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新妻椿(総集編) にいづまつばきそうしゅうへん
監督 渡辺邦男
公開年 1940年
評点[B]
感想  今日は、渡辺邦夫監督の『新妻椿(総集編)』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 七里家の娘・文代(山田五十鈴)は両親を失い独り身だったが、婆や(藤間房子)と女中(加藤欣子)と平和に暮らしていた。しかし、隣りの醍醐家の子・邦夫(小高たかし)に誤って空気銃で目を撃たれて失明してしまう。婚約者の金田(立松晃)は文代から去り、傷心に付け入って七里家の財産目当ての大木(斎藤英雄)が近づいてくる。邦夫の兄の醍醐博(岡譲二)は文代を心配するが、口出しするわけにもいかず……。

 『人妻椿』などの小島政二郎の原作の映画化(脚本:渡辺邦夫)。『人妻椿』同様、若い人妻が主人公のメロドラマ。
 主人公が失明してしまうので、『人妻椿』に比べると悲劇度は高いものの主人公が自由に動けなくなるためジェットコースター度は低く、相手役の醍醐博の活躍度もいまいち。登場人物もステロタイプ度が強く『人妻椿』で笠智衆が演じたようなようなユニークなキャラがいない。
 第一、今から観ると、七里家は資産家なのだから顧問弁護士か後見する親類くらいいるだろうと思ってしまい、ストーリーが不自然な感は否めない。現代人が楽しむには話が大時代的すぎるだろうか。
 とはいっても、山田五十鈴はさすがに美しき悲劇のヒロインを見事に演じているし、渡辺邦夫監督の話の組み立てや映像の作り方はそつない上手さがあると思う。総集編になっても不自然さは感じさせない。映像は、文代と醍醐博が海岸を歩くシーンが特に印象的(撮影:友成達雄)。

 それにしても、現在のいわゆる韓流ドラマでも“失明”は基本アイテムの一つらしいので(その他のアイテムは“記憶喪失”など)、改めてメロドラマの基本的なパターンは既に戦前にできていて、いつまで経っても変わらないものだな〜と思った。(2005/08/28)

にごりえ にごりえ
監督 今井正
公開年 1953年
評点[B]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 3 女性編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 3 女性編
にごりえ
婉という女
女ひとり大地を行く

 今日は、今井正監督の『にごりえ』を観た。昭和二十八年の作品。全3話のオムニバス。

 第一話「十三夜」:せき(丹阿弥谷津子)は長屋住まいの娘から高級官吏の妻となり、婚家で手ひどい仕打ちを受けて実家へ帰ってきたが、家族のことを思って婚家へ戻ることを決意する。その帰り道で乗った人力車の俥夫は幼なじみの録之助(芥川比呂志)だった。
 第二話「大つごもり」:両親を失って叔父(中村伸郎)に育てられた娘みね(久我美子)は、叔父の家を救うために女中奉公先の主人の奥方に借金を頼むが、相手にされない。思いあまって奉公先の家の金に手をつけてしまうが……。
 第三話「にごりえ」:新開地の銘酒屋の酌婦おりき(淡島千景)は、美貌と客あしらいの上手さでNo.1だった。彼女は、妻(杉村春子)も子もありながら自分に入れ込んで身代を潰した源七(宮口精二)から二枚目の結城(山村聡)に乗り換えようとして……。

 樋口一葉作品の映画化(脚本:水木洋子・井手俊郎)。脚本監修として久保田万太郎が名を連ねている。レッド・パージで東宝を追われた今井監督が文学座と提携して作った作品なので、出演者の多くが文学座の俳優。それだけに、長台詞は上手すぎて舞台演劇的に見える部分もあった。絵的には、長屋や和服姿の登場人物をとらえた白黒画面が美しい(撮影:中尾駿一郎)。
 「十三夜」の前半は長屋の部屋での会話が続くため、特に舞台的。それに、暗い雰囲気が続くので、ちょっときつかった。「大つごもり」も明るい話ではないが、久我美子の魅力で助けられる。また、ストーリー自体も3話の中で最も抑揚があって面白い。時代劇で観たことがあるような筋だったが、元ネタは樋口一葉だったのか。
 「にごりえ」は1時間ほどあって、一番長い(映画全体は131分ほど)。淡島千景がハマり役。めずらしく底意地の悪い人間の役ではない杉村春子は、上手いが長台詞で源七を攻めたてるので、そこはちょっときつかった。

