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怪異宇都宮釣天井 かいいうつのみやつりてんじょう
監督 中川信夫
公開年 1956年
評点[A’]
感想
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怪異宇都宮釣天井
怪異宇都宮釣天井

 今日は、中川信夫監督の『怪異宇都宮釣天井』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 将軍家光(沼田曜一)の日光参詣が近い日、宇都宮十五万石の城下に隠密・利根柳太郎(小笠原竜三郎)が潜入した。彼はすぐ、城主・本田上野介(江見渉)の家臣・河村靱負(江川宇礼雄)が豪商・鍵屋(三島雅夫)と組んで腕利きの大工を集めて怪しげな細工をしていることを嗅ぎつけた。そんな彼を謎の覆面男・黒住典膳(丹波哲郎)が襲う。

 題名通り“宇都宮吊天井”を題材にした作品(原作:伍堂徹二/脚本:武部弘道・仲津勝義)。
 序盤から中盤までは題名とは異なり“怪異”の雰囲気はあまりなく、オーソドックスな時代劇の感じで進む。主演の小笠原竜三郎にはあまり華がなく、全体的に地味な雰囲気だが、いわくありげな山娘(筑紫あけみ)や謎の覆面男、そして吊天井の謎解きなどが絡みテンポ良く進んで飽きさせない、サスペンス時代劇といった感じ。中川監督の演出の巧みさを感じた。
 終盤には題名通り“怪異”の要素が加わってスパイスになる。上映時間は80分少々で短い作品だが、よくまとまった時代劇の佳作といっていいかもしれない。吊天井の仕掛けも、まずまず迫力がある。
 丹波センセイは出番が多いがほとんど顔を隠しているので、ちょっと損な役かも?(笑)(2004/09/07)

海軍 かいぐん
監督 田坂具隆
公開年 1943年
評点[B]
感想  今日は、田坂具隆監督の『海軍』を観た。昭和十八年(1943)の作品。

 昭和九年。鹿児島で中学校(旧制)に通う商家の息子の谷真人(山内明)は、大の海軍好きである親友の牟田口隆夫(志村久)に誘われ、海軍士官になるため海軍兵学校への進学を志す。牟田口は目が悪いため体格検査を通れず挫折してしまうが、谷は見事入学して卒業。特殊潜航艇の乗組員に抜擢され真珠湾を目指す。

 朝日新聞に連載された岩田豊雄(獅子文六)の原作の映画化(脚本:澤村勉・田坂具隆)。松竹が製作した“情報局国民映画”の一本で海軍が協力し、開戦二周年記念の日に公開されている。
 純然たる国策映画のためか、主人公は糞真面目を絵に描いたような人物で、他の男性の登場人物も同様にコチコチなキャラ。真面目ゆえの美しさというものはあるけれども、それ以外の人間的魅力には少々乏しい男性陣に対して、主人公の母(滝花久子)や姉(風見章子)そして牟田口の妹(青山和子)といった女性キャラは自然に描けているのが印象的だった。
 姉と妹たちは感情をあらわにするし、主人公の母も理想化されてはいるものの息子が兵学校に行きたいといった時や開戦の報を聞いたときに一種不安げな表情をするのが印象的。終盤で再び描かれる食事の場面も感動的だ。
 序盤から中盤にかけては、鹿児島にある海軍に関する名所旧跡(東郷平八郎出生の地や墓所など)の紹介のようなシーンが続いて、いささか退屈。中盤は兵学校でのカッター訓練の躍動感が見事で兵学校の実写映像も興味深いが、訓練シーンがもっと欲しかったと思う。終盤は、特殊潜航艇の訓練風景などが見られると思ったら、ほとんどなくて期待はずれ。機密保持のためか。特撮も東宝の『ハワイ・マレー沖海戦』などに比べると今ひとつ。
 また、フィルムがアメリカに接収されたときに切られてしまったとのことで、尻切れトンボになっているのも残念。

