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朱鞘罷り通る しゅざやまかりとおる
監督 河野寿一
公開年 1956年
評点[B]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『朱鞘罷り通る』を観た。監督は河野寿一で、昭和三十一年(1956)の作品。

 無頼の旗本・此村大吉(市川右太衛門)は、大人気の水芸の太夫・花沢小えん(花柳小菊)を情婦にしていたが、小えんに執心だった大身の旗本・松平帯刀(新藤英太郎)に一杯食わされる。一方、女性問題で人気が落ちている歌舞伎役者の中村仲蔵(大川橋蔵)は、『仮名手本忠臣蔵』で損な役の斧定九郎役を回されて困惑していた。

 あの山中貞雄の原作を、多くの山中作品でシナリオを担当した三村伸太郎が脚本化。
 入り組んだプロットと、主人公が旗本でありながら武士の世界ではなく江戸の街が舞台であるのは山中貞雄らしさを感じさせた。中村仲蔵が『忠臣蔵』の定九郎を工夫して演じた実話を題材の一つにしているのもユニーク。ただし、右太衛門はいかにも殿様芝居だし(実際旗本だが)、女性キャラの演技も女臭すぎる感じがするし、山中貞雄が監督した作品とはかなり印象が異なる。ちょっと大味な印象。
 しかし、此村が仲蔵に見せる心意気は爽やかで、ラスト近くの活躍は右太衛門ならではの豪快さ。観賞後の後味は悪くない。(2004/05/16)

修禅寺物語 しゅぜんじものがたり
監督 中村登
公開年 1955年
評点[A’]
感想  今日は、中村登監督の『修禅寺物語』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 時は鎌倉時代。伊豆の修禅寺近くに住む天下に名高い面作師(面打師)の夜叉王(坂東蓑助、のち八世坂東三津五郎)には、桂(淡島千景)と楓(岸恵子)の二人娘がいた。おとなしい楓に対して、気位の高い桂は京鎌倉に住む貴人のもとに召されるのを夢見ている。そこへ、執権・北条時政(東野英治郎)によって鎌倉を追われた二代将軍源頼家(高橋貞二)が修禅寺に移り住んできた。

 岡本綺堂による戯曲の一つの映画化(脚本:八住利雄)。平安時代を舞台にした大映の『羅生門』『雨月物語』『地獄門』などが海外で高く評価されたのに影響されたのか、この作品もカラーで登場人物が身に付ける美しい衣装が強調されている(これは鎌倉時代だが)。新歌舞伎とも呼ばれる舞台作を映画化したのは松竹らしいだろうか。
 桂の淡島千景と楓の岸恵子、容姿では姉妹が逆な方が似合うかな、と観始めたころは思ったが、観つづけているうちに、愚かしいほど出世を一途に望み逆に哀れにさえ見える桂には淡島千景が合っているような気がしてきた。坂東蓑助の老け演技も良いし、東野英治郎の見せる卑しさはいつもながら。高橋貞二は原作由来の難しい言葉を使った長台詞がちょっと危なっかしいところもあったが、その若さが見えるところがかえって役に合っているかも?
 原作は修禅寺一箇所だけを舞台としてあまり長いものではなかったが、映画では原作以前の鎌倉における北条時政や頼家の母・北条政子(夏木静江)らの策謀も描いて頼家追放の背景もわかるようにしている。キャラクターの描写も丁寧になっていて、華やかなものを望む桂や職人気質の夜叉王の性格がよりわかりやすくなっている。ただ、ラストが変えられているが、これは原作の方が無常を感じさせて良いと思った。
 売り物のカラー映像での衣装・伊藤熹朔の美術によるセット、共に良い(撮影:生方敏夫)。イーストマンカラーだが大映の『地獄門』よりは発色が渋め。惜しむらくは、現存版はやはり少し褪色しているように見えて傷が目立つ部分もあること。改善できないかしら。(2005/01/21)

出世太閤記 しゅっせたいこうき
監督 稲垣浩
公開年 1938年
評点[B]
感想  今日は、嵐寛寿郎主演の『出世太閤記』を観た。監督は稲垣宏で、昭和十三年(1938)の作品。

 のち豊臣秀吉となる木下藤吉郎(嵐寛寿郎)は、実父が戦で死に母(吉田一子)が再婚したことで無類のいたずら坊主となり、故郷を出奔して織田信長(月形龍之介)に仕えるようになる。藤吉郎は、いつか一城の主となって家族を呼び寄せ母と再会する日を目指して努力を続ける。

 少年時代から、“一夜城”を建てるまでの物語で、おなじみの太閤記もの。オーソドックスな展開と絵作りで特に傑出したところはないが、藤吉郎が単なる出世欲に駆られているのではなく母親への愛情を軸に描いているので、要領よく出世していく姿にも抵抗を感じないと思う。寛寿郎の藤吉郎はちょっと立派で、終盤に口ひげ・あごひげを生やしていた場面は貫禄があった。
 撮影は宮川一夫で、古い作品なので宮川一夫らしさはあまり明白でないが、擬似夜景の巧みさにそれを彷彿とさせるものがあるだろうか。(2003/06/19)

