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出来ごころ できごころ
監督 小津安二郎
公開年 1933年
評点[B]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第三集
小津安二郎
DVD-BOX
第三集

 今日は、小津安二郎監督の『出来ごころ』を観た。昭和八年(1933)の作品。

 下町に住む喜八(坂本武)は息子の富夫(突貫小僧)と長屋で二人暮らし。同じ長屋に住む工場の同僚の次郎(大日向傳)や近所で食堂を営む“かあやん”(飯田蝶子)とは家族同然だ。喜八は、ふとしたことから助けてやった春江(伏見信子)という若い女に年甲斐もなく夢中になってしまうが、彼女は次郎のことが好きになり……。

 小津監督の人情ものシリーズ“喜八もの”のハシリの作品。それまでの学生や会社員の生活を舞台にした作品から、下町の長屋に場所を移している。
 前半、春江にちょっかいだす喜八はデレデレしていて、人情話というよりもちょっとセクハラっぽい感じさえしたが、春江の心が自分にないことを知る中盤以降は、雰囲気が出てくる。
 息子の富夫という役名は突貫小僧の本名(青木富夫)から。次郎役のヒゲを生やした大日向傳は苦みばしっていてカッコイイ。(2002/04/22)

手をつなぐ子等 てをつなぐこら
監督 稲垣浩
公開年 1948年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『手をつなぐ子等(こら)』を観た。昭和二十三年(1948)。

 知能の発達が遅れている中山寛太(初山たかし)は、どこの学校でもお荷物扱いされ、すっかり学校ぎらいになっていた。新たに転校した小学校の校長(徳川夢声)と松村訓導(笠智衆)は、その事情を聞き、クラスの子供たちと共に寛太を受け入れる。そこに粗暴な山田金三(宮田二郎)も転校してきて何かと問題を起こすが……。

 『無法松の一生』と同じ、監督:稲垣浩・脚本:伊丹万作・撮影:宮川一夫の組み合わせの作品(原作: 田村一二)。
 当時の用語でいう“特異児童”がテーマとなっていて、教師たちも同級生も“いいひと”がほとんどだが、冒頭部分の以前の学校での描写や“山金”こと山田金三という悪童の存在によって、非現実的にはなっていないと思う。過剰に説教臭くならないのは脚本と演出の巧みさか。
 誠実な教師役の笠智衆はまさにハマリ役。終盤の相撲大会のシーンは『無法松』の運動会を彷彿とさせる、心躍る演出。(2003/03/13)

田園交響楽(田園交響樂) でんえんこうきょうがく
監督 山本薩夫
公開年 1938年
評点[B]
感想  今日は、山本薩夫監督の『田園交響楽』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 北海道に住む敬虔なクリスチャン日野東作(高田稔)は、身寄りのない盲目の少女(原節子)を引き取り、雪子と名づけて愛情を注いで育てる。東作の弟・進二(佐山亮)が東京から北海道にやってきて積極的に雪子に近づくと、東作と雪子の心はかき乱される。

 アンドレ・ジイドの古典的作品を翻案して映画化したもの(脚本:田中千禾夫 )。
 盲目の少女を演じた原節子は、まだあまり上手くはないが、なかなか頑張って演じている。高田稔も、上品な二枚目という雰囲気が役柄に合っている。
 雪子が東作に発見されて互いに心を許しあうまでは、印象的な『田園交響曲』の演奏会のシーンなどを経て二人の心の動きが良くわかったが、進二と出会ってからはなんだか展開が急になり、キャラの心理がわかりづらくなってしまう。東作と進二の葛藤はよく描かれていたが、雪子の方が……。特に終盤が忙しくなったのは、検閲の影響? とも思った。77分ほどの中編だが、もう少し長くても。
 撮影は宮島義男(義勇)でおおむね美しいが、ちょっと原節子のアップが多いような気がした。キャメラマンではなく演出家の意向だと思うが。(2005/01/30)

天下の御意見番 てんかのごいけんばん
監督 松田定次
公開年 1962年
評点[A]
感想  今日は、月形龍之介主演の『天下の御意見番』を観た。監督は松田定次で、昭和三十七年(1962)の作品。

 徳川三代将軍・家光(北大路欣也)の時代、太平が長く続き無聊をかこつ旗本たちと外様大名との争いは日に日に激しくなっていた。そんな中、血気にはやる旗本たちと将軍との間に立って苦慮する“天下の御意見番”大久保彦左衛門(月形龍之介)は、思いきった行動に出る。

 最初は、いつもの講談ネタの大久保彦左ものか……と思いながら観ていたが、俳優たちの名演と巧みな脚本(小国英雄)によって、なかなか堂々たる一作に仕上がっていたのには驚いた。月形龍之介が単なるガンコ爺ィにはとどまらない彦左衛門像を作り出しているのが素晴らしい。また、脇の俳優たちも良い。
 松平伊豆守信綱役の片岡千恵蔵や水戸頼房役の市川右太衛門という大スターも出演しているが脇に徹し、水戸黄門シリーズ以外の戦後映画では珍しく月形龍之介が主演。押しかけ女房お遊役に丘さとみ。一心太助は松方弘樹。(2002/09/12)

