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昭和三十八年(1963)

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雪之丞変化 ゆきのじょうへんげ
監督 市川崑
公開年 1963年
評点[A’]
感想  今日は、長谷川一夫主演の『雪之丞変化』を観た。監督は市川崑で、昭和三十八年(1963)の作品。

 近頃、江戸の市村座で売り出し中の女形・中村雪之丞(長谷川一夫)は、長崎奉行と商人たちに陥れられた長崎の大商人の息子だった。彼は両親の仇を討つため、元長崎奉行の土部三斎(二世中村鴈治郎)
に接近する。

 長谷川一夫の主演三百本記念映画で、若い頃に主演した作品のリメイク。雪之丞を陰ながら応援する義賊・闇太郎(長谷川一夫の二役)や女盗賊お初(山本富士子)などキャラが魅力的で、なかなか面白いストーリー。長谷川一夫の雪之丞と闇太郎の演じわけは見事。男まさりの女を演じた山本冨士子もいい。
 ただ、この作品を楽しめるかどうかは、カラーのシャープな映像で映し出された女形の顔に耐えられるか否かにかかっているのかもしれない。(2002/12/04)

いれずみ半太郎 いれずみはんたろう
監督 マキノ雅弘
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、大川橋蔵主演の『いれずみ半太郎』を観た。監督はマキノ雅弘で、昭和三十八年(1963)の作品。

 博打で十両もの借金をして江戸から逃げ出した半太郎(大川橋蔵)は、渡世人の道に入って三年かけて十両を貯め、江戸に一人残した老母のもとに帰ろうとする。しかし、全てに絶望した宿場女郎おなか(丘さとみ)に出会ったことから、彼の運命は一変する。

 長谷川伸原作作品(脚本:野上龍雄)。いつもながら渡世人を主人公にしているが、この作品は人情噺ではなく、運命に流される男の悲劇という感じ。東映娯楽時代劇には珍しい、一風変わった雰囲気で、妙な魅力があるかもしれない。ただ、かなり暗いので、ちょっとキツイ面もある。原作の方を読むと、どんな印象を受けるのかな……?(2002/10/11)

影を斬る かげをきる
監督 池広一夫
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、市川雷蔵主演の『影を斬る』を観た。監督は池広一夫で、昭和三十八年(1963)の作品。

 仙台藩伊達六十二万石の剣術指南役・井伊直人(市川雷蔵)は、昼間は天守閣で昼寝、夜は主君の忠宗(成田純一郎)を連れ出して遊び歩いていた。そんな彼に城代家老・伊達将監(稲葉義男)の娘・定(嵯峨三智子)との縁談が持ち上がるが、薙刀を振るう定との立ち合いに敗れて江戸へ剣術修行に行くことになる。

 題名を見てシリアスな剣客ものかと思ったら、コミカルなタッチで始まってちょっと意外だった。大映のコメディ時代劇の流れに連なる一作(脚本:小国英雄)。
 コミカルな作品での雷蔵は活き活きしていて良いし、井伊家の用人役の藤原釜足もいい味を出している。嵯峨三智子の演技は、もう少し幅が合ったら良かったな、と思った。ちゃらんぽらんな雷蔵の姿だけでも充分楽しく、雷蔵自身も池広監督を評価していたが、コメディの演出の切れは田中徳三監督の方に一日の長があるような気がした。(2004/06/18)

天国と地獄 てんごくとじごく
監督 黒澤明
公開年 1963年
評点[A]
感想
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天国と地獄
天国と地獄
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黒澤明
黒澤明 :
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 今日は、黒澤明監督の『天国と地獄』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 大手靴メーカーの重役・権藤(三船敏郎)の息子を誘拐したという脅迫電話がかかってきた。犯人(山崎努)は誤って権藤のお抱え運転手の息子を誘拐したことが間もなく判明したが、それでも身代金3000万円を払わねば殺すと脅してくる。戸倉警部(仲代達矢)以下の刑事たちが極秘裏に捜査を進める中、会社内での自らの立場を強めるため無理な金策をしていた権藤は苦悩する。

 原作はエド・マクベインという人の『キングの身代金』だそうだが、黒澤明・小国英雄・菊島隆三・久板栄二郎らによって大幅に脚色されオリジナル色が強いようだ。
 全てのシーンが後に繋がって無駄な場面がなく、各登場人物のキャラクターも立っている。有名な“特急こだま”の場面も実際観てみると聞いていた以上に面白い。矛盾や不自然な点もほとんど見当たらず、各々脚本家として一家を成した人々が四人も集まって意見の交換も上手くいったのか、複数の脚本家による脚本の成功例のような作品になっていると思う。ジャンルは全然異なるが、誰か一人がはっきりした主人公ではなくリーダーの指示によって複数のプロフェッショナルが働くという点で『七人の侍』をちょっと思い出した。
 展開がよどみなく143分強の長尺を飽きさせないのは黒澤監督の演出の手腕か。また、“じらし”が上手い。職人あがりである権藤以外の資本家(金持ち)がステロタイプ的な悪である点や最後のシークエンス、そしてちょっとやりすぎというかわかりやすすぎる場面(昭和三十年代の横浜黄金町にあんなところあったのか? 今もいかがわしい匂いのあるところだが)は、黒澤らしいといえば、らしいだろうか。しかし、娯楽性の強い作品はこれが最後で、黒澤監督の一つのピークという感じ。
 今から観ると豪華キャストを贅沢に使っている中でも(藤田進に台詞なし?)、コミック・リリーフ的な木村功の使い方が印象的だった。気合の入りすぎた変装とかカーネーションを見ての一言とか。(2005/05/07)

