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昭和三十八年(1963)

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イチかバチか いちかばちか
監督 川島雄三
公開年 1963年
評点[A’]
感想  今日は、川島雄三監督の『イチかバチか』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 一代で南海製鋼を築いた島千蔵社長(伴淳三郎)は、全財産200億円をかけた世界最大級の製鉄工場建設を発表した。たちまち島社長と企画室長の北野真一(高島忠夫)のもとに工場誘致の自治体が列を成し、中でも東三市の大田原市長(ハナ肇)はその強引な馬力で二人を振り回す。しかし、東三市には市会議員の松永(山茶花究)を始めとする反対派も存在した。

 川島監督の遺作。公開の5日前に急逝したという。しかし、諦観めいたものはなく川島監督らしさも健在で、こじつけめいた見方をしなければ特に死期を予感させるものはないと思う。
 この作品は現代社会を舞台にしたものであり派手なところは全くないのだが、所々非常に大掛かりで金をかけた贅沢な作品のように見える。それだけ川島監督の実力が認められていたのだろうか。伴淳は老人役でちょっとおとなしいが、ハナ肇は相変わらずの押しの強さで大活躍。一筋縄では行かない人物を演じている。山茶花究も徹底して大真面目な演技で存在感あり。
 原作は城山三郎で私は未読だが、真面目な経済小説だったのだろうか。脚本の菊島隆三と川島監督が料理したためか皮肉なユーモアを感じさせる。社会批判色が濃いが、説教臭さが出る前にコメディで中和するのは巧み。終盤の大田原と松永の演説合戦は『ジュリアス・シーザー』のブルータスとアントニーに倣ったのか、面白いシークエンスだった。ラストも、あっさり気味に放り出したような終わり方が川島監督らしい。
 この作品では奇を衒ったところはないけれども、自動的に屋根を開閉できるオープンカーやテープレコーダー、ポータブルテレビなどモダンなアイテムが登場するのは川島監督の趣味のようだ。(2004/11/27)

宮本武蔵 二刀流開眼 みやもとむさしにとうりゅうかいがん
監督 内田吐夢
公開年 1963年
評点[A’]
感想
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宮本武蔵 二刀流開眼
宮本武蔵
二刀流開眼
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宮本武蔵 愛蔵BOX
宮本武蔵
愛蔵BOX

 今日は、内田吐夢監督の『宮本武蔵 二刀流開眼』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 般若坂の死闘を切り抜けた武蔵(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は柳生の里に向かい、既に隠居していた柳生石舟斎(薄田研二)との立会いを望んだが、彼の人間の大きさに圧倒され、そこを立ち去り京へ向かう。京では、佐々木小次郎(高倉健)と初対面し、そして約束していた吉岡道場の若当主・吉岡清十郎(江原真二郎)との試合を迎える。

 吉川英治原作(脚本:鈴木尚也・内田吐夢)の映画化第三弾。この作品も最後に武蔵自らの台詞で「まだこれからだ」と言うように、まだまだ途中という雰囲気だが、前作よりは作中のエピソードが豊富で退屈しない。
 前作同様、この編では強い武芸者を倒して実力を示そうという欲のある武蔵の若さが強調されているような気がする。高倉健の佐々木小次郎も、非常に若い感じ。
 これも前作同様、映像的には自然描写が美しい。また、画面の隅々までキチッとした作りで、非常に手間暇をかけて作った作品という感じがする。(2003/01/16)

秘剣 ひけん
監督 稲垣浩
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、稲垣浩監督の『秘剣』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 寛永年間の豊前小倉藩。剣の達人だが性狷介な早川典膳(市川染五郎、のち松本幸四郎)は、客として主家を訪れた宮本武蔵(月形龍之介)を侮辱して逼塞を申し渡されると脱藩して山中で修行し、秘太刀を生み出したと自称する。一方、典膳と幼なじみで無二の親友の細尾長十郎(長門裕之)は上意討ちの追っ手として選ばれてしまう。

