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昭和四十年(1965)

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大根と人参 だいこんとにんじん
監督 渋谷実
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、渋谷実監督の『大根と人参』を観た。昭和四十年(1965)の作品

 山樹東吉(笠智衆)は、長年働いて建てた自宅に妻(乙羽信子)と末娘の恵子(加賀まりこ)と住んでいる生真面目な会社員。大学時代の同級生の秋山(信欣三)が癌になり、告知すべきか否かで同じく同級生の鈴鹿(山形勲)と争ってしまう。その上、弟の康介(長門裕之)が会社の金を使い込んでしまったと泣きついてくると、東吉は思わぬ行動に出て皆を驚かせる。

 小津安二郎が遺作『秋刀魚の味』の次に監督する予定で野田高梧と共作した脚本を基にした作品で、「小津安二郎記念作品」と銘打たれている。ただし、この作品では脚本の名義は白坂依志夫と渋谷実になり、小津安二郎と野田高梧は“原案”とされている。
 実際観てみると、小津作品の雰囲気はほとんど無い。登場人物たちは多少の別はあるものの皆自分勝手で、彼らが早いテンポの会話を交わしながら話が進んでいく。メインキャストを笠智衆以外は小津作品とは縁のなかった面々にしたのも、演出意図の一環であるようだ。岡田茉莉子・司葉子・池部良・岩下志麻などなど、小津作品に出演した俳優たちも“特別出演”として顔を出してはいるが、脇役扱い。
 毒気のある登場人物が形作るコミカルな人間模様とテンポの速さは、まぎれもない渋谷実作品。人生の無常や人間の冷酷な部分を静かに感じさせる小津作品とは異なり、人間の愚かさを表に出して諷刺する渋谷監督のやり方を採っている。ありていに言えば、キャラがかなり下品になっている(笑)。確か、主人公が突飛な行動をする理由も原脚本とは別のものにされているはずだ。
 しかし、終盤はなるほど小津作品らしい雰囲気を見せている。また、題名が出る台詞や終盤に恵子が語る述懐など、キーとなる台詞は元の脚本を尊重しているらしい。
 渋谷監督らしい部分と小津ワールドの部分との違いがちょっとはっきり出すぎているような気がするが、渋谷監督が好きな人なら渋谷作品として楽しめると思う。小津好きの人はどう思うかわからないが。(2004/12/27)

怪談 かいだん
監督 小林正樹
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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怪談
怪談

 今日は、小林正樹監督の『怪談』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の“Kwaidan”から、「和解」「雪女」「耳なし法一の話」「茶碗の中」のエピソードを基にしたオムニバス。「和解」だけは「黒髪」と改題されている。

 どれも、恐怖よりは映像美を重視しており、セットが豪華。中でも「雪女」と「耳なし法一」は様式化された舞台的なセットが面白い。特に後者は、壇ノ浦の合戦と、法一(中村賀津雄)が平家の亡霊の前で琵琶を弾き語りするシーンの処理が見事で美しい。法一を迎えに来る武者の亡霊が丹波哲郎ってのはハマり過ぎで面白い(笑)。彼の体に経文を書く住職に志村喬。「雪女」は岸恵子で、彼女を妻にする青年は仲代達也。(2001/07/19)

忍法忠臣蔵 にんぽうちゅうしんぐら
監督 長谷川安人
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、丹波哲郎主演の『忍法忠臣蔵』を観た。監督は長谷川安人で、昭和四十年(1965)の作品。

 江戸城の大奥を守る伊賀同心の一人である無明綱太郎(丹波哲郎)は、許婚(桜町弘子)を将軍に奪われて出奔する。ふとしたことから米沢上杉家の家老・千坂兵部(西村晃)と知り合った綱太郎は、くの一たちを率いて色仕掛けで大石内蔵助(大木実)以下の赤穂浪士たちの士気をくじいてほしい、と頼まれる。

 原作は山田風太郎の伝奇小説(脚本:加藤泰・高田宏治)。お色気忠臣蔵(?)といった感じの筋だが、モノクロ撮影でハードボイルドな雰囲気。もっと荒唐無稽なくらいでも良いかも、と思った。お色気シーンも今から観るとそれほどでもないし、もう少し忍法合戦を観たかった。
 丹波センセイのインチキ臭い雰囲気は良い。大木実の大石内蔵助も、内蔵助のイメージに合っていたと思う。 (2002/11/08)

