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明日は明日の風が吹く あしたはあしたのかぜがふく
監督 井上梅次
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、石原裕次郎主演の『明日は明日の風が吹く』を観た。監督は井上梅次。昭和33年(1958)の作品。

 木場近くの博徒・松文字組の息子の松山健次(石原裕次郎)は、次男坊なので堅気のサラリーマンになっていたが、家の商売が原因で会社の同僚・啓子(北原三枝)との仲も裂かれて無頼の世界に身を投じることになり、敵対する難波田組との抗争に巻き込まれていく。

 日活製裕次郎映画の一本。戦後が舞台なので、登場するヤクザたちは背広姿だが、内容は義理人情を重んずる古風な感じ。北原三枝は意外と影が薄く、裕ちゃんの弟・三郎(青山恭二)の恋人の千鳥(浅丘ルリ子)の方がヒロイン的に見えた。裕ちゃんの兄の良太に金子信雄、着流しの古風なヤクザ役に大坂志郎。(2001/03/18)

新しき土(ドイツ版) あたらしきつちどいつばん
監督 アーノルド・ファンク
公開年 1937年
評点[B]
感想
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新しき土
新しき土

 今日は、アーノルド・ファンク監督の『新しき土(ドイツ版)』を観た。昭和十二年(1937)の日本とドイツの合作作品。日本版の監督は伊丹万作なので、一応は邦画ということに…(Japanese Movie Databaseの『新しき土』の項では日独版と日英版と表記されている)。

 富士山麓の農家の息子から資産家の大和巌(早川雪洲)の養子となって、長らくドイツ留学をしていた大和輝男(小杉勇)は、帰国して大和巌の実娘の光子(原節子)と結婚して大和家を継ぐことになっていた。しかし、ヨーロッパの個人主義の空気に触れた輝男は、それを受け入れられず悩む。彼を見守るドイツ人女性ジャーナリストのゲルダ・シュトルム(ルート・エヴェラー←小杉勇より背が高い!)。

 当時、関係を深めていた日独親善映画。ドイツ版は、ドイツ人への日本紹介映画のような感じ。冒頭から海やら富士山やら火山から地震に至るまで、ヨーロッパには無いものが映し出される。大和家って、すぐ近くに安芸の宮島があって近くでは活火山がドンドコ噴火している。いったいどこにあるんだろう(笑)。
 とにかく、日本人が観ると情景描写が飽きるほどある。時々笑っちゃう部分も。日本の家制度を結局は肯定しているのは同盟関係にあったから当然だろうか。それと、オチも今観るとなんだかね。題名の『新しき土』って、そういう意味だったのか…。
 自然の描写などはありきたりだが、時々ハッとするようなものもある。また、当時17歳の原節子が若くて美しい。セーラー服や水着姿まで拝めます!(露出度は低い)しかし、原節子は西洋人から見るとそれほど美人ではない、という説があるそうだが、実際はどうなんだろう…。

 日本版があったら観てみたいが……例によって現存していないのだろう…トホホ。(2000/12/31)

あなた買います あなたかいます
監督 小林正樹
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、小林正樹監督の『あなた買います』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 プロ野球の東洋フラワーズのスカウト岸本(佐田啓二)は、大学リーグで大活躍中の栗田五郎(大木実)の獲得を目指して動き出した。栗田には野球の恩師だという謎の男・球気一平(伊藤雄之助)がまとわりついていて、岸本は他チームのスカウトたちではなく球気が当面の敵だと思ったが……。

