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昭和三十三年(1958)

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巨人と玩具 きょじんとがんぐ
監督 増村保造
公開年 1958年
評点[A’]
感想
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巨人と玩具
巨人と玩具

 今日は、増村保造監督の『巨人と玩具』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 ライバル会社と熾烈な売上争いを続ける製菓会社の宣伝部の新入社員・西洋介(川口浩)は才能ある上司の合田課長(高松英郎)を尊敬している。合田は街で見かけた素人娘の島京子(野添ひとみ)をスターに仕立てあげたりして宣伝競争を仕掛けるが、次第に自らが作り出した状況に振り回され始めて……。

 増村監督の代表作の一つ。開高健の小説を白坂依志夫がもの凄い台詞の両の脚本にしている。
 増村作品独特の大声かつ早口でしゃべくりまくる台詞回しは古い邦画に慣れた耳で聞くとちょっと面食らうものの、現代社会のせわしさを表現するには効果的だと思う。時代劇の『曽根崎心中』では少々不自然だったが。全体に、五十年代前半までの映画とはかなり異なる雰囲気を感じた。
 いかにも“現代人”という感じのキャラクターの描き方や映像表現は、さすがに現代の目で観ると多少類型的だが、今から観ても充分面白く、公開当時は斬新な表現だったことがうかがえる。のちのテレビドラマのために頑固おやじという印象が強い高松英郎がキザな二枚目を演じているのも、個人的には面白かった。(2002/07/25)

新選組 しんせんぐみ
監督 佐々木康
公開年 1958年
評点[B]
感想  昨日は、佐々木康監督の『新選組』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 京を警護する新選組は、近藤勇(片岡千恵蔵)や土方歳三(山形勲)に従うことを是としない関兵庫(月形龍之介)一派が分離しようとして揺れていた。一方、勤皇方は月形半平太(大友柳太朗)や鞍馬天狗(東千代之介)が奔走して薩摩・長州・土佐を糾合しようと図っていたが、勤皇方の過激派と関兵庫らは京の町で騒擾を起こす計画のため、池田屋に集まった。

 池田屋事件までを中心としたオリジナルストーリー(脚本:高岩肇)で、かなりフィクションの色が強い。月形半平太と鞍馬天狗が堂々とストーリーに絡んでいて、盟友同士というのは凄い。関兵庫というのは伊東甲子太郎にあたるのだろうか。
 粗筋は荒唐無稽に近いが、日本の将来を憂いていることでは勤皇派と志を同じくすることから自らの仕事に疑問をもっている近藤勇の内面が比較的よく描かれているので、そのあたりをもう少し掘り下げてほしかったような気がする。月形半平太や鞍馬天狗が出てくるのは、ちょっと散漫になってしまったような。千恵蔵の物静かな近藤像はなかなかだった(カラーで観ると近藤勇にしてはちょっと老けすぎで重々しすぎる台詞回しも気になったが)。山形勲の土方は、色男で策士タイプという土方歳三のイメージからすると、ちょっと豪快さんすぎるような。
 三木滋人のカラー撮影で保存状態も良く映像は美しい。(2004/01/25)

殿さま弥次喜多 怪談道中 とのさまやじきたかいだんどうちゅう
監督 沢島忠
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、沢島忠監督の『殿さま弥次喜多 怪談道中』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 国元へ向かっていた尾張の徳川宗長(中村錦之助、のち萬屋錦之介)と紀州の徳川義忠(中村賀津雄、のち嘉葎雄)の行列に弥次郎兵衛(益田キートン)と喜多八(星十郎)の乗った暴れ馬が乱入。宗長と義忠は弥次喜多を手討ちにする代わりに、入れ替わって町人姿の旅を始めた。しかし、当然珍道中に……

 弥次喜多ものの設定を借りた一作(脚本:小川正)。明朗時代劇が得意な沢島監督らしく、二枚目俳優二人が主人公でもコメディタッチ。
 しかし、ギャグはドタバタ主体で空回り気味に見え、意外に面白くない。怪談と銘うっているのだから、錦之助と賀津雄に派手な悲鳴をあげさせるだけでなく幽霊話の部分をもっとリアルにして観客も怖がらせた方が、よりギャグの部分が面白くなったのではないだろうか。脚本・演出とも今ひとつのような気がする。二人のノリは悪くないので、ちょっともったいない。
 終盤の城を舞台にした殺陣は『死亡遊戯』をちょっとだけ彷彿とさせた。二人(の身代わりの弥次喜多)を暗殺しようとする浪人として田中春夫が出演していて、さすがに存在感がある。(2004/08/27)

