Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE
昭和三十四年(1959)

[1] [2] [3]

お早よう おはよう
監督 小津安二郎
公開年 1959年
評点[A’]
感想
Amazon
お早よう
お早よう
Amazon
小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
DVD-BOX
第一集

 今日は、小津安二郎監督の『お早よう』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 この作品は娘が嫁に行く話ではなく(爆)、『生まれてはみたけれど』の系譜を引く、子供が主役のホーム・コメディ。世にも珍しい屁映画でもある。
 近所の子供たちの間で、お互い額を押して押された方が屁をするという遊びが流行っている、という設定。ホント、子供たちの小憎らしい面を描くのが上手いなぁ。
 小津監督は前年には紫綬褒章、同年には芸術院賞を受けていながら屁映画を作っちゃうってのが面白い。勲章を名誉に思ったことも間違いないとは思うが、「そんなの屁でもないよ」とでも言うように照れ隠し的な作品を作っちゃうのが凄い。溝口健二なら、かしこまっちゃうところだが。
 アニメの『サザエさん』の画面構成やポルカ風のBGMは小津のコメディー作品を模倣しているのでは、という説があるそうで、『お早よう』を観て、なるほどと思った。『サザエさん』のスタッフの年齢層は高そうだから、多少の影響は受けているかも。

 小津監督のカラー作品を初めて観た(これはカラー2作目)。有名な、赤に対するこだわりは見られたけど、少し褪色気味なのが惜しい。小津は渋い発色のアグファカラーを好んだそうだが、経年変化には弱いのか。溝口のカラー作品2本の方が鮮やかさを残している。こちらはイーストマンカラーだからかな。(2000/08/17)

貸間あり かしまあり
監督 川島雄三
公開年 1959年
評点[C]
感想
Amazon
貸間あり
貸間あり

 今日は、川島雄三監督の『貸間あり』を観た。昭和三十四年(1959年)の作品。

 大阪のある大きな屋敷は戦後、敷地内の数多い建物をそれぞれ人に貸して“アパート屋敷”と呼ばれるようになっていた。そこに陶芸家の津山ユミ子(淡島千景)が引っ越してきて、“先生”と呼ばれて隣人たちに頼りにされている与田五郎(フランキー堺)との交流が始まる。その他、癖のある住人たち(乙羽信子・浪花千栄子・清川虹子・桂小金治・山茶花究・渡辺篤・西岡慶子)が引き起こす騒動。

 “アパート屋敷”を舞台とした集団劇で、中盤までは中心となる筋が無いような感じで混沌としていて、一言では筋書きを言えない。とにかく奇矯な人物ばかりで、そこが川島映画らしいだろうか。小沢昭一(?)の演ずる受験生が特に面白い。原作は井伏鱒二の小説で、脚本は川島雄三と藤本義一。原作とあまりにもかけはなれているので井伏鱒二が怒ったそうだ。
 評価は高いようだが、個人的には『喜劇 とんかつ一代』などのわかりやすい作品の方が好き。ちなみに、川島雄三の伝記の題名にもなった「サヨナラだけが人生だ」という言葉(井伏鱒二が漢詩から訳したもの)は、この作品で読み上げられる。(2001/10/26)

旗本退屈男 謎の大文字 はたもとたいくつおとこなぞのおおもじ
監督 佐々木康
公開年 1959年
評点[B]
感想  今日は、市川右太衛門の『旗本退屈男 謎の大文字』を観た。監督は佐々木康で、昭和三十四年(1959)の作品。

 京都に旅して、珍しく腰を落ち着けている旗本退屈男こと早乙女主水之介(市川右太衛門)。そこで偶然、女の二人連れを助けるが、それは薩摩島津家の姫(丘さとみ)と腰元(長谷川裕見子)だった。主水之介は、島津家を利用しようとする京都所司代(山形勲)たちの陰謀を知る。

 『退屈男』シリーズの一作。退屈男がキンキラの着物を何度もお色直しで着替えて、女性キャラにモテモテ王国状態なのはいつもどおりだが、この作品は冒頭のシーンが素晴らしい。京都の大きな寺の本堂に女二人が逃げこむ。それを追ってくる侍たち。そこに高らかな笑い声が響くと、仏像の台座のあたりから豪奢な着物を身にまとった退屈男が出てきて…まるで、右太衛門が仏そのものであるかのような神々しさ(笑)。それと、ラスト近くに退屈男が再び意外なところから出てくるのも面白い。
 終盤のチャンバラも、大人数なので迫力がある。(2002/01/18)

東海道四谷怪談 とうかいどうよつやかいだん
監督 中川信夫
公開年 1959年
評点[A’]
感想
Amazon
東海道四谷怪談
東海道四谷怪談

 今日は、中川信夫監督の『東海道四谷怪談』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 備中岡山の浪人・民谷伊右衛門(天知茂)は、お岩(若杉嘉津子)と夫婦になるため彼女の父・四谷左門(浅野進治郎)を中間〔ちゅうげん〕の直助(江見俊太郎)と共謀して殺す。さらに江戸に流れて裕福な武士の娘・お袖(北沢典子)の元に婿入りするため、お岩を毒殺するが、その霊に祟られる。

