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敵討三都錦絵(愛憎三都錦絵) かたきうちさんとにしきえ
監督 児井英男
公開年 1935年
評点[A’]
感想  今日は、黒川弥太郎主演の『敵討三都錦絵(愛憎三都錦絵)』を観た。監督は児井英男で、昭和十年(1935)の作品。

 密かに勤皇派として働いていた藤倉半兵太(清川荘司)が、主君が放った隠密・藪田彦兵衛(阪東勝太郎)によって暗殺された。藤倉の妹・小染(花井蘭子)の許婚(いいなずけ)であった浪野雪衛(市川正二郎)とその友人の平栗平記(黒川弥太郎)は仇の藤倉と手下を討とうとする。

 一般にはプロデューサーとして知られている児井英男の初監督作品。“指導監督”という名目でベテラン池田富保の名もある。児井英男の監督作は10本ほどあるようだ。原作は『雪之丞変化』で有名な三上於菟吉(脚本:星逸平)。
 場面転換にアイリス・インやワイプアウトを利用したり、象徴的な意味で蛙・蜘蛛・家鴨といった動物を出したり、初監督らしからぬ……あるいは初監督だからこそできた遊びがたっぷりある。終盤の宿屋の中での殺陣も、斬りあっている主人公たちに加えて泊り客まで画面の中で右往左往して逃げ回り、目まぐるしく楽しい。
 黒川弥太郎と市川正二郎の演技はちょっと硬いが、二役を演じわけた花井蘭子は見事。薮田とその手下(上田吉二郎)は、いかにも悪役の演技とメイクだけれども、二人が活躍(?)する場面では映像表現までスリラー映画風になって面白い(撮影:町井春美)。
 序盤は真面目な勤皇映画かと思わせておいて、中盤以降はロードムービーの趣が強くなり、終盤では大チャンバラシーンと、現存プリントは72分強だがサービス精神たっぷりの作品。(2004/08/24)

河童大将 かっぱたいしょう
監督 松田定次
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、アラカンこと嵐寛寿郎主演の『河童大将』を観た。監督は松田定次で、昭和十九年(1944)の作品。

 戦国時代後期、尼子氏の家来の荒波碇之助(嵐寛寿郎)は、毛利氏の城に間者として潜入して捕らえられたが、得意の水泳で生還した。その手柄で足軽頭に取り立てられると、足軽たちに水練の教えを施す。そして、毛利氏との対決の時が迫った。

 アラカンが40歳にしてフンドシ姿の水泳を披露している。しかも、水泳のシーンは自分で泳いでいるから凄い。戦争末期だけあって1時間強の小品で、スケールはイマイチだしちょっと雑な展開に見えるようなところもあったが、まずまずのまとまりはあると思う。ただ、画質が今一つなのが惜しい。
 これは“国民皆泳運動”というものの宣伝に一役買った作品だそうだけれども、説教臭さは全く無く娯楽作として観ることができる。しかし、作中登場する山中鹿之助(原健作)の逸話を知らない現代人は、面白さが減殺されるかもしれない。「願わくは我に七難八苦(または艱難辛苦)を与えよ」と月に祈ったとか、「憂きことのなほ我が上に積もれかし 限りある身の力試さん」という歌を作った(実際には山中鹿之助ではなく江戸時代の学者・熊澤蕃山によるものらしい)とかいう伝説のある人だ。
 荒波碇之助の幼なじみでありライバルでもある早川鮎之助役に羅門光三郎、二人の幼なじみの女性に橘公子。(2001/04/06)

家庭日記 かていにっき
監督 清水宏
公開年 1938年
評点[B]
感想  今日は、清水宏監督の『家庭日記』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 生方修三(佐分利信)は経済的に困窮した実家のため、付き合っていた久枝(三宅邦子)と別れて富家の娘の品子(高杉早苗)の婿養子になり、辻一郎(上原謙)は親の反対を押し切って女給の卯女(桑野通子)と満州の大連に駆け落ちした。その後、二組の夫婦と久枝たちは東京で再会する。