江戸は青空 えどはあおぞら
監督 西山正輝
公開年 1958年
評点[B]
感想  今日は、西山正輝監督の『江戸は青空』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 江戸時代も末期に近い天保年間、江戸の庶民の暮らしは一層苦しくなっていた。ある日、一家五人が働きづめで金を貯めこんでいるという噂のある、おかつ(沢村貞子)一家に忍び込んだ勇吉(林成年)は、あっさり見つかってしまう。しかし、おかつは静かに金を出し、一家が金を貯めている理由を語るのだった。

 山本周五郎の小説を映画化した作品(脚本:九里子亭)。近年、市川崑監督によって原題の『かあちゃん』でリメイクされた。
 沢村貞子はまさに“かあちゃん”そのものに見えるハマリ役。長屋暮らしの貧乏っぷりもリアル。ただ、やはり一家が皆お人よしすぎる理由がよくわからない。もとが短編小説だからだろうが、かあちゃんをもっと描き込んでほしい気がする。(2003/02/02)

旗本退屈男 はたもとたいくつおとこ
監督 松田定次
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『旗本退屈男』を観た。監督は松田定次で、昭和三十三年(1958)の作品。

 時の仙台藩の藩主・伊達忠宗(片岡千恵蔵)は、いつの頃からか御乱行を繰り返す暗君になっていた。そんなとき、なぜか東北に旅に来た早乙女主水之介(市川右太衛門)は藩主の乱行と家老の原口刑部(山形勲)や奥山大学(原健策)たちの陰謀を探ろうとする。

 数多い『旗本退屈男』シリーズの中でも、これは市川右太衛門映画出演三百本記念作品として作られたもの。東映オールスターキャストで、千恵蔵の他にも大河内傳次郎・月形龍之介・大友柳太朗・東千代之介・大川橋蔵・里見浩太郎・北大路欣也…といった面々が顔を連ねている。月形龍之介は、このシリーズでは珍しく悪役ではない。
 粗筋は江戸初期の伊達騒動をヒントにしたもので、登場人物の名も伊達騒動の中心人物の名を少し変えたものになっている。市川右太衛門の三百本記念だったためか、あるいは大物の共演者が多すぎたためか、ストーリーは荒唐無稽ではなく意外とシリアスな雰囲気が漂っていため、他のシリーズ作品のような派手な魅力には欠けるかもしれない。市川右太衛門が何度も着替えるのは相変わらずだが。
 ただし、ラストシーンは結構いい雰囲気なので多少救われる。「千両のオチ」とはこのことか?(2002/01/12)

炎上 えんじょう
監督 市川崑
公開年 1958年
評点[A]
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炎上
炎上

 今日は、市川崑監督の『炎上』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。原作は三島由紀夫の『金閣寺』。

 若い学僧の溝口吾市(市川雷蔵)は、酷い吃音(どもり)ゆえに、亡き父親に聞かされていた驟閣寺(映画では金閣という名を使えなかった)の美しさのみを心の支えとして生きてきた。しかし、偽善の横行する世間や俗気にまみれた老師(中村雁治郎)に絶望し、ついには驟閣に火を放つ。

 いや、凄い迫力。当時アイドル的な人気を誇っていた市川雷蔵が、所属する大映の反対を押し切って初の汚れ役に挑戦し、ほとんどノーメイクで迫真の演技をしている。脚本(和田夏十&長谷部慶治)も良い。未読なので原作ではどうか知らないが、老師を単なる悪人のようには描いていないのでキャラに厚みがある。主人公にとってメフィストフェレス的な存在の足の悪い友人を演ずる仲代達矢も凄みがあった。雁治郎の娘の中村玉緒も出演している。また、宮川一夫のカメラも素晴らしい。
 この作品の鑑賞中、観客は自らの劣等コンプレックスをギリギリと刺激され続ける。もし、これを観て全く複雑な思いを抱かない人がいるとすれば、それは心身共に恵まれた幸福な人間か、あるいは徹底的に無神経な人間か、どちらかだ(笑)。(2000/12/04)

彼岸花 ひがんばな
監督 小津安二郎
公開年 1958年
評点[B]
感想
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彼岸花
彼岸花
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
DVD-BOX
第一集

 今日は、小津安二郎監督の『彼岸花』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。小津初のカラー作品。

