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花くらべ狸道中 はなくらべたぬきどうちゅう
監督 田中徳三
公開年 1961年
評点[A’]
感想
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花くらべ狸道中
花くらべ狸道中

 今日は、市川雷蔵&勝新太郎主演の『花くらべ狸道中』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 狸の世界の大王を決める選挙の直前、江戸の文福狸(見明凡太朗)は阿波の文左衛門狸(葛木香一)に刺客を放って大怪我をさせた。文福狸が大王の座につくのを阻止するため、阿波の若狸の雷吉(市川雷蔵)と新助(勝新太郎)は有名な弥次喜多コンビに化けて江戸へ向かう。

 雷吉に思いを寄せる娘狸として若尾文子も登場する、豪華キャストの狸映画。雷蔵と勝新のスターコンビが仲良さそうにじゃれあっているのを観ているだけでも面白い。当時はまだ正統派二枚目路線だった勝新が器用さを発揮して歌ったり踊ったり大活躍の好演で、雷蔵を食っていた。市川雷蔵も妙な踊りを見せたが、歌までは聞かせなかったから。勝新の「ハロー♪ グッバイ」などの英語の台詞は笑わせてくれる。
 まだ“総天然色映画”が売りになっていた時代なので、原色を多用したセット撮影だが、ちょっとチープに見えるところもある。あと、群舞の振り付けがもっと揃っていたら良かったかもしれない。(2002/10/02)

ハナ子さん はなこさん
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1943年
評点[B]
感想  今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『ハナ子さん』を観た。昭和十八年(1943)の作品。

 新婚のハナ子さん(轟夕起子)と五郎(灰田勝彦)夫婦の生活と、ハナ子の両親(山本礼三郎・英百合子)や隣組の人たちとの交流を描く。

 『主婦の友』に連載された杉浦幸雄のマンガが原作だそうだが(脚本:山崎謙太・小森静男)、このハナ子さんというキャラは轟夕起子がモデルだという。
 登場人物たちが終始歌うミュージカル映画だが、隣組はみんな仲良くとか、防空演習や“歩け歩け運動”や傷痍軍人を大切に、などのテーマを全く暗いところなく「明るく楽しく」描いているので、現在の目で見ると異様に感ずる。
 徹底的にハイというかアッパー系というか、なんだかショスタコーヴィチの言う“強制された喜び”のようで、それによってマキノ監督は風刺しているのかな……と思ったのは深読みのしすぎだろうか。まだ昭和十八年頃は勝ち戦気分だし、空襲が始まってないので国民生活も逼迫していなかったことも考慮すべきかも。五郎の出征前にハナ子が明るく振舞うのは、かえって悲壮感を覚えさせる……というのも深読みかな。
 戦中の作品にしては画質・音質共に良く、マキノ監督だけあってミュージカル映画としての演出は見事なので、一度は観ておいても良い珍品かもしれない。五郎の妹として高峰秀子が出演。(2003/03/08)

花つみ日記 はなつみにっき
監督 石田民三
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、高峰秀子主演の『花つみ日記』を観た。監督は石田民三で、昭和十四年(1939)の作品。

 東京から大阪に引っ越してきた佐田みつる(清水美佐子)は転入した女学校で篠原栄子(高峰秀子)に声をかけられ、たちまち親友同士になる。二人は女生徒たちの憧れの的である梶山先生(葦原邦子)にも目をかけられるようになるが、ふとしたことから気持ちの行き違いが生じ……。

 吉屋信子の少女小説の映画化(脚本:鈴木紀子)。オープニングに別格扱いで「高峰秀子 主役」と出たのに続いて「葦原邦子 特別出演」とあったので誰かと思って検索してみたら、戦前の宝塚を代表する女優の一人だった人らしい。知らんかった。
 冒頭で女学生たちが一斉に歌を歌いながら掃除するシーンで、彼女たちが頭に幅広の白い鉢巻をしているのが見事なアクセントになっているのに始まって、全体に女学生に対する愛情に満ち溢れた描写で一貫している。今風に言えば女学生“萌え”映画ということにでもなろうか(笑)。
 少女たちの同性愛的な友情(実際、男女間の恋愛の代償でもあったろう)や先生への思慕が、見ている方がちょっと恥ずかしくなるくらい非常にストレートに描写されていて、昔の日本人はなんとナイーブだったことよと思わされるが、その描写の細やかさは、石田監督の力量だろう。その他、一人が歌を唄いだすと他の人々がそれに和するというシーンがいくつかあり、ちょっとミュージカル映画的な要素もある。
 当時の大阪の生活ぶりが丹念に映し出されているのも資料として興味深い(撮影:山崎一雄)。特に、人力で引っ張るリヤカー式の散水車が面白かった。(2006/02/07)

