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お茶漬の味 おちゃづけのあじ
監督 小津安二郎
公開年 1952年
評点[B]
感想
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お茶漬の味
お茶漬の味
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
DVD-BOX
第二集

 今日は、小津安二郎監督の『お茶漬の味』を観た。昭和二十七年(1952)の作品。

 庶民階級出身の男(佐分利信)と資産家のお嬢様(木暮実千代)の夫婦間の、すれ違いと和解の物語。私は未見だが、戦前の『淑女は何を忘れたか』の流れに連なる作品かな。夫婦ものとしては『早春』もこのカテゴリに入るか。
 この作品の初稿は戦前に書かれていたが検閲に引っかかり、戦後になって大幅に改稿して製作された。よく指摘されているように登場人物が、夫の出征を控えた若夫婦から、倦怠期の中年夫婦になってしまったので、ちょっと妻の嫌味なところが鼻につくかな。最後に救いはあるにしても。最後、一見ダラダラした描写のようだったが、それが徐々に効果的に見えてきた。それが職人技だろうか。でも少々長いけど(笑)。
 鶴田浩二が出演している。当時二枚目としてトップクラスの人気だった彼も、ロケに遅刻した際、さすがに“巨匠”の小津には怒鳴られて、あとで口惜しがったとか。笠智衆は、のちの作品からすると意外な役。(2000/10/08)

おとうと おとうと
監督 市川崑
公開年 1960年
評点[B]
感想
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おとうと
おとうと

 今日は、市川崑監督の『おとうと』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 ある大作家(森雅之)の家では、母(田中絹代)がリューマチの持病で体が不自由なので、ほとんど娘げん(岸恵子)が家事をし、弟・碧郎(川口浩)の世話をしていた。母は継母であるため家庭の中はしっくり行かず、碧郎は不良仲間と付き合うようになり、無頼な生活の中で結核を病む。

 幸田露伴の娘である幸田文の自伝的小説の映画化(脚本:水木洋子)。撮影は宮川一夫で、“銀残し”という特殊な手法で処理されているそうだが、私が観たのはビデオ版なので、残念ながら単に褪色したように見え、銀残しの色合いは味わえなかった。
 母親の田中絹代が体を病んだため心まで歪んでしまっている様子や妙に色気のある娘の岸恵子が家庭の中で神経をいらだたせる様が執拗に表現され、岸田今日子が登場することや、芥川也寸志の奇妙な音楽ともあいまって、前半は一種のホラー的な雰囲気さえ漂う。
 弟が病に倒れる後半は、濃厚すぎるほどの姉妹愛や家庭的には無力だった父親が最も息子を可愛いと思っていたことが知られ、なんだかホッとする。
 海外だと姉と弟の関係が近親相姦的に解釈されることがあるというのは、川の字で寝る習慣が無いことも一因だろうか。

 市川崑作品のラストは唐突に見えることが多いが、この作品は姉の心を映して上手いと思った。(2002/05/24)

男ありて おとこありて
監督 丸山誠治
公開年 1955年
評点[A’]
感想  今日は、志村喬主演の『男ありて』を観た。監督は丸山誠治で、昭和三十年(1955)の作品。

 “東京スパローズ”監督の島村達郎(志村喬)は野球一筋の男で、妻(夏川静江)も年頃の娘(岡田茉莉子)も幼い息子(伊東隆)のことも顧みなかった。ある日、新たに入団した投手・大西(藤木悠)を自宅に下宿させるが、屈託ない彼のために達郎と家族との関係がこじれてしまう。

 野球には疎いのでよくわからないのだが、モデルがいるのだろうか(脚本:菊島隆三)。家庭が舞台の場面が多く、序盤から中盤まではホームドラマ的な展開でちょっとスローテンポ。中盤までは主人公があまりにもわがままに見えてしまって気分の良くないところもあったが、単純なキャラクターではなく、終盤に急報を聞いてからの反応もちょっと観客の意表をつくがリアル。仕事命で、いかにも明治生まれの男らしく頑固だが、もろいところもある人物造形が面白く、志村喬がよく演じていた。
 成瀬巳喜男作品を多く撮っている玉井正夫の撮影は、単調にもならず日本家屋を巧みに捉えている。この作品では脇に回った三船敏郎が監督を助けるベテランの選手兼コーチを演じていて、壮年男の思慮深さや頼もしさを表現していてかなり良かったのが意外だった。大声を出さない役でも良いんだな。ピッチャーの大西はちょっとひ弱かな?(2004/08/22)

男なら振りむくな おとこならふりむくな
監督 野村芳太郎
公開年 1967年
評点[C]
感想  あと、今日は野村芳太郎監督の『男なら振りむくな』を観た。昭和四十二年(1967)の作品。

