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東海水滸伝 とうかいすいこでん
監督 伊藤大輔・稲垣浩
公開年 1945年
評点[A’]
感想  今日は、伊藤大輔・稲垣浩共同監督の『東海水滸伝』を観た。昭和二十年(1945)の作品。

 清水の次郎長(阪東妻三郎)は、やくざ稼業から足を洗い喧嘩をやめることを宣言し、自分の刀を森の石松(片岡千恵蔵)に預けて金毘羅様に奉納させる。代参を済ませた石松は人から預かった百両の大金を懐にしたまま鳥の吉兵衛(遠山満)のところで道草を食ってしまい……。

 おなじみ清水の次郎長の話だが、実質的な主人公は石松。三十石船での「江戸っ子だってね、寿司食いねぇ」や石松の闇討ちなどの定番ネタに加えて、幼なじみの娘おりき(花柳小菊)と淡い想いを交わすエピソードがオリジナルで加わっている。そのおりきと川べり(?)で語り合うシーンや盆踊りをするシーンの雰囲気が良く、映像も美しい(撮影:宮川一夫・石本秀雄)。
 石松の兄貴分の小松村の七五郎として市川右太衛門が出演していて、かなり貫禄のある七五郎になっている。さすがに右太衛門では他の次郎長もののように情けない七五郎にするわけにはいかなかったのだろうか。これは儲け役。
 対して次郎長の印象が薄い感じがする。序盤にやくざから足を洗うと決心して、終盤に石松のために誓いを破って立ち上がる理屈がちょっと弱い。脚本にもう一工夫あったら、より傑作になったかもしれない(脚本:八尋不二)。
 とはいうものの、石松が狙われたところや終盤の立ち回りもカットされずに残っているし、おりきとのカラミのシーンも良いので、終戦の年に作られた作品としては水準の高い佳作レベルの一本だと思う。戦争協力的な内容もないし。立ち回りを伊藤大輔、石松×おりきのシーンを稲垣浩、と分担して撮ったのだろうか。そんな截然と分けられるものではないだろうが。(2004/07/18)

東海道は日本晴 とうかいどうはにほんばれ
監督 瀧澤英輔
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、瀧澤英輔(滝沢英輔)監督の『東海道は日本晴』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 東海道の宿場町で働く助十(岸井明)と加呆六(かぼろく:藤原釜足)。ある時、一文無しの旅の侍・貝塚(小林重四郎)が問屋場で働くことになった。宿場役人の六兵衛(横山運平)の一人娘おしな(姫宮接子)や旅籠の女中お銀(竹久千恵子)らは貝塚に気を惹かれ、おしなのことが好きな加呆六とお銀と付き合っている助十は気が気でない。しかし、貝塚にはどこか陰があった。

 あの山中貞雄が脚本を担当している作品(原作:菊田一夫)。山中貞雄らしく、手紙や簪といったアイテムが鍵となってエピソードが展開する。
 全体にテンポはゆっくり目だが、助十と加呆六ら、のんびりした宿場町の生活が微笑ましく、時折映される街道筋の情景も美しい(撮影:友成達雄)。各キャラクターを類型的ではなく個性的なものにしている細やかな心理描写は、滝沢演出の賜物か。しかし、ただのんびりしているばかりではなく、天下に大きな事件が起こっていることを暗示させる終盤の緊迫感も良い。早馬の走る様子をコマ落としで撮っているのも効果的。
 ラストも余韻を残し、71分ほどの時間を楽しんだ気持ちになれる小品の佳作。(2005/03/30)

東海道四谷怪談 とうかいどうよつやかいだん
監督 中川信夫
公開年 1959年
評点[A’]
感想
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東海道四谷怪談
東海道四谷怪談

 今日は、中川信夫監督の『東海道四谷怪談』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 備中岡山の浪人・民谷伊右衛門(天知茂)は、お岩(若杉嘉津子)と夫婦になるため彼女の父・四谷左門(浅野進治郎)を中間〔ちゅうげん〕の直助(江見俊太郎)と共謀して殺す。さらに江戸に流れて裕福な武士の娘・お袖(北沢典子)の元に婿入りするため、お岩を毒殺するが、その霊に祟られる。