 主役級の三人(谷・牟田口・牟田口の妹)は新人ながらも自然な演技で、女性キャラクターの描写や主人公と母親との触れ合い、兵学校での訓練シーンなど光るものがあるだけに、やはり制約が映画を硬くしてしまっているようで惜しい気がする。監督としては挫折した牟田口の方も、もっと突っ込んで描きたかったのではないだろうか。(2005/03/04)

怪談 かいだん
監督 小林正樹
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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怪談
怪談

 今日は、小林正樹監督の『怪談』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の“Kwaidan”から、「和解」「雪女」「耳なし法一の話」「茶碗の中」のエピソードを基にしたオムニバス。「和解」だけは「黒髪」と改題されている。

 どれも、恐怖よりは映像美を重視しており、セットが豪華。中でも「雪女」と「耳なし法一」は様式化された舞台的なセットが面白い。特に後者は、壇ノ浦の合戦と、法一(中村賀津雄)が平家の亡霊の前で琵琶を弾き語りするシーンの処理が見事で美しい。法一を迎えに来る武者の亡霊が丹波哲郎ってのはハマり過ぎで面白い(笑)。彼の体に経文を書く住職に志村喬。「雪女」は岸恵子で、彼女を妻にする青年は仲代達也。(2001/07/19)

海道一の鬼紳士 かいどういちのおにしんし
監督 渡辺祐介
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、進藤英太郎主演の『海道一の鬼紳士』を観た。監督は渡辺祐介で、昭和三十八年(1963)の作品。

 観光地の三谷町は、温泉の湯が涸れてしまって町中困り果てていた。そこへ、ハワイのホテル王のヘンリー東郷(進藤英太郎)と秘書のミッキー本田(中村賀津雄、のち中村嘉葎雄)と称する二人連れが現れ、ハワイの日系人向けの観光地を調査していると言ったから町は大騒ぎになる。さらに大学の地質学の教授という男(益田キートン)まで町にやってきた。

 敵役や準主役の多い進藤英太郎の珍しい主役作品。ただ、中村賀津雄もほぼ同じくらいの比重の役。温泉町を舞台にした喜劇だが、粗筋は容易に予想ができ、演出も平板で新味が無い。お約束な話でも、もう少しテンポが良ければ楽しめるのだが。 中村賀津雄は、まだあまり上手くは無いが、生きの良さを感じた。(2003/04/02)

COWBOY BEBOP 天国の扉(カウボーイビバップ 天国の扉) かうぼおいびばっぷてんごくのとびら
監督 渡辺信一郎
公開年 2001年
評点[B]
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COWBOY BEBOP 天国の扉
COWBOY BEBOP
天国の扉

 劇場版アニメ『COWBOY BEBOP 天国の扉』を観た。監督は渡辺信一郎で、平成十三年(2001)の作品。

 時は2071年。火星の都市でバイオテロ事件が発生して大量の犠牲者が出たが、その病原体は不明であった。賞金稼ぎのスパイク(声:山寺宏一)・ジェット(声:石塚運昇 )・フェイ(声:林原めぐみ )たちが事件を探り始めると、元特殊部隊隊員のヴィンセント(声:磯部勉)が容疑者として浮かび上がり、製薬会社チェリオスケミカルも影でうごめいていることがわかる。

 1998年にテレビ東京で初放映された(諸事情で打ち切られ全26話の初放映は衛星放送のWOWOW)アニメ『カウボーイビバップ』の劇場版。続編ではなく劇中の1エピソードという設定らしい(第22話と第23話の間に位置するという)。
 賞金が懸けられた犯罪者を追う賞金稼ぎたちが主人公だが、テレビ版同様に単純なアクションものではなく、その犯罪者や関係者たちは過去や背景を持っている。ストーリー以外にも、定評のあった映像面のクオリティの高さはもちろんテレビ版以上。レギュラー声優陣も好演。
 しかし、じっくりと作りこみすぎたのか、テレビ版での展開のテンポの良さは失せているような気がする。上映時間は1時間55分ほどだが、この脚本だったら100分程度に詰めたらもっと印象が強くなるだろう。作りこみすぎというのはマニア向けの日本製劇場版アニメにまま見られる欠点だが。ただし、ストーリーは完結しているので、テレビ版を観なければわからないような難解さは無い。