春琴抄 しゅんきんしょう
監督 西河克己
公開年 1976年
評点[B]
感想
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春琴抄
春琴抄

 今日は、山口百恵&三浦友和主演の『春琴抄』を観た。監督は西河克己で、昭和五十一年(1976)の作品。

 大阪の薬種問屋の娘お琴(山口百恵)は子供の頃に視力を失い、琴・三味線の芸事に打ち込んできた。気難しい彼女は、身の回りの世話をする奉公人・佐助(三浦友和)にも辛く当たるが、そこには誰も知りえない二人だけの世界が生まれていた。

 谷崎潤一郎の同題作品の4度目の映画化。山口百恵は神経過敏な盲人の雰囲気を意外と出せていたと思うが、三浦友和に爽やかな雰囲気が残りすぎていて、最後に余人には理解できない行動に出たのが少々不自然に見えた。お琴に言い寄る商家の若旦那を演じた津川雅彦は、いつもどおりの演技だが雰囲気が合っていた。
 そのうち、田中絹代主演の最初の映画版も観てみたい。(2002/01/13)

春琴抄 お琴と佐助 しゅんきんしょうおこととさすけ
監督 島津保次郎
公開年 1935年
評点[B]
感想  今日は、島津保次郎監督の『春琴抄 お琴と佐助』を観た。昭和十年(1935)の作品。

 明治初期。大阪の薬種問屋の次女・春琴(田中絹代)は盲目だが琴・三味線の芸道に打ち込み、それで身を立てるほどになっていた。気位が高く気難しい彼女は丁稚の佐助(高田浩吉)しかそばに近づけない。そんな彼女の美貌に惹かれ、大店の若旦那(斎藤達雄)がしきりに接近してくる。

 何度も映画化されている谷崎潤一郎の原作の初映画化(脚本:島津保次郎)。助監督の中に豊田四郎と吉村公三郎、撮影助手の中に木下恵介の名があり、今の目で見ると非常に豪華なスタッフによる作品になっている(当時は三人も名監督になるとは誰も予想できなかったと思うが)。
 全5本の『春琴抄』ものの中で私が観たのはこれでまだ三本目だが、今までのところこれが最も明治時代らしい作品だと思う。一番古い作品だけあって全体から明治的な雰囲気が漂ってきて、それがなんともいい感じ。
 若い高田浩吉は細くて顔も小さいのでちょっと驚いたが、上方出身だけあって自然な関西弁と丁稚らしいおどおどした様子をよく演じていた。対する田中絹代もまだ若くて可憐だが、近寄りがたい美人というのとはちと違うかも……という感じ。決して悪くはないのだけれども。
 全体の雰囲気や、春琴の両親と佐助の父といった古風なキャラクターはおそらく『春琴抄』ものの中では最も明治時代の香りがあると思うが、製作された時代の制約のためか谷崎作品らしい妖しい雰囲気は乏しい。もう少し春琴と佐助の微妙な関係を突っ込んで描いて欲しかった(戦後の伊藤大輔監督の『春琴物語』はあからさまに描きすぎだったけど)。
 ただし、トーキー初期であるのに琴・三味線の音や小鳥の鳴声を自然に使い、映像も完全にトーキー映画の文法にのっとっている島津監督の手腕はさすがだとも思ったが。
 身長180cmを超える斎藤達雄が着流しの和服で若旦那役を演ずるのが面白かった。若旦那の腰ぎんちゃくである手代を坂本武が演じていて、彼の中年おやじではない若者の役は初めて観た。(2005/11/13)

春琴物語 しゅんきんものがたり
監督 伊藤大輔
公開年 1954年
評点[C]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『春琴物語』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 明治初期、大阪の大きな薬種問屋の次女・春琴(京マチ子)は、幼時に視力を失ってから琴・三味線の道に打ち込み、師匠から名をもらうほどだった。誇り高く気難しい彼女は、店の奉公人だった佐助(花柳喜章)にだけ身の回りの世話をさせていた。

 谷崎潤一郎『春琴抄』の二度目の映画化。まだ三度目の山口百恵&三浦友和版しか観ていないので、それと比べると、この『春琴物語』はかなりオリジナル要素が多いような印象を受ける。琴の道でのライバル心を抱くキャラ(杉村春子)が増やされて、大店の若旦那(船越英二)が春琴に言い寄るエピソードの伏線になっている。
 脚本(八尋不二)も演出も全体的にわかりやすくしようと心がけているようだが、やり過ぎで観客の想像の余地を残しておいた方が良かったと思う。京マチ子は非常に美しいし(ちょっと付けマツゲが長いけど)、生真面目そうな花柳喜章は佐助に合っていたが。エピローグ部分も蛇足。
 映像(撮影:山崎安一郎)は、伊藤大輔らしく所々かなり凝った撮り方がされていたし、京マチ子を撮った屋外の露出オーバー気味の映像は、確かに若旦那が見とれるほど京マチ子の整った顔立ちが強調されていた。(2004/05/02)