 社会派的作品で知られる小林監督がこれまた社会派的作品の多い松山善三の脚本(松山善三は脚本家としては娯楽作品も多いが)を映画化(原作:小野稔)。
 野球には疎いのでよくわからないが、長嶋茂雄のプロ入りより数年前のこの頃には既に野球選手の多額の契約金や年俸が話題になっていたのだろうか、いわゆるストーブ・リーグでの各球団やマスコミの狂奔を風刺した作品になっている。
 しかし、小林監督と松本善三の生真面目さのためか風刺といってもキャラクターの戯画化が中途半端で、風刺喜劇なのか社会派作品なのか中途半端な感がある。伊藤雄之助を始めとして多々良純や山茶花究などの個性俳優たちを今ひとつ活かしきれていないと思う。監督が彼らに芝居を持っていかれるのを抑えようとしたのかもしれないが。
 またテーマ自体が、江川問題などを経験した現代人にとっては今さらという感じがぬぐい切れない。五十年前なら新鮮だったのだろうが、時の経過によって生命力が薄れてしまった作品の一つかもしれない。当時は意外であったろうオチも、今観るとなんとなく途中で読めてしまうし。
 撮影は小津作品で有名な厚田雄春で、この作品ではごくオーソドックスな撮り方をしている。(2006/02/19)

兄とその妹 あにとそのいもうと
監督 島津保次郎
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、島津保次郎監督の『兄とその妹』を観た。昭和十四年(1939)の作品。

 会社員の間宮敬介(佐分利信)は妻あき子(三宅邦子)と妹の文子(桑野通子)と三人暮らし。夫婦仲むつまじく、妻と妹の仲も良い。平和な家庭生活と、間宮の会社で起こった事件。

 島津保次郎監督の代表作の一つで、島津監督のオリジナル脚本。松竹伝統のホームドラマ作品である。
 家庭と会社での会話のシーンが多いが、会話の一つ一つが出演者の細かな演技でいかにもありそうなリアル感を持っている。監督の演出と松竹俳優陣の上手さだろう。間宮の足を引っ張ろうとする同僚の一人を演じた河村黎吉のセコさや間宮を慕う同僚を演じた小林十九二の頼りなさは、いかにもサラリーマン的な雰囲気を出していて、別にギャグがあるわけではないのに笑いを滲み出させている。
 今で言うキャリアウーマン(英語を理解できるステノグラファー〔英文速記者〕)を演じた桑野通子と専業主婦の三宅邦子はハマリ役で、三宅邦子が間宮や文子を見つめながら何か物思うような無言の演技が特に良かった。佐分利信も、ちょっと鈍いところのある硬派の男はもちろんハマっている。
 内容とは関係ないけど、文子が自宅に友人を招いて誕生日会を催した場面で皆が「♪国を出てから幾月ぞ」の 『愛馬進軍歌』を歌ったのにはちょっと驚いた。誕生パーティーで歌うには不自然で。検閲対策で入れたのだろうか。(2004/11/5)

兄の花嫁 あにのはなよめ
監督 島津保次郎
公開年 1941年
評点[A’]
感想  今日は、島津保次郎監督の『兄の花嫁』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 モダンなキャリアウーマン原田昌子(原節子)の兄・浩(高田稔)が見合い結婚した。妻・春枝(山田五十鈴)の実家が格式にうるさい旧家であることを見た昌子は、浩を心配して二人の新婚生活を観察する。

 松竹時代以来の島津監督らしい夫婦生活を描いたホームドラマ。登場人物たちの何気ない会話の端々に洒落たユーモアを感じさせる味があり、観ていて思わず微笑してしまう(原案:島津保次郎/脚本:山形雄策)。春枝の実家の人々も多少は類型化しているが、過度に戯画化していないのが良い。
 原節子を始めとする登場人物たちの演技も、しっかりと小市民の演技をしながら大変自然。何か一つ突出したものがあるというわけではなく、全体にバランスがとれた佳作。原節子も高田稔も昌子の叔母役の清川玉枝も皆良いが、あまり登場シーンの多くない江川宇礼雄も印象に残る。
 押し付けがましさが全くなく派手な展開もないのに惹きつけられるものがある佳作。(2005/02/06)

あの夏、いちばん静かな海。 あのなついちばんしずかなうみ
監督 北野武
公開年 1991年
評点[A]
感想
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あの夏、いちばん静かな海。
あの夏、
いちばん静かな海。

