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昭和三十年(1955)

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修禅寺物語 しゅぜんじものがたり
監督 中村登
公開年 1955年
評点[A’]
感想  今日は、中村登監督の『修禅寺物語』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 時は鎌倉時代。伊豆の修禅寺近くに住む天下に名高い面作師(面打師)の夜叉王(坂東蓑助、のち八世坂東三津五郎)には、桂(淡島千景)と楓(岸恵子)の二人娘がいた。おとなしい楓に対して、気位の高い桂は京鎌倉に住む貴人のもとに召されるのを夢見ている。そこへ、執権・北条時政(東野英治郎)によって鎌倉を追われた二代将軍源頼家(高橋貞二)が修禅寺に移り住んできた。

 岡本綺堂による戯曲の一つの映画化(脚本:八住利雄)。平安時代を舞台にした大映の『羅生門』『雨月物語』『地獄門』などが海外で高く評価されたのに影響されたのか、この作品もカラーで登場人物が身に付ける美しい衣装が強調されている(これは鎌倉時代だが)。新歌舞伎とも呼ばれる舞台作を映画化したのは松竹らしいだろうか。
 桂の淡島千景と楓の岸恵子、容姿では姉妹が逆な方が似合うかな、と観始めたころは思ったが、観つづけているうちに、愚かしいほど出世を一途に望み逆に哀れにさえ見える桂には淡島千景が合っているような気がしてきた。坂東蓑助の老け演技も良いし、東野英治郎の見せる卑しさはいつもながら。高橋貞二は原作由来の難しい言葉を使った長台詞がちょっと危なっかしいところもあったが、その若さが見えるところがかえって役に合っているかも?
 原作は修禅寺一箇所だけを舞台としてあまり長いものではなかったが、映画では原作以前の鎌倉における北条時政や頼家の母・北条政子(夏木静江)らの策謀も描いて頼家追放の背景もわかるようにしている。キャラクターの描写も丁寧になっていて、華やかなものを望む桂や職人気質の夜叉王の性格がよりわかりやすくなっている。ただ、ラストが変えられているが、これは原作の方が無常を感じさせて良いと思った。
 売り物のカラー映像での衣装・伊藤熹朔の美術によるセット、共に良い(撮影:生方敏夫)。イーストマンカラーだが大映の『地獄門』よりは発色が渋め。惜しむらくは、現存版はやはり少し褪色しているように見えて傷が目立つ部分もあること。改善できないかしら。(2005/01/21)

続宮本武蔵 一乗寺の決闘 ぞくみやもとむさしいちじょうじのけっとう
監督 稲垣浩
公開年 1955年
評点[B]
感想  今日は、三船敏郎主演の『続宮本武蔵 一乗寺の決闘』を観た。監督は稲垣浩で、昭和三十年(1955)の作品。

 お通(八千草薫)に対する思いを振り捨てて剣の道を歩む決意をした宮本武蔵(三船敏郎)は、兵法(剣術)で名高い京都の吉岡家の当主・清十郎(平田昭彦)に戦いを挑む。その過程で、老僧日観(高堂国典)・本阿弥光悦(御橋公)・吉野太夫(木暮実千代)、そして好敵手となる佐々木小次郎(鶴田浩二)ら様々な人々と出会う。

 三船敏郎主演版『宮本武蔵』の2作目(劇化:北条秀司/脚本:若尾徳平・稲垣浩)。この作品は原作の中盤部分を詰め込んでいて、エピソードを省略したり合わせたり入れ替えたり色々工夫しているものの、あまりよく消化されていない感じがした。原作の美味しいところが無かったり、話が飛んでいるように感じられるところもあった。
 又八が堺左千夫に交替しているが、八千草薫のお通はやはり原作のイメージにピッタリ。鶴田浩二の佐々木小次郎は中村錦之助版の高倉健よりハマっているとおもう。しかし、「ぜんたい、私は誰でしょう?」と言ったときはちょっとウケてしまった。当人は真面目に言っているのだと思うが。(2003/08/19)

