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さつまいも太平記 さつまいもたいへいき
監督 岡田敬
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、岡田敬監督の『さつまいも太平記』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 享保年間の江戸。熊公(春木助次郎)・八公(鳥羽陽之助)ら長屋の住人は、各所帯の前に妙な太い根っこのようなものが入っている俵が置かれていたのでびっくり。日ごろから物知りだと自慢していた大家の吉兵衛(横山運平)も皆目見当がつかず、一騒動起こる。長屋でその謎の物体がわかったのは、植木屋の三太(清川荘司)と元は江戸城に勤めていた講釈師の談円(神田伯龍)だけだった。

 江戸時代に甘藷(さつまいも)が日本に普及した故事を基にした作品。脚本も岡田敬。映画のオープニングに原作の表記はなかったが、日本映画データベースでは原作者として滝川駿という人の名がある。
 歴史もの+長屋ものという感じになっていて、二つの要素が巧みに組み合わされている。さつまいもの薀蓄を紹介するために講釈師という設定の伯龍による語りと回想の映像を上手く組み合わせ、冗長になることから免れさせている。
 長屋の登場人物たちは皆キャラが立っていて演技も巧みだし、大岡越前守(深見泰三)や青木崑陽(下田猛)らが勧めた甘藷栽培が反対された裏事情も解説されていて、人情噺と歴史劇双方の趣を楽しめる佳作だと思う。もしかすると、米の節約と“代用食”の普及を狙った当時の国家政策に沿った作品なのかもしれないが(考えすぎのような気もする)、国策的な臭いは皆無の楽しい一作。(2004/10/28)

座頭市 ざとういち
監督 北野武
公開年 2003年
評点[B]
感想
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座頭市 (北野武)
座頭市 (北野武)

 今日は、北野武監督・主演の『座頭市』を観た。平成十五年(2003)の作品。

 たまたま農婦おうめ(大楠道代)の家に世話になっていた座頭市(北野武)は、すぐ近くの宿場町の賭場に出かける。その頃、浪人の服部(浅野忠信)と妻(夏川結衣)、旅の芸者姉妹(大家由祐子・橘大五郎)が町にやってきたが、二組ともわけあり風だった。服部はすぐさま、やくざの銀蔵(岸部一徳)に用心棒として売り込んだ。

 たけしが『座頭市』の監督・主演を務めることで製作発表の時から注目され、ベネチア映画祭の銀獅子賞(=監督賞という報道もある)を得てさらに話題になった作品。
 まず、座頭市がなぜか金髪で朱塗りの仕込杖を持つというビジュアル面が目を惹くが、元祖の勝新座頭市とは別物ということをまず強烈に印象付けるためだったのだろうか。ただし、この作品はカラーが押さえ気味の画面なので、白髪あるいは銀髪に近いように見えて意外と違和感は少ない。
 北野映画としては複雑なプロットを持つストーリーで、随所にタップダンスや小ネタ的ギャグが見られ、最も娯楽性に富んだ作品だろう。殺陣も、座頭市シリーズのリアル傾向の殺陣を引き継いで、さらに血の噴出やCGなどで演出が加えられたものになっている。
 ただし、ハイスピード撮影が多用されているので、殺陣のスピード不足をスローモーションでごまかしているように見えた。外国人には受けるかもしれないが、昔の時代劇慣れした目で見るとかえって迫力不足に感じてしまった。段取りを決めておこなう従来の殺陣を諷刺したようなギャグはちょっと面白かったけど。
 さすがに市を演じたこの作品では見せないが、自らタップダンスを踊る力量を持つ北野監督はリズム感が良いのか、非常にテンポ良く進み退屈させない。下手な日本製ミュージカル映画よりもよほど“音楽的”な映画。しかし、サービス精神過剰というか、浪人の妻のエピソードは余計だし、全体にギャグやダンスの部分を刈り込んで上映時間を短くしても良かっただろう。
 また、座頭市の北野武も浪人の浅野忠信も非常にアッサリした雰囲気で、影や暗さのようなものが感じられない。ちょっとキャラクターが薄っぺらなような気がする。また、作品全体にもあまり哀愁や重みは感じられなかった。それだからこそ海外や今の日本で受けたのかもしれないが。
 映像は色が独特で印象的だけれども、夜間撮影にもう一工夫欲しかった気がする(撮影:柳島克己 )。(2004/08/10)

座頭市血煙り街道 ざとういちちけむりかいどう
監督 三隅研次
公開年 1967年
評点[B]
感想
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座頭市血煙り街道
座頭市血煙り街道

