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昭和三十二年(1952)

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蜘蛛巣城 くものすじょう
監督 黒澤明
公開年 1957年
評点[B]
感想
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蜘蛛巣城
蜘蛛巣城
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 1

 今日は、黒澤明の『蜘蛛巣城』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 戦国時代、蜘蛛巣城主・都築国春(佐々木孝丸)の重臣・鷲津武時(三船敏郎)は、森で出会った物の怪(浪花千栄子 )の予言を盲信し、自らの運命を狂わせていく。

 西洋の古典好き(?)の黒澤監督がシェークスピアの『マクベス』を大胆に翻案した作品(脚本:小国英雄・橋本忍・菊島隆三・黒澤明)。世界で最良のシェークスピア映画とも言われているらしい。
 古典の映画化のためか、三十年代頃までの黒澤作品にしては熱を感じず、様式美が勝っているように見えた。シェークスピア作品の膨大な台詞を巧みに刈り込んで日本映画として成り立たせているのは見事だが、世評が高いだけに、もう少し傑出したものがあることを期待してしまった。私には少々高尚すぎるのかもしれない。ただ、妄執の権化のような鷲津の妻・浅茅を演じた山田五十鈴の狂気の演技と、矢で射すくめられる鷲津の最期のシーンの三船敏郎の演技は凄い。(2002/08/29)

らくだの馬さん らくだのうまさん
監督 石原均
公開年 1957年
評点[C]
感想  今日は、エノケン主演の『らくだの馬さん』を観た。監督は石原均で、昭和三十二年(1957)の作品。

 屑屋の久六(榎本健一)は歌好きで明るいのがとりえだが、ならず者の馬(中村是好)に付きまとわれるようになって大弱り。馬がフグにあたって死んでホッとしたのもつかの間、今度は馬の兄貴分だという半次(花沢徳衛)が馬の死体を大家(杉狂児)のところに担ぎこんで“かんかんのう”を踊らせるのにつきあえ、と強要されて仰天。

 古典落語の『らくだ』を基にしたエノケン劇団の演目の映画化(脚本:舟橋和郎)。昭和二十五年にもエノケン主演で映画化されていたらしい。
 あらすじだけを見ると死人にかんかんのうを踊らせるという陰惨な内容なので、さてどう映像化するかと思って観た。やはり映像で観ると嫌な感じが先に立ってしまうし、馬も半次も本当にやくざ者にしか見えないので、観ていてあまり愉快な気分になれない。演者と空気を共有する舞台演劇と映画との違いの難しさだろう。
 どうも全体に作りがリアル過ぎるようなので、エノケンだけコミカルな演技をしたり歌を唄ったりしているが、久六以外の馬と半次などももっとユーモラスにしても良かったのではないだろうか。『らくだ』に『芝浜』の要素を付け加えているのもちょっと不自然。

 配役を調べたら、久六の子供の一人を藤田叔子が演じているのを見つけた。『一休さん』などで有名なベテラン声優だが、子役出身だったのか。(2005/04/04)

とんちんかん八百八町 とんちんかんはっぴゃくやちょう
監督 石原均
公開年 1957年
評点[B]
感想  今日は、エノケン主演の『とんちんかん八百八町』を観た。監督は石原均で、昭和三十二年(1957)の作品。

 有名な半七の孫にあたる岡っ引の伴七(榎本健一)は怪盗紫頭巾を捕らえて鼻高々。しかし、紫頭巾が狙っていることを示す血染めの矢が大店〔おおだな〕の三田屋の軒先に刺さっていたと聞き、さっそく三田屋に泊り込む。しばらくして伴七は中番頭の定吉(益田キートン)を容疑者として捕らえたが……。

 上映時間59分ほどの短編(原作・脚本:舟橋和郎)。戦前からお得意の捕物帖ものだが、この作品では子役の金太(泗水成一)というキャラクターの活躍が目立って、エノケンは食われているというほどではないものの活躍ぶりは昔の作品ほどではない。どうも脱疽で右足指を切除したあとの作品であったようで、捕物帖に付き物の “追っかけ”があまり出来ない状態だったようだ。動きのある捕物シーンも冒頭にあっただけだった。
 脚本も演出もそつなくまとまっているが、戦前作と比べてしまうとちょっと寂しいかな……という感じがする。ただし、捕物シーンをシルエットで処理したりしている部分など工夫されていて面白い。(2006/04/09)

風雲急なり大阪城 真田十勇士総進軍 ふううんきゅうなりおおさかじょうさなだじゅうゆうしそうしんぐん
監督 中川信夫
公開年 1957年
評点[C]
感想  今日は、中川信夫監督の『風雲急なり大阪城 真田十勇士総進軍』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 関が原の合戦の後、紀州の九度山に蟄居していた真田幸村(田崎潤)は大坂城に入ることを決意し、全国の豊臣恩顧の大名に檄を飛ばした。使者として発った猿飛佐助(天城竜太郎)・霧隠才蔵(小笠原竜三郎)・三好清海入道(舟橋元)らは、徳川家康(石山竜次)の策謀と戦う。

