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昭和二十九年(1954)

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次郎長三国志 第七部 初祝い清水港 じろちょうさんごくしだいしちぶはついわいしみずみなと
監督 マキノ雅弘
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『次郎長三国志 初祝い清水港』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 凶状旅から帰った次郎長一家は、刀を外して丸腰で博打もやらず、世間の人々に馬鹿にされながらお蝶の喪に服す。そんな中、島の喜代蔵(長門裕之)はお仲(久慈あさみ)に親分と一緒になって自分の母親代わりになってくれと頼み、困ったお仲は保下田の久六(千葉信男)を探すという名目で旅に出る。一方、百か日の喪が明けた次郎長一家はフグで一杯やって大騒ぎするが……。

 村上元三原作の『次郎長三国志』シリーズ第七弾(構成:小国英雄/脚本:松浦健郎)。シリアスムードだった前作よりは明るい雰囲気だが、第五部以前よりは湿り気は多いかも。しかし、陽気なシーンもあるので楽しめる。ただ、喜代蔵とお仲の愁嘆場は長くて、ちとキツかった。
 オチに至るまでの展開は予想はつくが、勢いがあるので割りと良い。この辺は佐太郎(堺左千夫)やお園(越路吹雪)など過去キャラが再登場して顔ぶれが豪華。(2002/11/16)

山の音 やまのおと
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[A]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 2
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 2
『山の音』
『流れる』
『女が階段を上がる時』
『放浪記』
『乱れ雲』
「特典ディスク」

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山の音
山の音

 今日は成瀬巳喜男監督の『山の音』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 鎌倉で二世代同居している尾形信吾(山村聰)は、外に愛人がいる息子の修一(上原謙)の妻の菊子(原節子)を不憫に思う。何かにつけてやさしくするのだが、それがかえって家族の間に波紋を広げる。

 成瀬巳喜男作品をようやく観ることができた。この作品の舞台(鎌倉)や題材はちょっとだけ小津作品に似ているようだ。しかし、厳格な様式美の小津安二郎やドラマティックな溝口健二に比べると、演技も映像もナチュラルな印象だった。舅と若く美しい嫁との微妙な関係を細やかな演出で表現しきっている。
 原節子は小津作品よりも演技が上手く見えた。修一ってヤなやつだねぇ(笑)。しかし、上原謙って山村聰よりも年上のはずだけど、違和感が無い……。
 出来にバラツキがあるそうだが、他の成瀬作品も観たくなった。(2001/01/01)

慶安水滸伝 けいあんすいこでん
監督 野村芳太郎
公開年 1954年
評点[C]
感想  今日は、野村芳太郎監督の『慶安水滸伝』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 江戸の初期、浪人・橡大介(高田浩吉)は偶然に梢(嵯峨三智子)という娘を助け、その繋がりで由井正雪(龍崎一郎)や丸橋忠弥(小澤栄太郎)と知り合いになる。実は、梢は町奉行・神尾備前守(笠智衆)の隠し子で……。

 由井正雪らが企てた“慶安の変”を、オリジナルキャラを狂言回しとして描いた物語。原作は村上元三(脚本:鈴木兵吾)。
 主人公にからむ人物が多く、それぞれの掘り下げが浅いため、何がテーマだかよくわからない。いくら主人公が狂言回し的なキャラだとしても、右往左往しているだけでは……。笠智衆も、あの演技と台詞回しでお奉行様といわれてもちょっと困った。せっかくの嵯峨三智子の熱演が空回り。(2002/12/19)

女の園 おんなのその
監督 木下恵介
公開年 1954年
評点[A’]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第3集
木下惠介 DVD-BOX 3
野菊の如き君なりき
善魔
少年期
海の花火
カルメン純情す
日本の悲劇
女の園
遠い雲
夕やけ雲

 今日は、木下恵介監督の『女の園』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 京都にある正倫女子大では戦前以来の厳しい良妻賢母教育がおこなわれ、学生たちの生活にも思想にも自由は無かった。それに対して、ついに反旗が翻される。

 国文学の教授にして舎監(寮長)であり、学生たちを容赦なく取り締まる五条真弓(高峰三枝子)・一度社会人を経験したため勉強についていけず苦しむ出石芳江(高峰秀子)・奔放に自由を求める滝岡富子(岸恵子)・財閥の娘で特別待遇を受けていながら学生の先頭に立つ村野明子(久我美子)などメインキャラは数多いが、それぞれの個性が巧みに描き出されている。
 しかし、今から観ると豪華なキャストだ。高峰三枝子は超悪役(笑)。ほとんど初めて根暗な役を演じた高峰秀子も、ちょっと重苦しい感じはしたものの、上手い。
 学園生活の自由を求めて立ち上がる学生、それを扇動する左翼、学生側の内通者や仲間割れ、そして真面目に勉学しようとする学生が一番の犠牲になることなど、少し後の時代の学生運動を完全に先取りしていて見事。原作(阿部知二『人工庭園』)を踏襲しているのかどうかは、未読なので知らないが。
 作中、男性陣は完全に脇役となっている。出石芳江の恋人役に田村高廣。滝岡富子のボーイフレンド役は、のちに小津作品に出演する田浦正巳。学生指導の教員は金子信雄。