花と竜 はなとりゅう
監督 舛田利雄
公開年 1962年
評点[B]
感想  今日は、石原裕次郎主演の『花と竜』を観た。監督は舛田利雄、昭和三十七年(1949)の作品。

 日露戦争前夜の門司港に流れてきた玉井金五郎(石原裕次郎)は、港湾労働者として働きながら次第に頭角をあらわしていく。若松に移って自らの玉井組を旗揚げした彼は、同業者組合を作ろうとして、反対勢力と一人対決する。

 何度も映画化されている火野葦平の原作(脚本:井手雅人)による作品。
 最初の方、石原裕次郎はどう見ても沖仲仕というガラではないので違和感がある。しかし、それなりの魅力があるし、展開のテンポが良いので次第に話に引き込まれていく。主人公が衆を頼まず、なんでも一人でやろうとするのが良い。原作が優れているのだろう。
 主人公の妻マン役に浅丘ルリ子。老親分役に大坂志郎。幇間役に桂小金治。(2002/02/10)

花の白虎隊 はなのびゃっこたい
監督 田坂勝彦
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、市川雷蔵主演の『花の白虎隊』を観た。監督は田坂勝彦で、昭和二十九年(1954)の作品。

 明治元年。徳川側の孤塁を守る会津藩に薩長ほか朝廷側の軍勢が押し寄せてきた。藩校「日新館」の教官・布施(三田隆)は閉校を告げ、そこで学んでいた婚約者のいる篠原準之助(市川雷蔵)・学問好きの池上仙吉(花柳武始)・病の老父と暮らす小林八十次郎(勝新太郎)ら16〜17歳の少年で編成された白虎隊も出陣し、帰ることはなかったのであった。

 のちに大スターとなった市川雷蔵と勝新太郎のデビュー作として有名な作品(脚本:八尋不二)。もう一人、新派の花柳章太郎の次男である花柳武始もデビューして話題となり、役柄やオープニングタイトルの扱いでは勝新より上だったが、花柳の映画出演はこの作品を含めてわずか3本ほどだったらしい。雷蔵たちの演技にはさすがに若さを感じられるが、それがかえって身を捨てて会津に殉ずる若者の哀しさを強調させて効果的かもしれない。
 また、脚本には女子供で泣かそうとするあざとさがあり、盛り上がったところで詩吟や霧島昇の歌を流す演出には疑問が残る(映画会社側の意向だったのかもしれないが)。けれども、最期まで武士として生きる若者たちの美しさには感動させられざるを得ない。やはり題材のおかげということか。(2004/12/05)

花の吉原百人斬り はなのよしわらひゃくにんぎり
監督 内田吐夢
公開年 1960年
評点[A]
感想 『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(ようとうものがたりはなのよしわらひゃくにんぎり)を参照

HANA-BI はなび
監督 北野武
公開年 1998年
評点[A’]
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HANA-BI
HANA-BI

 今日、テレビ東京で午後に放映された北野武監督の『HANA-BI』を観た。実を言うと北野作品をちゃんと通しで観るのは初めて。以前衛星放送で放映された『その男凶暴につき』をチョット観たら、暴力描写に辟易して途中で観るのをやめてしまい、それ以来、北野武監督作品は敬遠していたのだ(笑)。
 『HANA-BI』も好きかと問われれば首をかしげてしまうが、凄い作品だとは思った。やはり天才なんだろうか。脚本もほとんど即興に近いというから、これは勝新太郎と同じやり方だな。あと、作中頻繁に出てくる絵も真似できないと思った。あれがしつこい、という意見もあるようだが。音楽は最初『ナウシカ』入ってるな〜と思ったら、やっぱり久石譲だった(笑)。これも賛否両論あるようだ。

 ベネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)か…。邦画でこれを受けたのは『羅生門』(黒澤明)と『無法松の一生』(稲垣浩)ってところだろうか。他にあったっけ。
 溝口健二の『雨月物語』ですら銀獅子賞だからなぁ。その年は金獅子賞該当作が無くて実質的な最高賞だったし、溝口はその前に『西鶴一代女』で演出賞(監督賞)、『雨月』の翌年にも『山椒大夫』で銀獅子賞を受けて3年連続受賞という記録があるけれども。(2000/03/20)

花嫁の寝言 はなよめのねごと
監督 五所平之助
公開年 1933年
評点[A’]
感想  今日は、田中絹代主演の『花嫁の寝言』を観た。監督は五所平之助で、昭和八年(1933)の作品。

