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平成十四年(2002)
パルムの樹 ぱるむのき
監督 なかむらたかし
公開年 2002年
評点[C]
感想
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パルムの樹
パルムの樹

 今日は、劇場用アニメの『パルムの樹』を観た。監督はなかむらたかしで、平成十四年(2002)の作品。

 学者フォー(声:清川元夢)が病気の妻シアン(声:香花)のために作った人形パルム(声:平松晶子)は材料のクルップの樹の力によって自ら動き話すことができたが、シアンの死後は長らく動かなくなっていた。あるとき、地底人の女コーラム(声:日野由利加)に不思議なカプセルを託されたパルムは目覚めて動き出し、歌声がシアンに似ている少女ポポ(声:豊口めぐみ)やコーラムの息子シャタ(声:阪口大助)らと共に地底の世界に向かう。

 なかむらたかし自らの原作・脚本によるオリジナル長編アニメ。キャラクターデザインは井上俊之、作画監督は佐々木守。 ジャンルはファンタジーで、登場する不思議な浮遊する植物などはとてもファンタスティックなデザインで美しく面白い。パルムや人間キャラのキャラクターデザインも丸っこく親しみやすいが、監督が描こうとしているテーマはシリアスで重い。それが抽象的というか観念的というか、実に難解に思える。
 世界観の説明がなく、パルムの持つカプセル(“トートの卵”というものらしい)は何か非常に地底人にとって重大なものらしいが、ほのめかされるだけで一向に不明瞭。キャラクターも、パルム・ポポ・コーラムなど多くが精神的に不安定ですっきりしない。パルムなんてまともに動き出すのは作品の半ばを過ぎてからで、それからも妙にわがままだし。
 どうも、幼少時に愛情を得ることのできなかった人間の悲劇、しかしそれは成長してから自らが人を愛することで取り戻すことができる……ということがテーマの一つらしいが、この解釈が正しいか否か自信はない。アニメ映画としては長編の2時間16分の作品だけれども、それ以上に長く感じた。なかむら監督の頭の中には言いたいことが充満していることは察することができるのだが……。
 パルムの持つカプセルやパルム自体が比喩的な存在だとしたら、あまり具体的に描かずに象徴的に描いた方が、それとして受け取りやすくなるのではないだろうか。象徴的なものに詳細な設定を加えてしまうと、観客はそれに対して具体的な説明を求めてしまう。(2005/05/27)

WXIII 機動警察パトレイバー うぇいすてっどさあてぃいんぱとれいばあ
監督 遠藤卓司(総監督:高山文彦)
公開年 2002年
評点[C]
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WXIII 機動警察パトレイバー
WXIII パトレイバー
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WXIII 機動警察パトレイバー SPECIAL EDITION
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 今日はアニメ映画『WXIII 機動警察パトレイバー』を観た。監督は遠藤卓司で(総監督:高山文彦)、平成十四年(2002)の作品。

 2000年、東京湾臨海地区で謎の生物によってレイバーなどが襲われる事件が多発し、多くの犠牲者が出る。警視庁城南署の若い久住武史(声:綿引勝彦)とベテランの秦真一郎(声:平田広明)の捜査によって、東都生物医学研究所という研究機関が浮かび上がる。そこの主任研究員の岬冴子(声:田中敦子)は、偶然にも久住が惹かれていた女性だった。

 ゆうきまさみによるコミック版の「廃棄物13号」というエピソードが原案で、とり・みきが脚本を担当して早くから企画されていたが、延期続きの末にようやく今年(2002年)になって一般公開された作品。原案は謎の人工生物が主題だったが、この映画では二人の刑事と女性の人間ドラマももう一つの柱になっている。
 二人の刑事による捜査シーンなど、映画『砂の器』や『張込み』などの刑事ものを強く意識しているようで、二人の私生活など大変にディテールが細かく描写されているけれども、かえって作りこめば作りこむほど作り物っぽくなってしまうジレンマに陥ってしまっているような感がある。大変に作画レベルが高く演出も細かいのだが、かえって「よくできたアニメ」に見えてしまうというか。言い方は悪いが、そろそろアニメで映画ごっこする段階を卒業しても良いのでは…と思う。
 人間ドラマの方は、あんな行動をする割りには女性の印象が薄いと思う。それと、あのオチは少々安易だと思った。オチに関して言えば、その後を想像させてくれる劇場版第2作の方が良かった。また、人物がかなりリアルタッチになっていて、顔の部品の大きさも実際の比率に近いので、表情が乏しくなってしまっているようだ(岬冴子は無表情な女性だとしても)。いわゆるアニメ絵の目が巨大なのは、それなりの必然性があるということなのだろうか。

 全体にかなり批判的になってしまったが、映像の完成度は非常に高い作品。それだけに、“惜しい作品”という気がする。(2002/12/23)

千年女優 せんねんじょゆう
監督 今敏
公開年 2002年
評点[A]
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千年女優
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千年女優 コレクションBOX (初回生産限定版)
千年女優
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(初回生産限定版)