 怪談の古典を映画化した作品(脚本:大貫正義)。恐怖映画を得意とする中川監督だけあって、日本家屋の暗さを強調した絵作りが素晴らしい。お岩が毒を飲むシーンは本当に怖かった。ただし、終盤に特殊効果が連発されるところは少々大げさに感じてしまったが、これは自室でのビデオ観賞だったためかもしれない。映画館で観てみたい作品。
 冷たい美男子の天知茂と暗さのある女お岩を演じた若杉嘉津子もハマっていた。小悪党的な直助も良い。忠臣蔵と関連のあるところをすっぱり削ぎ落とした話作りも巧みだと思う。(2002/08/16)

水戸黄門 天下の副将軍 みとこうもんてんかのふくしょうぐん
監督 松田定次
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、月形龍之介主演の『水戸黄門 天下の副将軍』を観た。監督は松田定次で、昭和三十四年(1959)の作品。。

 ある時、水戸光圀(月形龍之介)は高松藩主となっている実子・頼常(中村錦之助、のちの萬屋錦之介)が乱心したという噂を聞き、真偽を質すため助さん(東千代之介)格さん(里見浩太郎)らと旅立つ。

 水戸黄門シリーズの一つ。この作品、中村錦之助の乱心演技が凄いというかヤバイというか。ここまで来ると、確かにある種の名演だと思う。それと、ラストシーンが傑作。錦之助って……。
 月形龍之介の黄門は凄みがあるが、この作品では特に強そう。なんと飛んできた矢を……これだけでも一見に値するかも。(2002/12/06)

上役・下役・ご同役 うわやくしたやくごどうやく
監督 本多猪四郎
公開年 1959年
評点[B]
感想  今日は、本多猪四郎監督の『上役・下役・ご同役』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 桜レーヨンに長く勤める平山課長(加東大介)は真面目一徹の堅物。周りの人間は頼もしく思うと同時に少々煙たくも感じている。妻を亡くして三人の子を男手一つで育ててきた彼のもとに、上役の知人の池貝三千代(草笛光子)との再婚話が持ち込まれるが。

 『大番』シリーズ以外ではちょっと珍しい加東大介の主演作。サラリーマンものだが、同時代の『社長』シリーズのようなコメディではない(原作:大和勇三/脚本:沢村勉)。
 小津安二郎の『早春』のようなまだ戦争の影響から完全に立ち直っておらず庶民に何か喪失感が残っていた時代から脱し、日本が高度成長に向かいかけていた頃、しかも当時は花形だった繊維産業の会社が舞台であり、加えて流行の“太陽族”に対するアンチテーゼの意味あいもあるのか、主人公も内容もとにかく真面目。
 演出も生真面目一本のような感じがして、もう少しユーモアや変化が欲しいような気がした。“ちょっといい話”の連発で加東大介の魅力が充分には出ていないような。1時間半に満たない上映時間の中で豊富なエピソードを混乱せず巧みに展開していることに関しては、演出・脚本の実力が感じられるけれども。
 今から見ると、終身雇用・年功序列制度が保証されていた古き良き時代の作品。もちろん現実そのままではなく、かくあるべしという理想が描かれた作品であるのだが。(2004/11/02)

浪花の恋の物語 なにわのこいのものがたり
監督 内田吐夢
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、内田吐夢監督の『浪花の恋の物語』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 大阪の飛脚問屋・亀屋の一人娘おとく(花園ひろみ)の許婚として養子に入った忠兵衛(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は、悪友に無理やり連れて行かれた遊郭で、敵娼(あいかた)になった格子女郎の梅川(有馬稲子)に夢中になってしまう。忠兵衛は足しげく通うようになり、やがて彼に破滅が訪れる。

 近松門左衛門の『冥土の飛脚』の映画化(脚本:成澤昌茂)。文楽(人形浄瑠璃)として書かれたが、今では歌舞伎の“封印切”の場などで有名かもしれない。近松では定番の遊女と若者の悲劇だが、為替を扱って現金を運ぶ江戸時代の飛脚屋という職業が生かされたストーリーになっている。
 演出は意外と冷静で、シャープなカラー映像が忠兵衛と梅川を淡々と描写する(撮影:坪井誠)。近松門左衛門の脚本をそのまま映像化したのでは現代人に受け入れられづらいと考えたのか、忠兵衛たちを観察する近松門左衛門その人(片岡千恵蔵)を登場させ、その視点から描いているので、冷静な印象になったのかもしれない。ステレオタイプ的な絵に描いたような悪人がいなかったのは良い。
 錦之助は、“封印切”をしてしまうところの表情の演技が凄かった。ただ、そこに至るまでは、少々おとなしすぎるような感じもした。世間知らずのボンボンであったとしても。梅川の有馬稲子は、まずまずの演技。忠兵衛の姑を演じた田中絹代が、“熱演”ではなく枯れた老人の雰囲気を出していて良かった。(2003/08/30)

