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昭和三十一年(1956)

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髑髏銭 どくろせん
監督 松田定次
公開年 1956年
評点[B]
感想
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髑髏銭
髑髏銭

 今日は、市川右太衛門主演の『髑髏銭』を観た。監督は松田定次で、昭和三十一年(1956)の作品。

 時は五代将軍綱吉の頃、江戸の町では銭酸漿(月形龍之介)なる怪人が“髑髏銭”という謎の古銭を手に入れようとする人々を皆殺しにしていた。たまたま髑髏銭に関わって殺されそうになったお小夜(長谷川裕美子)を助けた浪人・神奈三四郎(市川右太衛門)は、将軍の寵臣・柳沢保明(宇佐美諄)や豪商・銅座瀧ヱ門(進藤英太郎)も髑髏銭をめぐって暗闘しているのを知る。

 娯楽時代劇でお約束の、お宝アイテムの争奪戦だが、白黒画面を活かした不気味さが強調された絵作りが面白い。銭酸漿のコスチュームも現代人の目で冷静に見ると笑っちゃうデザインだが、月形龍之介のおかげで怖い悪役になっている。得がたい俳優だ。
 三四郎の正体は途中で見当がついてしまうが、オチは意外というかなんというか、ちょっと「え?」という感じがした。今観てもまずまず楽しめる作品で、戦前に嵐寛寿郎主演、この右太衛門版のあとにも里見浩太郎主演で映画化されているらしい(原作:角田喜久雄)。(20002/09/30)

好人物の夫婦 こうじんぶつのふうふ
監督 千葉泰樹
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、千葉泰樹監督の『好人物の夫婦』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 鎌倉に住む日本画家(池部良)とその妻(津島恵子)。妻の親代わりだった祖母が病んだので大阪の実家にしばらく帰ることになり、妻は留守中の夫の身持ちを心配する。夫もそのうち、若い女中(青山京子)との二人暮しに退屈してくるが……。

 志賀直哉の短編小説の映画化で、ちょうど50分ほどの短編(脚本:八住利雄)。
 冒頭から、絵に描いたような美男美女夫婦の妻の方が「嫌なこと(浮気)なさっちゃ嫌よ」とか言い出して、こりゃ困ったなと思っていたら、もう「御馳走様」としか言いようのない展開を見せられて、いささか当惑つかまつり候(笑)。
 個人的に小説はあまり読まず、特に日本的私小説というのは苦手なのだが、やはり志賀直哉の世界は私には高尚過ぎるような。夫婦の“機微”というものを読み取るべきなのだろうけど。脚本は原作 に色々脚色を加えているが……。(2005/08/02)

狙われた男 ねらわれたおとこ
監督 中平康
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、中平康監督の『狙われた男』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 銀座の商店街で殺人事件が発生する。バーのマダム牧子(南寿美子)の弟・吉夫(牧真介)には前科があったので疑われてしまい、彼は自ら真犯人を探そうとする。

 石原裕次郎主演の『狂った果実』が第一作とされている中平監督の、真の初監督作。完成後お蔵入りになり、公開は『狂った果実』のあとになったという珍品。
 いざ観てみると、お蔵入りになってしまったのもうなづけるような……。後年の中平監督のキザなほど洒落た演出や絵作りはほとんど無く、ストーリーも平板で退屈(脚本:新藤兼人)。1時間枠のテレビドラマで充分といった感じ。モノクロの映像そのものは美しいが……。天才肌の監督の習作、と考えれば良いのだろうか。(2002/09/14)

夜の河 よるのかわ
監督 吉村公三郎
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、吉村公三郎監督の『夜の河』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 京都の染物屋の長女みつ(山本富士子)は卓越したろうけつ染の技術で高名だった。彼女は構想を練りに訪れた奈良で大学教授・竹村(上原謙)と出会い、互いに惹かれあう。しかし、二人の間には様々なものが立ちはだかる。

 山本富士子主演の文芸路線映画の一本(原作:沢野久雄/脚色:田中澄江)。宮川一夫が撮影を担当した初期のカラー映画としても有名。
 山本富士子が和服を着た京女ときたら、まさにハマリ役で、上原謙の中年の大学教授も悪くない。カラーを強調した染物や京の宿の風景なども美しい。また、今から観ると控えめな二人も好ましいし、ストーリーも様々なエピソードや登場人物を積み重ねてできている。
 そこで、山本富士子が大変に美しく魅力的な女性と言うことはよくわかるのだが、もう少し恋愛していることを示す感情の動きを表現できていれば良かったと思う。京女らしい一筋縄では行かないところは少し見せるのだけれども。演出の問題なのか演技の問題なのか……。
 映像的には美しいのだけど、大映作品にしては褪色気味で音も悪いのが惜しい。放映されたのはたまたま状態の悪いプリントだったのだろうか。(2003/05/27)

怪異宇都宮釣天井 かいいうつのみやつりてんじょう
監督 中川信夫
公開年 1956年
評点[A’]
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怪異宇都宮釣天井
怪異宇都宮釣天井

