Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE
昭和四十四年(1969)
風林火山 ふうりんかざん
監督 稲垣浩
公開年 1969年
評点[B]
感想
Amazon
風林火山
風林火山

 今日は、稲垣浩監督の『風林火山』を観た。昭和四十四年(1969)の作品。

 浪々の身から武田家の軍師となった山本勘助(三船敏郎)は姦計によって隣国の諏訪家を滅ぼし、その遺児の由布姫(佐久間良子)は武田晴信(中村錦之助、のち萬屋錦之介)の側室にされた。勘助は由布姫とその子・勝頼(中村勘九郎、のち中村勘三郎)のために尽くすことを決意し、やがて晴信から信玄と名を改めた主君と共に川中島での上杉謙信(石原裕次郎)との対決に臨む。

 三船敏郎の三船プロダクションによる井上靖原作の映画化(脚本:橋本忍・国弘威雄)。同じく独立プロを率いていた中村錦之助と石原裕次郎が共演している。
 冒頭は主人公が計略を以って武田家にもぐりこんで活躍する展開なので、戦国の非情な弱肉強食の世界を描いているのかと思ったら、意外や勘助はロマンティストでメロドラマ的になるので拍子抜け(?)。
 ただし、かなり甘い感じのキャラクターたちとストーリーではあるものの、2時間45分の大長編ながらも展開に抑揚があり、セットや登場人物の衣装そして合戦シーンなど大がかりで見ごたえがあるので結構楽しめる。さすがに途中で集中力を持続するのに努力を要するところもあったが。悪くすると冗長になってしまうこともある、ケレン味のない稲垣演出も、この作品では男のロマンと哀愁をかもし出して成功したか。
 終盤の川中島合戦では霧の深さと規模に驚いた。スモーク焚きまくりで大変だったろう(撮影:山田一夫)。(2005/04/16)

長靴をはいた猫 ながぐつをはいたねこ
監督 矢吹公郎
公開年 1969年
評点[A’]
感想
Amazon
長靴をはいた猫
長靴をはいた猫

 今日は、アニメ映画『長靴をはいた猫』を観た。監督(演出)は矢吹公郎で、昭和四十四年(1969)の作品。

 ネズミを助けたので猫の世界のおたずね者となった猫ペロー(声:石川進)は、兄たちに家を追い出された人間のピエール(声:藤田淑子)と一緒に旅に出る。ある国のローザ姫(声:榊原ルミ)が魔王ルシファ(声:小池朝雄)に狙われていることを知ったペローは、ピエールに姫を助けさせようとする。

 東映オリジナル長編アニメの代表作の一つ。シャルル・ペローの童話が原作ということになっている(脚本:井上ひさし・山元譲久/ギャグ監修:中原弓彦)。
 今のアニメに比べると映像的にはおとなしいものだが、手描きセルによるフルアニメの動きがいい感じ。落ち着いて観られるというか。ギャグもやりすぎず、くどくなく適度な押さえが効いているのがよい。ペローたちとルシファが戦う終盤は盛り上がりを見せ、オチも好印象。
 原画スタッフとして宮崎駿や大塚康生が名を連ねている。確かに、中世風の城や機械時計、塔での追いかけっこや悪人に連れ去られる姫など、この作品には『カリオストロの城』に登場するモチーフの原型がある。また、声優の中に愛川欽也と水森亜土の名があった。
 この作品、公開当時に映画館で観られた人がうらやましいなー、と思った。(2003/02/03)

千夜一夜物語 せんやいちやものがたり
監督 山本暎一
公開年 1969年
評点[C]
感想
Amazon
千夜一夜物語
千夜一夜物語
Amazon
虫プロ・アニメラマ DVD-BOX (千夜一夜物語 / クレオパトラ / 哀しみのベラドンナ)
虫プロ・アニメラマ
DVD-BOX
千夜一夜物語
クレオパトラ
哀しみのベラドンナ

 今日は、アニメ映画の『千夜一夜物語』を観た。監督は山本暎一で、昭和四十四年(1969)の作品。

 バグダッドへ行商に来た水売りアルディン(声:青島幸男)は、市場で売りに出されていた美しい奴隷女ミリアム(声:岸田今日子)に一目惚れ。彼女をさらって逃げ出したのがきっかけで、世にも不思議な大冒険を始めることになった。