復讐の七仮面 ふくしゅうのななかめん
監督 松田定次
公開年 1955年
評点[B]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『復讐の七仮面』を観た。昭和三十年(1950)の作品で、監督は松田定次。

 ある夜、タクシー運転手に姿を変えていた私立探偵・多羅尾伴内(片岡千恵蔵)は、不審な男を乗せる。彼は、実は白龍会という犯罪組織の一員だった。しばらくして、その不審な男は消され、相互金融組合の副頭取の自宅が襲われ、五千万円の強盗殺人事件が発生し、元伯爵である金融組合の理事長(山村聡)は私財を提供すると声明したが、彼の邸宅は既に抵当に入れられていた。

 戦後、時代劇が作りづらくなっていた時期に始まった、千恵蔵主演の“多羅尾伴内”シリーズの第八作。片岡千恵蔵が私立探偵を演じて、様々な変装をするのが売り。主演俳優も監督も元々時代劇の専門家のためか、中盤まではテンポがゆっくりで時間が長く感ずる。さすがに、終盤はそれなりに盛り上がるが。
 千恵蔵の変装は顔の大きさと声でバレバレだというのは、突っ込んではいけないところなのだろう(笑)。しかし、さすがに彼独特の迫力があり、特に“気違いの元軍人”(原文ママ)は、テレビ放映は不可能かもしれないほど。珍妙な味があるので、機会があったら多羅尾伴内シリーズの他の作品も観てみたい。(2002/03/29)

下郎の首 げろうのくび
監督 伊藤大輔
公開年 1955年
評点[A]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『下郎の首』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 父(高田稔)の仇を討つため旅に出た結城新太郎(片山明彦)が病み、中間(ちゅうげん)の訥平(田崎潤)が大道芸をして糊口をしのいでいると、訥平を哀れんだ女お市(瑳峨三智子)が情けをかける。そのうち訥平は仇の男(小沢栄、のち小澤栄太郎)と偶然出会うが、意外な運命が訥平を待ち受ける。

 伊藤監督のサイレント時代の作品『下郎』を脚本からリメイクした作品だという。仇討ち否定、武士道批判の作品で、いわゆる“傾向映画”の系列に連なるものだと思うが、単なる社会派映画の枠を超えた力作。
 力感ある映像(撮影:平野好美)と各登場人物の個性がそれぞれよく描きこまれているため、田崎潤の熱演が空回りせず、他の登場人物も類型的ではなく生きている。特に、並の映画では薄っぺらになってしまうであろう新太郎のキャラクター造形が巧みに感じた。伊藤大輔監督の脚本家としての実力を見た感じ。お市は、江戸時代の女があんな行動に出るかちょっと疑問に思ったが、あの気性の激しさは嵯峨三智子自身の柄に合っていたかもしれない。ついでに、丹波哲郎がほんのチョイ役で出るのが面白い。
 大きく二ヶ所ある殺陣の場面も素晴らしい。時代劇の型ではないリアルな演出は黒澤映画もたじたじといったところで、あの『青春の殺人者』を思い出した。
 あまり語られることのない作品だが、非常な“力作”を観た気分になる傑作。(2003/09/28)

天下の若君漫遊記 てんかのわかぎみまんゆうき
監督 丸根賛太郎
公開年 1955年
評点[C]
感想  今日は、丸根賛太郎監督の『天下の若君漫遊記』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 仕官のツテも無い、その日暮らしの浪人・団九郎(千秋実)たちは、どことなく気品のある風来坊・長吉(明智十三郎)を松平忠直の遺児・長七郎に仕立てあげ、旅籠で飲み食いしまくる。団九郎たちが逃げたあとも長吉は泰然としてタダ働きをしたり人助けをしたりする。はたして彼はただの風来坊なのか……。旅籠を出ると、団九郎と再会。偶然のことから幕府転覆の陰謀に巻き込まれる。