殴り込み侍 なぐりこみざむらい
監督 松野宏軌
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、松野宏軌監督の『殴り込み侍』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 浪人・淡島蟹右衛門(長門勇)は突然、山道で斬られて死にかけていた男に大金を託される。それを期限までに届けるため、金を狙う者たちを追い払いながら歩を進めていると、ある藩の暴君が引き起こす事件に巻き込まれてしまう。

 題名から想像していた内容とは異なり、とぼけた感じの長門勇が主人なのが意外だった。特定の原作は無いようだが、元ネタは『走れゴメス』、もとい、『走れメロス』(脚本:犬塚稔)のようだ。主人公が意図せず事件に遭う“巻き込まれ型”の展開で、色々な事件が続いて飽きさせないけれども、ちょっと作りすぎかな、という感もある。それと、ラストいきなり“傾向映画”っぽくなるのも意外というかなんというか。主人公が名前どおりの剣法を操る殺陣は面白い。重要キャラとして大友柳太朗が出演。(2002/12/16)

赤ひげ あかひげ
監督 黒澤明
公開年 1965年
評点[A]
感想
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赤ひげ
赤ひげ
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黒澤明
黒澤明 :
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 今日は、黒澤明監督の『赤ひげ』を観た。昭和四十年(1965)年の作品。原作は、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』。

 時は幕末近く、幕府の御典医への道を歩むべく長崎への遊学から帰った保本登(加山雄三)はなぜか、貧民への施療をおこなっている小石川養生所に配属される。彼は、そこの主“赤ひげ”こと新出去定(三船敏郎)に反発するが、赤ひげの人柄と養生所を訪れる人々に触れることによって成長していく。

 映画が斜陽になった時代、危機感を抱いた黒澤監督の意気込み充分に作られた作品。撮影に1年をかけ、完成まで足かけ2年を費やした大作。
 権威主義的だとかヒューマニズムを振り回しすぎだとかいう批判があったそうで、確かに黒澤的な説教臭さや台詞の多さはあるが、この作品では、さほど鼻につくほどではないと思う。かなり以前、原作を読んだことがあるけれども、その目で観ても、山本周五郎の描くシリアスなエピソードをパワフルな演出で、ほぼ完全に映像化することに成功している。各挿話ごとに感動の波に襲われる傑作。若い医学生を演じた加山雄三が好演。
 ちなみに、批判の対象となった「こんな乱暴はよくない。医師ともあるものがこういうことをしてはいけない」という台詞は、映画オリジナルではなく原作にもある。(2001/04/01)

冷飯とおさんとちゃん ひやめしとおさんとちゃん
監督 田坂具隆
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、中村錦之助主演の『冷飯とおさんとちゃん』を観た。監督は田坂具隆で、昭和四十年(1965)の作品。

 「冷飯」:本の虫の大四郎(中村錦之助、のち萬屋錦之介)が、いつも道ですれ違う武家娘(入江若葉)を好きになって嫁にしたいと思うが、四男坊の自分は部屋住みの冷や飯食いであることに気づいてあきらめる。しかし、彼の実直さがその運命を変える。
 「おさん」:大工の参太(中村錦之助)は、惚れ合って一緒になった妻おさん(三田佳子)の奔放な性に疲れて家を出て上方に出た。しかし、彼女を忘れられず江戸に戻り、彼がいなくなったあとのおさんの様子を知る。
 「ちゃん」:重吉(中村錦之助)は昔かたぎの腕の良い職人だが、時代に取り残され毎日のように酔いつぶれて憂さを晴らしている。女房お直(森光子)や長男の良吉(伊藤敏孝)を始めとする家族は、そんな彼を温かく見守る。

