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張込み はりこみ
監督 野村芳太郎
公開年 1958年
評点[B]
感想
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張込み
張込み

 野村芳太郎監督の『張込み』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 ある年の夏、警視庁の捜査第一課刑事の柚木隆男(大木実)と下岡雄次(宮口精二)は、強盗殺人犯(田村高広)を追って九州の佐賀へ行き、彼の元情婦で現在は人妻となっている横川さだ子(高峰秀子)の家の前で張り込みを続ける。

 のちの『砂の器』同様、原作:松本清張・脚本:橋本忍で、二人組の刑事の捜査を描いた作品。ただし、『砂の器』では犯人の方に比重が置かれているのに対し、この作品は柚木刑事が主人公となっている。
 前半、急行列車での旅の風景や全く冷房の無い列車・警察署・旅館の風景や車掌のいるバスの内部が描かれ、昔の日本の風景が見られて興味深い。刑事たちが張り込みを続ける中盤は、時々柚木の回想などを交えるものの、ちょっとダレる感もあるように思った。終盤は、またドラマが急展開するが。(20002/07/28)

春の戯れ はるのたわむれ
監督 山本嘉次郎
公開年 1949年
評点[C]
感想  今日は、山本嘉次郎監督の『春の戯れ』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 明治維新直後、美人で評判の品川の貝屋の娘お花(高峰秀子)は居酒屋の息子・正吉(宇野重吉)と幼なじみで、彼を憎からず思っていた。しかし正吉は、反対する自分の父親(徳川夢声)や近所の金持ちの中年男・越後屋(三島雅夫)との縁談がもちあがっているお花をよそに、西洋への憧れを押さえきれない。

 この正吉という登場人物、ウジウジしていて自分勝手で、観ていて「なんだこいつは!(釘バット)」と怒鳴りたくなるほど(笑)。オープニングで原作の表記がないので山本嘉次郎自らのオリジナル脚本のようだが(補注:実際には、この作品の原案はフランスの劇作家マルセル・パニョルの『マリウス』という戯曲だそうだ)、何を意図してこんなキャラを作ったのだろう。終戦後、民主主義の大義名分のもとに誰もが利己主義的になった日本社会を風刺するためなのだろうか……とでも考えてしまう。
 お花は逆に男に惚れぬく女という古典的な女性像で……高峰秀子は相変わらず上手い。宇野重吉の演技は、なんだか甘ったるい台詞回しが気になったが、正吉というキャラを作るため意図的にしていたのだろうか。
 山本監督ならではの細やかな生活描写や明治初期の時代考証の確かさは見るべきものがあると思う。しかし、正直言って楽しい気分では観られない作品だった。私が狭量すぎるのかもしれないが。(2002/12/29)

パルムの樹 ぱるむのき
監督 なかむらたかし
公開年 2002年
評点[C]
感想
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パルムの樹
パルムの樹

 今日は、劇場用アニメの『パルムの樹』を観た。監督はなかむらたかしで、平成十四年(2002)の作品。

 学者フォー(声:清川元夢)が病気の妻シアン(声:香花)のために作った人形パルム(声:平松晶子)は材料のクルップの樹の力によって自ら動き話すことができたが、シアンの死後は長らく動かなくなっていた。あるとき、地底人の女コーラム(声:日野由利加)に不思議なカプセルを託されたパルムは目覚めて動き出し、歌声がシアンに似ている少女ポポ(声:豊口めぐみ)やコーラムの息子シャタ(声:阪口大助)らと共に地底の世界に向かう。

 なかむらたかし自らの原作・脚本によるオリジナル長編アニメ。キャラクターデザインは井上俊之、作画監督は佐々木守。 ジャンルはファンタジーで、登場する不思議な浮遊する植物などはとてもファンタスティックなデザインで美しく面白い。パルムや人間キャラのキャラクターデザインも丸っこく親しみやすいが、監督が描こうとしているテーマはシリアスで重い。それが抽象的というか観念的というか、実に難解に思える。
 世界観の説明がなく、パルムの持つカプセル(“トートの卵”というものらしい)は何か非常に地底人にとって重大なものらしいが、ほのめかされるだけで一向に不明瞭。キャラクターも、パルム・ポポ・コーラムなど多くが精神的に不安定ですっきりしない。パルムなんてまともに動き出すのは作品の半ばを過ぎてからで、それからも妙にわがままだし。
 どうも、幼少時に愛情を得ることのできなかった人間の悲劇、しかしそれは成長してから自らが人を愛することで取り戻すことができる……ということがテーマの一つらしいが、この解釈が正しいか否か自信はない。アニメ映画としては長編の2時間16分の作品だけれども、それ以上に長く感じた。なかむら監督の頭の中には言いたいことが充満していることは察することができるのだが……。
 パルムの持つカプセルやパルム自体が比喩的な存在だとしたら、あまり具体的に描かずに象徴的に描いた方が、それとして受け取りやすくなるのではないだろうか。象徴的なものに詳細な設定を加えてしまうと、観客はそれに対して具体的な説明を求めてしまう。(2005/05/27)