 今日は、北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海。』を観た。平成三年(1991)の作品。

 廃棄物回収業者で働いている耳の聞こえない青年(真木蔵人)が、ゴミ集積場で壊れたサーフボードを見つけ、サーフィンを始める。海に行くときは同じく耳の不自由な少女(大島弘子)が、いつも一緒だった。

 主人公たちには台詞が皆無で、徹底して映像で語った作品。長編の映像詩とも言える。これは素晴らしい。淀川長治先生が激賞したのもうなづける。やはり北野武監督は絵心というか、映像のセンスがある。奇をてらった絵作りをしていないが、映像の切り取り方が巧みだ。
 話自体も、お涙ちょうだい的ではないのに、聴覚障害者の孤独を表現しきっている。障害者ネタのテレビドラマとは雲泥の差。ただ、最後のまとめ方はチョット疑問にも思った。しかし、エンディング間際の映像と音楽には妙に感動させられてしまった。

 やたら長台詞やモノローグを濫用したり、前衛的な映像表現ばかり使いたがるアニメ出身の監督たちは、北野作品をよく観て勉強すること(笑)。(2000/11/09)

あの旗を撃て あのはたをうて
監督 阿部豊
公開年 1944年
評点[A’]
感想  今日は、阿部豊監督の『あの旗を撃て』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 開戦直後にフィリピンを攻撃した日本軍によりマニラも陥落。撤退する米比軍の車両にはねられて重傷を負った少年トニー・ガルシア(リカルド・パション)は日本軍の池島兵長(大川平八郎)の厚意を受けて仲良くなる。一方、トニーの兄マリアノ(アンヘル・エスメラルダ)と親類のアンドレス・ゴメス(フェルナンド・ポウ)は、米比軍の将校として激戦地バターン半島で日本軍と戦っていた。

 開戦初頭のフィリピンでの日本軍人とフィリピン人の交流を描き、フィリピンロケ中心で会話は多くが英語とタガログ語というちょっと珍しい作品(脚本:八木隆一郎・小国英雄)。
 池島兵長と少年トニーのエピソードは“ちょっといい話”の類だが、押し付けがましさはなく、プロパガンダ映画としてはかなり自然に観られると思う。トニーやその他のフィリピン人の演技は自然で、大川平八郎の英語も巧み。単なる丸暗記ではなく大川平八郎は英語が堪能で、戦後にも洋画に出演したことがあるらしい。アニメの『アルプスの少女ハイジ』を彷彿とさせる場面があったのにはちょっと驚いた。
 米軍(アメリカ人)の描き方はいかにも悪役的で薄っぺらく非現実的なところもあったが、それはいたしかたのないところか。
 日本軍占領地の中でも反日感情の強かったフィリピンで、フィリピン人出演者も対日協力するのに内心忸怩たるものがあったかもしれないが、全くそんなことを感じさせないのは、俳優として阿部監督の演出力を認めたのかもしれない。子役たちも“強制された喜び”を感じさせるようなところはなかった。マニラと前線のバターン半島という静と動の対比も効果的で、宮島義男(義勇)による映像も良い。(2005/07/23)

網走番外地 あばしりばんがいち
監督 石井輝男
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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網走番外地
網走番外地

 今日は、石井輝男監督の『網走番外地』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 網走刑務所に送られてきた橘(高倉健)は実家の妹と病身の母(風見章子)を思い、保護司・妻木(丹波哲郎)の助言に従って、おとなしくお勤めを済まそうとしていた。しかし、雑居房のボス格の依田(安部徹)と権田(南原宏治)は橘を目の仇にし、彼らの脱走計画に巻き込まれてしまう。

