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光る海 ひかるうみ
監督 中平康
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、中平康監督の『光る海』を観た。吉永小百合&浜田光夫主演で、昭和三十八年(1963)の作品。

 卒業式を迎えた大学の英文学科は、多くの女学生に対して男子は7人のみである。その中でも野坂孝雄(浜田光夫)は人気があって、バーを経営している母親(高峰三枝子)と母一人子一人の石田美枝子(吉永小百合)と、葉山和子(十朱幸代)の二人と友達づきあいをしている。孝雄は特に和子のことが気になって、和子も意識しているが、お互い一歩を踏み出せない。一方、三枝子も孝雄が好きだが、母親の再婚話がもちあがって……。

 原作は石坂洋二郎(脚本:池田一朗)。原作者の作風に加えて、中平監督の演出で登場人物たちの軽快な会話が続くが、しゃべりっぱなしという印象がある。また、美枝子の母親の再婚話が進むとシリアスになっていくが、他の部分とちょっとバランスが悪いような気がする。
 美枝子の母親の再婚相手に森雅之。その妻(作中で死亡)役は田中絹代。ベテラン俳優たちの中でも、田中絹代の大物感が凄い。(200/02/28)

彼岸花 ひがんばな
監督 小津安二郎
公開年 1958年
評点[B]
感想
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彼岸花
彼岸花
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
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第一集

 今日は、小津安二郎監督の『彼岸花』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。小津初のカラー作品。

 商社の常務の平山渉(佐分利信)は、他人の娘の結婚や恋愛に関しては物わかりの良いことを言うが、自分の娘(有馬稲子)の恋人(佐田啓二)から結婚許可を乞われると、とたんに頑固おやじと化して猛反対。妻(田中絹代)や親戚の娘の幸子(山本富士子)はあきれてしまう。さて娘の恋は実るかどうか…。
 佐分利信の頑固おやじは見事にハマっていて、怒るシーンは怖すぎ(笑)。妻の田中絹代は、こういう力を抜いて演れる役柄だと上手いなぁ。佐田啓二は台詞棒読みで、有馬稲子や山本富士子など若い娘のメイクは妙に濃いというか時代を感じさせる。
 しかし、笠智衆が主役の父親を演ずる作品(これには脇役で登場)のような悲哀が無く、他愛が無いと言われれば、そうかもしれない。今一つ胸に迫るものが無い。職人芸的な上手さはあるけれども。よく指摘されるように、前年の『東京暮色』の失敗で安全策を採ったという面もあるだろうか。
 初のカラーで、有名な赤いヤカンが所々に顔を出す。ちょっとうるさいかな。翌年の『浮草』では宮川一夫カメラマンが嫌って置かせなかったというし。あと、やはり褪色している。松竹では三原色に分解したネガを残さなかったのか…大映の『地獄門』なんて、今でもどぎついくらい鮮やかなのに。これはイーストマンカラーであるためでもあるけど。(2000/09/23)

ひき逃げ ひきにげ
監督 成瀬巳喜男
公開年 1966年
評点[C]
感想  成瀬巳喜男監督の『ひき逃げ』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 伴内国子(高峰秀子)は、大企業の重役・柿沼久七郎(小沢栄太郎)の運転手に一人息子(宮康弘)をひき殺された。いったんは示談に応じたが、真犯人(司葉子)が別にいることを知った国子は復讐を誓う。

 一連の成瀬監督と高峰秀子のコンビの作品。この作品は、男女間の恋愛が主題ではなく増加しつつあった交通事故を描き(当時、既に“交通戦争”という言葉があっただろうか)、国子という女性を通してであるが社会派的なテーマを扱っている。
 しかし、主人公にはあまり魅力が無いし共感も感じづらい。上映時間は1時間35分程度だが、かなり長いような気がした。亡き子を思っているにしても高峰秀子の演技はちょっと暗すぎるように思ったが、この脚本(松山善三)では成瀬監督も演出しづらかったのではないか。重役の会社がオートバイメーカーだというのもテーマ性が露骨なのでは。
 成瀬作品は男女の交情を中心としていないと、イマイチなような気もする。(2002/08/21)

樋口一葉 ひぐちいちよう
監督 並木鏡太郎
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、山田五十鈴主演の『樋口一葉』を観た。監督は並木鏡太郎で、昭和十四年(1939)の作品。

 明治時代初期、樋口一葉(山田五十鈴)は文才を半井桃水(高田稔)に認められ作品を文芸誌に発表するまでになっていたが、周囲に彼との仲を噂され交際を絶ってしまう。生活に窮した一葉一家は吉原裏の長屋で荒物屋を開き、そこで下町の貧しい人々の生活を目の当たりにする。