 ある夜、浅間のオートバイレース場に向かう片倉(橋幸夫)と大貫(田村正和)は、軽井沢の一軒家で一夜の宿を乞うた。そこには若い島野杏子(加賀まり子)が一人暮らしで、彼女は近く莫大な財産を相続する身だった。やがて杏子は彼らのバイクレースにかける情熱に惹かれていく。

 石原慎太郎の原作を元にした作品(脚本:野村芳太郎・永井素夫)。登場人物が善悪はっきり分かれていて、悪いやつは喋り方や容姿で一見してわかる実にわかりやすい作品。また、八ヶ岳に向かって「好きだー!」と叫んだりして、もう凄い。また、若い頃の田村正和は現在の演技や台詞回しとは全く異なり、いかにも街のアンちゃんという感じでビックリした。これはちょっと見ものかも。
 野村監督は、自分の取りたい作品を撮るためにはプログラムピクチャー的な作品も作って会社を儲けさせてやらねばならない、という考えをもっていたそうで、これはその商業目的の娯楽作品といった感じの一本なのだろう。(2002/10/28)

乙女ごころ三人姉妹(乙女ごゝろ三人姉妹) おとめごころさんきょうだい
監督 成瀬巳喜男
公開年 1935年
評点[A’]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『乙女ごころ三人姉妹』を観た。昭和十年(1935)の作品。

 浅草に暮らすお染(堤真佐子)の母親(林千歳)は門付けの師匠で、三人の弟子たちとお染も毎夜三味線を持って浅草を流している。姉おれん(細川ちか子)は男(瀧澤修)と出奔し、末妹の千枝子(梅園竜子)はレビューの踊り子として伸び伸び生きている中、お染は酔客相手に唄う日々を耐えていた。

 成瀬監督のP.C.L.移籍第一作で、川端康成の『サンデー毎日』連載『浅草の姉妹』の映画化(脚本:成瀬巳喜男)。
 冒頭、浅草寺や仲見世、映画館や劇場など当時の浅草の賑わいが映し出される。そしてカメラが下ってショーウィンドーを眺める門付け娘の汚れた足袋の裏を写し出すと、一気にうらぶれた門付け芸人の世界に入っていく。この導入が上手い。その後も華やかな浅草の影の部分で生きる門付け娘たちの暮らしが描かれ、やはり成瀬は貧乏くさい描写の達人だと思わされる。末妹・千枝子と金持ちのボンボンである恋人(大川平八郎)が生きるモダンな浅草との対比も印象に残る。
 頑固な母親と姉妹・門付けの弟子たちとの間に挟まれて苦労する次女お染。堤真佐子はさほど美形ではないが、その姿は哀しく美しい。ところどころちょっとユーモアがあるのは原作にあるのかもしれないが、ほろ苦い味は成瀬監督の持ち味のような気がする。
 成瀬監督のトーキー第一作でもあるが、それを感じさせない非常にナチュラルな演出で門付けの三味線の音の使い方などもわざとらしくない。台詞や音を使わず映像で時間を省略して表現する描写はサイレントの経験の豊富さを感じさせる。回想シーンの導入も巧み。
 描かれるのは古典的な人間像であるが、ラストシークエンスも心に残る佳作。私が観たプリントは時々真っ黒なコマが入って最初はびっくりした。切れたところを繋げた部分だろうか。保存状態がまずまず良好で映像が美しく(撮影:鈴木博)音声の状態も悪くないので、それだけが惜しい。(2004/11/29)

鬼あざみ おにあざみ
監督 冬島泰三
公開年 1950年
評点[C]
感想  今日は、長谷川一夫主演の『鬼あざみ』を観た。監督・脚本は冬島泰三で、昭和二十五年(1950)の作品。

 明治維新前夜、上総の国は茂原の代官(香川良介)の息子・並木礼三郎(長谷川一夫)は、貧家の娘お光(山根寿子)と江戸に駆け落ちした。しかし、風雲急な江戸の街は二人の運命を大きくねじ曲げる。

 冒頭とラスト近くは明治維新直後で、回想形式で主なストーリーは展開する。回想の中の長谷川一夫は若作りしているが、ちょっと厳しいものがある。特に、幼さを表現するため鼻にかかったような甘ったるい喋り方をするのが気になった。むしろ冒頭の、二枚目らしからぬヒゲ面の方に意外な魅力を感じた。
 何度も偶然が作用するストーリーに無理があり、その上、キャラクターも自己中心的に見え、酷い目に遭うのも自業自得のように思えてしまった。山根寿子の哀れそうな雰囲気はリアルだったが。見どころは終盤の緊迫感ある展開くらいか。(2004/03/03)