 ただし、全体に重く深刻なので141分は長いように感じた。小津映画とはまた違った長さ。もう少し詰めても良いような…?(2001/03/03)

七人の侍 しちにんのさむらい
監督 黒澤明
公開年 1954年
評点[超A]
感想
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七人の侍
七人の侍
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 1

 今日は、黒澤明監督の『七人の侍』を観た。昭和二十九年(1954)年の作品。

 戦国時代、ある寒村が野武士の襲撃に悩まされていた。百姓たちは、用心棒として侍を雇おうとする。米の飯だけの報酬に応えて、勘兵衛(志村喬)・菊千代(三船敏郎)・七郎次(加東大介)・勝四郎(木村功)・平八(千秋実)・久蔵(宮口精二)・五郎兵衛(稲葉義男)の“七人の侍”が集まり、野武士との死闘が始まる。

 国内外を問わず、日本映画の代表作とされている作品。その名に違わず、勘兵衛が侍たちを集めようとする冒頭から野武士との戦闘ののちのラストシーンに至るまで、映画的面白さが横溢している。七人の侍や主な百姓たちも、キャラ立ちまくり。
 これを観て「思ったより凄くなかった」という意味のことを言う人がいるようだが、『七人の侍』は映画やマンガ(劇画)はもちろんゲームの類(RPG等)も含めた多くの創作作品に影響を与えているので既に似た表現に触れてしまっていた、ということだろう。この作品の本質的な良さは揺らがないと思う。今まで邦画を敬遠していた人々にもお勧めできる作品。(2001/03/31)

宮本武蔵 みやもとむさし
監督 稲垣浩
公開年 1954年
評点[A’]
感想  今日は、三船敏郎主演の『宮本武蔵』を観た。監督は稲垣浩で、昭和二十九年(1954)の作品。

 作州は宮本村で生まれた暴れん坊の武蔵(三船敏郎)が、沢庵和尚(尾上九朗右衛門)やお通(八千草薫)との触れ合いで人の道を知るまで。

 御存知、吉川英治の『宮本武蔵』の映画化(劇化:北条秀司/脚本:若尾徳平・稲垣浩)。稲垣監督にとっても数度目の吉川武蔵の映画。
 今でもあまり褪色していないイーストマン・カラーが美しい。1950年代のカラーの方が今のカラーの邦画よりも美しく見えるのは、なぜだろうか。金のかけ方の違いか。この作品がアカデミー外国語映画賞を撮ったのは、三船敏郎主演と共に、映像の美しさも大きく作用していたのだろう。
 中村錦之助と異なり三船敏郎の武蔵はとても十代の若さには見えないが(それを言うと千恵蔵もそうだけど)、武蔵の激しさはよく表現されていた。八千草薫のお通は“可憐”の一言。お通のベストキャストかもしれない。これを見ると、やはり平成十五年度NHK大河ドラマのお通は別の役で出演していた宮沢りえがやるべきだったと思う……。あのお通は性格も吉川武蔵のお通とは全然違うが。
 ストーリーは細部を変えながら巧みにダイジェストしている感じ。第二作以降が楽しみ。
 又八は三國連太郎。お甲は水戸光子、朱美は岡田茉莉子。岡田茉莉子の朱美は割りと蠱惑的な雰囲気が出ていた。(2003/08/17)

新諸国物語 笛吹童子 第一〜三部 しんしょこくものがたりふえふきどうじ
監督 萩原遼
公開年 1954年
評点[B]
感想
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新諸国物語 笛吹童子
新諸国物語
笛吹童子
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新諸国物語 DVD-BOX
新諸国物語
DVD-BOX

 今日は、中村錦之助主演の『新諸国物語 笛吹童子 第一部 どくろの旗』を観た。監督は萩原遼で、昭和二十九年(1954)の作品。

 応仁の乱のあと天下は麻の如く乱れ、丹波の満月城も髑髏の旗印を掲げる野武士・赤柿玄蕃(月形龍之介)によって奪われた。大陸の明に留学していた満月城主の子・萩丸(東千代之介)と菊丸(中村錦之助、のち萬屋錦之介)はそれを知り、日本へ向かう。

 中村錦之助3本目の映画出演作で、当時大人気だったNHKの子供向け連続ラジオドラマの映画化(原作:北村寿夫/脚色:小川正)。錦之助は外見も声も少年っぽく本当に若い感じがする。
 原作が子供向けだけに、リアルさは無くおとぎ話っぽい雰囲気。三木滋人の撮影によるソフトな映像が、よりファンタジー的な雰囲気を作っている。出演者の中では、月形龍之介の絵に描いたような悪役っぷりが面白い。
 ただし、各編が1時間に満たない続き物なので、全3部作を観なければ評価はできないかも。なんせ、いきなり登場した大友柳太朗が「うわっはっはっは」と笑って終わるんだもの(笑)。(2003/03/24)