風雲児 織田信長 ふううんじおだのぶなが
監督 河野寿一
公開年 1959年
評点[B]
感想  今日は、中村錦之助主演の『風雲児 織田信長』を観た。監督は河野寿一で、昭和三十四年(1959)
の作品。

 尾張の国の実力者・織田信秀が没して葬式がおこなわれているが、新当主の信長(中村錦之助、のち萬屋錦之介)が姿をあらわさないので家老・平手政秀(月形龍之介)らはやきもきしていた。その後、平手の諌死、斎藤道三(進藤英太郎)との会見、桶狭間の合戦などを信長は濃姫(香川京子)と共に乗り越える。

 『紅顔の若武者〜』の続編でもあり、描いている時代が重なる部分もあるのでカラーでのリメイク的作品でもある。
 『紅顔の〜』と続けて観ると、錦之助の俳優としての成長が一目瞭然。前作よりかなり良い。合戦シーンもあって、ダイナミック。また、濃姫も香川京子に交代して、さらに濃姫と信長の関係の描写が濃くなっている。お姫様姿の香川京子はとても可憐で、表情の演技が良い。(2003/04/22)

愛と希望の街 あいときぼうのまち
監督 大島渚
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、大島渚監督の『愛と希望の街』を観た事実があった!(←なんつう言い回しぢゃい)昭和三十四年(1959)の作品。

 暗いよ〜!しくしく(笑)。しかし、監督第一作でこれを作ってしまう大島渚ってやっぱり凄いんだろうな。母子家庭で病身の母と精神遅滞児の妹を養うために、ハトを売る少年。しかしそのハトは、買い手の所から必ず逃げ帰ってくるのであった。ブルジョア家庭の娘がハトを買い、その手口を知ってからも、敢えて再び買う。そして…。
 一時間少々の小品だけど、これで一時間半や二時間もあったら辛抱たまらん(爆)。

 この作品の題名はは大島渚のオリジナル脚本の原題『鳩を売る少年』のままにしたかったのに、会社側の意向で『愛と悲しみの街』にされて、さらに公開前に『愛と希望の街』なんつう大いに看板に偽りありの恥ずかしい題名にされてしまったそうだ。彼は「松竹では悲しみと希望が同義なのか!」と荒れたとか(笑)。
 あるサイトで見かけた説によると、鳩を売るってのは売春のメタファーでもあるそうな。そう言われると、少年の担任の女性教師の台詞にヒントがあった。(2000/05/01)

浮草 うきくさ
監督 小津安二郎
公開年 1959年
評点[超A]
感想
Amazon
浮草
浮草

 今日は、小津安二郎監督の『浮草』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。主演は先代の中村雁治郎。

 ストーリーは、旅回りの嵐駒十郎(中村雁治郎)一座が、瀬戸内のある街(補注:正しくは南紀の志摩半島)に巡業でやって来た。公演中、なぜか駒十郎は小さな食堂に足しげく通う。実はそこに、昔の女(杉村春子)がいて、彼らの息子の清(川口浩)に叔父と称して会っていたのだ。たちまち駒十郎の今の女房(京マチ子)が勘づいて、嫉妬の炎を燃やす…といった感じ。小津作品にしてはドラマティックな展開で、溝口健二の作品みたい(笑)。戦前の『浮草物語』(1934)のリメイクだからかもしれない。

 これは小津が松竹ではなく大映に出かけて撮った作品。昭和三十一年に没した溝口健二が生前「今度うちでも撮ってくれないか」と頼んでいた約束を死後果たしたことになる。
 そのため、大映の京マチ子や若尾文子、川口浩などが顔を出す豪華キャストとなった。京マチ子と若尾文子は綺麗っす。演技では、やはり中村雁治郎と杉村春子がピカイチやね。でも、2人の息子が川口浩ってのは無理があるのでは。顔は似てないし、体型だって川口浩はずっと長身だし(笑)。
 また、大映の宮川一夫が撮影を担当して、小津流のローポジションの中でも切れを見せている。色彩の面では、松竹のカラー作品よりも色が良いような気がした。少々黄色味がかっていて少しだけ変色しているような感じはするけど、松竹のものよりも褪色は少ないようだ。大映の作品は保存が良いのかな。

 とにかく、充実した作品で大満足。やはり私はこのくらいドラマティックな方が好みかな。小津作品としては、私の中で『東京物語』に次ぐ作品となったかも。(2000/08/24)

[1] [2] [3]

昭和三十四年(1959)
掲示板 Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE