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日本橋 にほんばし
監督 市川崑
公開年 1956年
評点[B]
感想
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日本橋
日本橋

 今日は、市川崑監督の『日本橋』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 日本橋の芸者お孝(淡島千景)は、清葉(山本富士子)と張り合って彼女の鼻を明かすことならなんでもやり、清葉にふられた医学士・葛木晋三(品川隆二)を情夫にする。しかし、かつて同じく清葉にふられてお孝に拾われ、お孝に入れあげて破産した五十嵐伝吉(柳永二郎)の存在が彼らに影を落とす。

 泉鏡花の原作の映画化(脚本:和田夏十)で、当然の如く明治もの。シャープな絵作りは美しいが、衣笠貞之助作品のような絢爛さには欠けているような感がある。時々用いられる市川崑流の黒バックや
顔のアップも、明治ものの中では浮いているような。全体に淡々とした演出という感じで、悪い出来ではないのだが、泉鏡花ものは溝口健二か衣笠貞之助で観たい気がする(溝口健二にはサイレント時代の作品に『日本橋』があるが現存せず)。
 出演者の中では、淡島千景の表情が良い。表情豊かで、ラスト近くは非常に美しく感じられた。船越英二の演ずるお人よしの警官も良い。淡島千景の妹分の芸者として若尾文子が出演。(2003/02/15)

女体桟橋 にょたいさんばし
監督 石井輝男
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、石井輝男監督の『女体桟橋』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 華やかな銀座の裏通りには売春組織が跋扈している。ホテルでコールガールの死体が発見され、部屋から立ち去った吉岡圭三(宇津井健)という男が容疑者の一人になった。しかし、吉岡は犯人ではなく、売春組織のボスの情婦ルミ(三原葉子)と縁があった。一方、警察はベテラン大野(小倉繁)や若手の速水(浅見比呂志)らの刑事が組織を追う。


 石井輝男監督の初期作で、この次の『白線秘密地帯』に始まる“地帯〔ライン〕”シリーズにつながる雰囲気の一本。
 のちの石井監督らしい切れの良さやユニークな演出は見られず、ちょっと平凡なメロドラマ風の作品になっている。さすがにまだ慣れないところがあったのか、習作という感じ。脚本(佐川滉・石井輝男)も、刑事の速水とその恋人のエピソードが浮いていた。(2005/08/09)

女体は哀しく 「太夫さん」より(太夫さんより 女体は哀しく) にょたいはかなしくこったいさんより
監督 稲垣浩
公開年 1957年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『女体は哀しく 「太夫さん」より』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 時は昭和二十三年。京都の島原遊郭の老舗・宝永楼は三百年以上の歴史を誇っていたが、太夫の一人である玉袖(乙羽信子)がストライキを始めたり、闇屋の安吉(田中春夫)が妹と称して妊娠した情婦の喜美子(淡路恵子)を売りつけに来るなど、時代の流れは容赦なく押し寄せてきていた。

 昭和三十年に新派で上演されて高い評価を受けたという北条秀司の戯曲『太夫(こったい)さん』の映画化(脚本:北条秀司)。
 主人公が遊女だと、やはり溝口健二作品を意識してしまう。前年に亡くなった溝口を記念する意味もあるのだろうか。売春防止法が成立し、翌年(昭和三十三年)には遊郭の歴史に幕が下ろされるので製作されたようだが。遊郭というものに対する、直接的ではなく皮肉なユーモアを介した巧みな批判は原作に由来するところが大きいのかもしれないが、それを嫌味なく表現できているのは稲垣監督の手腕だろう。
 稲垣監督は時代劇専門監督というイメージがあるけれども、この作品で太夫たちや宝永楼の主人おえい(田中絹代)や遣手お初(浪花千栄子)など一癖ある女性たちを巧みに描写している。太夫たちの化粧や、復活した道中でのおぼつかない足元など容赦ない映像(撮影:岡崎宏三)でも批判を表現していて、溝口健二は芸者や遊女を社会の犠牲者として描きつつも、どこか美しく描いていた面もあったな、と思ったりもした。
 哀れな女を装っている深雪(扇千景)や玉袖の情夫・米太郎(伊藤久哉)など個性的なキャラクターが多く、エピソードが豊富すぎる面、そのほか批判が直接的な台詞で表現されているところ(原作通りなのかもしれないが)や原作とは異なるらしいラストなど、作品のバランスを崩してしまっているところもいくつかあるが、ユーモアと皮肉が入り混じった描写が印象に残る異色作(?)と言っていいかもしれない。稲垣監督がこれほどの女性映画を作っていたとは全く意外だった。(2005/04/01)

女人哀愁 にょにんあいしゅう
監督 成瀬巳喜男
公開年 1937年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『女人哀愁』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 銀座の書店で働いている河野広子(入江たか子)は、資産家の子息と見合いして結婚する。家事が得意で美しい広子は婚家の家族に喜ばれるが、ただ忙しく働く生活に疑問を感じてくる。そんな中、婚家の長女(水上玲子)が男(大川平八郎)と駆け落ちする。