ハワイ・マレー沖海戦 はわいまれえおきかいせん
監督 山本嘉次郎
公開年 1942年
評点[B]
感想
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ハワイ・マレー沖海戦
ハワイ・マレー沖海戦

 今日は、山本嘉次郎監督の『ハワイ・マレー沖海戦』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 昭和十一年、海軍の士官候補生を親類に持つ飛行機好きの少年・友田義一(伊藤薫)は海軍航空予科練習部(いわゆる予科練)に志願した。厳しい訓練を経て雷撃機の搭乗員として実戦部隊に配属されると、昭和十六年十二月八日、ついに太平洋戦争が始まる。

 大本営海軍報道部の企画により、開戦一周年記念の日に上映された作品。海軍の協力を得て、予科練
の訓練風景など一部が実写。また、真珠湾攻撃やマレー沖での英戦艦レパルスとプリンス・オブ・ウェールズの撃沈シーンなどは特撮で、むしろ円谷英二が参加した作品として名高い。
 ただし、米軍も実写だと思ったといわれる特撮シーンばかりが有名だが、実際には少年飛行兵の成長を丹念に追った作品で、戦闘シーンに至るまで1時間以上かかる。私は軍隊生活に興味があるので飽きずに観られたが、関心の無い人には退屈かも。展開のテンポは速いとはいえないし。“本物”の海軍の訓練風景を観られる作品として貴重かもしれない。創作部分は妙に教官と少年兵たちが仲良さ過ぎるのが嘘くさいけど。
 特撮シーンは、なかなかリアル。質感の違いがわかりづらいモノクロに助けられた部分もあるとは思うが。(2003/07/31)

晩菊 ばんぎく
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『晩菊』を観た。昭和二十九年の作品。

 元芸者で現在は金貸しをしている中年女・倉橋きん(杉村春子)は、金を貯めることだけが生きがいで、元芸者仲間の小池たまえ(細川ちか子)や鈴木とみ(望月優子)に陰口を叩かれても気にしない。彼女たちそれぞれにとっての小事件が起こり、各々の生活に波風が立つかと思われたが…。

 最初の方は、中年女たちのトゲのある会話ばかりなので、40分ほどは忍耐が必要かも(笑)。しかし、中盤以降は話が動いてくる。といっても、大きな出来事があるわけではなく、“寂しい人々”がそれなりに生き抜いていく様子を淡々としかも克明に描いている
 映画では主演の少ない杉村春子だが、やはり上手い。共演者も見事。きんのもとを訪れる昔の男たちは、上原謙と見明凡太郎。とみの娘に有馬稲子。(2001/12/29)

晩春 ばんしゅん
監督 小津安二郎
公開年 1949年
評点[A]
感想
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晩春
晩春
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
DVD-BOX
第二集

 今日は小津安二郎監督の『晩春』を観たっす。父一人娘一人で、娘が婚期を逸しかけているのを心配する父親。例によって笠智衆&原節子の組み合わせ。

 昭和二十四年(1949)の作品だから、さすがに画質音質とも鑑賞に不都合ないレベルになっている。しかし、当時27歳で結婚してないと行き遅れ(イヤな言葉だが)扱いされたのかなぁ。それと、この年代にしては主人公たちはプチブルっぽい何不自由ない生活をしていたが、これは当時の観客に夢を見せるためなのだろうか。
 戦前の女性は十代で結婚するのが当たり前だったが、戦中戦後は多くの男性が出征・戦死したから婚期は相当遅くなったと思われるけど、昭和二十年代で27歳というのは…現在なら27歳でも適齢期中の適齢期だな(笑)。
 この27歳の女性も、生きているとすれば今年で78歳の立派な婆さんか!昭和は遠くなりにけり…。父親は56歳という設定だったから、今年107歳か。さすがにこれは日本でも数人しかいないような年齢だ…。
 それにしても、笠智衆が実年齢(まだ40代だった)よりも枯れた感じの人で本当に良かった。娘の結婚前、最後に2人で旅行して旅館の一つ部屋に泊まるシーンでは、原節子がむやみに色っぽいので、あぶらぎった雰囲気のおやじだったら大変なことになっていました(爆)。

 全体にイイ雰囲気の作品だ。ただし、私個人的にはもうちっとドラマがあっても良かったかも、とも思った。やっぱり長く感じたし。すぐ居眠りするタイプの人が観るときは、前日は早寝をしておくこと(笑)。(2000/04/10)