 商社の常務の平山渉(佐分利信)は、他人の娘の結婚や恋愛に関しては物わかりの良いことを言うが、自分の娘(有馬稲子)の恋人(佐田啓二)から結婚許可を乞われると、とたんに頑固おやじと化して猛反対。妻(田中絹代)や親戚の娘の幸子(山本富士子)はあきれてしまう。さて娘の恋は実るかどうか…。
 佐分利信の頑固おやじは見事にハマっていて、怒るシーンは怖すぎ(笑)。妻の田中絹代は、こういう力を抜いて演れる役柄だと上手いなぁ。佐田啓二は台詞棒読みで、有馬稲子や山本富士子など若い娘のメイクは妙に濃いというか時代を感じさせる。
 しかし、笠智衆が主役の父親を演ずる作品(これには脇役で登場)のような悲哀が無く、他愛が無いと言われれば、そうかもしれない。今一つ胸に迫るものが無い。職人芸的な上手さはあるけれども。よく指摘されるように、前年の『東京暮色』の失敗で安全策を採ったという面もあるだろうか。
 初のカラーで、有名な赤いヤカンが所々に顔を出す。ちょっとうるさいかな。翌年の『浮草』では宮川一夫カメラマンが嫌って置かせなかったというし。あと、やはり褪色している。松竹では三原色に分解したネガを残さなかったのか…大映の『地獄門』なんて、今でもどぎついくらい鮮やかなのに。これはイーストマンカラーであるためでもあるけど。(2000/09/23)

一心太助 天下の一大事 いっしんたすけてんかのいちだいじ
監督 沢島忠
公開年 1958年
評点[A’]
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一心太助 天下の一大事
一心太助
天下の一大事

 今日は、中村錦之助主演の『一心太助 天下の一大事』を観た。監督は沢島忠で、昭和三十三年(1958)の作品。

 大久保彦左衛門(月形龍之介)の病が癒えて元気を取り戻した一心太助(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は、魚河岸で自殺志願の妙な男・幸吉(田中春夫)と出会い、彼の口から旗本・川勝丹波守(進藤英太郎)らの悪事を知る。

 一心太助もの第二弾。2作目からカラーになり、モブシーンやアクションシーンも増え、全体のテンポが速くなった感じ。1作目がヒットして予算が増えたのだろうか。太助が魚河岸を駆け抜けるところや終盤の神輿(みこし)のシーンは盛り上がる
 この作品は、大久保彦左衛門を慕う太助と家光に加えて、太平の世にあって敢えて毒舌を吐いて憎まれ役を演ずる彦左衛門の心中が前作よりもよく描かれている。月形龍之介の彦左衛門は本当にハマリ役だ。珍しく正義の味方役の山形勲も良い。(2003/04/17)

白鷺 しらさぎ
監督 衣笠貞之助
公開年 1958年
評点[A’]
感想  今日は、衣笠貞之助監督の『白鷺』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 明治四十年代、ある老舗の料亭が破産し、そこの娘お篠(山本富士子)は、かつて料亭の女中だった女主人が経営する待合で働き出す。彼女はそこで、若き日本画家・稲木順一(川崎敬三)と知り合い、互いに惹かれあったが、お篠は芸者になり五坂の御前(佐野周二)に気に入られて……。

 原作は泉鏡花(脚本:衣笠貞之助・相良準)。映像が実に美しく、芸者姿の山本富士子も作り物のように綺麗。ストーリーは“新派大悲劇”といった感じで、描かれている女性像も今では古臭いかもしれないが、とにかく美しさに圧倒される。山本富士子が所作や微妙な表情で感情を表現しているのが良いが、これは女形出身の衣笠監督の演技指導のおかげかな? 助平な旦那に扮した佐野周二の極悪っぷりも見事。(2002/12/14)

ひばり捕物帖 自雷也小判 ひばりとりものちょうじらいやこばん
監督 深田金之助
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、『ひばり捕物帖 自雷也小判』を観た。昭和三十三年(1958)の作品で、監督は深田金之助。

 女目明しの阿部川町のお七(美空ひばり)は、実は阿部伊予守(尾上鯉之助)の妹・妙姫だった。そんな彼女が、小伝馬町の牢破りの手助けをしたという濡れ衣を着せられる。身の潔白を証明するために、お守り役の佐々木兵馬(東千代之助)と共に八面六臂の活躍をする妙姫。

 NHK BSで放映されたのは一本だけだが、美空ひばり主演のシリーズものの一作らしい。ひばりちゃんが色んな扮装をして、歌もたっぷりのアイドル映画。映画全盛期の娯楽作の一本か。
 妙姫と兵馬が2人で酔っ払って盆踊りの太鼓の櫓(やぐら)に乱入すると、いきなり照明が真っ赤なライトになって歌と踊りが始まるのは、シュールで面白かった。若き日の里見浩太郎も色男役で出演している。(2001/06/18)

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