 『柳生武芸帖』などの五味康祐の小説の映画化(脚本:稲垣浩・木村武)。
 剣の達人である典膳を名人としてではなく、人間的に未熟で平和な世には無用な一種の欠陥人間として描いている。実際、観ていると主人公にはイライラさせられるほど。染五郎(現・松本幸四郎)のまだ生硬な演技も相乗効果になっているかも。典膳に魅力がないので、追う側の長十郎の心理描写などがもっと欲しかった。長門裕之の演技は悪くないのだが、全体に第三者的な視点からの淡々とした描写が続いてちょっと退屈させられる。
 老境の宮本武蔵を演じた月形龍之介が実に素晴らしい。もの凄い貫禄。その他、登場シーンの多い藩の老臣を演じた左卜全や目付の三井弘次の演技が軽快で、作品の息抜きになっていた。脇役の描写が良く、映像もモノクロ画面が重厚で時折使われる凝った構図が効果的なので(撮影:山田一夫)、もう少しテンポ良く展開し、長十郎の苦悩がもっと描かれていれば、より傑作になったかもしれない、と思った。(2005/06/04)

大盗賊 だいとうぞく
監督 谷口千吉
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、三船敏郎主演の『大盗賊』を観た。監督は谷口千吉で、昭和三十八年(1963)の作品。

 堺の豪商・呂宋助左衛門(三船敏郎)は無実の罪を着せられて船で日本から脱出する。しかし嵐に遭い、さらに黒海賊(佐藤允)に財産を奪われて漂流し、異国に流れ着く。その国は暴君の悪名高き羅刹王(志村喬)に仕える宰相(中丸忠雄)が実権を握り、王女の弥々姫(浜美江)はそれを憂えていた。

 東宝の特撮冒険映画。特技監督は円谷英二。衣装などかなり丁寧に作られている。三船の演ずる主人公が単なるヒーローではなく、ひょうきんなところもあって面白い。物語の舞台が中東だか中央アジアだか国籍不明で、ストーリーやキャラクターなどは漫画的だが、衣装・セットなどの作りや演出は丁寧で、現在の目で観ても観賞に堪えると思う。時々セットなのが丸わかりだったりモブ(群集)シーンの人数が寂しいな、と感じるところがあった。今ならCGでごまかせるだろうか。
 悪人の餌食にされそうな姫、それを救う盗賊、礼拝堂の結婚式、悪役の死にざまなどいくつかのモチーフが、宮崎駿監督の『カリオストロの城』を彷彿とさせるのが意外な発見だった。『カリ城』にはフランスのアニメ『王様と鳥(やぶにらみの暴君)』の影響が強いことがよく言われるが、宮崎監督は当然ながら邦画も観ていたということなのだろう。
 現在なら絶対にアニメになってしまう作品だが、実写で観るのも面白い。今の日本ではこれだけの実写ファンタジー映画は作れないだろう。“妖婆”が天本英世だと知ってかなりビックリ。(2003/12/28)

眠狂四郎殺法帖 ねむりきょうしろうさっぽうちょう
監督 田中徳三
公開年 1963年
評点[B]
感想
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眠狂四郎殺法帖
眠狂四郎殺法帖

 今日は、市川雷蔵主演の『眠狂四郎殺法帖』を観た。監督は田中徳三で、昭和三十八年(1963)の作品。

 謎の浪人・眠狂四郎(市川雷蔵)のもとに、加賀前田家の奥女中・千佐(中村玉緒)が助けを求めてくる。実は、銭屋五兵ヱ(伊達三郎)から加賀百万石の命運を左右する秘密の品を奪うため、前田侯が狂四郎を利用しようとしたのだ。狂四郎はたちまちそれを見抜き、前田家そして銭屋銭屋五兵ヱと彼に味方する少林寺拳法の達人・陳孫(城健三郎、のちの若山富三郎)の双方と対決する。

 市川雷蔵による『眠狂四郎』シリーズの第1作。原作は柴田錬三郎(脚本:星川清司)。よく言われているように、この第1作は主人公に虚無感が薄く、狂四郎は女と揉め事が大好きな遊び人という雰囲気。作品全体も、忍者の大群との殺陣や少林寺拳法の達人とのアクションなど、活劇的な作り。絵作りもわかりやすく綺麗だし、よくまとまった作品という感じ。何か一つ印象に残るものが欲しかった、という気はする。
 黒づくめの着物をまとった市川雷蔵は美しい。最後の台詞の口調はちょっと気になったが。市川雷蔵と若山富三郎の対決のオチは、どんなもんかなぁ……。(2002/05/30)