 山本周五郎の短編『ひやめし物語』『おさん』『ちゃん』を基にしたオムニバス作品。
 「冷飯」は、ちょっと抜けた感じの若者がその性格のおかげで幸せをつかむという明朗時代劇で、錦之助の柄のおかげか、観ていて彼が棚ボタをつかんだという気にもならず、後味が大変に良い作品。兄を演じた小沢昭一や、主人公が古本を仕入れる屑屋を演じた浜村純がいい感じ。
 「おさん」は、前半部分は同僚に悩みを打ち明ける参太の、山本周五郎流の観念的な長台詞が気になった。江戸時代の庶民があんな言葉を使っただろうか。しかし、後半になって参太が江戸でおさんを捜し求めるようになると、おさんと彼女を愛してしまった男たちの悲哀が伝わってきて良くなる。おさんのために落ちぶれた男を演じた大坂志郎が特に良い。
 「ちゃん」は、山本周五郎の理想主義的なところが現れた、『江戸は青空』(『かあちゃん』)を彷彿とさせる、お人よし一家の物語。どうも、この手の物語には現実感がなくて苦手。山本周五郎が「かくあるべし」と考える世界を描いたということはわかるのだが。錦之助も、しょぼくれた親父を演じるにはまだ若すぎるような。綺麗なんだもの。錦之助に惚れている飲み屋の女将(渡辺美佐子)は、いい感じだった。

 全体にテンポは緩やかでちょっと長い感じがする。だが、大変に作りが丁寧な雰囲気がした。非常に映像が美しく、眉を剃ってお歯黒をした女性キャラがいるのがリアル。(2003/06/21)

網走番外地 あばしりばんがいち
監督 石井輝男
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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網走番外地
網走番外地

 今日は、石井輝男監督の『網走番外地』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 網走刑務所に送られてきた橘(高倉健)は実家の妹と病身の母(風見章子)を思い、保護司・妻木(丹波哲郎)の助言に従って、おとなしくお勤めを済まそうとしていた。しかし、雑居房のボス格の依田(安部徹)と権田(南原宏治)は橘を目の仇にし、彼らの脱走計画に巻き込まれてしまう。

 長いシリーズものになった『網走番外地』第一作(原作:伊藤一/脚本:石井輝男)。第一作の好評を受けてシリーズ化されたそうなので、この一本でストーリーはまとまっている。
 若い高倉健の客気と彼を見守る老囚人を演じた嵐寛寿郎の妙味が特に良い。悪役たちは少し類型的なキャラクターだが、後半に入ってからの権田を演じた南原宏治の徹底した卑しさ・汚さは凄い。それでいてユーモラスな雰囲気もあるので陰惨にならず後味が悪くない。刑務所が舞台だがじめじめした雰囲気ではなく、どことなくカラッとしている。
 昭和四十年になってもモノクロ撮影で低予算映画だったらしいが、1時間半をメリハリ良くテンポ良く進み、石井監督の演出力を感じさせられるよくまとまった佳作。(2005/07/03)

未成年 続・キューポラのある街 みせいねんぞくきゅうぽらのあるまち
監督 野村孝
公開年 1965年
評点[C]
感想  今日は、吉永小百合主演の『未成年 続・キューポラのある街』を観た。監督は野村孝で、昭和四十年(1965)の作品。

 あれから3年。ジュンは希望通り大企業の工場に就職し、働きつつ定時制高校に通っていた。だが父の辰五郎(宮口精二)は相変わらずで、家族とも会社の若い者や社長ともうまくいかない。そんな折、かつて辰五郎と働いていた克巳(浜田光夫)が会社を作ったり、北朝鮮へ帰った金山ヨシエから父が病に倒れたので日本人妻の美代(菅井きん)に連絡してほしいという手紙が来たりする。

 『キューポラのある街』の続編。原作者は同じ早船ちよだが、脚本が田村孟になるなど監督も含めてスタッフ・キャストのかなりの部分が変更されている。
 前作同様“貧乏”の描写が中心となることは変わらないが、メッセージ性はさらに強くなってストレートになり、教条主義的にすら感じられる。登場人物の生活の描写が薄れたため、コチコチの場面ばかりで肩が凝る。ストーリーは原作に沿ったものなのかもしれないけれども、脚本と演出によって加えられるふくらみがほとんどないような気がする。また、無教養な人間に対する蔑視感のようなものがあるのが気になる。悲惨な描写をすることによって“犠牲者”として描いているのかもしれないが、それもまた見下した視点なのでは……。

