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昭和三十一年(1956)

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赤線地帯 あかせんちたい
監督 溝口健二
公開年 1956年
評点[A]
感想
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溝口健二 大映作品集Vol.2 1954-1956
溝口健二
大映作品集Vol.2
『近松物語』
『楊貴妃』
『新・平家物語』
『赤線地帯』
「時代を越える溝口健二」
(NHKドキュメンタリー長尺版)

 溝口健二監督の遺作『赤線地帯』(1956年)を観る。いや〜なんつーか、辛口とゆいますか、男がこれ観たらフーゾクとか行く気が萎えるかも(笑)。この映画に対する評にあるように、確かに娼婦たちは多少類型化されている感じもするが、この切り方は紅灯の巷に親しんだ溝口ならではだろう。作品中くり返されているように、国会で売春防止法が審議されている中で斜陽を迎えつつある赤線地帯に捧げた彼なりの挽歌だろうか。
 京マチ子演ずるケバい娼婦役は、楊貴妃よりもハマっていた(笑)。元々派手な顔立ちだし。若い頃の若尾文子は綺麗やね。それにしても、昭和三十一年の日本の貧乏くさいこと。溝口健二が随分と昔に死んだことがわかる。(2000/02/09)

しゃぼん玉親爺 しゃぼんだまおやじ
監督 仲木繁夫
公開年 1956年
評点[C]
感想  仲木繁夫監督の『しゃぼん玉親爺』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 戦時中、南方で負傷した鶴亀二等兵(潮万太郎)は上官の松田少尉(川崎敬三)に助けられ、移住していた日本人の娘・京子(八潮悠子)の家に逃れた。石鹸会社の社長だった鶴亀は戦後、入社試験で松田を見つけてすぐ入社させる。その上、妻(清川玉枝)に強制されて通い始めたボディビルジムで京子と再会するが……。

 上映時間38分少々の短編。他の作品の添え物だったのだろうか。題名から想像できるように喜劇で、いかにもセットのジャングルから始まって、作中のギャグはちょっとベタ。展開も予定調和的で先が読めるが、川崎敬三の気真面目な雰囲気といかにも昔風の社長という役作りの潮万太郎を楽しむ小編か。恰幅の良い清川玉枝の存在感も強烈。(2004/11/19)

勝利をわが手に 港の乾杯(港の乾杯 勝利をわが手に) しょうりをわがてにみなとのかんぱい
監督 鈴木清太郎(清順)
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、鈴木清太郎(清順)監督の『勝利をわが手に 港の乾杯』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 木崎伸吉(三島耕)は、ある事件を期に船員を辞めていた。競馬の騎手として活躍中の弟・次郎(牧真介)は競馬場の観客席に現れる謎の美女あさ子(南寿美子)に夢中だったが、彼女には男(芦田伸介)の影があった。

 鈴木清順監督の監督デビュー作で、65分ほどのSP映画(脚本:中川順夫・浦山桐郎)。
 あの清順監督とはいえ、さすがに初めての作品では不慣れな点を隠せなかったのかと思ってしまうほど、ありきたりなストーリーに乗って類型的なキャラクターが平凡な演出で動かされる。ちょっと面白い映像がたまに現れるが(撮影:藤岡粂信)、全体に平板で習作といった感じの作品。
 出演者たちの演技も今ひとつで、主人公の三島耕は華もなくあまり魅力を感じられなかった。“友情出演”の河津清三郎が最後においしいところを持っていく。
 ただし、監督の第二作の『海の純情』はかなり暴走しているので、初回作では猫をかぶって会社側を安心させたのか……と深読みしたくなったりもする。あるいは逆に、一作目が不本意な出来だったので二作目に思い切って自分のやりたいことをぶつけたのだろうか。(2005/04/29)

おしどり囃子 おしどりばやし
監督 佐々木康
公開年 1956年
評点[B]
感想  で、今日は大川橋蔵と美空ひばり主演の『おしどり囃子』を観た。監督は佐々木康で、昭和三十一年(1956)の作品。

 問題を起こして師匠に破門され旅に出た宮神楽師の菊次(大川橋蔵)は、近所の料亭の一人娘おたね(美空ひばり)と喧嘩友達のような仲で、旗本・能見三之丞(明石潮)の庶子だった。おたねは、菊次の実父が詰め腹を切らされたことを知ると、菊次に知らせるため自分も旅立った。

