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消えた死体 きえたしたい
監督 瑞穂春海
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、瑞穂春海監督の『消えた死体』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 ダンスホールのダンサー中山美枝子(木暮実千代)は、闇屋を辞めて故郷に帰るという城三平(上原謙)と、ふとした偶然から親しくなった。美枝子は、社長(村田知英子)のバッグから金を抜いてきたという三平を諌めて一緒に社長の家へ返しに行くと、そこには社長の死体が。三平が第一容疑者にされるのは間違いないので、二人は独自に犯人を探そうとする。

 オープニングで“原案”として渋谷実の名が出てくる(脚本:清島長利)。それで期待して観始めたのだが……。
 サスペンスタッチの粗筋の割りには登場人物の演技に緊張感ゼロで、当然観ている方にも緊迫感は伝わってこない。サスペンスといってもコメディ的な要素もある脚本だが、ギャグが面白くない。67分強の短い作品なのに途中で退屈してしまい、渋谷実自らの演出だったらな〜と思いながら観てしまった。
 ただし、登場人物はメインキャストから脇役に至るまで松竹の経験豊富な俳優たちで、拙さを感じさせるところはない。やはり演出の責任が大きいような気がする。粘らず全て一発OKで撮りあげてしまったような。上映時間が短いし、映画館の番組の埋め草的作品だったのかしら。(2005/05/15)

祇園の姉妹(祗園の姉妹) ぎおんのきょうだい
監督 溝口健二
公開年 1936年
評点[超A]
感想
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祇園の姉妹
祇園の姉妹

 またまた溝口健二監督作品を観る。昭和十一年(1936)製作の『祇園の姉妹』。主人公の芸妓「おもちゃ」を演じた山田五十鈴は恐ろしいほどの演技力。まだ十代で、天才なんだな〜。
 冒頭では大胆なスリップ姿で登場。今ではなんでもないけど、昭和十年代の観客は山田五十鈴の当時としては長身のスレンダーな肢体にドキドキ?(笑)しかし、この当時すでに子持ちだったそうな…(爆)。その子が、今の高校生以下くらいの子供の爺ちゃん婆ちゃんの世代なんだなぁ。昭和は遠くなりにけり。(2000/01/26)(補注:『祇園の姉妹』に関してはこちらも参照)

祇園囃子(祗園囃子) ぎおんばやし
監督 溝口健二
公開年 1953年
評点[A’]
感想
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溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954
溝口健二
大映作品集Vol.1
『お遊さま』
『雨月物語』
『祇園囃子』
『山椒大夫』
『噂の女』

 今日は溝口健二監督の『祇園囃子』を観た。溝口得意の花柳界もの。

 昭和二十八年(1953)作で、『雨月物語』と同年の作品ですな。溝口自身が「間に合わせの仕事です」と言っているけど、間に合わせでこれだけの作品を作られたら、後世の人はたまりません(笑)。確かに『雨月』には及ばないが、傑作とは行かずとも佳作とは言えるのでは。若い頃の若尾文子は可愛い。木暮実千代は大人の女性の魅力が。
 若尾文子を悪女にするつもりが会社側の意向で不可能になって、最後が『祇園の姉妹』とチョット似た感じになってしまったのが溝口としては不満だったのかな。

 小津作品のあとで観ると、ずいぶんと自由に撮っているように見えるから不思議だ。溝口は移動とかクレーンは大好きだったけれども、それほど派手に使っているわけでは無いのだが。
 画質がまぁまぁ良いので、白黒でも着物の美しさが伝わってきた。撮影が宮川一夫だし。舞妓の修行を撮す前半は、なんだか京都の観光案内映画みたいな感じもしたけど。だから英題はA Geishaで海外版ビデオの値段も高いんだな(笑)。(2000/04/11)

飢餓海峡 きがかいきょう
監督 内田吐夢
公開年 1964年
評点[A]
感想
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飢餓海峡
飢餓海峡

 今日は、内田吐夢監督の『飢餓海峡』を観た!!昭和三十九年(1964)の作品であった!(←なにリキんでんだ)

 リキみたくもなるかも。長いよ〜!暗いよ〜!重いよ〜!の三重苦(?)で、面胴終太郎なら裸足で逃げ出すかも?(笑)でも、名作ではあると思うっす。
 昭和二十二年、青函連絡船の沈没事故で引き上げられた死体は、乗客名簿の数よりも二体多かった。そこに謎の“大男”が浮かび上がる。足取りは途切れるが、1人の娼婦が繋ぐ因縁が、十年後に、ある大実業家と大男を結びつける…。
 大男は三国連太郎。娼婦は左幸子で、これがちょっと凄かった。大男を追う刑事は伴淳三郎で、内田吐夢の厳しい演技指導を受けて「内田監督は俳優に多くを求めすぎる」と後々まで根に持っていたそうだけど、これ一作で映画俳優として名を残したようなもんだから、以て瞑すべしでは?(笑)