ある機関助士 あるきかんじょし
監督 土本典昭
公開年 1963年
評点[A]
感想  今日は、 土本典昭監督の『ある機関助士』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 首都圏では最後に残った幹線の蒸気機関車運行区間である常磐線を走る急行「みちのく」。その上野〜水戸の区間に乗車する機関助士の視点で、列車の運行と機関士・機関助士の仕事を描く。

 鉄道ドキュメンタリーの古典。ダイヤの正確さと安全とを両立させようとする乗務員の努力を、文字通り密着したカメラでとらえきっている。ナレーションの「私たちの仕事には機械だけには頼れない何かがあるのです」や、実際の会話「はい、て〜じ!」「定時ですね?」は感動的。
 蒸気機関車の運転席に計器類は少ないが、バルブ類がたくさんあって、絶えず調節しなければならないようだ。機関助士は機関士の指示に従い、自分の五感を働かせてバルブをひねり、石炭を投入し、灰をかく。現在のように携帯電話でメールをする暇などあるはずが無い。
 驀進するC62の姿や機関助士が学んだ“中央鉄道学院”での事故を仮想した訓練(信号雷管というものは今でもあるのだろうか)も見ものだが、全体に溢れる“昭和”の雰囲気がたまらない。もちろん私は蒸気機関車に乗った世代ではないが、私が記憶する国鉄時代の駅は、黒と灰色と茶色の世界だった。
 鉄道ファン以外にも、“昭和”を記憶する世代の人にはお勧めの一本。もう涙もの(笑)。(2004/01/02)

海道一の鬼紳士 かいどういちのおにしんし
監督 渡辺祐介
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、進藤英太郎主演の『海道一の鬼紳士』を観た。監督は渡辺祐介で、昭和三十八年(1963)の作品。

 観光地の三谷町は、温泉の湯が涸れてしまって町中困り果てていた。そこへ、ハワイのホテル王のヘンリー東郷(進藤英太郎)と秘書のミッキー本田(中村賀津雄、のち中村嘉葎雄)と称する二人連れが現れ、ハワイの日系人向けの観光地を調査していると言ったから町は大騒ぎになる。さらに大学の地質学の教授という男(益田キートン)まで町にやってきた。

 敵役や準主役の多い進藤英太郎の珍しい主役作品。ただ、中村賀津雄もほぼ同じくらいの比重の役。温泉町を舞台にした喜劇だが、粗筋は容易に予想ができ、演出も平板で新味が無い。お約束な話でも、もう少しテンポが良ければ楽しめるのだが。 中村賀津雄は、まだあまり上手くは無いが、生きの良さを感じた。(2003/04/02)

喜劇 とんかつ一代 きげきとんかついちだい
監督 川島雄三
公開年 1963年
評点[A]
感想  今日は、東京の三百人劇場で川島雄三監督の『喜劇 とんかつ一代』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 上野のとんかつ屋「とん久(きゅう)」の店主・五井久作(森繁久彌)は、元々は上野動物園の隣にあるレストラン青龍軒のコック長・田巻伝次(加東大介)の一番弟子だったが、彼の妹・柿江(淡島千景)と一緒に店を出てとんかつ屋を開いてしまったので、久作と伝次は犬猿の仲になっていた。伝次の息子の伸一(フランキー堺)が久作の元に転がり込んでいたり、伸一の会社の社長で伝次の恋敵でもあった衣笠大陸(益田喜頓)が青龍軒を買い取ろうとしたり、てんやわんやの騒動が続く。

 森繁やフランキー堺たちを初めとする、豪華キャストが集まった喜劇作品。いきなり、オープニングタイトルでは生きている豚の横顔が映し出されて観客を驚かせる。上記以外にも、三木のり平・木暮実千代・池内淳子・山茶花究・水谷良重(現・水谷八重子)・岡田真澄など、多くの登場人物が様々なエピソードを繰り広げて、とても一度観ただけでは紹介できない(笑)。しかし、複雑な人間関係を混乱無く描ききった脚本(柳沢類寿)と監督の技量は敬服もの。
 中でも、三木のり平&池内淳子のクロレラ研究家夫婦と岡田真澄の“変な外人”が特に面白い。所々しつこいドタバタギャグもあるが、ウィットの効いた笑いに満ちている。森繁久彌の歌うテーマ曲が耳に残る、喜劇映画の快作。