 それと、個人的にちょっと引っかかったのは、作品全体に流れるアメリカ的な雰囲気。菅野よう子のジャズを中心とした音楽を始めとして、この作品がアメリカ的なのはテレビ版以来だが、それでも一応無国籍調にしていたテレビ版以上に劇場版では街を歩く人物の顔立ちや服装、街並みや建物の落書き、エピソードに絡む重要な要素のハロウィンに至るまでアメリカそのものの雰囲気がする。
 テレビ版が好評だったというアメリカの市場を意識したものだと思うし、別にコンプレックスなどは感じられないが、日本人がここまで無邪気なアメリカ讃歌を作らなくても? とも思う。
 そういえば、日本で公開された2001年9月にはアメリカで同時多発テロが発生したけど、この作品のアメリカでの売れ行きには影響しなかったかな?(補注:あとで知ったのだがアメリカでの公開は2003年5月だったという。この公開時期の遅れは政治的配慮だったのだろうか)(2004/11/17)

花影 かえい
監督 川島雄三
公開年 1961年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『花影』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 ホステス足立葉子(池内淳子)は、内心自分には合わないと思いながらも、それ以外で生きていく術(すべ)がなく、銀座で十数年暮らしてきた。彼女と高島(佐野周二)・松崎(池部良)・清水(高島忠夫)・畑(有島一郎)・野方(三橋達也)といった多くの男たちとの関係を描く。

 大岡昇平の原作を基とした(脚本:菊島隆三)文芸路線作品。こういうのもそれなりにこなすのを見ると、川島監督は奇才だのなんだの言う以前に“上手い”映画監督だったのだな、と思う。少なくない登場人物を各々巧みに描く手腕は見事。
 このヒロインは、報われないのに男に尽くす女という感じで、いささか古い女性像だが、周囲の男たちが描きこまれているので、それなりに観られる作品になっている。特に佐野周二は若い頃の二枚目路線の頃よりも演技・台詞回しなど格段に向上しているのにはちょっと驚いた。(2002/12/27)

還って来た男 かえってきたおとこ
監督 川島雄三
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『還って来た男』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 時は戦時中、召集解除になった若い軍医(佐野周二)が虚弱児童のための施設を作ろうと思い立ち、父親(笠智衆)に財産を譲ってくれと頼む。父親は快諾するが、ただ一つの条件として見合いをして結婚しろと言う。
 一週間後に見合いを控えているのに、せっかちな彼は慰問袋を送ってくれた女性の家に御礼を言いに行ったり、戦死した旧友の妹に会いに行ったり、忙しく動き回る。元軍医でハンサムな彼は出会った女性全ての関心を惹くが、本人はそんなことには気づかない。そんな中、偶然出会った女性(田中絹代)が見合い相手だとわかり…。

 川島監督の第一作で、まだ若い感じで『幕末太陽伝』ほどの完成度は無く、大爆笑というほどではないが、戦時中の作品とは思えないほど明るいコメディの佳作。
 ちょっとだけ「増産のために工場に働きに行く」などのスローガン的なものがあるけれども、佐野周二は背広にネクタイ姿で、女性教師役の田中絹代などもスーツのような洋服を着ていて、全体に戦時中の作品とは思えない雰囲気。こういう点が官憲には不評だったようだ。
 佐野周二のコメディ演技は、まぁまぁという感じだったが、田中絹代以外の女性との関係をサラッと流したのは、川島監督らしいと思った。のちの『洲崎パラダイス 赤信号』を思い起こさせる。佐野周二と笠智衆が親子というのは小津監督の『父ありき』(1942)に続いて2作目。笠の演技は、小津作品よりは自由なような感じがする。(2000/08/28)