 原作は村上元三(脚本:八尋不二)。橋蔵&ひばりコンビの時代劇映画の一作。筋は仇討ち話で、完全に先が読める……というか、お約束のストーリーの上に乗っかって安心してアイドル俳優&歌手を観るための作品だと思うが、途中からロードムービー風になるのはちょっと面白い。(2002/12/12)

怨霊佐倉大騒動 おんりょうさくらおおそうどう
監督 渡辺邦男
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、渡辺邦男監督の『怨霊佐倉大騒動』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 江戸の初期、四代将軍の頃。佐倉の城主・堀田上野介正信(中山昭二)は領民に重税を科していた。さらに奸臣たちの不正によって民百姓が日々の暮らしにも困るようになると名主たちは直訴を考え、木内宗五郎(嵐寛寿郎)がその代表となる。

 歌舞伎などでも知られている『佐倉義民伝』の映画化。佐倉惣五郎(宗五郎)は江戸時代の“義民 ”の筆頭でかなり伝説化されていて、この作品の大筋はおおむね一般に流布している物語に拠っている。
 ただし、「甚兵衛渡し」や「子別れ」そして「駕籠訴」などおなじみの場面はあるものの、作品の雰囲気は様式的ではなくリアルな農民一揆物語になっていて、途中までは題名の怪談的な要素は皆無で、至極まっとうな堂々たる時代劇である。
 アラカン以下の出演者たちは全体に力が入った“熱演”だが、それが緊迫感を生み出し、渡し守の甚兵衛(横山運平)や妻(花井蘭子)子とのエピソードは胸を打つ。大名側にも良心的な家臣がいるのも好ましい。
 しかし、終盤に題名どおり幽霊話になると、いささかずっこける(笑)。昭和三十年に大蔵貢が新東宝の社長になって作品がエロ・グロ・怪談の類が中心になるまでの過渡期の作品という感じ。同時期の中川信夫監督の『怪異宇都宮釣天井』とちょっと似た雰囲気だ。今から観ると、終盤を普通に作っていれば、より佳作になっていたかもしれないので残念。

 しかし、伝説を基にしたほとんど創作のエピソードに基づく怪談映画の方が、のちにリアリズムで作られた『郡上一揆』よりも胸に迫ってくるものがあり、時にはこの『怨霊佐倉大騒動』の方がよりリアルに見える部分さえあるというのは、大変に不思議だ。(2005/09/14)

海の純情 うみのじゅんじょう
監督 鈴木清太郎(清順)
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、鈴木清太郎(鈴木清順)監督の『海の純情』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 捕鯨船の船長で砲手でもある織田栄三(小林重四郎)は腕が衰え、引退を考え始めた。後継者に目されている歌が大好きな若手船員の八郎(春日八郎)を芸者(明美京子)やらバーの女(小田切みき)や水産会社の部長の娘(高友子)が追いかけ回すが、八郎は船長の一人娘(高田敏江)が気になって……。

 鈴木監督のデビュー第2作目の作品で、SPと呼ばれる48分強の短編(脚本:田辺朝巳・真弓典正)。
 春日八郎主演の歌謡映画で、この手の作品では定番のラブストーリーだが、一筋縄で行かない“ひねり”がたっぷりの作品。わざとらしいドタバタギャグが満載で、八郎を追いかける女たちも皆イカレていて、船長の娘もちょっと変。いい雰囲気になったと思ったら間を外す展開になり、“歌謡映画”を茶化しているようだ。オープニングタイトルの部分やラストシーンではアニメ合成まで用いていて、もうやりたい放題って感じ。
 二作目なのに、ストーリーではなく各シーンの面白さを重視する、まさに鈴木清順作品になっている。肌に合わない人にはキツイのかもしれないが、テンポが良くって個人的にはあっという間に終わった作品だった。実際、上映時間は短いが。(2005/03/06)

逆襲獄門砦 ぎゃくしゅうごくもんとりで
監督 内田吐夢
公開年 1956年
評点[B]
感想  今日は、内田吐夢監督の『逆襲獄門砦』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 まさに幕末、薩長と幕府との対決が始まろうとする時期、ある天領(幕府直轄領)に赴任してきた代官・脇郡太夫(月形龍之介)は、幕府の財政を助けるため重税を課し、さらに江戸へ向かう街道沿いにいくつもの砦を作るため領民に強制労働を課す。重い負担に耐えかねた猟師の照蔵(片岡千恵蔵)ら民衆は、ついに立ち上がる。