 今日は、勝新太郎主演の『座頭市血煙り街道』を観た。監督は三隅研次で、昭和四十二年(1967)の作品。

 たまたま旅館で相部屋になった瀕死の女から、息子を父親(伊藤孝雄)のところへ送り届けてくれるよう頼まれた座頭市(勝新太郎)は、前原の宿場へ向かう。その父親は、土地の代官(小池朝雄)に強制され、御禁制品の仕事をさせられていた。

 座頭市シリーズ第17弾。子供を送り届けるという話は王道パターンのようだ。
 ゲストキャラの赤塚多十郎を演じた近衛十四郎との殺陣が見どころ。刀の返しが速く、刀身が長く見えるような刀さばきは素晴らしい。もう少し観たかった。勝新太郎はいつも通りの演技で、いつも通りの展開という感じ。その他の見どころは、田園風景をとらえた映像か。
 しかし、雑魚キャラが「ボイン」と言ってたのには驚いた(笑)。これって日本語なのかな?(2003/03/02)

真田風雲録 さなだふううんろく
監督 加藤泰
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、加藤泰監督の『真田風雲録』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 はなれ猿の佐助こと猿飛佐助(中村錦之助、のちの萬屋錦之介)や、お霧(渡辺美佐子)は戦場で育った孤児だった。彼らは戦国時代に幕が引かれようとしている大坂の陣のときに大阪城へ入って真田幸村(千秋実 )の部下になったが、様々な制約を課せられ、異能を持つ彼らも思うさま活躍できない。

 加藤泰監督の代表作の一つとされている作品。登場人物たちが洋服のようなものを着ていたり、現代風の音楽を奏でながら歌ったり踊ったりする時代劇ミュージカル的な面もある異色作。そのあたりは結構おもしろい。ただ、特殊効果を多用する部分は少々やりすぎと感じられる部分もあった。それと学生運動華やかなりし頃の作品のためか、反戦思想などメッセージ性が表に出すぎている感がある。その辺はもう少し婉曲に暗示して欲しかった。(2002/12/02)

サヨンの鐘 さよんのかね
監督 清水宏
公開年 1943年
評点[B]
感想  今日は、清水宏監督の『サヨンの鐘』を観た。昭和十八年(1943)の作品。

 台湾の高砂族(漢民族ではない山地原住民の総称)のある蕃社(集落)に住む若い娘サヨン(李香蘭=山口淑子)は、美しくて明るい人気者で、蕃社の子供たちや家畜の世話を一手に引き受けていた。日本に留学していた恋人のサブロ(島崎溌)も帰ってきて幸せに暮らしていたが、彼女には意外な運命が……。

 松竹・台湾総督府・満州映画協会の三社提携で作られた作品。冒頭、台湾の山地や集落の様子をたっぷりと映し出し、李香蘭が登場するのは8分以上過ぎてから。作品中に集落の子供や赤ん坊を総動員していることといい、清水監督らしいだろうか。
 とにかく大勢の子供たちが終始登場して李香蘭が山野を走り回るのが印象に残る。しかし、やはり“国策映画”なので、李香蘭が子供たちに日本語を使うよう教えていたり、若者たちが召集されるエピソードがあったりするのは気になるところ。
 それと、あの結末には本当に驚いた。無理矢理というかなんというか……と思ったら、これは実話をもとにしたらしいというのでビックリ! それだったら、もう少し上手く描いてほしかった。あの脚本(長瀬喜伴・牛田宏・斎藤寅四郎)と絵作り(演出)ではねぇ

 音声の状態は良いが、フィルムが切れて飛んでしまうところが所々あるのが残念。(2002/04/18)

エノケンの猿飛佐助(総集篇) さるとびさすけそうしゅうへん
監督 岡田敬
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は、エノケン主演の『エノケンの猿飛佐助(総集篇)』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 山の仙人(榎本健一)のもとで忍術の修行をしていた猿飛佐助(榎本健一〔二役〕)は里へ降りて真田幸村(柳田貞一)に仕えることになった。彼は幸村の領地を狙う隣国の城主・志賀綺堂軒(中村是好)が差し向けた間諜たちと戦うが、なぜかその中には綺堂軒の息女・瀧姫(梅園龍子)までもいて……。

