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昭和六十一年(1986)
映画女優 えいがじょゆう
監督 市川崑
公開年 1986年
評点[C]
感想  今日は、NHK衛星で放映された市川崑監督の『映画女優』を観た。昭和六十一年(1986)の作品。吉永小百合の主演99本目の映画。

 大正末期から半世紀以上にわたって映画界で活躍し、“映画女優”の代名詞となった女優・田中絹代(1909-1977)の半生。

 いやぁ、驚いた。噂には聞いていたけれども、別の意味でこれほど凄い作品だとは思わなかった。登場人物たちが感情も状況も台詞で全て説明してしまい、会話のシーンは妙なカット割りで話がかみ合っておらず、各々勝手にしゃべくりまくっているように見えるし。
 田中絹代と運命的な関係にあった溝口健二……いや、彼をモデルとした溝“内”健二役に菅原文太。文太兄ィとは……まぁ、頑固そうな感じはよく出ていた。実在した人物の多くが仮名になっている。田中絹代の若い頃の一時期“事実婚”状態にあった清水宏は清光宏(渡辺徹)、彼女の初主演作品を監督した五所平之助は五生平之助(中井貴一)、松竹大船撮影所長の城戸四郎は城都四郎(石坂浩二)……というように。
 吉永小百合も、頑張ったんだろうけどねぇ……田中絹代と比べてしまうと……。それに、あのラストはなんだろう。まさしく尻切れトンボ。
 でもまぁ、観るべき所を映像に見つけられなくもない。昭和初期の撮影所の風景や、古い日本家屋の暗い室内に陽光が差し込んでくる様子が、よく再現されている。(2000/12/10)

鑓の権三 やりのごんざ
監督 篠田正浩
公開年 1986年
評点[B]
感想  今日は、篠田正浩監督の『鑓の権三』(やりのごんざ)を観た。昭和六十一年(1986)の作品。

 出雲の国、松江藩の笹野権三(郷ひろみ)は、槍の名人で美男の聞こえも高い。彼が茶の湯によって出世しようとして、茶の師匠・浅香市之進(津村隆)が参勤交代で留守中であることから、その女房おさゐ(岩下志麻)から秘伝の教えを受けようとすると、権三をこころよく思わない川側伴之丞(火野正平)は、おさゐと権三が密通していると騒ぎ立て、二人は窮地に陥る。

 原作は近松門左衛門の同題の浄瑠璃(脚色:富岡多恵子)。篠田監督の近松作品は、『心中天網島』に続いて2作目だそうだ。
 郷ひろみと岩下志麻という異色の組み合わせ。岩下志麻は相変わらずの演技で、ヒロミ・ゴーは、ちょっと堅い感じがした。心中ものであるが、溝口健二作品のようなパッションの表出が無く、淡々と進んでいるように見えるため、二人が追い詰められる心情が少々わかりづらく、126分の上映時間が長く感じられる。浅香市之進が江戸から帰ってきてからは盛り上がってくるが。
 宮川一夫による映像は、シャープで美しい。チョンマゲや衣服など厳密な時代考証がされていて、溝口作品よりも画質が良くカラーなので、資料として役立つ作品かもしれない。(2001/08/26)

うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー うるせいやつらふぉおらむざふぉおえばあ
監督 やまざきかずお
公開年 1986年
評点[C]
感想
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劇場版うる星やつら ラム・ザ・フォーエバー
うる星やつら4
ラム・ザ・フォーエバー

 今日は、やまざきかずお監督のアニメ映画『うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー』を観た。昭和六十一年(1986)の作品。脚本は井上敏樹&やまざきかずお、キャラクターデザインは高田明美。

 ラム(声:平野文)と諸星あたる(声:古川登志夫)は、面堂終太郎(声:神谷明)やメガネ(声:千葉繁)たちクラスメートと自主製作映画を撮影していた。撮影中、面胴家の庭に生えている桜の老木を切り倒すと、友引町が異常気象に襲われたり、ラムの超能力が弱まる等の異変が起こる。そして、ついにはラムが姿を消し、皆は謎を探ろうとする。

 『うる星』劇場版の第4弾。公開後にテレビアニメも終了したので、サブタイトルが暗示するように一つの区切りとなる予定の作品だったらしい。しかし…。
 作品の舞台として設定されている友引町がストーリーの鍵となっていて、『ビューティフル・ドリーマー』の影響を強く受けているようだが、意余って筆足らずというか、テーマを表現するための構成力も演出力も不足。終盤は支離滅裂で、メカや戦争が出てきたのは制作者が遊んでごまかしたようにさえ見えた。脚本を執筆した2人の意見のすりあわせが上手くいかなかった面もあるらしい。でもねぇ…。
 絵そのものは綺麗なだけに惜しい。ただし、背景は繊細なタッチで素晴らしいけれども、セル画部分と質感が違いすぎて多少の違和感がある。キャラは前作の『リメンバー・マイ・ラブ』よりは少し大人っぽい感じ。作画監督の土器手司の絵柄のようだ。(2000/11/27)

アリオン ありおん
監督 安彦良和
公開年 1986年
評点[B]
感想
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アリオン デラックス版
アリオン
デラックス版