 長いシリーズものになった『網走番外地』第一作(原作:伊藤一/脚本:石井輝男)。第一作の好評を受けてシリーズ化されたそうなので、この一本でストーリーはまとまっている。
 若い高倉健の客気と彼を見守る老囚人を演じた嵐寛寿郎の妙味が特に良い。悪役たちは少し類型的なキャラクターだが、後半に入ってからの権田を演じた南原宏治の徹底した卑しさ・汚さは凄い。それでいてユーモラスな雰囲気もあるので陰惨にならず後味が悪くない。刑務所が舞台だがじめじめした雰囲気ではなく、どことなくカラッとしている。
 昭和四十年になってもモノクロ撮影で低予算映画だったらしいが、1時間半をメリハリ良くテンポ良く進み、石井監督の演出力を感じさせられるよくまとまった佳作。(2005/07/03)

あばれ行燈 あばれあんどん
監督 渡辺邦男
公開年 1956年
評点[B]
感想  今日は、鶴田浩二主演の『あばれ行燈』を観た。監督は渡辺邦男で、昭和三十一年(1956)の作品。

 渡世人の沼津の秋太郎(鶴田浩二)は喧嘩の場で、瀕死の美濃の藤太郎(田崎潤)から彼が母親に渡すはずだった二十両の金を託される。藤太郎の故郷に行くと、藤太郎の母(滝花久子)と許婚〔いいなずけ〕のおしの(香川京子)は秋太郎を藤太郎だと思い込む。秋太郎は事実を言うに忍びなかった。

 長谷川伸原作の映画化(脚本:渡辺邦男)。瀕死の人間に何かを託されて届けるというお決まりのパターンだが、比較的シンプルな粗筋が多い長谷川伸原作映画にしては、藤太郎の兄弟分の兼五郎(小堀明男)なんてキャラも出てきたりして、かなり手の込んだストーリーになっている。
 だが、話の筋は股旅物の様式にのっとっているとはいえ工夫されていて面白いことは面白いのだけれども、ちょっと非現実的に見えちゃうかな〜という感は残る。今ひとつ作品に没入しきれないというか。この頃の鶴田浩二はまだ色男然として哀感があまりないのが大きな原因で、秋太郎がモノローグで自分の考えや感情を全部語ってしまう脚本も、どうかな? と思った。(2005/11/28)

暴れ豪右衛門 あばれごうえもん
監督 稲垣浩
公開年 1966年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『暴れ豪右衛門』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 加賀の国を治める加賀七党の中の一派を率い、周囲の大名にも勇名を轟かせている豪右衛門(三船敏郎)は侍嫌いで、百姓の側に立って戦うことに誇りを持っていた。そこに、隣国の大名・円城寺家の人質となっていた豪右衛門の弟たち弥籐太(佐藤允)と隼人(田村亮)が帰ってくる。弥籐太は豪右衛門を尊敬の眼差しで見るが、若い隼人は粗野な長兄に反発する。

 守護大名を追い出した加賀の国人一揆を題材にした作品で、原作はなく井手雅人と稲垣監督のオリジナル脚本らしい。
 題名どおり主人公は荒武者そのものなのに侍を嫌っているというのが面白い。実際は戦国時代には武士と農民が截然と分かれていたわけではなく、土豪(国人)も自分を侍だと思っていただろうから、ちょっと変なのだけれども、暴れん坊が武士嫌いという矛盾が面白い設定になっている。
 また、豪右衛門は強いだけではなく、周囲をまとめる人間的魅力も持っていることがわかる脚本・演出になっている。三船も悪い時の一本調子の演技ではなく、この作品ではそのあたりを演じ分けているように見えるのは、稲垣演出のおかげだろうか。
 上記のように設定に疑問があり、登場人物が“平和”を求めたりするなど戦後民主主義的な臭いもし、オチの付け方もちょっと食い足りない感がある。しかし、主人公と二人の弟たちや風来坊の謎の浪人(加東大介)・近隣の朝倉家の家臣で豪右衛門一派を滅ぼそうとする但馬(西村晃)といったメインキャラクターたちが各々個性豊かに描けていたので個人的には好きな作品だ。イマイチという人もいるかもしれないけど。(2005/01/28)

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