 なんと、幕末の一時期に日本の片隅で共産主義革命がおこなわれた! という衝撃の事実を知ることができる作品(笑)。ストーリーの方は「ありえねえ」の連続。対して、映像の方は全編にわたって非常に力強い印象を与えてくれ、妙なミスマッチ感もある。
 ただし、郡太夫が照蔵父子に試練を与えるシーンには絶句。あのパロディとは……。また、そのシーンのために郡太夫は単なる卑劣な悪漢という印象になってしまっているが、私利私欲ではなく幕府大事という確固たる信念のもとに圧制を加えていた、とした方が民衆蜂起を感動的に描けたのではないだろうか。
 戦後しばらく中華人民共和国に抑留されていた内田吐夢監督が、一時期とはいえ思想が真っ赤になっていたことを知ることのできる作品。(2003/05/16)

鬼火 おにび
監督 千葉泰樹
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、千葉泰樹監督の『鬼火』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 ガス会社の集金人・忠七(加東大介)は、炎天下に家々を回り頭を下げて金を受け取らねばならない自分の仕事に飽いていた。小心者の彼だったが、ガス代を長らく滞納しているあばら家の人妻(津島恵子)を見ると、邪心を抱く。

 吉屋信子原作の映画で46分強の短編映画(脚本:菊島隆三)。
 主人公の忠七が善良さと小心さと狡猾さと欲望と、全て併せ持った小市民であることが冒頭からの数場面でわかる導入部。原作がそうなのかもしれないが、巧みな出だしの展開だと思う。場末の町の貧しさと暑苦しさの描写も生々しい。
 尺が短いため一つのエピソードだけで構成されていてあっさりした印象だけれども、小市民がふとした悪意と欲望によって思いがけない結果を引き起こす過程がリアルに描かれていて、ちょっと怖いものを感じさせられる一本。(2005/07/26)

狂った果実 くるったかじつ
監督 中平康
公開年 1956年
評点[A’]
感想
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狂った果実
狂った果実

 今日、『狂った果実』を観た。石原裕次郎主演で中平康監督。昭和三十一年(1956)の作品。

 鎌倉に住む資産家の息子の夏久(石原裕次郎)は悪友と自堕落に遊び回っていた。純情な弟の春次(津川雅彦)は兄たちに半ば反発し半ばあこがれている。ある時、春次が偶然知り合った美女・恵梨(北原三枝)とつきあい始めたので、夏久たちは驚く。だが、夏久と恵梨は互いに興味を示し始め…。

 “太陽族映画”の第二作目で、第一作では脇だった石原裕次郎の初主演作。若い頃の裕ちゃんは童顔で、長身とのアンバランスさがウケたのかな。北原三枝は美しい。
 弟を演じた津川雅彦が上手い。ラストシーンの表情とか。対する裕次郎の演技自体は…。津川雅彦は二世役者であるためか、お坊ちゃんらしさがよく出ていた。しかし、数十年後に東条英機を演じたり大河ドラマでチョンマゲコントのような怪演をしようとは…(笑)。夏久の友人を演じた岡田真澄も良かった。
 太陽族映画ってどんなもんだろう、と思っていたが、予想よりは面白かった。もちろん時代を感じさせる部分はあるし、当時の観客が受けた衝撃を共有することはできないが、意外と乾いた描写が古びていない。
 にしても、この程度でも当時は社会の敵あつかいされたのね…。(2000/09/27)

洲崎パラダイス 赤信号 すざきぱらだいすあかしんごう
監督 川島雄三
公開年 1956年
評点[A]
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洲崎パラダイス 赤信号
洲崎パラダイス
赤信号

 今日、川島雄三監督の『洲崎パラダイス 赤信号』を観たです。昭和三十一年(1956)年の作品で、コント赤信号主演(嘘)…ではなくて、三橋達也&新珠三千代主演。『幕末太陽傳』で川島監督に興味を惹かれて、もう一つの代表作も借りちゃった。

 ストーリーは、でかい図体して甲斐性の無い男と奔放な女がくっついたり離れたりで、その他いくつかのカップルや夫婦の離別を描く…という感じで、大した筋ではないけれども、売春防止法直前の特飲街の頽廃的な雰囲気がよく再現されていたと思うっす。でも、飲み屋のオバチャンがあんな目に遭うのはかわいそうすぎるな〜(謎)。
 特筆すべきストーリーではないのに結構面白かったのは、役者がみんな上手いっすね。それに、テンポがよかった。やはり演出の腕かなぁ。しかし日本映画って、なぜ貧乏とか水商売とか娼婦とかを描くのが上手いんでしょう(笑)。そういえば、溝口健二の『赤線地帯』も同じ年の作品だな。(2000/04/22)

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