伴淳・森繁のおったまげ村物語 ばんじゅんもりしげのおったまげむらものがたり
監督 堀内真直
公開年 1961年
評点[C]
感想  今日は、堀内真直監督の『伴淳・森繁のおったまげ村物語』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 上州の田舎で汲み取り屋をやっている九さん(伴淳三郎)と近くの街の化粧品問屋のドラ息子の三八(渥美清)は昔からの悪友同士。二人は村唯一の飲み屋に新しく来た女に入れあげるが、彼女はサギ師・長坂(森繁久彌)の情婦で……。

 題名は伴淳・森繁だが、実質的な主人公は伴淳と渥美清。渥美清は、のちの『寅さん』シリーズを彷彿とさせる見事な口上を聞かせるけれども、森繁の芸は意外と見られなくてちょっと期待はずれ。脚本や演出に傑出したものがあるわけではなく、全体に田舎者をコケにして笑う古臭い喜劇という感じで、今観て楽しめるかどうかは疑問。(2002/10/14)

幡随院長兵衛 ばんずいいんちょうべえ
監督 千葉泰樹
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、千葉泰樹監督の『幡随院長兵衛』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 時は慶安年間。太平の世が続いて無聊をかこつ水野十郎左衛門(中村翫右衛門)ら旗本たちは旗本奴となって江戸の町を横行し、対する町奴の旗頭である幡随院長兵衛(河原崎長十郎)はそれを苦々しく思っていた。老中の松平伊豆守信綱(汐見洋)は、その状況を利用することを図る。

 歌舞伎などでおなじみの幡随院もの(原作:藤森成吉/脚本:山本嘉次郎・吉田二三夫)。元々歌舞伎の前進座だけあって、皆役にハマっていて江戸時代の雰囲気が素晴らしい。セットも良く、特に元禄以前は天井がなかった芝居小屋をリアルに再現しているのには驚いた(美術:小池一美/撮影:中井朝一)。
 前進座総出演の作品だけあって、幡随院ものとはいっても歌舞伎で描かれる義理や男伊達の世界ではなく、長兵衛は論理的な考え方で水野との対決を決意することや、松平信綱が事の黒幕であるところが特色となっている。長兵衛が論理的だったり階級意識が強い点(前進座らしいが)はキャラがちょっと近代的過ぎるし、他の町奴連中も物わかりが良すぎるような。
 ただし、今の目で観るとひとひねりした部分にそれなりの面白さも感じられるし、長十郎・翫右衛門以下の前進座の面々の演技もいつもながら良い。水野十郎左衛門の初登場の時の傾き者(かぶきもの)っぷりにはウケてしまった。(2005/05/11)

阪妻 阪東妻三郎の生涯 ばんつまばんどうつまさぶろうのしょうがい
監督 松田春翠
公開年 1980年
評点[B]
感想  今日は、NHK衛星で放映された『阪妻 阪東妻三郎の生涯』を観た。昭和五十五年(1980)の作品(補注:一般公開は1993年)。松田春翠監督のドキュメンタリー映画。

 大正時代から戦後にかけて時代劇スタートして君臨した、剣戟王“阪妻”こと阪東妻三郎の生涯。
 主に長男の田村高廣を中心とした関係者へのインタビューと、主演作品の引用から構成されている。稲垣浩や伊藤大輔など、インタビューに答えた人々は今やほとんどの人が物故しているので貴重かもしれない。引用はチョット長いが、『王将』などは未見なので興味深かった。(2000/12/11)

番場の忠太郎 瞼の母 ばんばのちゅうたろうまぶたのはは
監督 稲垣浩
公開年 1931年
評点[A’]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『番場の忠太郎 瞼の母』を観た。監督は稲垣浩で、昭和六年(1931)の作品。

 幼い頃に母と生き別れ父を亡くして渡世人になった江州番場生まれの忠太郎は、いつも母の面影を追い求めていた。噂を頼りに江戸に出て数年、これはという人に出会ったが……。

 御存知、長谷川伸の原作(脚本:稲垣浩)の最初の映画化。有名な加藤泰監督版の中村錦之助は美青年という雰囲気だったが、この作品の若き日の千恵蔵は、若さと渡世人らしい鋭さも兼ね備えていて大変良い。弟分を助けるシーンは実にカッコイイ。そして母を求める弱さも見せる。忠太郎の妹役の山田五十鈴も可憐。
 サイレント完成期の作品のためか、映像と字幕のリズムが心地よく、田舎の牧歌的な描写や江戸の雪が印象的。プリントの傷で始終雨が降りまくりの古い画面だが、それが効果的になっている面もあるかも? ラストは、確か原作者の許可を得たという話を聞いたことがある。(2001/01/12)

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