 “北朝鮮帰還事業”への言及も前作以上になっている。いきなり冒頭に北朝鮮人民のプロパガンダ写真が映し出され、後半でジュンが朝鮮高等学校の生徒と一緒に日本人妻に会いに行ったり、その生徒の言葉にジュンが感動させられるなど、現在の眼で見るとただただ驚かされる。
 前作はブラックユーモアと評したが、この作品ではそれを超えたナンセンス劇、まるで夢のようだ。たとえ当時は北朝鮮の実情を知らされていなかったとしても、北朝鮮と日本の“自由往来”ができないことなど不自然だとは感じなかったのだろうか、と思う。“自由往来”できないことを日本側の責任のように言っているが……。(2004/12/16)

狸穴町0番地 まみあなちょうぜろばんち
監督 木村恵吾
公開年 1965年
評点[C]
感想  今日は、木村恵吾監督の『狸穴町0番地』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 麻布狸穴町に住む狸たちは、世知辛くなった人間を化かせなくなった上に周囲の開発で追い立てられ、生活が苦しくなってきた。古狸の泥八(花菱アチャコ)とその母おたね(武智豊子)は、娘おくろ(高田美和)を人間の娘に化けさせて働きに出すことにする。クラブで働くことになったおくろは、若い従業員・公彦(西郷輝彦)が気になってしまう。

 戦前からの狸映画の巨匠・木村監督の作品。狸映画は普通ファンタジー的なものだが、この作品は現代の日本を舞台にしている(脚本:桜井康裕・小滝光郎・木村恵吾)。
 西郷輝彦が共演者なので、彼の歌を含めた当時の流行歌がよく流れるが、その挿入の仕方が無理矢理で作品のテンポを損ねて退屈なものにしてしまっている。ヒロインの性格も暗くて、観ていてげんなり。
 高度成長期の日本では狸よりも人間の方がずる賢くなったという設定を生かすのなら、センチメンタルな部分や歌を極力少なくして徹底的に諷刺喜劇にし、『昭和狸合戦ぽんぽこ』にしてしまえば良かったと思うが、映画が斜陽になった当時は西郷輝彦の人気を当てこまねばならなかったのだろうか。
 昭和四十年では狸映画を作るのはもう無理だったのだな、と思わされる作品。実際、木村監督最後の作品らしい。昭和四十年ごろの風俗流行を知るためには役に立つ作品かもしれない。(2005/02/28)

続網走番外地 ぞくあばしりばんがいち
監督 石井輝男
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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続網走番外地
続網走番外地

 今日は、石井輝男監督の『続網走番外地』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 網走で刑期を終えた橘真一(高倉健)と大槻(アイ・ジョージ)、そして青函連絡船乗り場で橘の懐中を狙った女スリのユミ(嵯峨美智子)の三人は本土へ向かうが、函館で起こった強盗殺人事件に巻込まれ、自ら真犯人を探そうとする。

 『網走番外地』の好評を受けて急遽製作が決まった続編。題名を引き継いでいるので前作同様に一応原作の名義(伊藤一)はあるが、石井監督のオリジナル脚本らしい。予算も増えてカラーになっている。
 青函連絡船に橘たちがのる最初のシークエンスから個性豊かなメインキャストの多くが顔を見せ“つかみ”はOK。様々な場所でよく動いて飽きさせない。橘・大槻・ユミ以外にもドサ回りストリッパー集団の姉御分の路子(三原葉子)とそのヒモのような夫(大坂志郎)、謎の男・吉本(中谷一郎)など、ユニークなキャラたちが揃っている。
 青森に降り立った橘と大槻がアッと驚く商売をするなど、全体に前作よりもコミカルで明るいムードになっているが、締めるところは締めてラストの大立ち回りなどアクションも充分。前作にあった人情噺的な要素や哀愁を感じさせるような部分は少ない。
 続編は正編に及ばないことが多いが、この作品は前作とはまた一味違った良さを持った娯楽性に豊む佳作になっていると思う。(2005/09/06)

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