 オープニングから『荒城の月』のメロディで始まったり劇中で春の景色でもないのに『さくら』が流れたりして、音楽の使い方が独特な作品(音楽: 佐野日出男)。ちょっと違和感がなくもない。
 忍術映画らしくトリック撮影が多用されているが(撮影:西垣六郎)、リアル志向ではなく猿飛佐助などの念力で敵の動きが早くなったり遅くなったり、果ては逆回しになったりする。序盤は真田十勇士たち同士のコントみたいのがあったりするので、コミカル路線を狙ったのかもしれないが空回り気味で、成功しているかどうか……(脚本:仲津勝義・武部弘道)。
 今の目で観ると、若き日の丹波哲郎が悪役、それもちょっと情けないキャラを演じているのが面白い。(2005/09/27)

大阪物語 おおさかものがたり
監督 吉村公三郎
公開年 1957年
評点[B]
感想
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大阪物語
大阪物語

 昨日は、吉村公三郎監督の『大阪物語』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 近江の百姓・仁兵衛(中村鴈治郎)一家は、年貢を払えずに大阪へ夜逃げ。一家心中さえ考えたが、大名の蔵屋敷の周りに落ちている米を掃き集めて売ることを思いつく。10年経って茶屋兼両替屋の立派な店を構えたが、共に苦労してきた妻(浪花千栄子)・息子(林成年)・娘(香川京子)の顰蹙も顧みず、仁兵衛の吝嗇の度は増す一方で……。

 昭和三十一年に亡くなった溝口健二が撮る予定だった作品。溝口健二が“原作”名義でクレジットされている。原案は井原西鶴のいくつかの作品(脚本:依田義賢)。
 溝口健二は喜劇として構想していて、実際に音楽や台詞など喜劇的なものもあり、作中の各エピソードも小話のような面白いものもある。ただ、もう少し雁治郎のユーモラスな味を生かせなかったものだろうか、という感じがする。特に終盤が暗すぎるような。
 仁兵衛の娘の許婚で息子に遊びを教える他家の放蕩息子役を勝新太郎が演じていて、これがとても良い。さすがに三味線や唄はプロだ。(2003/09/07)

朱雀門 すざくもん
監督 森一生
公開年 1957年
評点[C]
感想  今日は、 森一生監督の『朱雀門』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 幕末、孝明天皇(夏目俊二)の妹に当たる皇女和宮(若尾文子)は有栖川熾仁親王(市川雷蔵)と婚約していたが、時の将軍家から和宮降嫁の願いが出される。激しい運命に翻弄される二人と和宮の侍女・夕秀(山本富士子)。

 原作は川口松太郎の『皇女和の宮』(脚本:八尋不二)。幕末の悲劇のヒロインとして有名な和宮の物語。
 宮川一夫が撮影を担当していることもあって、豪華なセットや衣装の映像は非常に美しい。『羅生門』『地獄門』に続いて外国映画際のグランプリを狙っただけのことはある。しかし、悲恋物語の割りには最初から最後まで淡々と進んでいく印象。演出のためか、やんごとなき身分の人々を演ずるため出演者が固くなったのか、情熱のほとばしりがあまり感じられない。ただ、山本富士子に迫られて雷蔵タジタジの図、という場面は面白かったが(笑)。
 若尾文子は可愛いけれども、和宮と夕秀は俳優が逆の方がイメージに合うような……。(2003/03/27)

浪人街 ろうにんがい
監督 マキノ雅弘
公開年 1957年
評点[A’]
感想  マキノ雅弘監督の『浪人街』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 寺の門前町にフラリとやって来た荒牧源内(近衛十四郎)。そこは母衣権兵衛(藤田進)を頭とする浪人たちが仕切っていた。お調子者の赤牛弥五右衛門(河津清三郎)や、美しい妹と2人暮らしで昔の主家への帰参を願っている土井孫八郎(北上弥太郎)らとの交流。そして、旗本の兄弟(石黒達也・龍崎一郎)との諍(いさか)いから、旗本と素浪人たちは、全面対決へ…。
 これは昭和三〜四年(1928-1929)に作られたサイレント版『浪人街』(断片のみ現存)のリメイク。マキノ雅弘作品を観るのは初めてだが、刀をブン回すようなダイナミックな殺陣には驚いた。夜の斬り合いで刀と刀がうち合わされると火花が出ちゃうし(笑)。宝刀探しのエピソードで少しダレるが、全体としてよくまとまった娯楽作品。荒牧のなじみの湯女の小芳を演じた高峰三枝子が色っぽい。(2000/09/15)

