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武蔵と小次郎(武藏と小次郎) むさしとこじろう
監督 マキノ雅弘
公開年 1952年
評点[C]
感想  今日は、マキノ雅弘監督の『武蔵と小次郎』を観た。昭和二十七年(1952)の作品。

 佐々木小次郎(島田正吾)は小倉藩の剣術指南役として招かれたが、宮本武蔵(辰巳柳太郎)と試合をして勝つのが条件だった。その武蔵は、彼を親の仇と狙う娘・篠(桂木洋子)と共に旅しながら京の吉岡一門と戦っていた。そして、ついに巌流島の決闘の日を迎える。

 吉川英治の原作ではないオリジナルのストーリー(脚本:八木隆一郎・鈴木兵吾)を新国劇総出演で映画化。
 戦後になって、戦前〜戦中の日本社会の雰囲気を反映している吉川武蔵とは全く異なるものを作り出そうとしたのだろうか。しかしながら今観ると、いつも女のことばかり考えているとしか見えない武蔵と小次郎に驚かされる。
 小次郎は八雲太夫(淡島千景)というキャラに「好きと言うてみい」とか言っちゃってるし、武蔵は武蔵で篠と野原で追っかけっこしてラブコメしちゃってるし。なにが「いやいや」だよ(笑)。色恋沙汰中心ではどうにも妙に見えるので、新機軸を打ち出したかったのなら小次郎と武蔵の出世欲・名誉欲に焦点を合わせた方が良かったのではないだろうか。
 ただし、さすがに新国劇だけあって中盤の一乗寺決闘と終盤の巌流島決闘の殺陣はオリジナリティと迫力を感じさせてくれて、なかなか良かった。(2005/05/22)

武蔵野夫人 むさしのふじん
監督 溝口健二
公開年 1951年
評点[A’]
感想
武蔵野夫人
武蔵野夫人

 溝口監督の『武蔵野夫人』を観た。昭和二十六年(1951)の作品。

 戦争を期に東京の郊外の武蔵野の実家・宮地家に帰った秋山道子(田中絹代)は、宮地家代々の家と土地を守っていこうと決意したが、夫の忠雄(森雅之)は軽薄で頼りにならない。そんな中、道子の年下のいとこで学徒出陣していた宮地勉(片山明彦)が戦地から帰還してくる。

 当時ベストセラーとなった大岡昇平の同題作品が原作で、“潤色”として福田恆存の名がある(脚本:依田義賢)。
 従来の評価ではいわゆる戦後のスランプ期の作品とされてきて、評価は高くない。実際、主人公の道子や忠雄は良いとしてもその他のキャラクターの描写がちょっと薄っぺらく、道子の運命の相手であるはずの勉の片山明彦はあまり魅力が感じられない。
 しかしながら、戦後の成瀬巳喜男の多くを担当した玉井正夫撮影監督による武蔵野の描写は大変に美しく、溝口監督特有の厳しい人物描写は健在だと思う。特に“臨終場”の感傷を排した突き放したような描き方は『残菊物語』を彷彿とさせる厳しさがある。やはり凄い。(2007/01/03)

娘の願は唯一つ(娘の願ひは唯一つ/娘の願いは唯一つ) むすめのねがいはただひとつ
監督 斎藤寅次郎
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、斎藤寅次郎監督の『娘の願は唯一つ』を観た。昭和十四年(1939)の作品。

 長屋に住む田村半次郎(渡辺篤)・とめ(清川虹子)夫婦は、成績が良い長女ひで子(高峰秀子)を女学校へ進学させるよう先生(神田千鶴子)に勧められて大弱り。経済的な余裕はないのだが、隣家の細君(沢村貞子)に対する見栄で、進学を認めると先生に言ってしまう。その頃、半次郎が小使として働いている会社の社長(杉寛)や課長(サトウ・ロクロー)も娘を女学校に進学させようとしていた。

 原作として曽我廼家五郎の名があるので、元々舞台の喜劇だったのだろうか(脚本:小国英雄)。
 設定が同じく高峰秀子主演の前年の『綴方教室』に似ているので、それを意識したパロディという説もあるが雰囲気は全然異なり、明るいコメディ作品になっている。序盤の隣家との争いの場面は見事なテンポと間でネタが繰り出され、半次郎が会社でやらかすネタも笑えて、現在のバラエティー番組よりも面白い。
 作品数が多い斎藤監督は現代人の目で見るとさほど面白くない作品も多いので評価はあまり高くないけれども、この作品は今観ても楽しめる出来だと思う。(2004/10/31)