関の彌太ッぺ(関の彌太っぺ/関の弥太ッぺ/関の弥太っぺ) せきのやたっぺ
監督 山下耕作
公開年 1963年
評点[超A]
感想  今日は、中村錦之助主演の『関の弥太っぺ』を観た。監督は山下耕作で、昭和三十八年(1963)の作品。

 生き別れた妹を探しながら旅を続ける渡世人の弥太っぺこと弥太郎(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は、斬られて瀕死の男(大坂志郎)に頼まれ、彼の娘お小夜(上木三津子)をある旅籠に送り届ける。妹との再会も果たせず、弥太郎は十年経って美しい娘に成長したお小夜(十朱幸代)の消息を偶然耳にするが……。

 原作は長谷川伸(脚本:成沢昌茂)。幾度となく演劇・映画になっている作品。 親子の情愛・兄妹の情愛が主題でウェットな雰囲気な、良くも悪くも日本的な作品。しかし、すすきの穂・夜空の月・風車・松並木などなど日本の風景を美しくとらえた映像と(撮影:古谷伸)、錦之助の演技に泣かされる。日本的悲劇といった感じの、ラスト近くの弥太郎とお小夜の会話とラストシーンの映像が特に良い。木下忠司の音楽も効果的で、まさに哀切の極み。長く忘れがたい一本。(2003/02/12)

関東無宿 かんとうむしゅく
監督 鈴木清順
公開年 1963年
評点[A’]
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関東無宿
関東無宿

 今日は、鈴木清順監督の『関東無宿』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 渡世の仁義を通したいと願う博徒の鶴田(小林旭)は、弱腰のくせに金には汚い伊豆親分(殿山泰司)やいい加減な弟分の鉄(野呂圭介)を苦々しく思っていた。ある時、吉田組の子分・冬(平田大三郎)と鉄が女のことでトラブルを起こし、冬の姉(伊藤弘子)がかつて鶴田が心惹かれたイカサマ師だったことを知る。

 原作(平林たい子『地底の歌』)があり、この前に石原裕次郎主演で映画化されていたというが、さてこの作品ではどのくらい原作や前作を踏襲しているのだろうか(脚本:八木保太郎 )。第一、主役さえ変えられているらしい。
 設定と粗筋は任侠ものになるのだろうか。しかし冒頭から女子高生たちの、ざーとらしい会話の演技(わざとらしいのはもちろん意図的な演出だろう)が繰り広げられてビックリする。そのうちの一人が伊豆親分の娘トキ子(松原智恵子)で、その友人である花子(中原早苗)が作品のキーパーソンの一人になるのだが。
 一応ストーリーはあるのだが、プロットの繋ぎ方がはっきりしていなくて、観ている場面が現実なのか空想なのかよくわからなくなり、最後には、これは全て鶴田の妄想か? とも思ってしまった(笑)。しかしながら、この奇妙な感覚は好みの合う人には楽しめるだろう。個人的には嫌いではない。
 時々カラーライトを使ったりするなどカラーを強調した絵作りも面白く、殴りこみの場面では後の『東京流れ者』と同じく天変地異が起こる(撮影:峰重義/美術:木村威夫/照明:三尾三郎)。
 冬の姉の情夫であるイカサマ賭博の名人として伊藤雄之助が登場して、相変わらず強い印象を残す。(2005/01/16)

十三人の刺客 じゅうさんにんのしかく
監督 工藤栄一
公開年 1963年
評点[A’]
感想
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十三人の刺客
十三人の刺客

 今日は、工藤栄一監督の『十三人の刺客』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 将軍の実弟にして明石松平家十万石の当主である松平斉韶(菅貫太郎)の乱行を幕府に訴えるため、明石藩の江戸家老が切腹した。老中・土井大炊頭利位(丹波哲郎)ほか幕府の重臣は松平斉韶の暗殺を図り、目付の島田新左衛門(片岡千恵蔵)ら腕利きの旗本を刺客として放つ。島田は旧知の倉永左平次(嵐寛寿郎)等の助けを借りて計画を進めるが、明石藩側もそれを察知して待ちかまえていた…。
 いわゆる“集団時代劇”のハシリで、もちろんラストの集団殺陣が売り。しかし、戦闘に至るまでの計画も、それらしく描写されている。ただ、リアリズムに徹しているのはいいが、残酷で見るに堪えないところがあった。んでも、西村晃の死に様はサイコー(笑)。山城新伍と藤(富司)純子は、なんのために出てきたのかわからん。
 脚本の池上金男は、のちに池宮彰一郎名義で『四十七人の刺客』を書き下ろしたはいいが、市川崑監督にあんなにされちゃって…(笑)。(2000/09/24)