 この作品は溝口健二の『雨月物語』や小津安二郎の『東京物語』といった超名作を押さえて昭和二十八年度のキネ旬ベストワンに輝いている。昭和二十年代の観客は、明治初期の貧しい人々の暮らしが描かれた『にごりえ』に深く共感したのだろうか。時代の流れを感じさせられる。
 今観ると、良い作品だとは思うが、暗い雰囲気が続いてちょっと重いし(原作がそうなのだが)、溝口・小津両監督の作品には及ばないような気がするのだけど……。(2002/03/06)

虹男 にじおとこ
監督 牛原虚彦
公開年 1949年
評点[C]
感想  今日は、牛原虚彦監督の『虹男』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 新聞記者の明石良輔(小林桂樹)と鳥飼美々(暁テル子)が富豪の摩耶家で発生した殺人事件を取材すると、容疑者の小幡由利枝(若杉須美子)は偶然にも鳥飼の友人だった。その後も事件は続き、被害者は一様に「虹が見える」と謎の叫び声を発した。明石と鳥飼、そして警視庁の岡田警部(大日向傳)は摩耶家に乗り込んで謎を探る。

 サイレント時代の巨匠・牛原虚彦監督の作品。長寿の人だったが(1897-1985)、監督作品はこれが最後のようだ。原作は時代小説で有名な角田喜久雄(脚本:高岩肇)。
 作品の雰囲気は古典的な“スリラーもの”という感じ。それは良いのだが、登場人物、特に摩耶家の面々(摩耶龍造=見明凡太朗・摩耶志満子=平井岐代子・ 摩耶勝人=植村謙二郎・摩耶豊彦=宮崎準之助)の演技がちょっとオーバー気味で、サイレント的な匂いを感じた。これは先入観のせいかもしれないが、演出・演技が少々古典的なような。謎解きも、さほど意外性はない。パートカラー作品で、“虹”の表現は効果的で面白い。
 以前『維新の曲』を観た時は、特に牛原演出に対して古さは感じなかったのだけれども、様式的な時代劇では目立たないのだろうか。残っていたらサイレント時代の作品を観てみたい。(2004/06/06)

錦絵江戸姿 旗本と町奴 にしきええどすがたはたもととまちやっこ
監督 森一生
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『錦絵江戸姿 旗本と町奴』を観た。監督は森一生で、昭和十四年(1939)の作品。

 町奴の朝日奈三郎兵衛(市川右太衛門)は、実は旗本の三浦小次郎(浅香新八郎)の弟。ある日、三郎兵衛は意に添わぬ許婚に執拗に迫られていた千早(国友和歌子)を助けた。その千早は大久保彦左衛門(松本泰輔)によって、なぜか小次郎のもとに嫁入りすることになる。小次郎と深い仲だった彼の腰元お浪(雲井八重子)は絶望して身投げしようとするが……。

 元々はトーキーだったが現存版では音声部分の復元が不可能で、松田春翠の活弁が入って蘇った作品。活弁の名調子のためか非常にテンポよく展開し、立ち回りもたっぷりで楽しい佳作。刀での斬り合いではなく、三郎兵衛と小次郎の素手での兄弟げんかが面白い。右太衛門は体格が良く、若い頃は動きも良いのでスクリーン栄えする。
 残念ながら画質は非常に良くないが、現存していることを喜ばねばならないのだろう。(2002/11/17)

西住戦車長伝(西住戰車長傳) にしずみせんしゃちょうでん
監督 吉村公三郎
公開年 1940年
評点[C]
感想  今日は、吉村公三郎監督の『西住戦車長伝』を観た。昭和十五年年(1940)の作品。