 今日は、アニメ映画の『アリオン』を観た。監督は安彦良和で、昭和六十一年(1986)の作品。

 古代ギリシア、まだ神と人とが分かたれていなかった時代。地を支配するゼウス(声:大久保正信)と海を支配するポセイドン(声:小林清志)と地下の冥界を支配するハデス(声:大塚周夫)とが相争う中、神々と戦うことになった少年アリオン(声:中原茂)と少女レスフィーナ(声:高橋美紀)の運命。

 『機動戦士ガンダム』で有名な安彦良和が、原作・脚本(田中晶子との共同脚本)・監督を兼ねた作品。キャラクターデザイン協力として漫画家の山岸涼子の名もある。私はガンダム世代のためか、キャラクターデザインが非常になじみやすく感じた。主人公も良いし、レスフィーナも薄幸の少女を描かせたら安彦良和の右に出る者なし。
 内容の方は、神話的世界が舞台のためスケールが雄大で、キャラクターや舞台の設定も凝っている。ゼウスの娘である女神アテナ(声:勝生真沙子)やアリオンの子分のセネカ(声:田中真弓)などのキャラクター設定が面白い。
 ただし、各要素には魅力があるものの、物語の展開やキャラクターの行動が唐突な感がある。アイデアの一つ一つはユニークなのだが、それをまとめる何かが少し足りないように見えた。もう少しで傑作になることができた惜しい作品、という感じ。
 主人公二人の声優は新人だったのか、周りのベテラン声優に比べるとちょっと素人っぽい感じがした。(2003/03/18)

めぞん一刻 めぞんいっこく
監督 澤井信一郎
公開年 1986年
評点[C]
感想
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めぞん一刻
めぞん一刻

 今日は実写版の『めぞん一刻』を観た。監督は澤井信一郎で、昭和六十一年(1986)の作品。

 言わずと知れた、高橋留美子のマンガ『めぞん一刻』の劇場版。浪人生の五代裕作(石黒賢)たちが住む古いアパート一刻館に、管理人さんこと音無響子(石原真理子、のち石原真理絵)がやって来る。若い未亡人である彼女や、一刻館を訪れてくる謎の訪問者たちをめぐる騒動。

 しかし、石原真理子(絵)と石黒賢という謎のキャスティング。石黒賢の演技は寒い寒い…。石原の方も、なんか違う。それに、この脚本の貧しさよ。途中で突然ミュージカル風になったかと思えば、ラストでは意味不明の展開に。原作をどのように解釈したのだろうか。
 唯一の見所は、一刻館の住人が皆ハマリ役に見えること。六本木朱美の宮崎美子は少々健康的すぎるかもしれないが、一の瀬さんを演じた藤田弓子は肥えた身体を躍動させて好演。しかし、あの『泥の河』の母親役を演った人が…(笑)。さらに凄いのが、四谷さんを演じた伊武雅刀。いつも通りの怪演がピッタリはまっている。一刻館にやって来る謎の女と男は、萬田久子と田中邦衛。
 珍品好きの『めぞん』ファンの方は、脇役を目的として観るのも良いかも。ただし、寛容さに自信のある人にお勧め。ちなみに、私がこれを観るのは、かなり以前テレビで一度(七尾こずえ〔河合美智子〕の登場シーンが全てカットされていた)、LDを買って二度目、そして今日また鑑賞して三度目になる。世界中で最も多く実写版『めぞん一刻』を観た人間の1人かもしれない(笑)。

 この作品のLDは94年に中古のものを古本屋でかなり安く買った。新品を定価で買っていたとしたら、“怒りの鉄拳”状態になっていたかも(爆)。(2000/11/17)

海と毒薬 うみとどくやく
監督 熊井啓
公開年 1986年
評点[A]
感想
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海と毒薬 デラックス版
海と毒薬
デラックス版

 今日は、熊井啓監督の『海と毒薬』を観た。昭和六十一年(1986)の作品。

 昭和二十年五月、九州の某帝国大学の医学部では、学部長の座を第一外科の橋本教授(田村高廣)と第二外科の権藤教授が争っていた。橋本教授は少しでも立場を有利にするため、第一外科も陸軍の西部軍と組んで撃墜されたB29の搭乗員の生体解剖をおこなうことにし、下っぱ研究員・勝呂(奥田瑛二)と戸田(渡辺謙)もそれに巻きこまれていく。

 遠藤周作の同題作品の映画化(脚本:熊井啓)。熊井監督が映画化を構想してから実現するまで時間がかかったらしい。
 原作の、キリスト教的信仰をもたない日本人と良心の不在から、映画は人間の一般的な良心の問題にテーマを少し移しているので、よりわかりやすくなっていると思う。モノクロの映像と出演者たちの抑制された演技(悪役的な登場人物は少々ステロタイプ的ではあったが)のおかげで、映画が原作の深みに負けていない稀有な作品。
 緊迫感のある手術シーンと、床を流れる“赤い”血が素晴らしい。また、高みから当事者たちを一方的に断罪するような描き方をしていないのも好ましい。(2002/06/16)

昭和六十一年(1986)
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