 吉屋信子の原作の映画化(脚本:池田忠雄)。同年に東宝でも山本薩夫監督で映画化され競作になったという。
 久枝の妹として三浦光子、辻の母として吉川満子が出演していて、戦前松竹の女優陣の層の厚さを感じさせられられる。中でも存在感があるのは、やはりスレた女を演じた桑野通子。あばずれな面だけではなく後半では自分の前歴ゆえに悩む姿も印象的。高杉早苗もお嬢さま役にハマっているし、男性陣も柄に合った役。
 ストーリー的には、戦前のホームドラマという雰囲気で強い印象は残らない。生方の女性に対する残酷さが目立つような気がしたが、清水監督はそれを誇張しようとしたのだろうか。この映画はかなり原作に手を加えているそうなので。
 この作品は松竹オールスターキャストの原作ものであり主な舞台が東京なので、自然の風景・子供の描写や即興的な演出などの清水監督らしさはあまりない。大物俳優たちの演技を引き出して一般ウケを狙った作品という感じ。
 しかし、歩く人物を縦移動で、日本家屋を撮る際は部屋の仕切りの障子・ふすまを開けっ放しにして横移動でとらえる手法には清水監督らしさを感じた。終盤には、あまりストーリーには関係ないのに生方と辻の故郷である八王子の風景が強調されていたように見えた。また、メインキャストの女優が当時流行の洋装を着たり銀座が舞台の一つとなっているのは(これは原作どおりなのかもしれないが)監督のモダン好みの面が現れているのかもしれない。(2004/10/27)

蟹工船 かにこうせん
監督 山村聡
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、山村聡監督の『蟹工船』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 カムチャツカで蟹を獲り、船上で加工して缶詰にする“蟹工船”に、今年も様々な事情を持つ労働者たちが乗り込んできた。漁業会社の代表である監督の浅川(平田未喜三)は悪条件の中で漁を強制し、犠牲者も出る。労働者の蜂起とそれに対する弾圧。

 プロレタリア文学の代表作として有名な小林多喜二の原作を映画化した、俳優の山村聡の初監督作品で、脚本も山村聡が担当。
 ストレートに原作をそのまんま映画化したという感じで(実は原作は未読だが)、企業=体制=悪という構図が徹底して貫かれている。当時の劇団に所属している俳優たちの思想がよくわかる作品(前進座なども協力)。でも、誇張されているとはいえ、舞台となっている昭和初期には似たような状況だったのだろうから、笑ってはいけないのだろう。むしろ、内田吐夢の『逆襲獄門砦』などと同様、本気で社会主義・共産主義を理想化していたことに痛々しささえ感じられるが。
 終盤は、『戦艦ポチョムキン』を彷彿とさせるカタストロフィーが繰り広げられる。大真面目に作っているがゆえの映像の力強さは素晴らしい。
 山村聡は前科者である弱みに付け込まれて労働者たちをスパイする役。森雅之が後半に登場する飲んだくれの船医として登場しているというが本当か? 監督役の平田未喜三は、本物の漁師の網元だという。まさにそのものの迫力だと思った。(2003/07/21)

鐘の鳴る丘 隆太の巻 かねのなるおかりゅうたのまき
監督 佐々木啓祐
公開年 1948年
評点[B]
感想  今日は、佐々木啓祐監督の『鐘の鳴る丘 隆太の巻』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 昭和二十一年、戦地から帰ってきたばかりの加賀見修平(佐田啓二)は、感化院から脱走した弟の修吉(本尾正幸)を探すため、長野から上京した。修吉とは出会えなかったものの、妙な縁が出来た浮浪児・隆吉(野坂頼明)を田舎へ連れ帰った修平は、周囲の無理解と戦いながら戦災孤児のための施設を作ろうとする。

 菊田一夫原作の放送劇(ラジオドラマ)を映画化した作品(脚本:斎藤良輔)。主題歌がヒットしたそうだ。当時、社会的問題だった戦災孤児を主題にした物語で、善玉と悪玉が実にわかりやすすぎるほどハッキリしている。出演者は、本物の孤児ではないだろうが、皆痩せていてリアル。また、14歳という少年は、せいぜい今の12歳くらいにしか見えず、日本人の体格が向上したことがわかる。
 ラストが中途半端だと思ったら、この作品は計3編あるらしい。のちに『君の名は』を書いた菊田一夫らしく、“すれ違い”もある。(2002/09/24)

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 がめらすりいいりすかくせい
監督 金子修介
公開年 1999年
評点[C]
感想
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ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
ガメラ3 邪神覚醒
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ガメラ THE BOX 1995-1999
ガメラ THE BOX
1995-1999

 金曜ロードショーの『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』を観たです。監督は金子修介で平成十一年(1999)年の作品。

