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昭和三十四年(1959)

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丹下左膳 怒涛篇 たんげさぜんどとうへん
監督 松田定次
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、松田定次監督の『丹下左膳 怒涛(濤)篇』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。主演は大友柳太朗。

 時は将軍吉宗(里見浩太郎)の時代、中国の大海賊が隠した財宝のありかを知ることができるという銀龍の香炉を、ひょんなことから手に入れた丹下左膳(大友柳太朗)。彼は、奉行所与力・伊吹大作(大川橋蔵)や同じ長屋に住む浪人・蒲生泰軒(大河内傳次郎)らと共に、香炉を狙う悪人たちと戦う。

 戦後の大友柳太朗版『丹下左膳』シリーズの第2作だそうだ。設定は映画オリジナル。ただし、基本は原作の“こけ猿の壺”の話にのっとっている。
 大友柳太朗の演技は超オーバーだが、気のいい好人物というキャラになっている丹下左膳によく合っている。左手一本の殺陣も切れ味が良い。立ち回りがたっぷりあり、その他にも歌や踊りもあったりして、いかにも映画黄金期の娯楽作という感じの佳作。
 本来、丹下左膳は不気味な異形の者のはずだったが、山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壺』の影響で、それ以降の作品の左膳は全て好人物になってしまったらしい。恐るべし山中貞雄…。
 大岡越前守として月形龍之介が登場。櫛巻お藤は長谷川裕見子。“ちょび安”は、なんと松島トモ子。ミネラル麦茶…(笑)。(2001/02/28)

グラマ島の誘惑 ぐらまとうのゆうわく
監督 川島雄三
公開年 1959年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『グラマ島の誘惑』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 戦争末期。内地へ向かう輸送船が撃沈され、皇族の香椎宮為久(森繁久彌)・為永(フランキー堺)兄弟、お付き武官の兵藤中佐(桂小金治)、やり手婆の佐々木しげ(浪花千栄子)と慰安婦たち、報道班員の香坂よし子(淡路恵子)と坪井すみ子(岸田今日子)、戦争未亡人の上山とみ子(八千草薫)らが付近のグラマ島に流れ着く。世間知らずの為久を始めとする面々の奇妙な共同生活が始まる。

 戦争末期から昭和二十五年になるまで数十人の日本人が孤島に取り残され、ただ一人の女をめぐって争ったという“アナタハン事件”を題材にした飯島匡の戯曲を基にした作品(脚本:川島雄三)。
 主人公が皇族、しかも為久はまさにバカ殿キャラというのが強烈で、よく作れたものだと思う。むしろ今よりも天皇制批判的な作品を作りやすかったのかもしれないが……。いや、公開当時は皇太子殿下(今上天皇)御成婚ブームの最中なので(作中にもそれを諷刺する表現がある)、相当な勇気が必要だったと思う。戦中にほとんど戦争協力的でない『還って来た男』でデビューしただけあって、川島雄三監督もたいした度胸だ。もちろん、作者の志と創作作品としての評価は別物であるけれども。
 天皇制批判・軍隊批判の要素が強い作品ではあるが、芸達者な出演者たちの演技と、川島監督のやりたい放題の演出によって、中盤までは一気に観せられ、笑える部分も多い。年増女郎を演じた轟夕起子はまさに強烈。皇族・軍隊批判に対して、インテリぶる報道班員たちも諷刺されているので、多少はバランスが取れているし。
 ただし、やはり風刺的要素が強すぎるくらいなので、それを中和するためか中盤以降はドタバタ的展開が多くなってダレてしまい、加えて川島監督と顔なじみのベテラン俳優たちの遊びが過剰なくらいあって、いささか食傷する感もある。この次の作品『貸間あり』と設定が似ているところもあるので(孤立した場所で繰り広げられる人間動物園)、川島監督はこういう作品が好きなのだろうが、ちょっと乗りすぎたのかな、と思った。

 撮影は先頃無くなった岡崎宏三で、川島監督の奇をてらった要求によく応えていると思う。メインキャストの一人(宮城まり子)が沖縄出身という設定なので、沖縄の歌や舞踊がたびたび出てくるが、沖縄文化に着目した映画の先駆けになるのではないだろうか。三橋達也が意外な姿で登場。(2004/02/04)

らぶれたあ らぶれたあ
監督 鈴木清順
公開年 1959年
評点[C]
感想  今日は、鈴木清順監督の『らぶれたあ』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 クラブでピアノを弾いている梢(筑波久子)は支配人(フランク永井)に求婚されているが、梢には離れ離れでも文通を続けている恋人の正男(待田京介)がいた。しかし、正男の愛情に不安を感じた梢は、彼が病気療養を続けている山の中へ会いに行く。