 怪談の古典を映画化した作品(脚本:大貫正義)。恐怖映画を得意とする中川監督だけあって、日本家屋の暗さを強調した絵作りが素晴らしい。お岩が毒を飲むシーンは本当に怖かった。ただし、終盤に特殊効果が連発されるところは少々大げさに感じてしまったが、これは自室でのビデオ観賞だったためかもしれない。映画館で観てみたい作品。
 冷たい美男子の天知茂と暗さのある女お岩を演じた若杉嘉津子もハマっていた。小悪党的な直助も良い。忠臣蔵と関連のあるところをすっぱり削ぎ落とした話作りも巧みだと思う。(2002/08/16)

東京行進曲 とうきょうこうしんきょく
監督 溝口健二
公開年 1929年
評点[評点なし]
感想  今日は、溝口健二監督の『東京行進曲』を観た。昭和四年(1929)の作品。

 両親を失い伯父夫婦に育てられていた道代(夏川静江)は、伯父たちの窮状を知って芸者になる決心をする。芸妓“折枝”となった道代の美貌に惹かれた富豪の老人・藤本は旦那になろうとしつこく言い寄るが、藤本の息子・良樹も偶然に道代を見初めて結婚したいとまで考えるのであった……。

 雑誌連載の菊池寛原作の映画化(脚本:木村千疋男)。西条八十作詞の主題歌に合わせて作られた小唄映画でもある。現存する溝口作品の中で最も古いものの一つで大変に貴重ではあるものの、現存しているのは公開時の四分の一以下の25分ほどしかないので正当な評価を下すのは難しい。
 ただし、現在残っている版からでも、藤本良樹が高台に住み、その下に道代一家が住んでいるという露骨な対比が示すようにブルジョアとプロレタリアを対立させる傾向映画的な雰囲気があり、溝口健二が一時期社会主義的な思想に惹かれていたことは読み取れる。この作品での溝口演出はのちの“ワンシーン・ワンカット”などの特色はまだ見られず、オーソドックスなサイレント映画らしい撮り方で、出演者も大きな演技をしている。
 やはり、入江たか子が出演しているほとんどのシーンを含む大部分が残っていないのが残念だ。(2006/02/04)

東京ゴッドファーザーズ(TOKYO GODFATHERS) とうきょうごっどふぁあざあず
監督 今敏
公開年 2003年
評点[A’]
感想
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東京ゴッドファーザーズ
東京ゴッドファーザーズ
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東京ゴッドファーザーズ デラックスBOX (2枚組)
東京ゴッドファーザーズ
デラックスBOX (2枚組)

 今日は、劇場用アニメの『東京ゴッドファザーズ』を観た。監督は今敏で、平成十五年(2003)の作品。

 時はクリスマス。新宿のホームレスである中年おやじのギン(声:江守徹)・大男(女?)のオカマのハナ(声:梅垣義明)・家出娘のミユキ(声:岡本綾)たちが捨てられていた赤ん坊を拾う。警察に届けるのをハナが拒んだので、仕方なく三人で年末の東京をうろついて親探しを始めるが、偶然か必然か三人は様々な事件に巻き込まれる。