 内田吐夢監督も大男だったとか。なぜか“巨匠”は文字通り大きい人が多いなぁ。この作品、今は亡き映画評論家の荻昌弘は「題名には『長すぎて腹のへる映画』の意味もあるようだ」と書いてた。確かに(爆)。(2000/05/06)

奇巌城の冒険 きがんじょうのぼうけん
監督 谷口千吉
公開年 1966年
評点[B]
感想  今日は、谷口千吉監督の『奇巌城の冒険』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 遣唐使と共に唐へ渡った僧・円済(中丸忠雄)は、仏舎利(釈迦の遺骨)を探すため大角(おおすみ:三船敏郎)を供として西の果てに向けて旅立った。仏舎利は見つかったものの二人はペシルの町で捕らえられ、そこの王(三橋達也)は大角を火あぶりの刑にするという。しかし、円済は仏舎利を日本人に渡すため三日間だけ大角を自由にし、その間は自分を身代わりにしてほしいと頼む。

 粗筋を見てわかるように原作は太宰治の『走れメロス』(脚本:馬淵薫)だが、前半はオリジナル。『大盗賊』(昭和三十八年)と同じく中央アジア(シルクロード)の異国情緒を前面に出したファンタジー作で、イランロケを敢行して前作よりもスケールアップしている。
 暴虐な王と悪い宰相(中丸忠雄)、宰相の部下の盗賊の頭目(佐藤允)、仙人(有島一郎)とお婆(天本英世)というキャラの設定は前作とほぼ同じで、演ずる役者も王以外は同じ。三船敏郎の演技は相変わらずだが、キャラには合っている。
 オリジナル要素の前半がテンポがゆっくりで退屈なのが残念だが、中盤以降はさすがに盛り上がってきて、終盤の緊迫感はドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』もかくやと思われるほど……というのは誉めすぎだが(笑)、観ているうちに徐々に引き込まれていく感じ。ロケの部分は本物の砂漠の迫力があり、対するセットがチープに見えたりするが、城の構造や登場人物の衣装などは工夫されていて見て楽しい。
 決して傑作や良作と言われるような作品ではないが、今観ると稚拙な特撮やチープなセットなども含めて娯楽性は充分な一作だと思う。(2005/03/11)

菊次郎の夏 きくじろうのなつ
監督 北野武
公開年 1999年
評点[A’]
感想
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菊次郎の夏
菊次郎の夏

 今日は、北野武監督の『菊次郎の夏』を観た。平成十一年(1999)の作品。

 小学生の正男(関口雄介)は祖母(吉行和子)と二人暮らしで、夏休みになっても遊びに連れていってくれる人がいない。そこで、遠くにいると聞かされていた母(大家由祐子)に一人で会いに行こうとする。以前近所に住んでいた女性(岸本加世子)に偶然見つけられ、ヒモのような夫の菊次郎(ビートたけし)が成りゆきで連れていくことになる。いい加減な中年男の菊次郎と正男の珍道中。そして、旅先での様々な出会い。

 『あの夏、いちばん静かな海。』や『キッズ・リターン』の流れをくむ、抒情豊かな作品。冒頭から、友人たちは家族と遊びに行き、祖母も働きに出て一人取り残される少年の姿に胸打たれてしまった。子供の感じる孤独がよく表現されている。また、子供が世界に感じる理由のない恐怖も、夢やイメージの形で表されている。
 中年男が他人の子供を世話したり親元に送り届けるというストーリーは『座頭市』などによくあったようだが、その淵源は遠く『無法松の一生』や、勘太郎を連れて放浪する『国定忠治』あたりにまで遡るだろうか。
 映像も非常に美しいが、ブルーのフィルタが強くて人の肌がくすんでいるように見えた。これは鑑賞する環境によって異なるけれども。
 バイオレンスは直接的に描写されることが全く無く、コメディアンとしてのビートたけし流のギャグが多い。この辺、好みが別れるところだろう。また、実験的なイメージ・ショットが多く、全体的に感傷的で甘すぎるとする意見も多いかもしれない。しかし、個人的には好きな作品だ。北野武作品は、感性で観るべきタイプの映画だと思う。
 たけし軍団のグレート義太夫や井手らっきょ等が出演し、特に井手が怪演している。(2000/12/01)

キクとイサム きくといさむ
監督 今井正
公開年 1959年
評点[C]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 4 社会編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 4 社会編
キクとイサム
橋のない川 第一部
橋のない川 第二部

 今日は、今井正監督の『キクとイザム』、もとい、『キクとイサム』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 黒人米兵と日本人女性との間に生まれたキク(高橋恵美子)とイサム(奥の山ジョージ)の姉弟は、母親も亡くなって祖母(北林谷栄)の手で育てられている。好奇と差別の目にさらされながら苦難の道を歩む三人。

 今井監督の作品だけに、当時の社会問題を真正面から取りあげた実に真面目な作品。だが、今観ると重い。実に重い。キクを演じた高橋恵美子は素人だったそうだが、とても演技が上手い。それだけに、かえってきつい。題材も取りあげ方も真面目で、当時この作品を撮ることには大きな意義があったのだろう。しかし、現在から観ると、もう少し違った角度での切り方はなかったかな…と思ってしまう。(2001/03/20)