 ガメラのせいで家族を失った(と思っている)少女・比良坂綾奈 (前田愛)が移り住んだ奈良でイリスの封印を開けてしまい、それが甦って…。
 特撮はなかなか凄いと思った。ちょっといかにも特撮っぽいってところも多かったけど。しかし、役者の演技が上手すぎて観てるのがしんどい場面もあった。中山忍とか藤谷文子とか手塚とおるとか…大根の大安売り?(爆)前田愛は意外と話すシーンが少ないので黙っていれば綺麗だった(笑)。
 それと、人間や破壊される町を多く撮っていて、肝心の怪獣はあまり撮されなかったような気がする。最後の戦いも割とアッサリしていたような。この作品は怪獣映画かSFX映画か…。怪獣を多く撮っていれば、上手すぎる役者の場面も減らせただろうに。あと、最近のハリウッド映画みたいな、続編を匂わせるラストもどうかな。
 にしても、このストーリーは、少女一人のせいで多数の犠牲者が出たような…(笑)。(2000/09/08)

からっ風野郎 からっかぜやろう
監督 増村保造
公開年 1960年
評点[B]
感想
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からっ風野郎
からっ風野郎

 今日は、三島由紀夫主演の『からっ風野郎』を観た。監督は増村保造で、昭和三十五年(1960)の作品。

 朝比奈組二代目の朝比奈武夫(三島由紀夫)は、対立する相良組の相良雄作(根上淳)を殺しそこなって重傷を負わせて刑務所に服役し、出所の日を迎えていた。腕も度胸もない朝比奈は相良の復讐に脅える日々を過ごすが、朝比奈組の持つ映画館の受付嬢だった小泉芳江(若尾文子)と出会う。

 作家の三島由紀夫の初主演作。自己顕示欲が強かった人だけに、非常にノリノリで演技しているという感じ。思ったほど下手ではないが、上手いというほどでもなく若尾文子と一緒の画面に出ると、彼女の貫禄に押されてしまっているようにも見える。情けないヤクザのカッコ悪さもちょっと足りなかったように感じた。朝比奈の側近役を演じた船越英二が良い。
 ヤクザを美化しない脚本(菊島隆三・安藤日出男)は当時としては目新しかったのだと思うが、今観ると普通のものに見えてしまうのは、いたしかたないところか。演出は、増村監督にしてはエキセントリックなものが無かったが、大作家相手に遠慮するところがあったのだろうか?(2003/09/06)

カルメン故郷に帰る かるめんこきょうにかえる
監督 木下恵介
公開年 1951年
評点[A’]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第2集
木下惠介 DVD-BOX 2
カルメン故郷に帰る

肖像
破戒
お嬢さん乾杯
四谷怪談(前後篇)
破れ太鼓
婚約指環

 今日は、木下恵介監督の『カルメン故郷に帰る』を観た。昭和二十六年(1951)の作品。

 ある時、浅間山麓で牧畜をしている正さん(坂本武)の家出娘が突然帰ってきた。ド派手な洋服で村人を驚かせたリリイ・カルメンこと娘きん(高峰秀子)とその友人マヤ(小林トシ子)は自称芸術家、実はストリップの踊り子だった。正さんや小学校の校長先生(笠智衆)の渋い顔をよそに、カルメンとマヤは村を闊歩して騒ぎを巻き起こす。

 日本初の総天然色映画すなわちフルカラー作品として知られている作品で、しかも国産フジカラーの技術だという。木下恵介監督のオリジナル脚本で、感度の低い初期カラーフィルムでは光量を稼ぐためロケ撮影が必須だったことから、この設定になったそうだ。現在でもほとんど褪色せず浅間山麓の北軽井沢の景色が美しい。ただし、かなりノイズのようなものが乗っているのは何だろう。
 歴史に残るべき日本初のカラー映画の主人公がストリッパーというのも妙な気がするけれども、ド派手な衣装の色や当時としては傑出した高峰秀子のスタイルの良さを活かすためだろうか。木下監督は、この頭のネジが外れているカルメンというキャラを高峰秀子のために書いたというが、どういう意味かな?(笑)
 カルメンとマヤが草原で伸びやかに踊る姿は楽しく、校長先生も含めて“芸術”や“文化”のなんたるかがよくわからず右往左往する村人の姿はコミカルで面白い。戦争に負けたとたん「文化国家建設」を標榜し始めた日本人への皮肉か。戦争で失明した田口(佐野周二)というキャラが存在するのは、目先のことに惑わされぬ盲人のみが真実を見抜いていたという逆説を示すためだろうか。
 しかし、カルメンがおバカな女という設定や田舎者が滑稽に描かれているところなどは単なるコメディではないえぐみを感じ、木下恵介の他のコメディ(とされる)作品に共通するシニカルな視線もあるような気がする。(2004/01/13)

