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燃えよ剣 もえよけん
監督 市村泰一
公開年 1966年
評点[B]
感想
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燃えよ剣
燃えよ剣

 今日は、市村泰一監督の『燃えよ剣』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 幕末、農民でありながら剣術を習いそれで世に出ようと夢見る青年・土方歳三(栗塚旭)は、他流派との争いや神官の娘・佐絵(小林哲子)との身分違いの恋などを経て、清河八郎(天津敏)が提唱した浪士組に入ったのをきっかけとして新選組を結成し、やがて同郷の近藤勇(和崎俊哉)を長として隊の実権を握る。

 原作は司馬遼太郎の同題の小説(脚本:加藤泰)。この作品は一時間半程度なので土方歳三の半生のそのまた半分程度しか描けないが、彼が新選組を創っていくようになる過程は割りと無理なく描かれていたと感じた。これから、というところで終わってしまうような感もちょっとだけあるが。
 殺陣がかなりリアルで、多摩時代の土方歳三の泥臭い剣法が実は実戦向きだったことが、かなり表現できていたと思う。土方歳三役の栗塚旭は、映画の前年にテレビドラマの『新選組血風録』で土方を演じて好評だったので、この作品でも土方を演じたらしい。なかなかハマっていると思ったけど、土方にちょっと熱血過ぎるとも思った。個人的には、土方歳三はクールな男、というイメージだったので。
 それと、土方と佐絵との恋愛エピソードが作中では少々浮いていて、いかにも架空エピソードという感じだが、原作どおりなのだろう。(2002/09/28)

もぐら横丁 もぐらよこちょう
監督 清水宏
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、清水宏監督の『もぐら横丁』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 新進作家・緒方一雄(佐野周二)と新妻の芳枝(島崎雪子)は下宿から立ち退かざるを得なくなったり子供ができたりして生活はもう大変。しかし、二人は持ち前の明るさで貧しいながらも楽しく生活していく。

 尾崎一雄の私小説数編を基に映画化した作品(脚本:吉村公三郎・清水宏)。主人公夫妻はもちろん原作者夫妻がモデルで、一緒に住むことになる伴克雄(和田孝)という若者は壇一雄、何かと主人公夫婦の世話をする早瀬稀美子(堀越節子)という女流作家は林芙美子がモデルで、その他の登場人物も実在の作家たちらしい。
 登場人物に悪人は一人もおらず、貧しい生活のはずなのに実に楽しげ。現実感に欠けるような気がしないでもないが、島崎雪子の演技は無理のない明るさを感じさせて嫌味がなく楽しく観られる。佐野周二も好演。佐野周二は戦争を経て二枚目の魅力が薄れたというのが定説だが、個人的には戦後の方が良いと思う。
 清水宏の演出は、代表作とされる作品とは異なり自然の風景も子供も出てこないが、オーソドックスで自然な絵作りに見えた。(2004/09/09)

もず もず
監督 渋谷実
公開年 1961年
評点[A’]
感想  今日は、渋谷実監督の『もず』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 小料理屋で働く年増女中すが子(淡島千景)のもとに娘さち子(有馬稲子)が訪ねてきた。十数年ぶりに再会した二人だが、さち子は水商売の色に染まった母に嫌悪感を抱き、すが子はよそよそしいさち子に反感を覚える。

 主演の有馬稲子らの「にんじんくらぶ」製作で、水木洋子の原作・脚本。テレビドラマが基らしい。
 脚本家が女性であるためか女性キャラの描き方がかなりシビアで、渋谷実監督の演出とも相まって辛辣な作品になっている。近年の“一卵性母娘”のような甘いものではない。
 いや、女性のみならず、すが子の愛人(永井智雄)や、さち子に恋する男(川津祐介)も女の気持ちを考えず自分勝手で、人間を見る目は非常に厳しい。ただし、キャラクターの描き方が断罪的ではなく、その愚かさが哀れに見えるようであり、滑稽味を帯びている部分もあるので、見るに堪えないというわけではない。親子の思いがすれ違う様子が良く、時々挿入されるブラックユーモアも面白い。
 出演者の中では、小料理屋の突拍子もないしゃべりかたをする女中を演じた乙羽信子が強烈。また、小料理屋の女将の山田五十鈴も因業ぶりと老けっぷりが凄い。その他、桜むつ子・高橋とよ・清川虹子らのオバサン連も良い。となると、やはり有馬稲子の演技が少々硬く見えちゃうんだな。いつも「私、悩んでます」という表情に見えるというか……。