宗方姉妹 むなかたきょうだい
監督 小津安二郎
公開年 1950年
評点[C]
感想
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宗方姉妹
宗方姉妹

 今日は、小津安二郎監督の『宗方姉妹』を観た。昭和二十五年(1950)の作品。

 父・宗方忠親(笠智衆)を京都に残して娘の節子(田中絹代)は東京でバーを経営し、妹の満里子(高峰秀子)と共に暮らしている。節子の夫・三村亮助(山村聡)は失業中で夫婦仲は冷え切っており、かつて節子と交際していた田代宏(上原謙)が再び節子たちの前に現れたことも、満里子と三村の心をかき乱す。

 小津監督の戦後4本目の作品。小津作品には珍しい原作もの(原作:大仏次郎)。これは他社作品(新東宝)であることも影響しているのか、のちの『東京暮色』を彷彿とさせるシリアスで暗い雰囲気の作品になっている。
 節子と満里子の行動原理が今ひとつ掴めず、特に三村が非常に暗いキャラクターで何を考えているのか理解できない。これらは原作のためかもしれないが、満里子がたびたび舌を出したり徳川夢声の真似のような口調で話す演出は正直言って寒かった。満里子のその他の言動も共感できないように見えてしまうので、今ひとつ高峰秀子を活かせていないように思える。
 小津監督は前年の『晩春』で“小津スタイル”を確立したといわれているが、まだ試行錯誤の段階でもあったのだろうか。また、『風の中の牝鶏』や『東京暮色』で観られるように、暗い雰囲気の作品では小津監督の人間に対するクールな視線が生で出すぎるようだ。(2003/10/19)

無法松の一生 むほうまつのいっしょう
監督 稲垣浩
公開年 1943年
評点[超A]
感想
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阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日、追悼・宮川一夫という企画で『無法松の一生』を観てきた。昭和十八年(1943)の作品。

 ただただ「素晴らしい!」の一言!!阪妻こと阪東妻三郎の演ずる富島松五郎の純情、宮川一夫の超絶的な技巧のカメラ、そして稲垣浩の叙情あふれる演出。全て文句なし。途中から完全にウルウル状態になってしまいました(笑)。
 戦時中にこれだけの作品を作るんだから、昔の日本人って凄かったんだな。やはり、明治生まれにゃかなわない?(笑)時の経過を表す人力車の車輪の回転や少年時代の松五郎が放浪する場面、松五郎の“祇園太鼓の暴れ打ち”からラストにかけての象徴的な表現などは映像詩の域に達し、今から観ても充分斬新っす。
 この名作のビデオはレンタル禁止で簡単に観られないのが実に残念…。

 ぢつはこの作品、私が中学生か高校生の頃にNHKかなんかで放映されて、観たことがあるのだけれど、ほとんど忘れてました(爆)。それに、イイ話だとは思ったが、それほど感動しなかった記憶が。まだガキだったんだなぁ…。
 名作って本当にわかるのは大人になってからなのかもしれない。池波正太郎も、十代の頃にジョン・フォード監督の『駅馬車』を観て、時間が経ってから見直すと若い頃には気づかなかった部分が見えてきた、と書いていたし。私が最近、溝口健二作品に触れたのは良いタイミングだったのかも。溝口作品は女性を描いたものが多いから、以前だったら理解できないし面白く感じなかったと思う。色々と知ってからでないと。(2000/05/28)

無法松の一生 むほうまつのいっしょう
監督 稲垣浩
公開年 1958年
評点[A]
感想
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無法松の一生
無法松の一生

 今日は、稲垣浩監督の『無法松の一生』を観た。昭和三十三年(1958)のリメイク版。三船敏郎主演で、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞作品。

 夫(芥川比呂志)が急逝して、あとに遺された美しい未亡人(高峰秀子)と息子を見守る、人力車夫の無法松こと富島松五郎(三船敏郎)の純情。超有名な話ッスね。
 戦中戦後の二度の検閲によって大幅にカットされた部分のある昭和十八年の阪妻版の“完全版”としてリメイク。三船の松五郎は、やはり“ミフネ”という感じが残って少々粗暴な面が強調された感じがするが、それでも好演。特にラスト近くの“祇園太鼓の暴れ打ち”では筋骨たくましい三船の肉体が躍動して迫力がある。若い頃の三船敏郎って、ミドル級あたりの中量級ボクサーみたいな体つきだ。
 完璧に近い阪妻版には及ばないものの、これもまた傑作では。その後、三国連太郎と勝新太郎で二度リメイクされているそうだが…2人とも濃すぎて、チョット柄が違うんぢゃないかなぁ…(笑)。(2000/09/17)

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