 今敏の監督として3本目の劇場用アニメで、前作『千年女優』に続くオリジナル作品(原作:今敏/脚本:今敏・信本敬子)。キャラクターデザインは今敏と小西賢一(作画監督:小西賢一・安藤雅司・井上俊之)。
 クリスマスの夜に赤ん坊がもたらした“奇跡”がテーマになっていて、ストーリーの流れよりも各カット毎の効果を狙っていたような前2作より、ずっとストーリーもキャラもわかりやすくなっている。監督と組む脚本家が代わった(前2作は村井さだゆき)のが一因か、逆に作風を変えようとして脚本家を代えたのか。
 絵作りも、アニメ的な派手な効果を頻繁に用いていた過去作よりもずっとおとなしく静的になっていて、背景の描き込みが非常に非常に細かくなっている。おそらく3D CGを多用していると思われるが違和感なく、街並みのリアルさは驚かされるほど。
 三人がホームレスになった理由や赤子が捨てられた経緯などを通じて現代日本の社会の問題が少し暗示されるが、要するに“ちょっといい話”のヒューマン・コメディあるいは人情噺。ベタなテーマやギャグも、キャラクターの豊かな表情や動きと声優たちの巧みな演技で見せてくれる。メインキャラの声を担当した人たちは全て実写の俳優だが違和感はなく、特にミユキの岡本綾は声がアニメアニメしていなくて良かった。
 前2作よりもわかりやすいストーリーを堅実な演出で見せているので、実写でもできるのでは? という気がしないでもないが、実写だとコテコテになりすぎてしまうだろうか。声優の演技と見た目の派手さを押さえたアニメ技術は良かったが、正直なところ前作と比べてしまうと、物足りない感はある。(2005/06/12)

東京流れ者 とうきょうながれもの
監督 鈴木清順
公開年 1966年
評点[B]
感想
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東京流れ者
東京流れ者

 今日は、鈴木清順監督の『東京流れ者』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 “不死鳥の哲”の異名をとっていた本堂哲也(渡哲也)は、組を解散して堅気になった親分の倉田(北竜二)に、いつまでも義理立てしていた。しかし、倉田のビルを狙う大塚(江角英明)との抗争に巻き込まれた哲は、旅に出て山形の庄内や九州の佐世保へ流れていくことになる。

 日活任侠映画(?)路線の一作だが、話がポンポン飛んで脈絡がついてないし、セットは見るからに作り物っぽいし、なんだか不思議な作品。哲が殺し屋の“マムシの辰”(川地民夫)に何度も狙われていながら御都合主義としか言いようのない展開で助かるところや、有名な「流れ者に女は要らねぇ……云々」という迷台詞など、意図的に日活アクション映画や任侠映画一般をパロディ化したようだ。
 しかし、これは映像の美しさと格好良さを徹底的に追及した作品なのだろう。特に、“総天然色映画”であることを利用して、哲が青、大塚が赤、哲の恋人の千春(松原千恵子)が黄色、と各々イメージカラーを設定してあるのが面白い。いまだにフィルムが褪色していないので、鮮やかだ。(2001/06/09)

東京の英雄 とうきょうのえいゆう
監督 清水宏
公開年 1935年
評点[A]
感想  今日は、清水宏監督の『東京の英雄』を観た。昭和十年(1935)の作品。

 根本春子(吉川満子)は夫(岩田祐吉)が詐欺事件を起こして失踪したため、女手一つで寛一(藤井貢)・加代子(桑野通子)・秀雄(三井秀男)の三人をを立派に育てあげた。しかし、春子が実はいかがわしい仕事を営んでいたことを加代子の夫と秀雄の恋人に知られ、二人は家を出てしまう。

 源尊彦という名義の原作があるが、清水宏のペンネームだという(脚本:荒井正夫)。音楽のみ録音のサウンド版。都会を舞台としたモダン傾向の一作で、戦前の銀座の街並みも登場する。序盤で一家が江ノ島旅行する場面があり、江ノ島に渡る橋が戦前から整備されていたことが知られるのも珍しい。
 ストーリーはいわゆる母もの的だが、映像と展開のテンポが素晴らしい。タイトル画面の挿入のタイミングも巧みで、静的な画面が続くのに全く展開が遅く感じられない。まだサイレント映画をあまり多くは観ていないが、これほどリズム感の良い作品は初めて。ディゾルブで時間の省略を表現する手法も使われている。
 脚本に目新しいところはないが、サイレントとしては抑え目な演技を巧みな構図で捉え(撮影:野村昊)、それを絶妙なタイミングで繋いで一本の映画に構成する、清水監督の映像作家としての実力を感じた。(2004/09/17)