 今日は、中川信夫監督の『怪異宇都宮釣天井』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 将軍家光(沼田曜一)の日光参詣が近い日、宇都宮十五万石の城下に隠密・利根柳太郎(小笠原竜三郎)が潜入した。彼はすぐ、城主・本田上野介(江見渉)の家臣・河村靱負(江川宇礼雄)が豪商・鍵屋(三島雅夫)と組んで腕利きの大工を集めて怪しげな細工をしていることを嗅ぎつけた。そんな彼を謎の覆面男・黒住典膳(丹波哲郎)が襲う。

 題名通り“宇都宮吊天井”を題材にした作品(原作:伍堂徹二/脚本:武部弘道・仲津勝義)。
 序盤から中盤までは題名とは異なり“怪異”の雰囲気はあまりなく、オーソドックスな時代劇の感じで進む。主演の小笠原竜三郎にはあまり華がなく、全体的に地味な雰囲気だが、いわくありげな山娘(筑紫あけみ)や謎の覆面男、そして吊天井の謎解きなどが絡みテンポ良く進んで飽きさせない、サスペンス時代劇といった感じ。中川監督の演出の巧みさを感じた。
 終盤には題名通り“怪異”の要素が加わってスパイスになる。上映時間は80分少々で短い作品だが、よくまとまった時代劇の佳作といっていいかもしれない。吊天井の仕掛けも、まずまず迫力がある。
 丹波センセイは出番が多いがほとんど顔を隠しているので、ちょっと損な役かも?(笑)(2004/09/07)

日本橋 にほんばし
監督 市川崑
公開年 1956年
評点[B]
感想
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日本橋
日本橋

 今日は、市川崑監督の『日本橋』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 日本橋の芸者お孝(淡島千景)は、清葉(山本富士子)と張り合って彼女の鼻を明かすことならなんでもやり、清葉にふられた医学士・葛木晋三(品川隆二)を情夫にする。しかし、かつて同じく清葉にふられてお孝に拾われ、お孝に入れあげて破産した五十嵐伝吉(柳永二郎)の存在が彼らに影を落とす。

 泉鏡花の原作の映画化(脚本:和田夏十)で、当然の如く明治もの。シャープな絵作りは美しいが、衣笠貞之助作品のような絢爛さには欠けているような感がある。時々用いられる市川崑流の黒バックや
顔のアップも、明治ものの中では浮いているような。全体に淡々とした演出という感じで、悪い出来ではないのだが、泉鏡花ものは溝口健二か衣笠貞之助で観たい気がする(溝口健二にはサイレント時代の作品に『日本橋』があるが現存せず)。
 出演者の中では、淡島千景の表情が良い。表情豊かで、ラスト近くは非常に美しく感じられた。船越英二の演ずるお人よしの警官も良い。淡島千景の妹分の芸者として若尾文子が出演。(2003/02/15)

 あらし
監督 稲垣浩
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、笠智衆主演の『嵐』を観た。監督は稲垣浩で、昭和三十一年(1956)の作品。

 大正時代、フランスから帰国した水沢信次(笠智衆)は、妻を亡くしてから親戚などに預けていた四人の子供たちを手元に引き取った。大学教授の職を辞し、親しい出版社の社長(加東大介)の勧めで『フランス文学大事典』の編纂に取り掛かったが、婆や(田中絹代)を雇っても仕事と幼い子供の育児の両立は難しく、嵐のような毎日だった。しかし、そんな子供たちもやがて大きくなっていく。

 島崎藤村の原作の映画化(脚本:菊島隆三)。子供の登場する作品が得意な稲垣監督らしく、主人公の育児の様子が自然な演出で活き活きと描かれる。笠智衆は自伝で稲垣監督を好きな映画監督として挙げているが、実際、生真面目さと無骨さ・頑固さを併せ持った持ち味を伸び伸びと生かして演じているように見える。
 親子兄弟の間の小事件と育児が終わりに近づいたときに親が感じる寂寞というのは、小津映画を彷彿とさせるが、冷え冷えとした寂しさを感じさせる小津作品とは異なり、家族愛と子供を育て上げた満足感が強調されていて、基調は明るい。ラストシーン近くの演劇的な長台詞も笠智衆の口から聞くと、映像とも相まって爽やかに感じた。
 飯村正の撮影は、狭い日本家屋の中での生活をよくとらえていて、ラストシーンは強い印象を残す。特撮だと思うが。音声が痩せ気味でちょっと聞き取りづらいのが残念。(2004/05/08)

婚約指輪 えんげえじりんぐ
監督 松林宗恵
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、石原慎太郎原作・主演の『婚約指輪(エンゲージリング)』を観た。監督は松林宗恵で、昭和三十一年(1956)の作品。