鬼火 おにび
監督 千葉泰樹
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、千葉泰樹監督の『鬼火』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 ガス会社の集金人・忠七(加東大介)は、炎天下に家々を回り頭を下げて金を受け取らねばならない自分の仕事に飽いていた。小心者の彼だったが、ガス代を長らく滞納しているあばら家の人妻(津島恵子)を見ると、邪心を抱く。

 吉屋信子原作の映画で46分強の短編映画(脚本:菊島隆三)。
 主人公の忠七が善良さと小心さと狡猾さと欲望と、全て併せ持った小市民であることが冒頭からの数場面でわかる導入部。原作がそうなのかもしれないが、巧みな出だしの展開だと思う。場末の町の貧しさと暑苦しさの描写も生々しい。
 尺が短いため一つのエピソードだけで構成されていてあっさりした印象だけれども、小市民がふとした悪意と欲望によって思いがけない結果を引き起こす過程がリアルに描かれていて、ちょっと怖いものを感じさせられる一本。(2005/07/26)

尾上松之助の忠臣蔵(松之助の忠臣蔵) おのえまつのすけのちゅうしんぐら
監督 牧野省三
公開年 1910年
評点[C]
感想  今日は、『尾上松之助の忠臣蔵』を観た。監督は牧野(マキノ)省三。明治四十三年(1910)の作品。

 “目玉の松ちゃん”の愛称で知られた日本映画初期のスーパースター尾上松之助の主演作。松之助が浅野内匠頭・大石内蔵助・清水一学の三役を演じている。吉良上野介は片岡市之正。
 この作品は一つの『忠臣蔵』映画が完全に残されたのではなく、実はいくつかの作品がつなぎ合わされて成り立っているらしい。NHK衛星放送での放映時の解説によると、制作時期は明治四十三年から大正六年頃までになるようだ。しかし、さほど継ぎ目の違和感は無い。
 サイレント最初期だけに、カメラは据えっぱなしのロングショットばかりで、演技や立ち回りも歌舞伎そのもの。現代人が観ても決して当時の人の熱狂を味わえるわけではないが、記録としての価値はあるだろう。(2000/12/25)

お早よう おはよう
監督 小津安二郎
公開年 1959年
評点[A’]
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お早よう
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
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第一集

 今日は、小津安二郎監督の『お早よう』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 この作品は娘が嫁に行く話ではなく(爆)、『生まれてはみたけれど』の系譜を引く、子供が主役のホーム・コメディ。世にも珍しい屁映画でもある。
 近所の子供たちの間で、お互い額を押して押された方が屁をするという遊びが流行っている、という設定。ホント、子供たちの小憎らしい面を描くのが上手いなぁ。
 小津監督は前年には紫綬褒章、同年には芸術院賞を受けていながら屁映画を作っちゃうってのが面白い。勲章を名誉に思ったことも間違いないとは思うが、「そんなの屁でもないよ」とでも言うように照れ隠し的な作品を作っちゃうのが凄い。溝口健二なら、かしこまっちゃうところだが。
 アニメの『サザエさん』の画面構成やポルカ風のBGMは小津のコメディー作品を模倣しているのでは、という説があるそうで、『お早よう』を観て、なるほどと思った。『サザエさん』のスタッフの年齢層は高そうだから、多少の影響は受けているかも。

 小津監督のカラー作品を初めて観た(これはカラー2作目)。有名な、赤に対するこだわりは見られたけど、少し褪色気味なのが惜しい。小津は渋い発色のアグファカラーを好んだそうだが、経年変化には弱いのか。溝口のカラー作品2本の方が鮮やかさを残している。こちらはイーストマンカラーだからかな。(2000/08/17)

小原庄助さん おはらしょうすけさん
監督 清水宏
公開年 1949年
評点[A’]
感想  今日は、清水宏監督の『小原庄助さん』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 ある村一番の旧家の主である杉本左平太(大河内傳次郎)は、朝湯朝酒が大好きで村の人が求めるだけ寄付に応じたりしてきた。しかし、そんな生活がいつまでも続けられるはずもなく……。

 会津地方の民謡で有名な小原庄助を基にして創作された作品(脚本:清水宏・岸松雄)。 鷹揚な旦那といった感じの主人公を巡る小事件と、彼の家が傾いていく様子が描かれている。
 田舎が舞台だからというわけではないだろうが、テンポが大変ゆるやかで、1時間半ほどの上映時間の割りに長く感じた。杉本家のある村の変化を描いて、戦後日本の社会を描こうとしたのだろうか。
 ただ、ラストのエンドタイトルは意表を突かれた。清水監督のいたずら心だろうか、人を食っていて面白い。(2003/08/16)

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