 とにかく辛辣なので観終わってすぐもう一度観たくなるわけではないが、こういうのも「あり」だな、と思った作品。(2005/02/18)

桃太郎 海の神兵 ももたろううみのしんぺい
監督 瀬尾光世
公開年 1945年
評点[B]
感想  今日は、アニメ映画の『桃太郎 海の神兵』を観た。演出(監督)は瀬尾光世で、昭和二十年(1945)の作品。

 サルノら海軍の水兵たちは久しぶりに故郷での休暇を楽しんだ。実は彼らは海軍落下傘部隊の一員で、空挺作戦に参加することになっていたのだ。そして、桃太郎隊長の指揮のもと鬼ヶ島攻撃の激戦が始まる。

 フィルムが終戦時に焼却されたと言われていて、戦後三十余年経って発見された珍しい作品。戦争末期の作品だが、海軍省後援のもとに作られた本格的なアニメ映画になっている。
 序盤は故郷の風景、戦地に舞台が移ってからも中盤までは現地人との牧歌的な交流が描かれている。中盤の『アイウエオの歌』(作曲:古関裕而/作詞:サトウ・ハチロー)の場面は素晴らしい躍動感があり、今の目で観ても楽しい。
 その他は、どうしても時代を感じさせる部分はあるが、当時としては非常に高いレベルのアニメーションだと思う。ディズニーという先駆者はあったとしても。
 終盤に登場する敵のキャラクターが、白人を嘲笑的に戯画化したものなのがちょっと残念だった。戦争末期なので仕方ないが、ここは白人も動物にするなりしてもう少し漫画的にした方が作品の全体のバランスを崩さなかっただろう。(2005/05/21)

燃ゆる大空 もゆるおおぞら
監督 阿部豊
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、阿部豊監督の『燃ゆる大空』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 陸軍の飛行学校の同期生である山村(大川平八郎)・行本(月田一郎)・伊藤(灰田勝彦)・田中(伊東薫)の四人は大変に仲が良かった。やがて、山村・行本・田中は戦闘機パイロットとして山本大尉(大日方伝)の下で戦い、伊藤は爆撃機の操縦員となり、それぞれ空の戦いに散っていったのであった。

 陸軍省が協力して作られた“皇紀二千六百年記念映画”(原作:北村小松/脚本:八木保太郎/構成:阿部豊)。九七式戦闘機や九七式重爆撃機・九七式軽爆撃機の実機が登場する航空機マニア垂涎の作品になっている。第二次大戦期の戦闘機に比べるとズングリしていて飛行中も足が出っぱなしの固定脚である九七戦は、なんだか可愛らしい(笑)。
 ただし、実機がふんだんに使われていて戦闘シーンも多い作品だが、大スペクタクル戦争映画というよりも兵士個人々々を丹念に描いた人間ドラマが中心になっている。パイロットたちをスーパーマンとしてではなく、一軍人としての戦いぶりや死に様を描いている。
 やや理想化されてはいるものの、旧友と再会すれば喜び仲間が戦死すれば悲しむという、当時の真面目な日本軍兵士の様子があまり誇張なく誠実に描かれている印象で、公開当時に大ヒットしたというのは、売り物の空中戦が理由ではなく、観客はこの作品の中に自分の父・夫・兄を見出したからではないだろうか。
 終盤までリアリティを感じさせていただけに、ラストシークエンスの“御立派”過ぎる展開は残念。あれがないと陸軍の協力を得られなかったのかもしれないが。(2005/07/20)

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