 ただし、現在観ると傑作と思えるのに、川島監督特集上映のパンフレット(磯田勉 編『川島雄三 乱調の美学』ワイズ出版 2001年)に引用されている川島監督自身の言葉によると、公開当時は酷評されたのだろうか。う〜む…。(2001/05/04)

野獣の青春 やじゅうのせいしゅん
監督 鈴木清順
公開年 1963年
評点[B]
感想
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野獣の青春
野獣の青春

 今日は、鈴木清順監督の『野獣の青春』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 街に現れた流れ者がチンピラを叩きのめして、一帯を仕切る野元興行の事務所に連れて行かれる。突きつけられた拳銃を瞬く間に奪った男は、水野譲二(宍戸錠)と名乗った。組員として雇われた彼は、野元興行と対立する三光組にも足を運び、スパイとして自分を売り込む。実は、彼には目的があった。

 鈴木清順監督のキャリア前期の作品で、この前作『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』に続く、宍戸錠の主演による大藪春彦原作の映画化(脚本:池田一朗・山崎忠昭)。大藪春彦の初期作はかなり読んだことがあるが、この原作の『人狩り』という作品は読んだか否か記憶にない。読まなかったかなぁ。
 この作品は、まだまともなストーリー展開を追うことができて難解な印象はないが、絵作りに鈴木監督独特の美意識が現れている。序盤はモノクロ画面の中で花だけ赤いパートカラーだし、野元興行の持つクラブは客席と事務所がマジックミラーで仕切られていて事務所から客席が見えるようになっていて、対する三光組の事務所は映画館のスクリーンの裏側にあって壁に映画が写っている。この辺は押井守の実写映画に強い影響を与えているようだ。
 粗筋は黒澤明の『用心棒』っぽいけれども、復讐という要素もからんでいて、オチは結構意外。映倫をはばかってカットしたと言われているが、あっさり終わらせたラストシークエンスも余韻を残して良い。若い頃の宍戸錠は凄みがあっていい感じ。野元組の幹部に金子信夫。最初、金子信夫が組長だと思った。(2003/03/04)

青島要塞爆撃命令 ちんたおようさいばくげきめいれい
監督 古沢憲吾
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、古沢憲吾監督の『青島要塞爆撃命令』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 第一次世界大戦時、日本は日英同盟を結んでいる英国の側に立って、青島のドイツ軍要塞を攻めることになった。陸海からの攻撃が不可能なビスマルク砲台を空爆で破壊するため、誕生から間もない海軍航空隊に出動が命ぜられる。しかし、いまだ飛行機は低性能で、隊長・大杉少佐(池部良)以下の隊員たちは悪戦苦闘する。

 海軍航空隊幼年期を描いた物語で、特技監督が円谷英二というので期待していたのだが……。冒頭から、開放式の座席から顔を出している搭乗員が全く風圧を受けていないように見え、前席と後席で地上並みに自由に会話していたので、ガッカリしてしまった。いくら時速200kmも出ない飛行機だといっても、リアリティが無さ過ぎる。
 肝心の空中特撮も、軍艦の大砲発射や地上での砲弾の爆発の再現にくらべるとイマイチ。また、ストーリーの面でも女スパイ(浜美枝)云々はテーマをボカすだけだったような。野郎ばかりの戦争映画なので女優を出そうとしたのかもしれないが。それだったら、爆撃をするための苦心惨憺の工夫や訓練風景を描いてほしかった。
 隊員として佐藤允・加山雄三などが、海軍の司令長官として藤田進が出演。(2002/12/20)

真田風雲録 さなだふううんろく
監督 加藤泰
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、加藤泰監督の『真田風雲録』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 はなれ猿の佐助こと猿飛佐助(中村錦之助、のちの萬屋錦之介)や、お霧(渡辺美佐子)は戦場で育った孤児だった。彼らは戦国時代に幕が引かれようとしている大坂の陣のときに大阪城へ入って真田幸村(千秋実 )の部下になったが、様々な制約を課せられ、異能を持つ彼らも思うさま活躍できない。

 加藤泰監督の代表作の一つとされている作品。登場人物たちが洋服のようなものを着ていたり、現代風の音楽を奏でながら歌ったり踊ったりする時代劇ミュージカル的な面もある異色作。そのあたりは結構おもしろい。ただ、特殊効果を多用する部分は少々やりすぎと感じられる部分もあった。それと学生運動華やかなりし頃の作品のためか、反戦思想などメッセージ性が表に出すぎている感がある。その辺はもう少し婉曲に暗示して欲しかった。(2002/12/02)

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昭和三十八年(1963)
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