 二本立て上映の添え物として作られた上映時間40分の短編映画。ただし、登場人物は極端に少ないものの、雪山などでのロケはちゃんとおこなわれているようだ。
 しかし、ベタな恋愛ストーリーに監督が思い入れできなかったのかどうかはわからないが、平板な展開でメインキャストの演技も今ひとつに見えた。フランク永井は別としても、他の二人も……。
 対して、映像の方はモノクロ画面が美しい。意図的に露出過度にしたように見えるのは独特の工夫だろう。まだ奇をてらったような映像は少ないが、ラスト近くは面白い。(2003/03/06)

女を忘れろ おんなをわすれろ
監督 舛田利雄
公開年 1959年
評点[A]
感想
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女を忘れろ
女を忘れろ

 今日は、小林旭主演の『女を忘れろ』を観た。監督は舛田利雄で、昭和三十四年(1959)の作品。

 試合で相手を失明させた田所修(小林旭)はボクシングを辞め、ホステスをしている年上の女・雪枝(南田洋子)と同棲しながらキャバレーのバンドでドラムを叩いて対戦相手の治療費を稼いでいた。そんな彼が、通勤バスの中で偶然出会った女学生の尚子(浅丘ルリ子)に惹かれてしまう。

 現在ではあまり語られないものの映画化作品の多い(『ある殺し屋』など)藤原審爾による原作の映画化(脚本:舛田利雄・山崎巌)
 小林旭が『渡り鳥』シリーズでブレイクする直前で、まだイメージが固まる前のためか、主人公の性格に陰影のある脚本になっており、小林旭もそれによく応えた演技をしている。雪枝や尚子そして悪役的なキャラクターも単純ではない。
 まだどことなく少年っぽさも時々匂う若き日の小林旭と可憐な浅丘ルリ子、大人の女の哀しさを見せる南田洋子などのキャラクターたちと巧みに練られた脚本が、青春の悔恨と愛するものとの別離とを存分に描き出す。公開当時の入りはそれほどでもなかったそうだが、現在観ると青春映画の傑作の一本といえると思う。
 舛田監督の映像のさばき方も巧みで、美しいモノクロ画面(撮影:姫田真佐久)や音楽の使い方も良い(音楽 :真鍋理一郎)。(2005/01/02)

最高殊勲夫人 さいこうしゅくんふじん
監督 増村保造
公開年 1959年
評点[C]
感想  今日は、増村保造監督の『最高殊勲夫人』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 三原商事を経営する三原家の長男・一郎(船越英二)と次男・次郎(北原義郎)は、それぞれ野々宮家の長女・桃子(丹阿弥谷津子)と次女・梨子(近藤美恵子)と結婚していた。彼らは三原家の三男・三郎(川口浩)と野々宮家の三女・京子(若尾文子)をも結婚させようとし、二人は反発するが、しだいに惹かれあっていく。

 増村監督が現代社会を描いた一連の作品の一つで(原作:源氏鶏太/脚本:白坂依志夫)、カリカチュアライズされた設定と演出のもと、登場人物がテンション高くしゃべくりまくる。
 戯画化されているにしても、桃子はちょっとステロタイプ的過ぎるようなキャラに見えた。また、全体にブルジョアが恋愛お遊戯をしているようで、あまり共感できるストーリーではなかった。テンポが良いので、それなりに楽しむことは出来たが。(2002/09/22)

若き日の信長 わかきひののぶなが
監督 森一生
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、市川雷蔵主演の『若き日の信長』を観た。監督は森一生で、昭和三十四年(1959)の作品。

 尾張を支配する若き戦国大名・織田信長(市川雷蔵)は“うつけ者”の悪名高く、重臣・林佐渡守と林美作守(高松英郎)父子は信長の弟・信行(舟木洋一)の擁立を図り、服属していた武将・山口左馬之助も娘の弥生(金田一敦子)を信長のもとに人質に出しながら今川に通じようとしていた。

 大仏次郎による新歌舞伎の映画化(脚本:八尋不二)。織田信長ものは戦前は片岡千恵蔵、戦後は中村錦之助の主演の作品がよく知られているだが、それらでおなじみの濃姫とのロマンスや斉藤道三との対面のエピソードはなく、あえて“うつけ者”を演じている信長の内面に注目した作品になっている。
 観る前は市川雷蔵は信長の柄ではないと思っていたが、メイクやいつもよりも大きな台詞回しでそれらしく見せ、理知的な信長を作り出していた。また、脇役の弥生やその侍女の小萩(青山京子)、小姓の平手甚三郎(市川染五郎、のち松本幸四郎)などもよく書き込まれていて、信長の心理を描き出す助けになっている。原作によるところが大きいと思うが、一般的なイメージとは異なる織田信長像を生み出している。
 モノクロ末期の映像も美しく(撮影:相坂操一)、戦国時代の質素な城のリアルなセットとも相まって(美術:内藤昭)、映像でも信長の孤独感を強調しているように見えた。(2005/08/30)

キクとイサム きくといさむ
監督 今井正
公開年 1959年
評点[C]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 4 社会編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 4 社会編
キクとイサム
橋のない川 第一部
橋のない川 第二部