 虫プロダクション製作の長編アニメ第一弾で、大人向きのアニメという意味で“アニメラマ”と称している。手塚治虫が製作総指揮で、構成・脚本の一人としても名を連ねている(他に深沢一夫・熊井宏之)。また、作画スタッフにも出崎統・杉井ギサブロー・杉野昭夫といった、のちの大物たちの名が見える
 大人向けということで官能的な描写がある『アラビアンナイト』を題材にしたとしても、エロ描写が多すぎる。大人向けすなわちエロというのは安易ではないだろうか。それほど当時のテレビアニメでは性的な表現に対する制約が強くてスタッフたちは鬱憤が溜まっていたのかもしれないが。
 象徴的に性交を表現する描写など時々面白いところもあるものの、エロ場面が多すぎて食傷する。129分ほどの長編作品だが、余計な部分をカットしたら90〜100分くらいになるのでは。
 その他の部分も、イメージシーンや実写との合成など意欲的に実験的手法を取り入れている。しかし、その後のアニメ技術の進歩によって、現代人の目で見ると、それほどのものとも思えなくなってしまったのは、いたしかたないだろうか。

 主演の青島幸男は意外なほど、飄々とした語り口で風来坊の主人公を好演している。岸田今日子以外にも芥川比呂志・小池朝雄・小池朝雄など演劇人が参加しているのは良いとして、遠藤周作・吉行淳之介・北杜夫・小松左京・大宅壮一ら多数の作家・文化人たちまでカメオ出演しているのは、“高級”な文化に対するアニメ・マンガ界の劣等コンプレックスを表しているような気がするが……。(2005/02/11)

空飛ぶゆうれい船 そらとぶゆうれいせん
監督 池田宏
公開年 1969年
評点[C]
感想
Amazon
空飛ぶゆうれい船
空飛ぶゆうれい船

 今日は、劇場用アニメの『空飛ぶゆうれい船』を観た。監督(演出)は池田宏で、昭和四十四年(1969)の作品。

 その頃、世界の海には謎の幽霊船が出没して多くの船を沈めていた。平和に暮らしていた隼人少年(声:野沢雅子)も街を突然襲った巨大ロボットによって両親を殺され、それを操っているとされる幽霊船長(声:納谷悟郎)に対する復讐を誓うが、思わぬことから事件の真相と黒幕を知る。

 石森章太郎(石ノ森章太郎)原作『ゆうれい船』のアニメ化(脚本:辻真先・池田宏)。原画スタッフの一人として宮崎駿の名もある。
 あの『太陽の王子 ホルスの大冒険』の翌年の作品で、同じく強い思想性を持ったアニメ作品になっている。日本の大企業が“国防軍”と癒着して戦車から戦闘機に至るまでの軍需産業で儲けていたり、世界を支配しようとする組織が世界中で清涼飲料水を売りまくり、それを飲みすぎると体が溶けて消えてしまうという設定は、皆モデルを連想できる。コーラを飲むと骨が溶けるって、私が子供の頃もまだ言われていたな。
 『ホルスの大冒険』以上にメッセージ性が露骨で、とにかく大企業=悪である作品をよく作ることができたと思うが、当時の東映動画労働組合の力がそれだけ強かったのだろう。しかしながら、主人公とヒロインが悪の組織と戦う動機が両親の仇討ちだったりして私怨と公憤をごっちゃにしているところは、思想性というよりも労働条件が劣悪なアニメーターたちのドロドロしたルサンチマンを感じられないでもない(笑)。
 ジュースを飲んで人間の体が溶けたり幽霊船長がのんきに幽霊船の構造を主人公に説明しようとしたり時々脱力感を誘う笑いの場面があり、当時としては奇抜な巨大ロボ“ゴーレム”と幽霊船のメカニズムなど見どころもあり、メッセージ性の異常な強さも含めて今の大人が観るとある意味「面白い」作品ではあるが(子供はどう思うだろう?)、現在ではやはり名作というよりも珍品になってしまうように思う。