 サブタイトルに「前後編」とついているように、コミカルな前編と活劇的な後編に分かれている。前半は、千秋実や旅籠の主人役の益田喜頓のとぼけた味が面白い。そのため、主人公であるはずの明智十三郎が目立たない。
 後半は殺陣の多い活劇だが、お約束的なありふれたストーリーで、その上かなりテンポが悪い。省略可能な描写が多すぎるような気がした。また、時々殺陣にコマ落としの動きが混じるように見えるのが、不自然。
 丸根賛太郎監督は一部で人気の高い監督なので期待して観たのだが、この作品はハズレだったようで少々残念。(2003/04/07)

紅顔の若武者 織田信長 こうがんのわかむしゃおだのぶなが
監督 河野寿一
公開年 1955年
評点[B]
感想  中村錦之助主演の『紅顔の若武者 織田信長』を観た。監督は河野寿一で、昭和三十年(1955)の作品。

 戦国時代、尾張の国の実力者である織田信秀(柳永二郎)の嫡子・信長(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は奇行を繰り返し、織田の親族や家臣たちは信秀に廃嫡を強く勧めていた。そんな中、美濃の国の斎藤道三(進藤英太郎)は尾張の国を狙って娘(高千穂ひづる)を信長に嫁がせ、さらに信長との会見を求める。

 山岡荘八の作品の映画化(脚本:結束信二)。題名通り、本当に若き日の信長を描いている。
 錦之助が演じているが、メイクがちょっと過剰に見えた。汚しすぎのような。また、力んで演技している感じで、台詞回しが怒鳴りすぎのようにも思えた。彼はどうしても気品が残るので、“うつけ者”を演ずるために頑張りすぎたのかもしれない。
 粗筋や描いている範囲は戦前の片岡千恵蔵主演の『風雲児信長』と似ているが、ダイナミックさが印象に残る千恵蔵版に比べると、錦之介版は信長と濃姫の関係などが細かく描写されている。斎藤道三の描写も多く、進藤英太郎の憎めない悪役像が良い。(2004/04/21)

新・平家物語 しんへいけものがたり
監督 溝口健二
公開年 1955年
評点[A’]
感想
Amazon
溝口健二 大映作品集Vol.2 1954-1956
溝口健二
大映作品集Vol.2
『近松物語』
『楊貴妃』
『新・平家物語』
『赤線地帯』
「時代を越える溝口健二」
(NHKドキュメンタリー長尺版)

 今日も溝口健二監督の『新・平家物語』を観たのであります!(←なぜ軍隊口調)これは溝口作品というよりも、市川雷蔵主演作品と言った方が通りが良いかも。レンタルビデオ屋でも溝口監督の所ではなく市川雷蔵のコーナーにあったし(笑)。いまだにRAIZO !とか言って人気あるからなぁ。

 昭和三十年(1955)の作品で、カラー2作目。溝口作品の中では評価は高くないけれども、例によって完全主義の時代考証で、なんかスゲー金かかってる感じ。カラー1作目の『楊貴妃』よりも豪華に見えたりして。少なくともNHK大河ドラマあたりよりは出来は良いかも(笑)。妙に絵面が綺麗だったし。
 ストーリー的に少々中途半端な感は否めないかな。エキストラを使った群衆シーンはあるけれども、合戦の場面は無し。溝口はアクションを撮れないから(笑)。ただ、吉川英治の『新・平家物語』を元にした映画はこれ一本ではなく何本か作る予定だったそうだが。

 平清盛を演ずる市川雷蔵が若いっすね。演技も若い(笑)。台詞を懸命に言っちゃってる感じで。まぁ、最初に会社側が鶴田浩二主演と言ってきたのを溝口が拒否して市川雷蔵を推したそうなので、その若さが欲しかったのかな。正直言うと市川雷蔵の映画は初めて観たのだけれども、もっとあとになると演技は上手くなっていったんでしょうね。しかし、この作品のメイクはマユゲが豪快すぎる(笑)。
 それと、平清盛の母親役の木暮実千代のオッパイが妙に気になった(爆)。当時、夏場はあんなに胸元の開く着物を着ていたのかしらん。 (2000/04/12)