 今日は、中村錦之助主演の『新諸国物語 笛吹童子 第二部 妖術の闘争』と『第三部 満月城の凱歌』を観た。双方とも監督は萩原遼で、昭和二十九年(1954)の作品。

 第二部は、第一部のラストで赤柿玄蕃(月形龍之介)に殺されそうになっていた満月城の遺臣の娘・桔梗(田代百合子)を大江山の妖術使い霧の小次郎(大友柳太朗)が助け出す。実は、彼は生き別れになった妹を探すため若い娘をさらっていたのだ。その妹・胡蝶尼(高千穂ひづる)は黒髪山の魔法使い堤婆(千石規子)に育てられていた。

 『笛吹童子』シリーズ第二作。この編では、霧の小次郎が事実上の主人公で、彼と胡蝶尼の出生の秘密がテーマ。妖術や魔法を表現するチープな特撮や、登場する妖怪の扮装が面白い。ストーリーは、やはり第三部へ続くって感じで終わる。

 『第三部 満月城の凱歌』は、赤柿玄蕃(月形龍之介)に捕われていた萩丸(東千代之助)が逃れ、玄蕃を倒そうとする白鳥党の頭として迎えられる。面作り師となっていた菊丸は、呪いの髑髏の面を持った小次郎と出会う。

 シリーズ完結編。第二部ではほとんど登場しなかった萩丸と菊丸がようやく活躍。しかし、どうしても大友柳太朗と月形龍之介の強烈なキャラクターの陰に隠れて目立たない。原作ではどうだったのだろうか。
 また、呪いの髑髏の面というアイテムや小次郎・胡蝶尼の出生の秘密など話の要素が豊富だが、ちょっと話が駆け足で、もう少しじっくり見せてほしいと思った。もっとも、本来の対象である子供たちが観たらハラハラドキドキの展開なのかもしれないが。(2003/03/25)

次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊 じろちょうさんごくしだいはちぶかいどういちのあばれんぼう
監督 マキノ雅弘
公開年 1954年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『次郎長三国志 海道一の暴れん坊』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 保下田の久六を斬った凶状も解け、晴れて亡きお蝶と豚松の法要を済ませた次郎長一家。そんな中、次郎長(小堀明男)は石松(森繁久彌)に四国の金毘羅様の代参を頼む。石松は旅先で遊女の夕顔(川合玉江)に惚れ、身受山の鎌太郎(志村喬)の忠告によって彼女を身請けしようと決心したが、石松の命を狙うものがいた。

 村上元三原作のシリーズ第8弾。といっても、この作品の脚本はオリジナルらしい(脚本:小川信昭・沖原俊哉)。最も人気の高かった石松が主人公の作品。
 森繁と志村喬の熱演、石松と次郎長一家の友情や石松と小政との出会い、女性を花に例える表現と盆踊りのシーンの映像表現など見どころが多い。特に、花と面をかぶっての盆踊りの映像は美しい。ただ、森繁の石松は、熱演が過ぎてくどいように感じられるところもあるかな、と思った。(2002/11/23)

晩菊 ばんぎく
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『晩菊』を観た。昭和二十九年の作品。

 元芸者で現在は金貸しをしている中年女・倉橋きん(杉村春子)は、金を貯めることだけが生きがいで、元芸者仲間の小池たまえ(細川ちか子)や鈴木とみ(望月優子)に陰口を叩かれても気にしない。彼女たちそれぞれにとっての小事件が起こり、各々の生活に波風が立つかと思われたが…。

 最初の方は、中年女たちのトゲのある会話ばかりなので、40分ほどは忍耐が必要かも(笑)。しかし、中盤以降は話が動いてくる。といっても、大きな出来事があるわけではなく、“寂しい人々”がそれなりに生き抜いていく様子を淡々としかも克明に描いている
 映画では主演の少ない杉村春子だが、やはり上手い。共演者も見事。きんのもとを訪れる昔の男たちは、上原謙と見明凡太郎。とみの娘に有馬稲子。(2001/12/29)

噂の女 うわさのおんな
監督 溝口健二
公開年 1954年
評点[A]
感想
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溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954
溝口健二
大映作品集Vol.1
『お遊さま』
『雨月物語』
『祇園囃子』
『山椒大夫』
『噂の女』

 今日は、溝口健二監督の『噂の女』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 京都島原の遊郭の女主人(田中絹代)と、その商売に反発する娘(久我美子)の相克…って感じでしょうか。田中絹代が若い医者(大谷友右衛門のちの中村雀右衛門)を愛人にしていて、彼をめぐって母娘で争ったりして。
 なんつーか、久我美子は当時流行りのオードリー・ヘップバーン風のショートカットと黒いセーター。この流行を追ってしまう俗なところが溝口健二の可愛らしさといいますか…(笑)。
 これもあまり傑作とは言われていない。話がチト俗っぽいし、同年に『山椒大夫』と『近松物語』という超大傑作が作られちゃったんで、その谷間に埋もれた感もある。でも、田中絹代の演技に緩急があって“熱演”一辺倒ではない上手さを見せているし、島原遊郭の様子も生き生きと描写されていたと思う。溝口も遊んでたんだろう。(2000/04/26)

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