天下の御意見番を意見する男 てんかのごいけんばんをいけんするおとこ
監督 木村恵吾
公開年 1946年
評点[C]
感想  今日は、木村恵吾監督の『天下の御意見番を意見する男』を観た。昭和二十一年(1946)の作品。

 天下の御意見番を自認する大久保彦左衛門(山本礼三郎)は自分の知行地で出会った若者・太助(大友柳太郎〔大友柳太朗〕)が気に入り、江戸の屋敷に連れて帰る。太助は大久保家の中間として働き始めるが、愚直な彼は様々な事件を引き起こす。

 戦地から復員した大友柳太朗の戦後第一作として企画された作品だという。ただし、おなじみの大久保彦左衛門&一心太助ものとはいっても、のちの中村錦之助主演のシリーズなどとは全く印象が異なる作品になっている。
 普通は生きのいい江戸っ子という設定の太助が、前半では世間知らずの田舎者ということになっている。それは良いとしても、妙に武士に対して批判的なのが不自然に感じられる。
 戦後まだ一年も経っていないうちに製作された作品なので、封建制度批判のメッセージ性が強いお説教映画になっている。これも“アイデア・ピクチャー”というやつの一本だろうか。それだけでは済まさないようにコミカルな場面もいくつか作っているが、滑り気味。脚本の依田義賢は戦前の若い頃に思想的なことで特高の取調べを受けたことがある人なので、単に迎合しただけではないとは思うが、お世辞にも成功作とはいえないと思う。
 また、後半になるといきなり太助が江戸っ子っぽくなってしまうのも違和感がある。朴訥な前半は大友柳太朗の柄に合っているが、後半はちょっと無理があるような気がした。(2005/10/05)

天下の若君漫遊記 てんかのわかぎみまんゆうき
監督 丸根賛太郎
公開年 1955年
評点[C]
感想  今日は、丸根賛太郎監督の『天下の若君漫遊記』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 仕官のツテも無い、その日暮らしの浪人・団九郎(千秋実)たちは、どことなく気品のある風来坊・長吉(明智十三郎)を松平忠直の遺児・長七郎に仕立てあげ、旅籠で飲み食いしまくる。団九郎たちが逃げたあとも長吉は泰然としてタダ働きをしたり人助けをしたりする。はたして彼はただの風来坊なのか……。旅籠を出ると、団九郎と再会。偶然のことから幕府転覆の陰謀に巻き込まれる。

 サブタイトルに「前後編」とついているように、コミカルな前編と活劇的な後編に分かれている。前半は、千秋実や旅籠の主人役の益田喜頓のとぼけた味が面白い。そのため、主人公であるはずの明智十三郎が目立たない。
 後半は殺陣の多い活劇だが、お約束的なありふれたストーリーで、その上かなりテンポが悪い。省略可能な描写が多すぎるような気がした。また、時々殺陣にコマ落としの動きが混じるように見えるのが、不自然。
 丸根賛太郎監督は一部で人気の高い監督なので期待して観たのだが、この作品はハズレだったようで少々残念。(2003/04/07)

天国と地獄 てんごくとじごく
監督 黒澤明
公開年 1963年
評点[A]
感想
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天国と地獄
天国と地獄
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 3

 今日は、黒澤明監督の『天国と地獄』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 大手靴メーカーの重役・権藤(三船敏郎)の息子を誘拐したという脅迫電話がかかってきた。犯人(山崎努)は誤って権藤のお抱え運転手の息子を誘拐したことが間もなく判明したが、それでも身代金3000万円を払わねば殺すと脅してくる。戸倉警部(仲代達矢)以下の刑事たちが極秘裏に捜査を進める中、会社内での自らの立場を強めるため無理な金策をしていた権藤は苦悩する。

 原作はエド・マクベインという人の『キングの身代金』だそうだが、黒澤明・小国英雄・菊島隆三・久板栄二郎らによって大幅に脚色されオリジナル色が強いようだ。
 全てのシーンが後に繋がって無駄な場面がなく、各登場人物のキャラクターも立っている。有名な“特急こだま”の場面も実際観てみると聞いていた以上に面白い。矛盾や不自然な点もほとんど見当たらず、各々脚本家として一家を成した人々が四人も集まって意見の交換も上手くいったのか、複数の脚本家による脚本の成功例のような作品になっていると思う。ジャンルは全然異なるが、誰か一人がはっきりした主人公ではなくリーダーの指示によって複数のプロフェッショナルが働くという点で『七人の侍』をちょっと思い出した。
 展開がよどみなく143分強の長尺を飽きさせないのは黒澤監督の演出の手腕か。また、“じらし”が上手い。職人あがりである権藤以外の資本家(金持ち)がステロタイプ的な悪である点や最後のシークエンス、そしてちょっとやりすぎというかわかりやすすぎる場面(昭和三十年代の横浜黄金町にあんなところあったのか? 今もいかがわしい匂いのあるところだが)は、黒澤らしいといえば、らしいだろうか。しかし、娯楽性の強い作品はこれが最後で、黒澤監督の一つのピークという感じ。
 今から観ると豪華キャストを贅沢に使っている中でも(藤田進に台詞なし?)、コミック・リリーフ的な木村功の使い方が印象的だった。気合の入りすぎた変装とかカーネーションを見ての一言とか。(2005/05/07)