 裕福な家庭の息子の河口都喜夫(石原慎太郎)は、幼なじみで父の取引先の経営者の子でもある藤井育子(青山京子)との結婚を勧められ、なんとなく承知して婚約指輪を買いに行く。しかし、宝石店の次に寄ったデパートに置き忘れてしまったことがきっかけで、デパート店員の松宮節子(藤井育子)と知り合って……。

 現都知事の石原慎太郎の原作で(脚本:石原慎太郎・若尾徳平)、主演2作目だという。主演作に先立って、弟の裕次郎主演の作品の何作かにチョイ役で出演していたこともあるらしい。
 若い頃はこの作品のキャラクター設定通りの坊っちゃん面だったんだな。今でも童顔というか年齢よりは若く見えるが。演技は上手いというほどではないがド下手でもない。さすがに本格的な映画ではなく、52分ほどのSP作品だが。
 演技は別として、作品自体は邦画離れした“ウェルメイド”なコメディを目指したらしいが、今の目で観てしまうと、なんだか石坂洋次郎作品のようなストーリー展開は予想がついてしまうし、気が利いているつもりであろう台詞(会話)も平凡。当時の新進気鋭作家の作品にしては凡庸だと思う。また演出も、キャラクターの感情をすぐに顔に出させてそれをアップで撮ったりして説明的過ぎるように感じた。
 都喜夫の悪友に宝田明、父親に中村伸郎、母親に村瀬幸子、祖母として三好栄子が出演している。(2005/07/02)

朱鞘罷り通る しゅざやまかりとおる
監督 河野寿一
公開年 1956年
評点[B]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『朱鞘罷り通る』を観た。監督は河野寿一で、昭和三十一年(1956)の作品。

 無頼の旗本・此村大吉(市川右太衛門)は、大人気の水芸の太夫・花沢小えん(花柳小菊)を情婦にしていたが、小えんに執心だった大身の旗本・松平帯刀(新藤英太郎)に一杯食わされる。一方、女性問題で人気が落ちている歌舞伎役者の中村仲蔵(大川橋蔵)は、『仮名手本忠臣蔵』で損な役の斧定九郎役を回されて困惑していた。

 あの山中貞雄の原作を、多くの山中作品でシナリオを担当した三村伸太郎が脚本化。
 入り組んだプロットと、主人公が旗本でありながら武士の世界ではなく江戸の街が舞台であるのは山中貞雄らしさを感じさせた。中村仲蔵が『忠臣蔵』の定九郎を工夫して演じた実話を題材の一つにしているのもユニーク。ただし、右太衛門はいかにも殿様芝居だし(実際旗本だが)、女性キャラの演技も女臭すぎる感じがするし、山中貞雄が監督した作品とはかなり印象が異なる。ちょっと大味な印象。
 しかし、此村が仲蔵に見せる心意気は爽やかで、ラスト近くの活躍は右太衛門ならではの豪快さ。観賞後の後味は悪くない。(2004/05/16)

流れる ながれる
監督 成瀬巳喜男
公開年 1956年
評点[超A]
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 2
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 2
『山の音』
『流れる』
『女が階段を上がる時』
『放浪記』
『乱れ雲』
「特典ディスク」

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流れる
流れる

 今日は、成瀬巳喜男監督の『流れる』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 柳橋の芸者・つた奴(山田五十鈴)が持っている芸者置屋「つたの屋」は経営が傾きつつあった。そこに集う様々な人間たちの群像を、新たに住み込みの家政婦としてやってきた梨花(田中絹代)の視点で描く。原作は幸田文(脚本:田中澄江・井手俊郎)。

 山田五十鈴と田中絹代以外にも、料亭「水野」の女将・お浜(栗島すみ子)、つた奴の娘・勝代(高峰秀子)、つたの屋の芸妓・染香(杉村春子)、同・なな子(岡田茉莉子)など、大物女優が総出演している。特に、サイレント時代の大女優で戦前に引退していた栗島すみ子は特別出演で、他の女優たちはもちろん成瀬監督よりも先輩であるため、撮影中に監督を「巳喜ちゃん」と呼んでいたという話がある。
 昭和三十年代初頭、既に衰えつつあった花柳界を多くの女優たちの個性を活かして描ききっている。ミスキャストは一人も無く、当時の映画界の層の厚さを知ることができる。溝口賢二監督の『祇園の姉妹』から20年を経て、生活に疲れた様子を見せながらも色香を残している中年の芸者を演じた山田五十鈴がハマリ役だし、軽薄な染香の杉村春子も面白い。もちろん、玄人の世界に飛び込んだ素人のおばさんを演じた田中絹代も見事。
 どこかで「芸者の話なのに“お座敷”のシーンは全く出てこない」と指摘されているのを読んだが、その通りだった。梨花がやってきてすぐに、つた奴が「梨花さんっての呼びにくいから、お春さんにするわ」と言うのは笑った。脈絡ゼロ(笑)。
 原作も良いのだろうが、それを混乱することなく映像化した成瀬巳喜男監督の演出の手腕には感服いたしました。今では姿を消した、本当の大人向けの映画という感じがする。(2001/07/08)

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