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好人好日 こうじんこうじつ
監督 渋谷実
公開年 1961年
評点[A’]
感想  今日は、笠智衆主演の『好人好日』を観た。監督は渋谷実で、昭和三十六年(1961)の作品。

 奈良の大学の教授である尾関(笠智衆)は有名な数学者だが、世間のことには全く疎い奇人で、娘・登紀子(岩下志麻)の交際相手(川津祐介)の家族からも敬遠されるほどである。しかし、ある日突然、彼に文化勲章授与の話が飛び込んで……。

 実在の数学者・岡潔(元奈良女子大学教授)をモデルとした作品(原作:中野実/脚色:松山善三・渋谷実)。そのためか、冒頭で「この作品はフィクション云々」の断り書きが出る。
 笠智衆が頑固な変人像を好演。正直、これほど演技が上手いとは思わなかった。台詞回しは相変わらず訛(なまり)を感じさせるものの、間の取り方が上手くて笑わせてくれる(演出のおかげでもあるかもしれないが)。笠智衆は小津作品以外で本来の演技をしているのかもしれない。全体に意表を突かれるものは無いが、よくまとまった佳作という印象。1時間半弱と、コンパクトなのも良い。
 岩下志麻が非常に若く、可愛らしい。尾関の妻は淡島千景。貧乏暮らしを苦労してやりくりしてきた糟糠の妻としては、ちょっと綺麗過ぎるかな?(2003/04/15)

好人物の夫婦 こうじんぶつのふうふ
監督 千葉泰樹
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、千葉泰樹監督の『好人物の夫婦』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 鎌倉に住む日本画家(池部良)とその妻(津島恵子)。妻の親代わりだった祖母が病んだので大阪の実家にしばらく帰ることになり、妻は留守中の夫の身持ちを心配する。夫もそのうち、若い女中(青山京子)との二人暮しに退屈してくるが……。

 志賀直哉の短編小説の映画化で、ちょうど50分ほどの短編(脚本:八住利雄)。
 冒頭から、絵に描いたような美男美女夫婦の妻の方が「嫌なこと(浮気)なさっちゃ嫌よ」とか言い出して、こりゃ困ったなと思っていたら、もう「御馳走様」としか言いようのない展開を見せられて、いささか当惑つかまつり候(笑)。
 個人的に小説はあまり読まず、特に日本的私小説というのは苦手なのだが、やはり志賀直哉の世界は私には高尚過ぎるような。夫婦の“機微”というものを読み取るべきなのだろうけど。脚本は原作 に色々脚色を加えているが……。(2005/08/02)

河内カルメン こうちかるめん
監督 鈴木清順
公開年 1966年
評点[B]
感想
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河内カルメン
河内カルメン

 今日は、鈴木清順監督の『河内カルメン』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 河内から大阪に出た美しい娘、武田露子(野川由美子)の半生と彼女の上を通り過ぎた男たち。

 鈴木清順監督作品を初めて観た。筋自体は、さほど目新しいものではないが、さすがこの監督の作品だけあって、場面がぽんぽん展開するので、古い邦画慣れした私は、ついていくのが難しい(笑)。しかし、映像には監督独自の才能を感じさせられた。特に、真横からとらえたようなセット撮影が面白い。
 露子の初恋の相手の“ボン”(坊ちゃん)に和田浩治。彼女の唯一の理解者である男性に川地民夫。(2001/06/06)

河内山宗俊 こうちやまそうしゅん
監督 山中貞雄
公開年 1936年
評点[A’]
感想
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河内山宗俊
河内山宗俊
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山中貞雄日活作品集 DVD-BOX
山中貞雄
日活作品集
DVD-BOX
河内山宗俊
百万両の壺

 山中貞雄監督作品をついに観る。1936年製作の『河内山宗俊』。とにかく音質が悪すぎるし、ギャグも時代を感じさせるものがあったが、カット割りや人物描写はさすがで、天才監督の片鱗をうかがうことが出来ると思う。
 現存する残り2本の作品も観たいけど、レンタル禁止の通販のみのビデオで、高いんだよな〜。溝口健二監督の『西鶴一代女』と『新・平家物語』もそこの発売だから(補注:『新・平家物語』は大映から廉価版ビデオが発売された)、4本買うとするといくらかかるか…。(2000/02/05)

孤剣は折れず 月影一刀流 こけんはおれずつきかげいっとうりゅう
監督 佐々木康
公開年 1960年
評点[C]
感想  鶴田浩二主演の『孤剣は折れず 月影一刀流』を観た。監督は佐々木康で、昭和三十五年(1960)の作品。

 兵法者(武芸者)の神子上源四郎(鶴田浩二)は、恩師が暗殺されたのを知って仇を討とうとしていた。師は柳生流の者に討たれたという話を聞いた源四郎は、柳生但馬守宗矩(月形龍之介)と対決しようとする。一方、偶然出会った糸弥(藤田圭子)・美音(桜町弘子)姉妹の親の仇が春日局(毛利菊子)であることを知り、松平伊豆守(黒川弥太郎)の依頼を受けた源四郎は、春日局も敵に回す。