 日中戦争初期に戦車長として数々の武勲を立て、のちに日中戦争初の“軍神”と言われた西住大尉(上原謙)の活躍と死。

 昭和十五年の“皇紀二六〇〇年記念作品”として陸軍省の後援のもとで作られた作品。冒頭、吉村監督の言葉として「私は茲(ここ)に西住戦車長伝を通じて我が戦車隊将兵の精神と今次事変に於ける戦車戦闘の実相を描かうと試みました云々」という字幕が出る。
 ストーリーは、西住戦車長は勇猛果敢にしてなおかつ優しい軍人でした、というもの。いくつものエピソードがあるが、メリハリが無く長く感ずる。流民の女(桑田通子)と赤子のエピソードは、なんだったのだろう。これは当然ながら男ばかりの映画なので、観客動員用に女優を出すためだったのか。しかし、あんな美人の難民がいるかな? 上原謙も、ヒゲを生やしてはいるものの、軍人と言うにはちょっと苦しいかも。戦前の小津作品の常連だった坂本武が演じた炊事兵は儲け役。
 しかし、戦闘シーンは陸軍省の協力もあったのか、火薬を使いまくってかなりの迫力。戦車もさることながら、重機関銃の発射シーンと発射音が凄い。砲撃の効果音などに埋もれて登場人物の台詞が聞きづらいところもあるが、それがかえってリアルなのかもしれない。(2002/09/13)

二十四の瞳 にじゅうしのひとみ
監督 木下恵介
公開年 1954年
評点[A]
感想
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木下恵介 DVD-BOX 1
木下恵介 DVD-BOX 1
二十四の瞳
花咲く港
生きてゐる孫六
歓呼の町
陸軍
大曾根家の朝
わが恋せし乙女
結婚
不死鳥

 今日は、木下恵介監督の『二十四の瞳』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。原作は、誰でも知ってる(よね?)壺井栄の同題作品。

 昭和三年、小豆島の岬の分教場に赴任してきた大石先生(高峰秀子)。十二人の新入生を受け持つことになり、彼らの瞳を曇らせることなく伸ばしてやりたいと願うのであった。しかし、少年と少女たちの行く手には、貧困と戦争が待ち受けていた。
 有名な原作を木下監督が完全映画化。今から観ると少々冗長に感ずるところもあり(実際156分の長尺)、登場人物がよく泣いて濡れ濡れの演出には少々困るところもあった。だが、十二人の生徒たちの運命を見ると感動せざるを得ない。日本的センチメンタリズムの極致で、“泣かせ”にかかる作品ではこれ以上のものは無いのでは。
 二十歳過ぎから四十歳くらいまでの大石先生を演ずる高峰秀子の美しいこと。そして演技力。同僚の“男先生”は笠智衆。大石先生の夫役は、なんと天本英世で、若い頃は長身痩躯のイイ男。(2000/09/11)

日常の戦ひ(日常の戰ひ/日常の戦い) にちじょうのたたかい
監督 島津保次郎
公開年 1944年
評点[A’]
感想  今日は、島津保次郎監督の『日常の戦ひ』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 高級住宅地に住む若手の大学教授・谷口伸太郎(佐分利信)は隣組の会合で組長に選ばれてしまう。隣組の住人は一癖ある者ばかりで、伸太郎の妻・恒子(轟夕起子)は大忙し。その上、伸太郎の弟・丹次郎は新婚なのに報道班員としてビルマ前線へ赴くことになる。

 終戦後しばらくして亡くなった島津監督の遺作(原作:石川達三/脚本:小國秀雄)。

 テーマは題名どおり、銃後の民間人も隣組制度によって一致団結して戦争協力しようというものであり、紋切り型のラストや轟夕起子までもが洒落た洋服ではなくモンペ姿なのを見ると島津監督も国策色の強い作品を作らざるを得なくなったのか、と思わされる部分もあるが、登場人物が個性的で感情を素直に出し、体制協力的な部分はちょっと素直でない描き方をしているようにも受け取れるので、単なる国策映画を超えた味がある。
 隣組の資産家の老人(志村喬)や伸太郎に来る手紙には前線では兵士が苦戦していることが書かれていて、それゆえ銃後の我々が協力しようということになるのだが、戦争の実情を伝えるのが目的では? と思えるくらい苦戦の様子が具体的に書かれている。また、隣組の面々に、いつも偉そうなことを言いながら自らに負担がかかってくるようなことになると姑息に回避しようとするやつがいたりして、風刺的なものを感じさせる。
 島津監督の他の戦中作と同様、戦争によって生活に影響を受けるリアルな一般人の姿を制約の中で描き出そうとした努力がうかがえる作品だと思う。(2005/08/06)