 今日は、今敏監督のアニメ映画『千年女優』を観た。平成十四年(2002)の作品。

 三十年以上前に引退して隠棲した伝説の映画女優・藤原千代子(声:折笠冨美子・小山茉美・荘司美代子)。“銀映撮影所”閉鎖記念のドキュメンタリーを製作している映像プロダクションの社長・立花源也(声:飯塚昭三・佐藤政道)と若いカメラマン井田恭二(声:小野坂昌也)が彼女の家を訪れると、珍しくインタビューに応ずるという。二人は、今や七十を過ぎた千代子が語る追憶の中に引き込まれていく。

 今監督の『PERFECT BLUE』に続く監督第二作目。前作の現実と非現実の交錯というモチーフはさらに発展し、その二つの世界の間を切り替えるのではなく、時空を越えて自由に行き来するような表現になっている。
 非常に大まかな粗筋は上記の通りだが、ヒロインの語る映画遍歴と日本史とが交錯するストーリーは、なんとも形容しがたい。しかしこの作品は説明無用、映像とノスタルジーの乱舞に我を忘れるべき作品だろう。
 経歴や住んでいる場所(緑とクリーム色に塗られた電車が走り、最近閉鎖された映画撮影所が近い……)が示すようにヒロインは原節子を土台にしているが、さらに山田五十鈴・田中絹代・高峰秀子など映画全盛期を彩った名女優たち全ての出演作を連想させるようなオマージュにあふれている。あの『新しき土』に始まって『晩春』『蜘蛛巣城』『我が青春に悔いなし』『無法松の一生』『君の名は』『青い山脈』『ゴジラ』などなど……。
 この過剰なオマージュと映画撮影所閉鎖記念という設定は、現在では失われた古きよき日本映画に対する鎮魂歌か? と一瞬思ったが、主人公が懸命に“走る”モチーフの反復や賛否両論分かれたという最後の台詞はアクティブなものであり、もしかしたらアニメーション映画という形で日本映画の本流を継承し、新たなものを作っていこうという監督の意思表明かもしれない、とも思った。
 確かに最後の台詞はストーリーの流れにこだわると釈然としないかもしれないが、ヒロイン(=日本映画界?)が単に運命に流されているだけではなかったことを表わしているものとして私はなんとなく納得できた。

 難解なストーリーと、オマージュに溢れていてアニメファンではなく、むしろ普段アニメを観ない邦画ファンが観るべき作品になっているのが賛否両論を巻き起こしたのだろうか。とにかく日本映画を愛する人々全てに観てほしい。あくまで理屈ではなく感覚で受け止める一作だろう。一時間半弱という短さなのに大作を観たような印象を与えられた。

 第5回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門大賞受賞とか海外でもいくつかの賞を受けているそうだが、その割りにはあまり人の口に上らなかった作品という印象だ。実際、私もテレビCMは記憶しているものの、映画館では観なかったし……。もっと邦画ファンに観られて良い作品だと思う。お勧め!(2004/05/07)

刑務所の中 けいむしょのなか
監督 崔洋一
公開年 2002年
評点[B]
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刑務所の中 特別版
刑務所の中
特別版

 今日は、崔洋一監督の『刑務所の中』を観た。平成十四年(2002)の作品。

 漫画家ハナワカズイチ(山崎努)は、ミリタリーマニアが昂じて銃砲刀剣類不法所持・火薬類取締法違反で刑務所送りに。そこは意外にも、刑務官の暴力も受刑者同士の争いもなく規則ずくめの生活を送らされる不思議な世界だった。

 ベストセラーになった花輪和一の同名コミック『刑務所の中』が原作(脚本:崔洋一・鄭義信・中村義洋)。数年前に読んだ記憶の限りでは、大変原作に忠実に作られているように思う。山崎努を初めとして、香川照之・田口トモロヲ・大杉漣などの一癖ある俳優たちも、一風変わった受刑者たちを巧みに実写で再現していた。
 受刑者に与えられる暴力は無く衣食住の心配も無く、日々の食事を美味しそうに食べていて、なんだか幸せそうに見えるくらいだが、どんな人間も規則ずくめの生活に飼いならされていく怖さもちょっと覗かせている点も表現されていた。むしろ、台詞の一つ一つまで原作に忠実すぎて物足りない感がある。かなり面白いし悪くはないのだが、もうちょっとプラスアルファがあっても。また、原作の構成まで再現してオムニバス的な作りになっているが、構成の仕方くらいは映画的にしても良かったような。それと、山崎努は、初犯の漫画家を演ずるにはちょっと年をとりすぎていたような気がするが、仕方ないかな? キャストには俳優以外の有名人も名を連ねているようだ。
 しかし、刑務官による人権侵害を訴える報道や、受刑者同士のギスギスした関係が描かれている『塀の中の懲りない面々』などとは全く違う世界だ。初犯の囚人ばかりの刑務所だからだろうか。(2004/03/08)

平成十四年(2002)
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