 成瀬巳喜男自身の原作によるオリジナル作品(脚本:成瀬巳喜男・田中千禾夫)。『人形の家』を下敷きにしたのだろうか、現在の眼で観るとストーリー自体にはあまり新鮮さを感じない。ただし、婚家の長女のエピソードを絡ませてあるので、広子の心の変化は割りと無理がないように見える。
 とにかく入江たか子が美しい。また、成瀬演出も確立したようで、安定感があるナチュラルな映像になっている。ちょっとテンポがゆっくり目な感じがしたが。

 映像は悪くはないのに音がイマイチなのが残念。(2003/07/27)

忍者狩り にんじゃがり
監督 山内鉄也
公開年 1964年
評点[A’]
感想  今日は、近衛十四郎主演の『忍者狩り』を観た。監督は山内鉄也で、昭和三十九年(1964)の作品。

 幕府が外様大名の取り潰しを図っていることを知った伊予松山二十万石・蒲生家の家老・会沢土佐(田村高廣)は、かつて幕府に主家を取り潰された浪人である和田倉五郎左衛門(近衛十四郎)・永長八右衛門(佐藤慶)・筧新蔵(山城新伍)・天野弥次郎(河原崎長一郎)を雇った。蒲生領に潜入した公儀隠密“闇の蔵人”(天津敏)一味と四人との死闘が始まる。

 ジャンルとしては忍者映画に入るかもしれないが、それに対抗する者たちの視点で描いていて、容易に正体を掴めない徹底的に不気味な存在として忍者を描いているのが面白い。彼らと戦う和田倉らも、容易ならぬ敵に対抗するため常軌を逸した手段をとって、蒲生家の家臣たちと観客は唖然とさせられる。大変よく練られた脚本(高田宏治)だと思う。コントラストの強い非常にシャープなモノクロ映像も効果的(撮影:赤塚滋)。
 隠密の首領の天津敏は非常に迫力があるが、ちょっとやりすぎで漫画的というか劇画的になってしまったのが惜しいような気がする。ラストも、もっとアッサリ終わらせても良かったのでは。(2004/02/25)

人情紙風船 にんじょうかみふうせん
監督 山中貞雄
公開年 1937年
評点[超A]
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人情紙風船
人情紙風船

 今日は、山中貞雄監督の『人情紙風船』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 この作品、ビデオがレンタル禁止なので観る機会が無かったのだが、ある図書館に収蔵されているのをみつけて、やっと鑑賞することができた。ただし、貸出禁止で、図書館のモニタで観ることになり、じっくり見直すことができないのがチト残念。

 場所は、その日暮らしの行商人などが住む裏長屋。浪人の海野又十郎(河原崎長十郎)や地回りのヤクザに目を付けられている遊び人の髪結新三(中村翫右衛門)もまた、あがくように生きている。
 ヤミの賭場を開いたりしてヤクザの源七親分(市川笑太郎)に痛めつけられていた新三は、ある時、源七たちが用心棒として出入りしている白子屋の娘お駒(霧立のぼる)と偶然出会い、源七を困らせるため誘拐して自分の家に連れてきてしまう。新三の隣に住んでいる海野も否応なしに巻き込まれ…。

 暗い作品だが、前進座のメンバーの演技と撮影が素晴らしい。死人の通夜を口実にして酒を飲み乱痴気騒ぎをしてしまう長屋の連中。その自暴自棄に近い明るさ。また、梅雨の雨の中、仕官の夢破れた海野が立ちつくすシーンが忘れがたい。そして、人の手から落ちて転がる紙風船。
 山中貞雄は「『人情紙風船』が遺作ではチトサビシイ」の言葉を残したしばらくあとに戦病死。本当に若き天才の遺作となった。なお、現存する作品は『人情紙風船』を含めて3本のみ。嗚呼。(2000/09/02)

忍法忠臣蔵 にんぽうちゅうしんぐら
監督 長谷川安人
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、丹波哲郎主演の『忍法忠臣蔵』を観た。監督は長谷川安人で、昭和四十年(1965)の作品。

 江戸城の大奥を守る伊賀同心の一人である無明綱太郎(丹波哲郎)は、許婚(桜町弘子)を将軍に奪われて出奔する。ふとしたことから米沢上杉家の家老・千坂兵部(西村晃)と知り合った綱太郎は、くの一たちを率いて色仕掛けで大石内蔵助(大木実)以下の赤穂浪士たちの士気をくじいてほしい、と頼まれる。

 原作は山田風太郎の伝奇小説(脚本:加藤泰・高田宏治)。お色気忠臣蔵(?)といった感じの筋だが、モノクロ撮影でハードボイルドな雰囲気。もっと荒唐無稽なくらいでも良いかも、と思った。お色気シーンも今から観るとそれほどでもないし、もう少し忍法合戦を観たかった。
 丹波センセイのインチキ臭い雰囲気は良い。大木実の大石内蔵助も、内蔵助のイメージに合っていたと思う。 (2002/11/08)

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