 文字通り夭折の文人一葉の半生を描いた作品だが、彼女の伝記的事実に代表作の『たけくらべ』『十三夜』『大つごもり』の一部を組み合わせている。各作品のエピソードを小分けして組替えて各々を同時進行的に一葉自身が体験したように描いている。構成・展開に無理がない脚本は巧み(脚本:八住利雄)。
 面長で古風な顔立ちの山田五十鈴は、まさに一葉そのもの。細かい表情の演技が実に良い。桃水の高田稔も、一葉を受け止める懐の大きい男性という雰囲気を出していた。実際の半井桃水は、さほどの人間ではなかったようだが……。『たけくらべ』の美登利に相当する役として、まだ少女の高峰秀子も出演。花魁(おいらん)のなんたるかを知らぬ無邪気さが哀しい。
 明治時代の建物など風俗がリアルに再現されていて、それを捉える撮影が良い(撮影:伊藤武夫)。雨や雪の雰囲気が良く、日本式家屋のガラス障子が巧みに演出に用いられていた。終盤、一葉が桃水の家から出てきたあたりで大きな音量の音楽が流れてちょっとビックリしてしまった。少々大げさすぎる。
 上映時間が83分ほどで大作ではないが、丁寧な演出と巧みな脚本と演技とが揃っている佳作だった。個人的には今井正監督の『にごりえ』より好き。(2004/06/24)

秘剣 ひけん
監督 稲垣浩
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、稲垣浩監督の『秘剣』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 寛永年間の豊前小倉藩。剣の達人だが性狷介な早川典膳(市川染五郎、のち松本幸四郎)は、客として主家を訪れた宮本武蔵(月形龍之介)を侮辱して逼塞を申し渡されると脱藩して山中で修行し、秘太刀を生み出したと自称する。一方、典膳と幼なじみで無二の親友の細尾長十郎(長門裕之)は上意討ちの追っ手として選ばれてしまう。

 『柳生武芸帖』などの五味康祐の小説の映画化(脚本:稲垣浩・木村武)。
 剣の達人である典膳を名人としてではなく、人間的に未熟で平和な世には無用な一種の欠陥人間として描いている。実際、観ていると主人公にはイライラさせられるほど。染五郎(現・松本幸四郎)のまだ生硬な演技も相乗効果になっているかも。典膳に魅力がないので、追う側の長十郎の心理描写などがもっと欲しかった。長門裕之の演技は悪くないのだが、全体に第三者的な視点からの淡々とした描写が続いてちょっと退屈させられる。
 老境の宮本武蔵を演じた月形龍之介が実に素晴らしい。もの凄い貫禄。その他、登場シーンの多い藩の老臣を演じた左卜全や目付の三井弘次の演技が軽快で、作品の息抜きになっていた。脇役の描写が良く、映像もモノクロ画面が重厚で時折使われる凝った構図が効果的なので(撮影:山田一夫)、もう少しテンポ良く展開し、長十郎の苦悩がもっと描かれていれば、より傑作になったかもしれない、と思った。(2005/06/04)

緋ざくら大名 ひざくらだいみょう
監督 加藤泰
公開年 1958年
評点[B]
感想  今日は、大川橋蔵主演の『緋ざくら大名』を観た。監督は加藤泰で、昭和三十三年(1958)の作品。

 大名の北条家の跡取りである鶴姫は、会ったこともない婿を迎えるのが嫌で、家出してしまう。一方、ある芝居小屋や長屋では“三(さぶ)さま”(大川橋蔵)と呼ばれる上品な若侍が楽しそうに遊んでいるが、その正体は……。

 原作は山手樹一郎の時代小説(脚本:斎木祝)。展開や“三さま”の正体は誰でもすぐ見当がついてしまうと思うが、お約束を楽しむ作品なのだろう。日本人がテレビを観るように毎週毎月映画館に通っていた時代の娯楽映画。まだ、加藤泰監督らしさが現れた作品ではないが、大川橋蔵の魅力は出ている。美男子というより、可愛いという感じ(笑)。(2002/10/09)

非常線の女 ひじょうせんのおんな
監督 小津安二郎
公開年 1933年
評点[A’]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第四集
小津安二郎
DVD-BOX
第四集

 今日は、小津安二郎監督の『非常線の女』を観た。昭和八年(1933)の作品。

 社長の息子(南條康雄)に求婚されている可憐なタイピスト時子(田中絹代)。しかし彼女は、付近の与太者のボス襄二(岡譲二)の情婦という裏の顔も持っていた。元ボクサーの襄二に憧れて若い宏(三井秀夫)が子分になり、弟を心配して宏の姉・和子(水久保澄子)が会いに来たことから時子と襄二の関係はきしみ始め……。

