感想
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恋文
恋文

 今日は、田中絹代監督の『恋文』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 海軍士官だった真弓礼吉(森雅之)は終戦から5年経ってもまだ完全には立ち直れず、現実的な働き者の弟・洋(道三重三)の住むアパートに同居していた。そのうち戦友の山路直人(宇野重吉)と渋谷で偶然再会し、彼の恋文代筆屋で共に働くことにする。実は礼吉の心は、行方不明の幼なじみ久保田道子(久我美子)のことで占められていたのだが……。

 田中絹代の初の監督作。原作は丹羽文雄の小説で、木下恵介が脚本を担当している。
 今は地名だけ残っている渋谷の恋文横丁の物語だが、恋文代筆屋とは米兵のオンリー(日本での愛人、現地妻)だった女性が帰国してしまった米兵に送金の催促をする手紙を英文で代筆する仕事だったとは、寡聞にして知らなかった。もっとロマンティックなものだと思っていたのだが……。というわけで、終戦後数年の社会を背景にした作品になっている。
 そのためと、現在では性に関する倫理観が大幅に変わってしまっているためもあって、今から観ると理解しづらいところもある。その当時では切実なテーマだったのだと思うが。小津の『風の中の牝鶏』や亀井文夫&山本薩夫の『戦争と平和』をちょっと彷彿とさせる。また、オンリーやパンパン(街娼)を日本人全員が直視すべき社会問題として描いてはいるのだが、やはりどうも少々見下したような視線も感じられる。
 テーマやストーリーを離れて田中絹代の演出を見てみると、デビュー作にしてはそつなくまとまった作品になっている。脚本の木下恵介の他、カメラはベテランの鈴木博、助監督は石井輝男、俳優陣も香川京子や沢村貞子、夏川静江、そして花井蘭子や笠智衆など多くの大物俳優が脇役やチョイ役で出演していて、監督や俳優たちのバックアップを受けたようだ。正直なところ傑出したところはないが破綻もない。
 メインキャストの中では、宇野重吉は悪い時は臭い演技になるが、この作品ではほどほどに押さえていて意外と良かった。森雅之の弟役の道三重三という珍しい名の人は、演技が硬くてイマイチ。(2005/05/20)

次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家 じろちょうさんごくしだいろくぶたびがらすじろちょういっか
監督 マキノ雅弘
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『次郎長三国志 旅がらす次郎長一家』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 甲州で猿屋の勘助(小堀誠)を斬り、お上に追われる身となった次郎長一家は凶状旅を続ける。どこへ行っても厄介者扱いされ、旅なれぬお蝶(若山セツ子)が病んで進退に窮する。そこで、かつて次郎長が相撲興行をしてやった元力士の保下田の久六(千葉信男)のところに世話になるが、彼は次郎長たちを売る。

 村上元三原作の『次郎長三国志』シリーズ第六弾(構成:小国英雄/脚本:松浦健郎)。今作は、冒頭からかなりシリアスな雰囲気で展開する。前作までより一転して暗く、登場人物が泣きすぎるような感もあるが、逆境の中でますます固く結びつく次郎長一家の絆が素晴らしい。
 越路吹雪の演ずるお園と、長門裕之の演ずる島の喜代蔵が新登場。(2002/11/10)

お嬢さん社長(お孃さん社長) おじょうさんしゃちょう
監督 川島雄三
公開年 1953年
評点[B]
感想
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美空ひばり DVD-BOX 2
美空ひばり
DVD-BOX 2

『お嬢さん社長』
『陽気な渡り鳥』
『ひばりの陽気な天使』
『青春ロマンスシート
青草に坐す』

 今日は、川島雄三監督の『お嬢さん社長』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 “日本一乳菓”のワンマン社長・小原重三郎(市川小太夫)が健康を害して会長に退き、孫娘マドカ(美空ひばり)が社長に就任することになった。歌手志望のマドカは社長になる前からたびたび浅草の稲荷横丁に行っていたが、そこにレビュー歌手だった亡き母の父・桜川一八(坂本武)が住んでいることはまだ知らなかった。一方、会社にも奸物の専務(多々良純)らが巣食っていた。

 美空ひばり主演映画の一本(脚本:富田義朗・柳沢類寿)。16歳という設定で、このころになるともう子供っぽくなく、のちのイメージに近くなっている。
 歌+恋愛+人情噺という美空ひばり映画のフォーマットに沿っていて、さすがに川島監督も奇をてらったようなところはほとんどなく、おとなしい作りで無難な映画になっている。
 ただし、幇間である一八の弟子として登場する桂小金治は、妙な踊りを見せたり、いいかげんだったり、浅草の連中がマドカをちやほやする中で一人だけマドカを金づるとして見ているような内心を暗示したりして、ちょっと薬味を添えている。川島監督お気に入りだった小金治は、この作品では、美空ひばりをちょっと皮肉っぽく見ていたであろう川島監督の分身といった役どころなのだろうか。
 また、マドカがテレビ番組に出演して大活躍したりして、テレビ放映が始まったばかりの時点で川島監督がテレビ時代を予見していたのもたいしたものかもしれない。(2005/07/15)

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