 原作は柴田練三郎の時代小説(脚本: 成沢昌茂)。鶴田浩二の東映時代劇初主演作だという。鶴田浩二は二枚目だが、柴田練三郎作品の登場人物らしいニヒルさはあまり感じられず、糸弥・美音の姉妹に加えて将軍の妹・加寿姫(美空ひばり)にも好かれるという、モテモテ王国っぷりが妙に目についた。まだ、殺陣も慣れない感じのような。
 美空ひばりが将軍の妹だというのにも正直、違和感がある。月形龍之介の貫禄はさすが。あと、音楽が威勢がいいというか、おおげさというか、印象に残った。(2002/12/10)

乞食大将 こじきたいしょう
監督 松田定次
公開年 1952年
評点[A’]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『乞食大将』を観た。監督は松田定次で、昭和二十七年(1952)の作品。

 黒田長政(月形龍之介)は手ごわい配下の豪族・宇都宮鎮房(羅門光三郎)を罠に誘い込み、豪遊無双の後藤又兵衛基次(市川右太衛門)に討ち取らせた。だまし討ちに加担させられて大いに不本意な又兵衛は、黒田家から去り流浪の旅に出る。

 大佛次郎原作の映画化で(脚本:八尋不二)。実は昭和二十年に製作されたがGHQの検閲により公開不許可とされ、講和条約締結と同時に上映された作品の一つらしい。確かに、内容は娯楽に徹して武士道・封建制に対する批判の色は全く無く、多くはないが殺陣もある。
 序盤、黒田家の城内でだまし討ちに遭い憤怒に燃える宇都宮鎮房の迫力がものすごく、月形龍之介も市川右太衛門も圧倒されそうな勢い。さすがに羅門光三郎は無声映画時代のスターだっただけのことはあると思った。中盤はコミカルな展開もあり、今観ると笑えるほどではないものの、ほのぼのとしたユーモアを感じさせてくれる。
 まだ製作条件が良くなかったためか1時間強の小品で、上記のようにメッセージ性は皆無だが、どことなく戦争が終わった開放感が漂う一作。(2005/10/07)

腰弁頑張れ(腰辨頑張れ) こしべんがんばれ
監督 成瀬巳喜男
公開年 1931年
評点[A]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『腰弁頑張れ』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 保険勧誘員(保険外交員)の岡部(山口勇)は安月給を妻(浪花友子)になじられ、息子(加藤精一)には玩具の模型飛行機を買ってくれとせがまれながら、今日も保険の勧誘で資産家の邸宅を訪れていた。ライバル会社の外交員(関時男)も同じ家に勧誘をかけているため、岡部は資産家の子供たちにまで媚を売らねばならぬ悲哀を味わう。

 成瀬巳喜男監督の松竹時代のサイレント作で、現存作品の中では最古だという。脚本も成瀬監督のオリジナル。現存するプリントはわずか29分弱の短編であるものの(欠落はほとんどないようだ)、ドラマティックな展開をコンパクトにまとめて充実した作品になっている。
 今回は活弁も音楽もない完全なサイレント状態で観たのだが、活弁や字幕での解説がほとんど必要ないくらい映像で語っているのが実に巧み(撮影:三浦光男)。特に、岡部の息子と資産家の子供たちとの喧嘩の場面の躍動感は見事だった。のちの成瀬作品にはないモンタージュなどの特殊な表現も面白い。
 人に頭を下げなければならぬサラリーマンの悲哀とわんぱくな子供たちというテーマは小津安二郎の『生れてはみたけれど』を彷彿とさせる(ただし製作・公開は『腰弁頑張れ』の方が先)。(2005/11)

小島の春 こじまのはる
監督 豊田四郎
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、豊田四郎監督の『小島の春』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 ハンセン病療養所・長島愛生園の医官である小山正子(夏川静江〔静枝〕)は、ハンセン病の検診と患者に療養所への入院を勧めるため、瀬戸内の小島を訪れていた。病気に対する島民の偏見は強く、世間の目を忍んで生きる横川(菅井一郎)ら患者たちも入院を拒む者が多かったが、小山は彼らを諄々と諭して治療を受けさせようとするのであった。