 ゴーレムが街を襲い、それを戦車が攻撃するモチーフはテレビ版『ルパン三世』(1978〜1980年放映版)の最後のエピソードにちょっと似ている。宮崎駿が関与してるし。(2004/12/02)

少年 しょうねん
監督 大島渚
公開年 1969年
評点[A]
感想
Amazon
少年
少年

 今日は、大島渚監督の『少年』を観た。昭和四十四年(1969)の作品。

 父(渡辺文雄)と母(小山明子)とチビ(木下剛志)、そして少年(阿部哲夫)の一家は、“当たり屋”を生業としていた。少年の目から見た家族と世界の姿。

 昭和四十一年に話題となった、実在の当たり屋一家を題材とした田村孟の脚本を映画化。
 なんといっても“少年”の暗い目とモノローグが素晴らしい。意識的な演技は出来ないであろうチビも良い。大島監督の演出力に感服。沈んだ色調の冷たい画面(撮影:吉岡康弘・仙元誠三)の中で、静かな迫力がある。(2001/04/17)

私が棄てた女 わたしがすてたおんな
監督 浦山桐郎
公開年 1969年
評点[A’]
感想  今日は、浦山桐郎監督の『私が棄てた女』を観た。昭和四十四年(1969)の作品。

 自動車販売会社に勤める吉岡(河原崎長一郎)は美しい女性社員マリ子(浅丘ルリ子)と交際していたが、彼女は社長の姪であり、打算半分の付き合いだった。生活に虚しさを覚えている吉岡は、学生時代に付き合って捨てた女・森田ミツ(小林トシ江)と偶然再会する。彼女は相変わらず与えることしか知らない女だった。

 遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』の映画化(脚本:山内久)。
 学生時代に安保闘争に参加していながら、現在はしっかり企業の歯車の一つになっていることに強い喪失感を抱いている主人公・吉岡、陰りのある彼に惹かれるマリ子、愛を与えることしか知らない田舎娘ミツ、の三人が中心で、吉岡が学生時代の付き合いを回想したり、現在では再会したりして、作中時間は現在と回想とがたびたび交錯する。
 暗いストーリーであり、あまりにもミツが哀れなので見ていてしんどくなるが、登場人物の心情描写が巧みなので、単に悲惨さを強調しただけの社会派的作品とは趣が異なる。リアルな貧乏の描写の中にシュールなシーンが現れたりして、映像にも力がある。
 主人公は自分勝手だし、ミツという女もなぜそこまでするのかわからず、男が作り出した身勝手な理想像なのかもしれないけれども、主役級の三人の演技と映像の力によって、心に残るものはある作品。(2005/03/16)

新選組 しんせんぐみ
監督 沢島忠
公開年 1969年
評点[B]
感想
Amazon
新選組
新選組

 三船敏郎主演の『新選組』を観た。監督は沢島忠で、昭和四十四年(1969)の作品。

 上洛する将軍を警護するための浪士隊に応募した近藤勇(三船敏郎)や土方歳三(小林桂樹)たち。剣の力で京の街を支配した全盛期から官軍に敗れるまでの近藤以下新選組の盛衰を描く。

 おなじみ新選組ものの一作。監督は沢島忠だが、東映時代の特色は薄れているように見えた。ただし、その中でも商人の息子の河合喜三郎(中村賀津雄、のち嘉葎雄)の描き方が光っていた。中村賀津雄が東映時代の作品によく出演していたからだろうか。中村錦之助(萬屋錦之介)も有馬藤太役で出演していたが本当に脇役なので、もったいないような気がした。何かメインキャストで登場させたかったような。
 ちょっと平板な中、前半部分で登場していた芹沢鴨役の三國連太郎の存在感が凄い。大きな体格を生かした、見掛け倒しの豪快さんといった感じの薄っぺらい雰囲気が見事。 北大路欣也の沖田総司は強そうで意外と良かったが、その最期の描き方には疑問が残った。(2004/02/17)

昭和四十四年(1969)
掲示板 Return to年代順邦画備忘録Top pageHOME PAGE