 現在残っているのは総集編だけらしいが、本来は昭和十二年の年末に『ありゃりゃの巻』、翌年正月に『どろんどろんの巻』が公開されたらしい(脚本:山本嘉次郎・岡田敬)。
 仙人が霞を食ったり佐助が飛び上がって空を飛んで行く忍術のトリック撮影は面白いが、全体にテンポがゆっくり過ぎて忍術映画らしい躍動感がない。ラブコメ的恋愛話もからむが、どうもリズムがないというか……。
 その戦後映画にはありえないのんびりした雰囲気が好きな人もいるかもしれないが、私個人の好みとしては展開が遅すぎると感じた。本来よりずっと短くなった総集編になって、かえって良かったかもしれない、とさえ思った。岡田監督の作品はまだ数本しか観ていないが、テンポが今ひとつの展開という共通点があるかも……。(2005/10/21)

残菊物語(殘菊物語) ざんきくものがたり
監督 溝口健二
公開年 1939年
評点[超A]
感想
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残菊物語
残菊物語

 今日もまた溝口健二監督作品の『残菊物語』を観る。う〜ん、超大作。道を歩いている様子を仰角かけて撮るのは、道端に溝を掘ればできるけど、船を水面からの角度で見上げたようなのはどうやって撮ったんだ?ラストの道頓堀船乗り込みが圧巻。
 長屋とか芝居小屋も大セットを組んで撮っていて、今の邦画が貧相に見えるっす。これもまた60年以上前の作品(1939)。もちっと画質・音質が良ければな〜。(2000/01/25)

三十三間堂通し矢物語 さんじゅうさんげんどうとおしやものがたり
監督 成瀬巳喜男
公開年 1945年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『三十三間堂通し矢物語』を観た。昭和二十年(1945)の作品。

 江戸時代の京都、旅館の若い女主人お絹(田中絹代)は、かつて奉公に上がっていた和佐家の息子を引き取って育てていた。その和佐大八郎(市川扇升)は、かつて三十三間堂の通し矢の記録を破られて自害した父の汚名をそそぐため弓の稽古に励むが、弱冠十七の若さゆえ通し矢の日が近づくにつれて不安になっていく。そんな彼を唐津勘兵衛と名乗る旅の侍が励まし、大八郎も彼を慕うが……。

 成瀬監督の珍しい時代劇。終戦直前の作品だが、京都で撮影されたためか戦時中らしい雰囲気は全く無い。むしろ京都で撮る映画ということで時代劇になったのかな。内容も、武士道や忠義を強調するものではなく、弓道という一つの道に生きることの尊さと厳しさを描いたもので“芸道もの”に近く、国策映画的なところは感じられない。
 ただ、芸道ものにしては弓そのものの描写がアッサリしていて、重点が唐津勘兵衛に置かれているので、大八郎を支えるお絹の描写が少ないのが物足りない気がする。ドラマはあるのだが、全体に淡々と進む印象だった。唐津勘兵衛とその実弟(河野秋武)が直接からむところは良かった。(2003/03/17)

山椒大夫 さんしょうだゆう
監督 溝口健二
公開年 1954年
評点[A]
感想
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溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954
溝口健二
大映作品集Vol.1
『お遊さま』
『雨月物語』
『祇園囃子』
『山椒大夫』
『噂の女』

 溝口健二監督の『山椒大夫』を観る。あらすじを知っていたので泣くまでは行かなかったけど、えぇ話や。山椒大夫といわれてピンとこなくても、安寿と厨子王の話だと言えば誰でも知ってると思う。(1999/12/23)

3-4x10月 さんたいよんえっくすじゅうがつ
監督 北野武
公開年 1990年
評点[A’]
感想
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3-4×10月
3-4×10月

 今日は、北野武監督の『3-4x10月』を観た。平成二年(1990)の作品。

 草野球チームに入っている、さえないガソリンスタンドの店員・雅樹(小野昌彦=柳ユーレイ)。彼と暴力団との奇妙な対決を描く。
 北野作品の第2弾で、北野監督のオリジナル脚本第1作。前作の『その男、凶暴につき』でも元の脚本をかなり改変しているそうだが。暴力シーンは相変わらずだが、この作品ではハッキリと暴力はギャグに近いものとしてとらえられている。観ている側も笑うっきゃない、といった場面が連発。素直に面白い部分もいくつかはあった。特に、雅樹の相棒役の飯塚実(=ダンカン)と北野武のカラミは最高。
 終盤の構成は、まだ未消化な部分があったように見えた。それに、あのラストシーンは…。主人公の小野昌彦と飯塚実や、チームの監督役の井口薫仁(=ガダルカナルタカ)は、意外と好演。

 しかし、この作品は日本映画史に残る珍題名だなぁ。匹敵するのは『馬鹿が戦車でやって来る』(山田洋次監督)と『エロス+虐殺』(吉田喜重監督)くらいだろうか。(2000/11/15)

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