 小津監督のサイレント作で、原案はゼームス・槇(小津の筆名)のオリジナル(脚本:池田忠雄)。モダン趣味が強い小津の戦前作の中でも、徹底して洋風の雰囲気に貫かれた異色の一本。
 舞台設定はよくわからないが(銀座・有楽町か横浜?)、襄二と時子の住まいが洋風アパートなのは良いとして、学生である宏と姉の和子の家までアパート。主な舞台のボクシングジムや時子の会社も大変モダンな作り。ただし、登場人物の行動原理は日本人的なのだが。
 まだ少女のような田中絹代がモダンなドレスやコートを着、後半ではアクション(というと大げさだが)を演ずるのも彼女の柄に合っていないので、「ギャングごっこ」なんて酷評を見かけたこともある(笑)。そこまで酷いとは思わないが……。一方、ソフト帽と背広で決めた岡譲二の雰囲気はまずまず。
 映像面は、規則的に並んだ静物を映したり一度に登場した複数の人物が同じ動作をしたり小津の個性を強く感じさせる一方、追って来る警官を影で表現するなど洋画の影響を強く受けた表現もある。
 特筆すべきはフィルムの保存状態の良さ。当時のレンズや照明のために被写体深度が浅い条件下で、一つ一つのカットにおいて主題となるものにはピタリとピントが合い、その他のものはソフトにうっすらぼやける映像になる茂原英朗キャメラマンの技巧を楽しめる。また、各カットが一枚の写真として成立するような構図で、静的な美しさのある映像になっている。

 小津監督は、この作品を当時の日本ではなく近未来(当時から見て)あるいは架空の街を舞台とした一種のファンタジー作品として作ったのかもしれない。そのくらいの洒落っ気はあった人だろう。
 名作や傑作と言えるかどうかわからないが、美しい映像と当時の日本人が現在でも無いような洋風な空間で行動している奇妙な感覚も味わえるユニークな一本。(2004/12/25)

びっくり五人男 新東京音頭(新東京音頭 びっくり五人男) びっくりごにんおとこしんとうきょうおんど
監督 斎藤寅次郎
公開年 1949年
評点[C]
感想 『ラッキー百万円娘』(らっきいひゃくまんえんむすめ)を参照

秀子の応援団長 ひでこのおうえんだんちょう
監督 千葉泰樹
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、高峰秀子主演の『秀子の応援団長』を観た。監督は千葉泰樹で、昭和十五年(1940)の作品。

 高嶋秀子(高峰秀子)は叔父(千田是也)が監督をしている職業野球(プロ野球)チーム“アトラス軍”を応援しているが、アトラス軍はエースを出征で失い、投手の人丸(灰田勝彦)は連敗中。秀子は女学校の同級生や近所の子供たちと語らい、皆で秀子作の応援歌を歌って応援すると、人丸やアトラスの選手たちはにわかに元気を出し始める。

 戦前は六大学野球、特に早慶戦の人気が圧倒的だったというが、この頃は“職業野球”も安定した人気を得はじめたのだろうか。野球には疎いのでよくわからないが、作中に実在の巨人軍やセネタース、阪神などが登場して有名選手たちもチラッと顔を見せるので、戦前野球に興味のある人にとっては資料的価値が高いかもしれない。
 内容は、途中までは全く観客の予想通りに展開する、高峰秀子を見せるための明るく楽しい明朗喜劇だったが、終盤は突然急展開してちょっと辛口な味が加わって驚かされた。これがあるので単なる明朗ドラマに終わらない印象が残り、佳作として記憶されることになったのかもしれない。
 それにしても、高峰秀子は丸顔だけど顔が小さくて戦前の人間の中では際立って頭身が高いな……。(2003/11/10)

秀子の車掌さん ひでこのしゃしょうさん
監督 成瀬巳喜男
公開年 1941年
評点[A]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『秀子の車掌さん』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 甲府を走る甲北乗合自動車には、運転手の園田(藤原鶏太〔釜足〕)と車掌おこま(高峰秀子)が走らせるおんぼろバスが一台きり。とてもライバル会社にはかなわず、おこまはバスガイドとして乗客に名所旧跡の案内をすることを思いつく。その文案を会社の近所の旅館に逗留している作家の井川(夏川大二郎)に頼むと、すぐさま書いてくれたが……。

 原作は井伏鱒二の 『おこまさん』(脚本:成瀬巳喜男)。高峰秀子の成瀬作品初出演だという。成瀬監督と高峰秀子は縁が深いイメージがあるので、昭和十六年の段階まで出演していなかったのが意外だ。
 55分ほどの小品だが、顔が真ん丸でまだ少女っぽい高峰秀子と人の良さそうな藤原釜足、浮世離れしているような小説家を演じた夏川大二郎とバス会社のセコい社長を演じた勝見庸太郎、皆良い。監督の細かい演出によって各キャラクターも各々の行動で的確に性格を表現されている。
 田舎道をバスが走る風景から最初の方は清水宏作品を一瞬連想したが、成瀬監督だけあって市井の庶民をちょっと皮肉な視点からリアルに描いている。かといって嫌味なのではなく、この作品ではキャラのセコさが愛嬌になっているように見えた。ラムネかけかき氷、美味そう。
 しかし、終盤では一転してドラマティックな(?)展開。『流れる』に似ているという説を見かけたことがあるが、そうかもしれない。だが私は、おこまと園田なら大丈夫だろう、と思った。
 原作のおかげでもあるのかもしれないが、非常に密度の高い短編の良作。原作も読みたくなった。(2005/04/12)

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