ジャンケン娘 じゃんけんむすめ
監督 杉江敏男
公開年 1955年
評点[C]
感想
Amazon
ジャンケン娘
ジャンケン娘

 今日は、美空ひばり・江利チエミ・雪村いずみの“三人娘”主演の『ジャンケン娘』を観た。監督は杉江敏男で、昭和三十年(1955)の作品。

 阿佐見ルリ(美空ひばり)と千明由美(江利チエミ)は、修学旅行先の京都にあるルリの知り合いのお茶屋で、舞妓の雛菊(雪村いずみ)と知り合う。そのあと東京に来た雛菊から、彼女が酒の席で会って一目ぼれした東京の学生を探していることを聞いた二人は手助けするが、なかなか見つからず…。

 美空ひばりを中心として売り出された“三人娘”の映画。カラー映画で、オープニング・タイトルの画面から美空ひばりが黄・江利チエミが赤・雪村いずみが青という三原色のコスチュームで現れ、“総天然色映画”であることを強調しまくっている。全体に人の肌の色も黄色が濃く人工的で、カラーが強調された色調。
 そのカラー撮影をアピールするためか、冒頭では京都の神社仏閣や和服、その後も由美の芸術家である父の珍妙な部屋やルリの日本舞踊、そして遊園地のジェットコースターなど、鮮やかな映像を観客に見せることをテーマにしているのかと思えるほど、色が強調された映像が支離滅裂と思わせるほど続く。その分、雛菊やルリの父親のエピソードなどが断続的になっているようだ。
 “三人娘”のいずれかのファンなら、楽しめる作品なのかもしれない。それと、由美の父親役に小杉義男、ルリの父親役として高田稔と、戦前の大スターが顔を出しているのも見どころかも。(2002/06/05)

逢いたかったぜ あいたかったぜ
監督 小林桂三郎
公開年 1955年
評点[C]
感想  今日は小林桂三郎監督の『逢いたかったぜ』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 港町に流れてきた安藤(名和宏)は港を仕切るヤクザと揉め事を起こし、船員の花村(金子信雄)に助けられる。安藤は花村を兄貴と慕い、花村のおかげで職を得るが、運命は二人の間を引き裂く。

 『憧れのハワイ航路』などで昭和二十年代に一世を風靡した岡晴夫が映画と同題の主題歌を歌い、彼が主演の歌謡映画ということになっているが、実は時々歌うチョイ役に過ぎず、マドロス姿の金子信雄が実質上の主役として鉄拳を振るって活躍する、アクション映画。のちに悪役を演ずる金子信雄と名和宏が揃って主役と準主役を演ずるのも面白く、珍品と言えるかもしれない。
 内容は港町もののお約束通り。まぁ安心して観ることはできる。今観ると、殺陣にもう少しリアリティがあったらな、と思う。(2002/09/16)

唄祭り 江戸っ子金さん捕物帖 うたまつりえどっこきんさんとりものちょう
監督 冬島泰三
公開年 1955年
評点[C]
感想  今日はそれと美空ひばり主演の『唄祭り 江戸っ子金さん捕物帖』を観た。監督は冬島泰三で、昭和三十年(1955)の作品。

 江戸の天保年間の正月、市村座で新年公演中の役者が殺される。その後、女軽業師の春駒太夫(美空ひばり)の小屋の楽屋裏でも殺人事件が発生し、金さんこと遠山金四郎(若山富三郎)は巾着切りの銀二(川田晴久)を手下として謎を探る。

 歌と踊りが一杯のお正月向け映画。ただ、連続殺人事件の裏にある陰謀のシリアスな部分が暗くて歌と踊りの部分と水と油になっていて、アイドル映画としては中途半端に見えた。美空ひばりの登場部分も少ないし。
 長屋の大家役に柳家金語楼。金さんの婚約者ちぐさ役に瑳峨三智子。(2002/08/12)

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昭和三十年(1955)
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