加賀騒動 かがそうどう
監督 佐伯清
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、佐伯清監督の『加賀騒動』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 加賀前田家の家臣・大槻伝蔵(大友柳太朗)は茶坊主あがりの軽輩だったが、江戸の大火事の夜に加賀火消しと定火消し(旗本火消し)・町火消しの三つ巴の争いを鎮めたことから藩主・前田吉徳(三島雅夫)の目にとまり、好いていた商家の娘お貞(東恵美子)を藩主のそばに上がらせたこともあって、一気に栄達を始める。しかし、家老・本田安房守(薄田研二)らごくわずかな理解者を除いて、国家老・前田土佐守(千田是也)や元上司の奥村長左衛門(加藤嘉)など、家中のほとんどは大槻を白眼視した。

 原作は村上元三(脚本:橋本忍)。歌舞伎や講談などで有名な“加賀騒動”を映画化。この作品では、芝居などでは悪役とされる大槻を、前田家中の勢力争いの犠牲となった悲劇の主人公として描いている。
 娯楽性を配慮したのか映画の時間の都合か、大槻が主導した加賀前田家の内政改革などにはほとんど触れられず、加賀騒動の要素を全て男女関係に還元してしまっているのは少々物足りない。ただし、大友柳太朗は出世の鬼と化した男の孤独を表現していたし、大友に好意的な側の本田安房守や元同輩の山村善右衛門(東野英治郎)・中間の又介(稲葉義男)らが丹念に描き込まれていて印象的。また、終盤の立ち回りの執拗な描写とラストシーンが良いので、全体として佳作という印象。
 映像的には、三木滋人の撮影によるソフトな白黒画面が美しく、説明的というか、状況を映像で説明する絵作りが上手い。(2002/12/31)

隠し砦の三悪人 かくしとりでのさんあくにん
監督 黒澤明
公開年 1958年
評点[A]
感想
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隠し砦の三悪人
隠し砦の三悪人
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黒澤明
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 今日は、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)は一旗揚げようと雑兵になったが、負け戦でさんざんな目にあって逃げ出した。隣国の山名家に滅ぼされた秋月家の侍大将・真壁六郎太(三船敏郎)は強欲な二人を利用して、密かに秋月家再興のための金を持ち出し跡継ぎの雪姫(上原美佐)を逃がそうとする。

 『スターウォーズ』にヒントを与えたことでも知られる作品。そういえば、テーマ曲も『スターウォーズ』のメインテーマに似ているような気もする。
 千秋実と藤原釜足のコミカルなやりとり、三船敏郎のアクション、上原美佐の美しさ、全てキャラが立っていて面白い。特に、三船が馬を駆って騎馬武者を追いかけて切り捨てるシーンの迫力 が凄い。
 上原美佐は素人だったそうだ。台詞回しが凄い(別の意味で)ので、脱出行の最中は口のきけない娘ということにされていたのは、ちょうど良かったかも(笑)。話せないことを意味する俗語が連発されているため、地上波放映は絶対に無理だろう。(2001/04/23)

影狩り かげがり
監督 舛田利雄
公開年 1972年
評点[B]
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影狩り
影狩り

 今日は、石原裕次郎主演の『影狩り』を観た。監督は舛田利雄で、昭和四十七年(1972)の作品。

 江戸時代の末期近く、財政が苦しい幕府は藩を取り潰したりして財政の穴埋めをしようとしていた。ある時、幕府の老中(丹波哲郎)は金山を掘り当てた出石藩を狙い、俗に“影”と言われる公儀隠密の一団を派遣する。一方、出石藩側でも“影狩り”と呼ばれる対隠密の用心棒の室戸十兵衛(石原裕次郎)・日光(内田良平)・月光(成田三樹夫)を雇って対抗しようとする。

 さいとうたかをの劇画の映画化(脚本:池上金男)。それだけに、公儀隠密は完全な忍者の格好で、影狩りの側もいかにも浪人という風体で、劇画的な印象。そういうファッションや鎖鎌を振り回す刺客など、劇画では良くても実写になってしまうとちょっとリアリティに欠けるかも……。ストーリーの展開のテンポは良い。
 影狩りの三人は各々過去がある割りに、悲壮さあるいは陰りのようなものが感じられないのが少々気になった。あと、音楽が時代劇には合ってないような。(2002/10/12)

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