 今日は、今井正監督の『キクとイザム』、もとい、『キクとイサム』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 黒人米兵と日本人女性との間に生まれたキク(高橋恵美子)とイサム(奥の山ジョージ)の姉弟は、母親も亡くなって祖母(北林谷栄)の手で育てられている。好奇と差別の目にさらされながら苦難の道を歩む三人。

 今井監督の作品だけに、当時の社会問題を真正面から取りあげた実に真面目な作品。だが、今観ると重い。実に重い。キクを演じた高橋恵美子は素人だったそうだが、とても演技が上手い。それだけに、かえってきつい。題材も取りあげ方も真面目で、当時この作品を撮ることには大きな意義があったのだろう。しかし、現在から観ると、もう少し違った角度での切り方はなかったかな…と思ってしまう。(2001/03/20)

女と海賊 おんなとかいぞく
監督 伊藤大輔
公開年 1959年
評点[B]
感想  伊藤大輔監督の『女と海賊』を観た。昭和三十四年(1959)年の作品。主演は長谷川一夫と京マチ子。

 襲った船から品物と一緒に奪った女を慰(なぐさ)みものにする海賊一味。しかし、部下には好きにさせても、その頭目(長谷川一夫)は女に指一本触れようとしない。彼は心に深い傷を抱いていた。
 頭目の回想シーンの処理がチョット唐突。それに、彼は妙に女々しく悩んでばかりいる。終わりも無理にハッピーエンドにした感じ。作品中の女性観も今から見ると首をかしげるようなもので、女性が観ると楽しめないかもしれない。
 ただし、展開のテンポが良いので退屈はしなかった。伊藤監督の腕だろうか。長谷川一夫や京マチ子のファンなら楽しめるかも。(2000/11/06)

或る剣豪の生涯 あるけんごうのしょうがい
監督 稲垣浩
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『或る剣豪の生涯』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 豊臣秀吉の死後1年の京都。武勇と教養そして巨大な鼻で知られる駒木兵八郎(三船敏郎)は、早くも大きな顔をし始めた家康の家臣たちを懲らしめていた。そんな折、旧知の公家の姫君・千代姫(司葉子)と美男子の苅部十郎太(宝田明)がお互いに思いを寄せていることを知り、兵八郎は無骨者の十郎太のために力を貸してやるが……。

 原作は御存知『シラノ・ド・ベルジュラック』。その翻案としては新国劇で上演されていた『白野弁十郎』が有名だが、この映画は稲垣浩によるオリジナルの脚本らしい。
 武勇と教養と心意気、全てを兼ね備えながらも巨大な鼻ゆえに自ら進んで恋の道化師を演じたシラノの物語は有名だが、この才能ある詩人(歌人)であるキャラを三船敏郎が好演。稲垣監督の脚本も詩の言葉をそれらしく翻案してあまり違和感なく、兵八郎の豪快さと哀愁を描き分けた演出も良い。特に冒頭の芝居小屋での騒動とラストの寺のシーンが傑出している。粗筋は知ってはいたものの、あらためて感動させられた。それだけ原作が優れているということだが、この作品は以前観た洋画版(監督:マイケル・ゴードン/主演:ホセ・フェラー/1950年)にも劣らないと思う。
 宝田明はいかにも時代劇慣れしていない感じだが、眉目秀麗にして長身の若武者という役には合っている。司葉子の姫君には、もう少し高貴さが欲しい気がした。平八郎のなじみの居酒屋の主人の藤原釜足は相変わらずいい味出している。
 この作品の冒頭に出てくる見世物小屋の孔雀は動物園から借りてきた本物で、なかなか羽を開かず困ったそうだ。(2005/05/25)

惜春鳥 せきしゅんちょう
監督 木下恵介
公開年 1959年
評点[C]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第4集
木下惠介 DVD-BOX 4
喜びも悲しみも幾歳月
風前の灯
この天の虹
風花
惜春鳥
今日もまたかくてありなん
春の夢

 今日は、木下恵介監督・脚本の『惜春鳥』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 会津若松で生まれ育った若者たちが、久々に友人の一人が東京から帰省してきたのをきっかけに旧交を暖める。しかし、歳月は皆を変えていた。

 40年前の地方の若者たちって、こんなに友情に篤(あつ)かったのかな?と思わされる作品。すぐ抱き合ったり泣いたり、女々しい…というと女性に失礼だが、ベタベタした感じ。
 津川雅彦が若者の一人で、濃い顔の二枚目。ただ一人東京の大学へ進学し、帰省してきた若者役に川津祐介。その他の若者を演じたのは石浜朗・小坂一也・山本豊三で、計5人。佐田啓二と有馬稲子が登場する意味がよくわからない。若者たちと対照的な人物像として描いたのだろうけど…。また、若者の一人を身体障害者にした意味もわからない。
 全体に、今観ると時代の違いを感じざるを得ないような作品。映像的には、カラーなので会津の自然が美しかった。(2001/03/26)

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