春雷 しゅんらい
監督 佐々木啓祐
公開年 1939年
評点[C]
感想  今日は、佐々木啓祐監督の『春雷』を観た。昭和十四年(1939)の作品。

 東京で働く井出慎之(夏川大二郎)を慕って故郷の弘前から津川志津子(川崎弘子)が上京してくるが、井出がアパートの自室に義理ある人の娘である東條英子(木暮実千代)をかくまっていたのを見て誤解し、立ち去ってしまう。その後も、運命の荒波は二人を隔てつづけるのであった。

 『婦人倶楽部』連載小説の映画化(原作:加藤武雄/脚本:柳井隆雄)。この頃の婦人向け作品にありがちの、すれ違いもの。
 それにしても、すれ違いやら偶然やらが多すぎるし、観ていると登場人物たち(特に井出)が鈍感すぎるというか愚かに見えてしまう。どうやら、公開当時は前編・後編に分かれていたのに現在では合わせてかなり短くなった総集編しか残っていないのも一因らしいが、背景が書き割りだったり合成だったりして作りが雑な作品。
 出演者たちも、松竹の俳優なので稚拙さはないものの型どおりの演技という感じ。一人、井出の弟を演じた三井秀夫(三井弘次)が熱演で目を惹いた。田中絹代がチョイ役で“特別出演”している。(2005/06/01)

將軍を狙う女 「東海美女傳」より(将軍を狙う女 「東海美女伝」より) しょうぐんをねらうおんなとうかいびじょでんより
監督 石田民三
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、石田民三監督の『將軍を狙う女 「東海美女傳」より』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 小西行長の遺臣・磧田與四郎(黒川弥太郎)は徳川家康を狙撃しようとして失敗。山中に逃れて同じく家康を仇と狙う娘お鶴(花井蘭子)と偶然出会い、共に家康を討とうとする。一方、家康は小西行長の遺児でキリシタンである由利(原節子)を捕らえながらも、なぜか何かと目をかけていた。

 村松梢風の原作の映画化(脚本:白浜四郎・加戸野恩児)。1時間強の小品だが、多彩な登場人物とプロットが入り組んでおり、見ごたえを感じた。
 與四郎と鶴・由利は架空あるいは名前だけ借りたキャラだと思うが、それだけでなく、家康や大久保長安(永井柳太郎)・本田佐渡守(深見泰三)といった実在の人物もステレオタイプで描かれておらず、各々人間味を見せたキャラクターになっているのが好ましい。
 與四郎を演じた黒川弥太郎は、まだ若くて演技にもちょっと若さが見えたが、まずまず。由利の原節子は、独特の雰囲気が貴人の娘かつ神秘性を感じさせるキリシタンという役にハマっている。声が、後年の独特のハスキーっぽい声とは全く異なり、まさに若い娘の声だったのが意外だった。
 戦前作としては保存状態も良く撮影自体も比較的シャープなので、ロケ撮影での自然の風景などが楽しめる(撮影:上田勇)。(2004/05/18)

少年 しょうねん
監督 大島渚
公開年 1969年
評点[A]
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少年
少年

 今日は、大島渚監督の『少年』を観た。昭和四十四年(1969)の作品。

 父(渡辺文雄)と母(小山明子)とチビ(木下剛志)、そして少年(阿部哲夫)の一家は、“当たり屋”を生業としていた。少年の目から見た家族と世界の姿。

 昭和四十一年に話題となった、実在の当たり屋一家を題材とした田村孟の脚本を映画化。
 なんといっても“少年”の暗い目とモノローグが素晴らしい。意識的な演技は出来ないであろうチビも良い。大島監督の演出力に感服。沈んだ色調の冷たい画面(撮影:吉岡康弘・仙元誠三)の中で、静かな迫力がある。(2001/04/17)

勝利をわが手に 港の乾杯(港の乾杯 勝利をわが手に) しょうりをわがてにみなとのかんぱい
監督 鈴木清太郎(清順)
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、鈴木清太郎(清順)監督の『勝利をわが手に 港の乾杯』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 木崎伸吉(三島耕)は、ある事件を期に船員を辞めていた。競馬の騎手として活躍中の弟・次郎(牧真介)は競馬場の観客席に現れる謎の美女あさ子(南寿美子)に夢中だったが、彼女には男(芦田伸介)の影があった。

 鈴木清順監督の監督デビュー作で、65分ほどのSP映画(脚本:中川順夫・浦山桐郎)。
 あの清順監督とはいえ、さすがに初めての作品では不慣れな点を隠せなかったのかと思ってしまうほど、ありきたりなストーリーに乗って類型的なキャラクターが平凡な演出で動かされる。ちょっと面白い映像がたまに現れるが(撮影:藤岡粂信)、全体に平板で習作といった感じの作品。
 出演者たちの演技も今ひとつで、主人公の三島耕は華もなくあまり魅力を感じられなかった。“友情出演”の河津清三郎が最後においしいところを持っていく。
 ただし、監督の第二作の『海の純情』はかなり暴走しているので、初回作では猫をかぶって会社側を安心させたのか……と深読みしたくなったりもする。あるいは逆に、一作目が不本意な出来だったので二作目に思い切って自分のやりたいことをぶつけたのだろうか。(2005/04/29)

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