にっぽんGメン にっぽんじいめん
監督 松田定次
公開年 1948年
評点[C]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『にっぽんGメン』を観た。監督は松田定次で、昭和二十三年(1948)の作品。

 戦後の東京に、集団での押し込み強盗と車に通行人を引きずりこんで身ぐるみ剥いで突き落とす自動車強盗が頻発。藤沢刑事部長(月形龍之介)の率いる警視庁捜査一課は、白石刑事(伊沢一郎)の犠牲を出しながらも、江藤刑事(片岡千恵蔵)を中心として強盗団を追い詰めていく。

 戦後、チャンバラ映画が作りづらくなっていた時期に時代劇の大物俳優が主演した現代劇の一つ。片岡千恵蔵は、まだ若さを感じさせ時代劇風の演技をしていないので割りと自然だったが、ちょっと固いようにも見えた。月形龍之介が正義の側ってのは多少違和感が(笑)。
 オープニングで「後援 警視庁」と出るだけあって、全体に非常に真面目な啓蒙映画という感じ。刑事ものでも、翌年の『野良犬』のようなドラマが無くて……。鈴木伝明や大日向傳といった戦前のスターも出演。しかし、杉狂児の演ずる地味な刑事が一番リアルだったりして。(2003/04/03)

日本一の岡っ引 にほんいちのおかっぴき
監督 中川信夫
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、中川信夫監督の『日本一の岡っ引』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 自称“日本一の岡っ引”達磨の八兵衛(高勢実乗)は、巾着切りのトンビの勘六(小笠原章二郎)を追い詰めるが、渡し舟で逃げられる。しかし、対岸で山添数馬(沢村昌之助)という若侍と三人組の侍たちとのいざこざに巻き込まれ、そのまま戻ってくるはめに……。

 前年の『日本一の殿様』と同じ主演のコンビによる作品。小粋なコメディの前作とは異なり、この作品は主役二人が走り回るドタバタギャグ的要素が多くを占め、ちょっとしつこいと感じさせるところもあるので、前作には及ばない感じ。しかし、若々しい小笠原章二郎が中和してくれている面もある。
 勘六が宿屋に忍び込むシーンは面白いし、大八車や馬を駆使した街道での追いつ追われつや終盤の立ち回りシーンはなかなかスピーディで楽しい。三人組の侍のうちの一人が進藤英太郎らしいが、メイクが濃くてわからなかった(笑)。(2004/08/01))

日本一の殿様 にほんいちのとのさま
監督 萩原遼
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、萩原遼監督の『日本一の殿様』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 城内に浪曲師を招いて『水戸黄門漫遊記』を聞いた若殿(小笠原章二郎)は、すっかり感動してしまい自分も名君たらんと思い立ち、城から出させてほしいと大殿(高勢実乗)に頼むが一蹴される。しかし若殿はこっそり城を抜け出して市井の長屋にもぐりこむ。

 ちょうど1時間ほどの小編だが、脚本の巧みさと(原作:小林正/脚本:萩原遼)と映像のテクニックを巧みに用いた演出で楽しませてくれる作品。時間の経過を省略して表現する技法は山中貞雄作品を彷彿とさせるものがあるし、水面の波紋などを象徴的に用いた映像表現も効果的。映像自体も戦前の作品にしてはシャープで、“縦の構図”を用いた捉え方も技巧を感じさせる。撮影の河崎喜久三は『その前夜』も担当した人らしい。
 大殿の高勢実乗は、“アノネのオッサン”式の怪演ではなく押さえた演技で父親役を見事にこなしている。若殿の小笠原章二郎も若々しさがよく出ていた。若殿と仲良くなる町娘の花井蘭子やその他の町の住人たちも良い。(04/06/22)

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