天の夕顔 てんのゆうがお
監督 阿部豊
公開年 1948年
評点[C]
感想  今日は、高峰三枝子主演の『天の夕顔』を観た。昭和二十三年(1948)の作品で、監督は阿部豊。

 今は世を捨てて山に隠棲する竜ノ口(藤川豊彦)は、かつて高等学校時代、金曜ごとに道ですれ違った あき子(高峰三枝子)を愛するようになっていた。しかし、数年後に再会した彼女は妻となり母となっていた。二人はどうしても一線を越えられないが、生涯お互いのことだけを想い続けていく。

 中河与一の同題小説を映画化した作品(脚本:八田尚之)。私は未読だが、原作は有名な小説だそうだ。原作は戦前の作品だけに、姦通どころかロクに手も握らないのに、20年以上も愛し合っていく。ちょっと私には高尚過ぎるようだ。登場人物があまりにも受動的で、溝口健二作品のキャラにあるような生命力が感じられないので。
 令嬢から人妻となる役を演じた高峰三枝子はまぁまぁだったが、藤川豊彦の演技は少々単調で、純愛ではあるが「狂熱に近い話」(映画冒頭ナレーションより)でもある作品の主人公らしくなかった。また、ラストシーンの特撮は今から観るとショボくてちょっと唖然とする。
 どうも、こういう話は文章で読んで自分の頭の中で理想的なイメージを描く方が良いのかもしれない。小原譲治撮影のモノクロ映像は美しい。所々セットっぽく見えるところもあるけれども。(2002/03/30)

天保六花撰 地獄の花道 てんぽうろっかせんじごくのはなみち
監督 マキノ雅弘
公開年 1960年
評点[A’]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『天保六花撰 地獄の花道』を観た。監督はマキノ雅弘で、昭和三十五年(1955)の作品。

 江戸城のお数寄屋坊主の河内山宗俊(市川右太衛門)は、ゆすりたかりで悪名が高いが、友人の森田屋(近衛十四郎)の実妹(丘さとみ)を吉原から救い出すため手を貸したり、松江藩士の金子市之丞(東千代之介)の仇討ちを助けたりする。

 原作は子母沢寛の『すっ飛び駕』(脚本:鈴木兵吾)。歌舞伎ネタの河内山宗俊と直侍だが、この作品では河内山宗俊を単なる悪役でもなく、かつまた過度に英雄化もせず、屈折のある面白い人物像に作りあげている。原作が良いのか(未読)、脚本が良いのか、あるいは演出のためか。市川右太衛門も、旗本退屈男シリーズとは違った好演。
 宗俊の弟分である小悪党の直次郎(中村賀津雄、のち中村嘉葎雄)も、実にセコくカッコ悪いキャラになっていて、ここまで徹底しているのは珍しいかも。ラストシークエンスはちょっと凄い。
 仇討ちや恋愛話や森田屋のエピソードなど、時代劇にしてはプロットが錯綜して複雑だが、割りと上手くさばけていると思う。ただ、河内山宗俊の話を粗筋だけでも知っていた方がわかりやすいが……。

 それにしても、『地獄の花道』という題名は、どうにかならなかったのかしらん(笑)。(2003/05/12)

てんやわんや てんやわんや
監督 渋谷実
公開年 1950年
評点[B]
感想  今日は、渋谷実監督の『てんやわんや』を観た。昭和二十五年(1950)の作品。

 出版社で全社員と社長(志村喬)が対立。社長と秘書の花輪兵子(淡島千景)は身を隠し、腹心の犬丸順吉(佐野周二)に機密書類を託して四国へ落ちのびさせた。犬丸は社長の旧知の人物に世話になるが、和尚(薄田研二)・越智(藤原釜足)・佐賀谷(三井弘次)ら妙な連中によって四国独立運動に引きずり込まれてしまう。

 獅子文六の新聞連載小説の映画化(脚本:斎藤良輔・荒田正男)。渋谷監督による獅子文六作品の映画化は4本にのぼるらしい。
 『自由学校』同様、戦前からの二枚目スターに優柔不断な男を演じさせているのが効果をあげている。宝塚から転じた淡島千景も、これが映画デビュー作とは思えないくらいアプレ世代の女性を伸び伸びと好演。同時期の黒澤映画では刑事や医者である志村喬がエロ社長なのも面白い。
 四国(伊予)でのエピソードは、奇人変人キャラクターと地元の“奇習”の大盤振る舞いで、いささかとっ散らかっていて、最後のまとめも放り出した感が。戦後社会の風潮に対する諷刺も、現在の目で観ると、この次の作品になる『自由学校』の方が時代を超えた普遍的なものを持っていると思う。
 しかし、やはり渋谷監督だけあってテンポの早さで観せられるし、ラスト近くも無理矢理ながらドライブ感はある。(2005/04/08)

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