わんわん忠臣蔵 わんわんちゅうしんぐら
監督 白川大作
公開年 1963年
評点[A’]
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わんわん忠臣蔵
わんわん忠臣蔵

 今日は、アニメ映画の『わんわん忠臣蔵』を観た。演出(監督)は白川大作で、昭和三十八年(1963)の作品。

 森の動物を虎のキラー(声:西村晃)から守ろうとした犬のシロ(声:水木蘭子)は、キラーとその腰巾着の狐アカミミ(声:加茂喜久)の姦計にはまって殺される。シロの息子ロック(声:堀絢子・木下秀雄)はすぐさま仇討ちしようとするが、当然かなうべくもなくいったん町に逃れる。しばらくのち、成長したシロは総勢47匹の犬の仲間と共にキラーと子分たちに戦いを挑む。

 東映オリジナル長編アニメの一本。“原案構成”という名義の手塚治虫の名が最も目立っているが、どのくらい関与したのだろうか(脚本: 飯島敬・白川大作)。演出助手の一人は、のちに『空とぶゆうれい船』『どうぶつ宝島』を演出した池田宏で、動画スタッフの中に森康二(森やすじ)と小田部羊一の名がある。
 ディズニーアニメを意識して作られたそうで、キラーのデザインはちょっとディズニー的なものを彷彿とさせるし、作中に登場する山の家や森の景色は日本的なのに、町の風景や港の様子は西洋的で無国籍調になっている。野良犬たちのキャラクターデザインもバタ臭いかも。ただし、眼の描き方や表情そして動きなどは日本的で違和感はない。
 粗筋にひねりはなく、のちの日本製アニメと比べるとシンプルだが、その代わりキャラの動きで惹きつけるようになっている。全体を通じてアクションが豊富で、工夫されていて楽しく、動きも非常に良い。大人の視点で観てしまうとストーリーにもう一味欲しいような気もしないではないけれども、現在でも通用する良さを持っている作品。特に子供は現代っ子でも楽しめるかも。
 キラーを演じている西村晃は普段とは違う発声のアニメ向きの声になっているので感心した。その他、花沢徳衛も犬の一人で出演しているそうだが、こちらもよくわからなかった。

 主君ではなく親の仇討ちなので全然『忠臣蔵』ではなく、雪の日に討入りしたり敵役の名がキラーで主人公ロックの恋人の名がカルー(お軽)という以外は、あまり連想させるところはない。まあ、『わんわん曽我兄弟』では今の人は全然ピンと来ないから仕方ないだろう。
 子供には親の仇討の方が理解しやすいというので変えられたらしい。世界市場も意識したのだろうか。ベネチア国際児童映画祭オゼエラ・デ・ブロンド賞を受賞したという。(2005/04/24)

光る海 ひかるうみ
監督 中平康
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、中平康監督の『光る海』を観た。吉永小百合&浜田光夫主演で、昭和三十八年(1963)の作品。

 卒業式を迎えた大学の英文学科は、多くの女学生に対して男子は7人のみである。その中でも野坂孝雄(浜田光夫)は人気があって、バーを経営している母親(高峰三枝子)と母一人子一人の石田美枝子(吉永小百合)と、葉山和子(十朱幸代)の二人と友達づきあいをしている。孝雄は特に和子のことが気になって、和子も意識しているが、お互い一歩を踏み出せない。一方、三枝子も孝雄が好きだが、母親の再婚話がもちあがって……。

 原作は石坂洋二郎(脚本:池田一朗)。原作者の作風に加えて、中平監督の演出で登場人物たちの軽快な会話が続くが、しゃべりっぱなしという印象がある。また、美枝子の母親の再婚話が進むとシリアスになっていくが、他の部分とちょっとバランスが悪いような気がする。
 美枝子の母親の再婚相手に森雅之。その妻(作中で死亡)役は田中絹代。ベテラン俳優たちの中でも、田中絹代の大物感が凄い。(200/02/28)

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昭和三十八年(1963)
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