 会社員の小村(小林十九二)は、自分だけ卒業・就職し、なおかつ可愛い奥さん(田中絹代)と結婚までしたため、大学に留年した同級生(江川宇礼雄・大山健二・谷麗光)たちに酷くからまれる。その上、新妻が面白い寝言を言うというので、悪友どもは家にまで押しかけてきて……。

 一時間弱の小品だが、その間中、ずっとコントみたいな会話のやり取りが続く……というか、登場人物どうしが部屋の中でしゃべっているだけの作品(笑)。
 ストーリーらしいストーリーは無いし、他愛ないといえばその通りだが、出演者の演技は皆巧みで所々笑いを漏らしたくなる部分もあり、楽しめる作品。田中絹代もまだ若くてかわいいし、それ以上に小林十九二の“芸”にビックリ。また、和風の小村家と和服の新妻と、ハイカラ趣味の学生たちのアパートとの対比も、今の目で観ると面白い。(2004/03/12)

母の恋文(母の戀文) ははのこいぶみ
監督 野村浩将
公開年 1935年
評点[A’]
感想  今日は、野村浩将監督の『母の恋文』を観た。昭和十年(1935)の作品。

 高瀬良一(小林十九二)は母(吉川満子)に内緒で山添夢子(坪内美子)と付き合っていたが、妹の八重子(高杉早苗)のフォローのおかげで無事に母に紹介して結婚できた。今度は新妻となった夢子が機知を発揮して家庭生活を仕切ったり八重子と恋人(徳大寺伸)を助けたりする。

 『主婦之友』の連載小説『突貫花嫁』の映画化(原作:稲田草人/脚本:池田忠雄)。現代人からすると原題が少々奇妙に見えるが、戦前はさほど違和感を覚えさせる題名ではなかったのだろう。
 ストーリーそのものは正直ちょっと他愛ないけれども、夢子と八重子が大活躍で女性二人の機知が楽しい。特に夢子が“泥棒”や“お見合い”で活躍するエピソードは原作にあるのかもしれないけれども、ほのぼのとしたユーモアを感じさせる。
 ジャンル分けすると新妻ものになるが、それに留まらない面白さもある。出演者たちの演技は伸び伸びしていて、松竹作品らしい俳優の上手さが生きている。エピソードがずらずらっと続いて展開が少々平板な感じもするので(終盤にクライマックスはあるが)、もう少し演出の抑揚があれば、より傑作になったかも。(2005/05/03)

母の地図(母の地圖) ははのちず
監督 島津保次郎
公開年 1942年
評点[超A]
感想  今日は、島津保次郎監督の『母の地図』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 浅間山麓の旧家だった岸家は当主を亡くして没落し、未亡人の幾里野(杉村春子)以下の一家は東京に出る。懸命に働く末娘の桐江(原節子)に対して長男の平吾(三津田健)は勤めに身が入らず、山師根性を出して岸家の最後の財産を蕩尽する。その上、頼りの次男・沙河雄(大日方伝)が召集されて出征し……。

 初期の黒澤明作品の脚本を手がけた植草圭之助の脚本デビュー作で、島津監督が“潤色”している。
 ある家族が経済的に困窮して崩壊していく過程を克明に追っていて、その厳しい描写に目が釘付けになる。“銃後の戦い”を描いたものとして製作を認められたのかもしれないが、むしろ大黒柱が出征したあとの家族を助ける社会保障制度がほとんど存在しないことへの批判がテーマになっているようにさえ見える。
 作中に登場する東京の街並みや男女の服装は、まだ戦争の影を感じさせず、山本夏彦の言うように空襲が始まるまでは庶民の生活はそれほど変わらなかったのかもしれないけれども、監督や脚本家は戦争によって生活の苦しくなる人々が増えていたことに批判的な目を向けていたのだろう。取って付けたようなラストだけが不自然で惜しいが、これは検閲を通過させるための方便だろう。
 母親や桐江らが徐々に追い詰められていく様子がリアルに描かれ、時々影を強調した映像(撮影:中井朝一)もそれを強調している。まだ三十代前半の杉村春子が演じる初老の母親や原節子など登場人物の演技は皆良い。桐江が思いを寄せる男性として映画初出演の森雅之が登場するが、この作品では坊主頭に眼鏡をかけた真面目な会社員風の人物で、戦後映画の色男とは思えないくらい。

 社会派を標榜する監督たちの作品よりも克明に困窮する人々を描き、島津監督の戦前のホームドラマから一歩進んで家庭の崩壊を描く様子は、のちの小津安二郎作品を彷彿とさせる厳しさがある。戦中に生まれた稀有な社会派の傑作ではないだろうか。(2005/02/22)

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