柳生武芸帳 やぎゅうぶげいちょう
監督 稲垣浩
公開年 1957年
評点[C]
感想  今日は、稲垣浩監督の『柳生武芸帳』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 天下を左右する重大な秘密が書かれているという“柳生武芸帳”をめぐり、柳生但馬守(大河内伝次郎)を筆頭とする新陰流の柳生家、彼らを追い落とそうとする陰流の山田浮月斎(東野英治郎)に命ぜられた忍者・霞の多三郎(三船敏郎)と霞の千四郎(鶴田浩二)兄弟、そして柳生武芸帳の一巻を偶然手に入れた龍造寺家の遺臣たちが三つ巴の戦いを繰り広げる。

 五味康祐の時代小説を原作(脚本:稲垣浩・木村武)を三船敏郎・鶴田浩二などのスターによって映画化した作品。各出演者の見せ場を作るためか、三船敏郎と久我美子・鶴田浩二と香川京子・中村扇雀と岡田茉莉子の恋愛エピソードがほぼ同じ比重で描かれているため、話の筋が拡散しているように見えるし、全体に湿っぽくなってしまっている。
 映像的には、初期のカラーでアグファ・カラーのためか変色しているようなところもあったが、全体に美しい(撮影:飯村正)。特に、龍造寺家の遺臣たちが住む村の火事のシーンは迫力がある。
 脇役だが、左卜全の演じた大久保彦左衛門が面白い。(2002/01/19)

明治天皇と日露大戦争 めいじてんのうとにちろだいせんそう
監督 渡辺邦男
公開年 1957年
評点[B]
感想
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明治天皇と日露大戦争
明治天皇と
日露大戦争
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新東宝名画傑作選DVD-BOX3 大戦の指導者編
新東宝名画傑作選
DVD-BOX3
大戦の指導者編

 今日は、新東宝の『明治天皇と日露大戦争』を観た。昭和三十二年(1957)年の作品。監督は渡辺邦男で、製作はあの大蔵貢。

 明治三十七年から三十八年にかけて戦われた日露戦争。明治天皇(嵐寛寿郎)とその側近たちが、開戦を決意して勝利に終わるまでを描く。

 新東宝の代表作ともされる作品。日本映画史上初めて明治以降の天皇をはっきりと映画に出したことで有名。明治帝は、国民の犠牲を思って開戦の聖断を下すことに慎重で、戦死者名簿に目を通され、時には前線の兵士と同じ粗食をされる、完璧な明天子として描かれているのは見事なほど。しかし、出征する兵士と別れを惜しむ家族たちを天皇が遠くから眺めて大御心(おおみこころ)を痛められるシーンは、本当に感動してしまった。
 国民は開戦を叫び勝利に喜び、日本軍の将兵は指揮官は部下をいたわり部下は指揮官をかばう。完全に戦前の史観そのままの作品を戦後わずか12年で作ってしまうなんて、日本(の映画界)って凄いなぁ(笑)。しかも、当時は大当たりしたそうだし。別の意味では非常に面白い作品かも。
 当時は超大作だったが、戦闘シーンは今観ると少々しょぼい感がある。旅順要塞にベトン(コンクリート)陣地が無かった。また、“二十八サンチ砲”(28cm砲)を発射するシーンも欲しかった。 乃木希典大将(林寛)の次男の乃木保典役に高島忠夫。若い!橘少佐が妙に恰幅の良い人だな、と思っていたら若山富三郎だった(笑)。(2001/05/06)

東京暮色 とうきょうぼしょく
監督 小津安二郎
公開年 1957年
評点[B]
感想
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東京暮色
東京暮色
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
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第二集

 今日は、小津安二郎監督の『東京暮色』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 大銀行の監査役の父(笠智衆)は次女(有馬稲子)と2人暮らしだが、既に結婚していた長女(原節子)も夫と上手くいかず娘を連れて帰って来ている。
 次女は若い学生とつきあっていて、なぜか最近彼を追い回している。しかし男は逃げ回り、遊び仲間たちが通っている麻雀屋のオバサン(山田五十鈴)が実は昔、父の部下と駆け落ちした実の母親だと知った彼女は…。
 これは小津作品としては異例なほど暗く陰鬱。妊娠中絶まで登場するという内容もそうだが、物理的にも暗い画調に見えた。ラストも、なんらかの和解が成立する戦後の作品群の中で、これだけが全て未解決で終わる。

 公開当時、『キネマ旬報』のベストテンで小津作品としては異例に低い19位になり、失敗作と言われ、本人も「19位だからな」と自嘲していたという。う〜ん、駄作とは思わないけど、どこか全体に違和感が漂っているような気がしないでもない。評価を知っているからかもしれないけど。
 高橋治は『絢爛たる影絵』で有馬稲子を痛烈に批判していたが、当初の予定どおり岸恵子が次女を演じていたらどうなっただろう。有馬の演技はチョット暗すぎて一本調子かな。高橋が言っているように、山田五十鈴は見事。(2000/09/06)

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昭和三十二年(1952)
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