川中島合戦(川中島合戰) かわなかじまかっせん
監督 衣笠貞之助
公開年 1941年
評点[A]
感想  今日は、衣笠貞之助監督の『川中島合戦』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 永禄四年。上杉謙信(市川猿之助、のち市川猿翁)と武田信玄(大河内傳次郎)は、また信州の川中島付近で闘うことになった。上杉勢の大荷駄(輸送隊)の組頭・貝賀孫九郎(市川猿之助、二役)は百蔵(長谷川一夫)ら小者を率いて物資輸送のため奮闘する。

 溝口健二監督の『元禄忠臣蔵』と同じく、国民のナショナリズムを高揚させるためチャンバラ時代劇ではないリアルな歴史映画を作ろうという政策のもとに作られた作品の一つ。脚本は棟田博と衣笠貞之助。棟田博は『拝啓天皇陛下様』などの兵隊小説で有名な作家だが、確か長谷川伸の門下にあった人なので時代小説・歴史小説の造詣もあるのだろう。
 しかしながら、この題名や製作事情から大スペクタクル戦国合戦絵巻と思っていたら大違い。出世コースから外れてしまい輸送部隊に回されながらも忠義一途に働く人情篤き組頭と士分にも入らない小者たちが主役で、終盤までは合戦場に至るまでの行軍シーンがほとんどを占める。
 組頭と百蔵らが苦闘する行軍の過程はドキュメンタリータッチと言っていいほどリアルで、彼らにたっぷりと感情移入したあとに訪れる黒澤映画もびっくりの大合戦シーンは時間的には短いものの、それがかえって効果的。非常にアッサリとしているが、ダラダラ流すよりもよほど印象に残る。
 なんといっても人情家の組頭と威厳ある謙信を演じた猿之助が良い。素朴な若者を演じた長谷川一夫や信玄の大河内傳次郎も悪くない。百蔵たちに助けられる旅の女お篠(山田五十鈴)というキャラクターは途中までは余計に思えたが、ラストシーンで良いスパイスになっている。
 それにしても、今から観るととても戦意高揚には繋がらない作品なので、よく検閲を通ったものだと思うが、“滅私奉公”の精神を描いたものとして評価されたのだろうか。娯楽性はちょっと低いかもしれないけれども静かな迫力を感じさせる、現在でも価値を失わない一作。

 昔の映画の夜間シーンは何をやっているのかわからないこともあるが、この作品ではシャープに上手く表現していて、作品の価値を高めることに貢献している(撮影:三浦光雄)。保存状態が良く欠落もないのが嬉しい。(2004/11/23)

 かんざし
監督 清水宏
公開年 1941年
評点[A’]
感想  今日は、清水宏監督の『簪』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 ある湯治場の旅館に、足の悪い納村(笠智衆)と気難しい学者先生(斎藤達雄)と商家の若夫婦(日守新一・三村秀子)、そして老人(河原侃二)と孫二人(横山準・大塚正義)の計四組の長逗留客がいた。学者先生は退屈しのぎに宿や他の客に文句をつけてばかり。あるとき、簪(かんざし)が縁で、その持ち主である若い女(田中絹代)が納村をたずねてくる。

 井伏鱒二の『四つの湯槽』が原作だというが、完全に『有りがたうさん』や『按摩と女』といった清水監督の湯治場ものの雰囲気に沿った作品になっている。昭和十六年の作品だが、まだ戦時色はゼロ。太平洋戦争開戦前だから当然かもしれないけど、納村が傷痍軍人(戦争で負傷して後遺症が残った元軍人)ということも、解説なしで観たら全く気づかないだろう。
 斎藤達雄の演ずる学者先生のキャラが実に強烈で、一緒に出るシーンでは笠智衆を完全に食ってしまっている。しかし、学者先生や商家の若旦那(日守新一)などが繰り広げるコントのような会話が、あまりしつこくなく、湯治場ののんびりした雰囲気を崩さない程度で押さえられているのが良い。児童映画でも有名な清水監督らしく、子供キャラの使い方も上手い。
 清水作品らしく作中のキャラ同士の人間関係が実にアッサリしているが、後味のよさが残る作品。丸木橋や石段などの風景の使い方も巧み。(2003/09/15)

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