喜劇 仰げば尊し きげきあおげばとうとし
監督 渋谷実
公開年 1966年
評点[C]
感想  今日は、渋谷実監督の『喜劇 仰げば尊し』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 瀬戸内海の島の小学校の老教師・浜口丈太郎(森繁久彌)を久しぶりに訪ねてきたかつての教え子・黒川(木村功)が自殺。ショックを受けた浜口は島に来た黒川の愛人・小林千律(佐々木愛)と共に、遺骨を黒川の妻(川口敦子)に渡すため上京して東京で昔の教え子たちに会う。

 渋谷実が松竹を出て東宝系の東京映画で作った唯一の作品で、遺作でもある(脚本:松山善三)。
 ストーリーの組み立ては『舞踏会の手帳』に倣ったもので、戦争から戦後にかけて大きく変わった人間そして日本がテーマ。生真面目な松山善三色が強いのか、社会批判がストレートに出てしまっていて松竹作品でのシニカルな渋谷監督らしい演出はあまり見られない(これが喜劇?)。ラスト近くの“事件”も、松竹時代だったらもっと面白くしていたと思う。
 また、かつてあったテンポの良さもなく森繁のオーバーな熱演ばかりが目立つ。なんだか、悲慷憤慨する浜口の姿に、テレビ時代についていけない渋谷監督自身を見ちゃったりして……というのは考えすぎかな?
 浜口のかつての教え子として三木のり平と田村高廣、三木のり平の妻として市原悦子、浜口の昔の恋人として京塚昌子が出演。(2005/06//16)

喜劇 とんかつ一代 きげきとんかついちだい
監督 川島雄三
公開年 1963年
評点[A]
感想  今日は、東京の三百人劇場で川島雄三監督の『喜劇 とんかつ一代』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 上野のとんかつ屋「とん久(きゅう)」の店主・五井久作(森繁久彌)は、元々は上野動物園の隣にあるレストラン青龍軒のコック長・田巻伝次(加東大介)の一番弟子だったが、彼の妹・柿江(淡島千景)と一緒に店を出てとんかつ屋を開いてしまったので、久作と伝次は犬猿の仲になっていた。伝次の息子の伸一(フランキー堺)が久作の元に転がり込んでいたり、伸一の会社の社長で伝次の恋敵でもあった衣笠大陸(益田喜頓)が青龍軒を買い取ろうとしたり、てんやわんやの騒動が続く。

 森繁やフランキー堺たちを初めとする、豪華キャストが集まった喜劇作品。いきなり、オープニングタイトルでは生きている豚の横顔が映し出されて観客を驚かせる。上記以外にも、三木のり平・木暮実千代・池内淳子・山茶花究・水谷良重(現・水谷八重子)・岡田真澄など、多くの登場人物が様々なエピソードを繰り広げて、とても一度観ただけでは紹介できない(笑)。しかし、複雑な人間関係を混乱無く描ききった脚本(柳沢類寿)と監督の技量は敬服もの。
 中でも、三木のり平&池内淳子のクロレラ研究家夫婦と岡田真澄の“変な外人”が特に面白い。所々しつこいドタバタギャグもあるが、ウィットの効いた笑いに満ちている。森繁久彌の歌うテーマ曲が耳に残る、喜劇映画の快作。

 ただし、現在観ると傑作と思えるのに、川島監督特集上映のパンフレット(磯田勉 編『川島雄三 乱調の美学』ワイズ出版 2001年)に引用されている川島監督自身の言葉によると、公開当時は酷評されたのだろうか。う〜む…。(2001/05/04)

義士外伝 忠僕直助(義士外傳 忠僕直助) ぎしがいでんちゅうぼくなおすけ
監督 国木田三郎
公開年 1939年
評点[B]
感想  今日は、国木田三郎監督の『義士外伝 忠僕直助』を観た。昭和十四年(1939)の作品。

 のちに四十七士の一人となる岡島八十右衛門(尾上菊太郎)が城中で大野九郎兵衛(瀬川路三郎)に恥をかかされると、岡島に仕える中間〔ちゅうげん〕の直助(原健作〔健策〕)は大野に復讐しようとして止められる。怒りを抑えられない直助は岡島のところから出奔して大坂へ行き、思わぬ行動に出る。

 忠僕の代表とされている直助を主人公としたオリジナルストーリー(原作・脚本:江戸川浩二)。
 下僕がこれほどまでに主人に尽くす強い“忠義心”や主従の関係というものやは現代人、特に戦後の人間には理解しづらいものがあるかもしれないが、原健作の真面目な演技にも助けられ、その志は美しいものであると思わされる。岡島のところから出奔してしまった直助の行動のアイデアも面白い。
 ただし、原健作にはあまり華がなく、ストーリーには意外性がなくトントン拍子で進んでしまうため、全体に少々アッサリしすぎていて地味な印象の作品。ラストシーンはちょっと良いが。(2005/11/03)

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