 ハンセン病(当時の呼称は癩〔らい〕病)対策に生涯を捧げた(激務によって昭和十四年に結核になり十八年に死去)小山正子による同名原作の映画化(脚本:八木保太郎)。
 美しい瀬戸内の海と山を背景として、若い女医が患者たちのもとを訪ね歩く様子が全体として淡々とした客観的な画面で描かれるのだが、所々で主人公ほかの登場人物そして観ている側の感情が高揚してくると、それを反映した描写が挿入される。
 患者たちやその家族はもちろん、隔離を進める側の医師の小山正子も村長(勝見庸太郎)も巡査(小森敏)も全て心やさしく、ステロタイプ的な体制側の人間は存在しない。なんというか、昔の日本人は皆ナイーブだったのだなぁ、なんて思ったりした。
 全体に理想化されているかもしれないし、少々感傷的ではあるが、哀しみを帯びた美しさを持つ作品という印象を抱いた。
 主人公はハンセン病が遺伝病であるという偏見を解こうとしているし、患者を家族のもとから引き離すことに忸怩たる思いを抱いていることは充分に表現されている。
 しかしながら、療養所に収容された患者たちが家族と再会することは恐らくなかったわけで、今の目で観てしまうと、人間の善意もまた人を不幸にすることがあるという事実も感じずにはいられない。

 ただし、隔離政策推進の作品ということで現在での評価は急降下してしまっているが、この作品の描写の限りでは、小山正子がおこなったことはハンセン病への偏見を解き未治療の患者を隔離し治療を受けさせようとしたことであり、伝染病の恐怖をあおってしまっている面もあるものの、当時の日本の医学界での常識を背景にした作品として、現在の視点から断罪して全く無価値な映画とするのは正当ではないと思う。(2005/12/07)

御存じ右門 護る影(右門捕物帖 護る影) ごぞんじうもんまもるかげ
監督 西原孝
公開年 1943年
評点[B]
感想  今日は、嵐寛寿郎主演の『御存じ右門 護る影』を観た。監督は西原孝で、昭和十八年(1943)の作品。

 幕府の重鎮・松平伊豆守(嵐徳三郎)の下で隠密を務めていた武士が続いて殺され、“むっつり右門”こと近藤右門(嵐寛寿郎)と手下の伝六(原健作)が捜査に乗り出した。その頃、見世物小屋が並ぶ盛り場の一角に、夏菊大夫(大川三鈴)が中で消える“南蛮渡来の地獄箱”と称する怪しげな芸を見せる芸人達がいた……。

 嵐寛寿郎の鞍馬天狗と並ぶハマリ役の“むっつり右門”シリーズの一本。右門シリーズを見たのは初めてだが、むっつりというか“ゆったり右門”という感じで「もうちょっと早く動けば間に合ったのに……」と思ってしまうシーンが一度ではない(笑)。今の目で観ると、前半はもうちょっと脚本を工夫して欲しかったと思ってしまう。テンポもイマイチだし(脚本:伊藤大輔 毛利喜久男)。
 ただし、右門の捜査などによって陰謀が明らかになっていく中盤以降は動きも出てくるし、推理物の面白さも出てくる。終盤は嵐寛寿郎の十手の殺陣と刀の殺陣の双方が観られるようにサービスされている。
 シリアスな役での助演が多い原健作(原健策)がコミカルな三枚目をやるのは珍しいが、意外と良かった。愁嘆場で彼の二枚目的な面が生きているのかも。(2004/08/07)

小太刀を使ふ女(美女劍光録/美女剣光録/小太刀を使う女) こだちをつかうおんな
監督 丸根賛太郎
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、丸根賛太郎監督の『小太刀を使ふ女』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 時は西南戦争の頃。薩摩軍が大分の旧臼杵藩城下に攻め寄せてきた。士族の池田家の長女・律(初代水谷八重子)は出陣した弟・健一郎(原健作)の妻たか(月丘夢路)と共に、避難した町人たちを守るため町外れの寺に入ったが、町家の出であるたかは恐怖に震えるばかりであった。その寺にも薩摩軍が迫る。

 原作は村上元三(脚本:依田義賢)。戦争も大詰めの時期の作品だが、銃後の守りを固める婦女子が主人公なので制作されたのだろうか。
 序盤から中盤までは凛とした武家娘が臆病な町人娘を引っ張っていくというコチコチの展開で、やや硬質な美貌の水谷八重子とちょっと下がり眉の月丘夢路が各々の役柄にハマっているだけあって、少々肩がこる。
 律とたかが危機に遭い打ち解けあう終盤近くになると急にキャラクターが活き活きしてくるしユーモアも感じられるようになるので、丸根監督の力量を発揮するにはもう少し尺に余裕が欲しかったかもしれない。1時間5分強では窮屈だったような。戦中の作品なので仕方ないが……。ラストシーンがちょっと洒落ていて印象に残る。
 私が観た版は一般の観賞には向かないと思われるほど音質が悪い。もっとマシなプリントは無いだろうか。画質はあまり劣化していないので惜しい。撮影は宮川一夫で堅実な映像だが、やはり戦争末期で撮影条件が悪かったのか擬似夜景が全く夜らしく見えないのは残念。

 『美女劍光録』は戦後の再映時の題名らしい。昭和三十六年には京マチ子主演(監督:池広一夫)でリメイクされている。(2004/11/11)

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