東京のえくぼ とうきょうのえくぼ
監督 松林宗恵
公開年 1952年
評点[A’]
感想  今日は、松林宗恵監督の『東京のえくぼ』を観た。昭和二十七年(1952)の作品。

 豆腐屋の娘の河上伸子(丹阿弥谷津子)はバスでスリの被害を訴え、警察が容疑者を逮捕したが、それは自分が就職した会社の社長・紀之国屋文太郎(上原謙)だった。社長秘書になった伸子は、文太郎が飾り物の社長の座にうんざりしていることを知ると、彼を外に連れ出す。

 娯楽映画を大量に作った松林監督の第一回作品(脚本:小国英雄)。ただし、この前に青柳信雄との共同監督作品が一本あったらしい。
 初作品ではあるが、技巧的な演出を存分に使っていて、さすがのちの娯楽映画の巨匠の片鱗を覗かせていると思う。松林監督はこの作品でフランク・キャプラなどのアメリカ映画を意識したと何かに書いてあったのをチラッと読んだことがあるが、確かに日本的人情噺というよりヒューマン・コメディという雰囲気が強い。
 しかし、上手いし良い話なのだけれども、バタ臭さが目につく感もあり、“ちょっといい話”が続いて食傷するところもある。伸子とその両親(柳家金語楼・清川虹子)や専務を演じた古川ロッパなどの演技もいささかくどいところがあるので、さすがに初作品で監督が力みすぎたのかな、という気がする。それでも、邦画にはちょっと珍しい雰囲気のウェルメイドな一作と言えるとは思う。
 “特別出演”で高峰秀子が冒頭と末尾に登場する(相方は小林桂樹)。(2005/06/10)

東京の合唱 とうきょうのこおらす
監督 小津安二郎
公開年 1931年
評点[A’]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第四集
小津安二郎
DVD-BOX
第四集

 今日は、小津安二郎監督の監督の『東京の合唱(コーラス)』を観たと記憶しています…(←なんちゅう言い回しぢゃ)。昭和六年(1931)の作品だから、ホント昭和初期って感じだな〜。

 松竹版なので全くの無音なのがチト残念。『生れては〜』よりも映像の状態は良くなかった。でも、観るのに努力がいるほどではない。
 冒頭はスラップスティック風のギャグがあったりして、だんだんシリアスになるがユーモアの要素を忘れないのが良いと思った。題名のコーラスって、そういうことだったのか!(謎)
 しかし、長女役が高峰秀子なのか…。(2000/04/17)

東京暮色 とうきょうぼしょく
監督 小津安二郎
公開年 1957年
評点[B]
感想
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東京暮色
東京暮色
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
DVD-BOX
第二集

 今日は、小津安二郎監督の『東京暮色』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 大銀行の監査役の父(笠智衆)は次女(有馬稲子)と2人暮らしだが、既に結婚していた長女(原節子)も夫と上手くいかず娘を連れて帰って来ている。
 次女は若い学生とつきあっていて、なぜか最近彼を追い回している。しかし男は逃げ回り、遊び仲間たちが通っている麻雀屋のオバサン(山田五十鈴)が実は昔、父の部下と駆け落ちした実の母親だと知った彼女は…。
 これは小津作品としては異例なほど暗く陰鬱。妊娠中絶まで登場するという内容もそうだが、物理的にも暗い画調に見えた。ラストも、なんらかの和解が成立する戦後の作品群の中で、これだけが全て未解決で終わる。

 公開当時、『キネマ旬報』のベストテンで小津作品としては異例に低い19位になり、失敗作と言われ、本人も「19位だからな」と自嘲していたという。う〜ん、駄作とは思わないけど、どこか全体に違和感が漂っているような気がしないでもない。評価を知っているからかもしれないけど。
 高橋治は『絢爛たる影絵』で有馬稲子を痛烈に批判していたが、当初の予定どおり岸恵子が次女を演じていたらどうなっただろう。有馬の演技はチョット暗すぎて一本調子かな。高橋が言っているように、山田五十鈴は見事。(2000/09/06)

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