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戸田家の兄妹 とだけのきょうだい
監督 小津安二郎
公開年 1941年
評点[A]
感想
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小津安二郎 DVD-BOX 第三集
小津安二郎
DVD-BOX
第三集

 今日は、小津安二郎監督の『戸田家の兄妹』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 資産家の戸田進太郎(藤野秀夫)が急逝すると、とたんに家は傾き、邸宅や家財道具一切を手放すことになった。気ままに暮らしていた次男・昌二郎(佐分利信)は中国の天津に渡ることを決意する。未亡人(葛城文子)と嫁入り前の三女・節子(高峰三枝子)は既に独立している長男(斎藤達雄)や長女(吉川満子)・次女(坪内美子)のところに世話になろうとするが、うまくいかない。

 戦地から帰還した小津監督の、『淑女は何を忘れたか』(昭和十二年)以来の作品。松竹オールスターキャストで小津作品としては初めて大衆的にウケた一本だというが、内容の方は小津の人間を見る冷徹な視線が反映されており、シリアス。かなり厳しい作品と言っていいのではないだろうか。
 ものの本によるとアメリカ映画の古典『オーバー・ザ・ヒル』に影響を受けているというが、吉川満子の役柄や台詞は『東京物語』の杉村春子を彷彿とさせるものがあり、粗筋自体も『東京物語』を連想させる。まだ独特なリズムの会話やバストアップの切り返しなどはないが、テーマ的には戦後の小津作品に通ずるものを確立した作品と言える。
 また、昌二郎と安二郎のアナグラムも指摘されていて、兄嫁とうまくいかない母と同居していた小津監督自身の生活もかなり強く影を落としているのかもしれない。なにかと“大人”の小津監督は決して言動に表すことは無かったが、生涯独身だったことといい、相当こたえたのだろうか。(2003/05/10)

嫁ぐ日まで とつぐひまで
監督 島津保次郎
公開年 1940年
評点[B]
感想  今日は、島津保次郎監督の『嫁ぐ日まで』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 好子(原節子)と浅子(矢口陽子)の姉妹は母を失い、父(汐見洋)と三人暮らしをしていた。好子が婚期を迎えていることもあって、父が後添え(沢村貞子)をもらうことになったが、特に浅子は複雑な気分であった。

 島津監督のオリジナル脚本の作品。東宝に移って2作目だが、松竹時代を思わせるホームドラマ。
 ストーリーはシンプルでドラマ性は薄く、至極あっさりした印象の作品になっている。ただし、家庭の雰囲気や各出演者の演技は実に自然で、いかにもありそうな家庭を描き出すことには成功していると思う。
 個人的に目に付いたのは、原節子の役がのちの小津作品で演じた役の設定を彷彿とさせること。小津監督は、この作品を観たことがあるのだろうか。もう一つ、終盤に父親が浅子を叱る場面でBGMとしてジャズ(?)が流れ、いわゆる対位法的な音楽の使われ方がされていること。成瀬巳喜男監督の『妻よ薔薇のやうに』でも登場人物の一人が歌う『いなかの四季』が対位法的な効果になっていたし、一般に戦後の『酔いどれ天使』が先駆者とされている対位法的な音楽の使い方は、戦前にさかのぼるのではないだろうか。(2005/08/17)

ドドンパ酔虎伝 どどんぱすいこでん
監督 田中徳三
公開年 1961年
評点[A’]
感想  今日は、 田中徳三監督の『ドドンパ酔虎伝』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 時は元禄十五年。江戸ではドドンパなる新しい音曲が流行していた。作曲は“飲べえ安”こと中山安兵衛(勝新太郎)、作詞は子葉こと大高源吾(小林勝彦)。このドドンパを盗用して悪だくみを始めたのが、村上権十郎(山路義人)と氏上典膳(伊達三郎)。村上は、安兵衛の叔父にあたる菅井甚左衛門(荒木忍)の仇であった。

 題名でわかるように全編を通じて音楽に満ちていて、赤垣源蔵役の水原弘などが歌ったりする。音楽以外にも“酒呑みコンクール”があったり様々な遊びがある、ミュージカル時代劇。時代は松ノ廊下刃傷のあとだが、安兵衛は赤穂浪人ではなく、まだ堀部弥兵衛(益田キートン)の娘(浦路洋子)とも結婚しておらず、かなり史実を改編した設定。原作があるらしい(原作:川内康範/脚本:銀座八郎)。
 かなり遊びのある作品だが、勝新太郎のコミカルとシリアスを使い分けた演技は見事で、決していい加減な作りの作品ではない。ラストの二刀流の殺陣は見もの。展開のテンポも良くギャグの入れ方のタイミングも良い。田中監督の手腕だろう。(2004/01/01)

隣の八重ちゃん となりのやえちゃん
監督 島津保次郎
公開年 1934年
評点[A’]
感想  今日は、島津保次郎監督の『隣の八重ちゃん』を観た。昭和九年(1934)の作品。

 女学生の服部八重子(逢初夢子)は、父と母(飯田蝶子)と郊外の家で三人暮らし。お隣の新海家とは家族ぐるみの付き合いをしていて、特に帝大生の長男・恵太郎(大日向傳)と仲が良かった。ある日、姉の京子(岡田嘉子)が嫁ぎ先から帰ってきて、恵太郎に興味を示すので、八重子は気が気でなく……。

 島津監督の代表作とされる作品。原作・脚色も島津保次郎となっている。また、助監督の中に豊田四郎・吉村公三郎、撮影助手の中に木下恵介が名を連ねていて、結果として超豪華スタッフの作品となっている。
 近所付き合いも本当に家族同様で、お隣で酒を飲んだり平気で上がりこんで食事させてもらったりするのは、今ではちょっと考えられない。もちろん、理想化された世界が描かれているのだとは思うが、当時は全く無いことでもなかったのだろう。
 松竹蒲田調の小市民映画と言われているが、実に自然な演技と演出で作り物くささがほとんど無いのにはちょっと驚いた。大日向傳も逢初夢子も、“熱演”とは異なる種類の上手さがある。島津監督の作品は初めてだけど、島津作品は皆こういう演出と作風なのだろうか。(2002/04/15)

殿さま弥次喜多 怪談道中 とのさまやじきたかいだんどうちゅう
監督 沢島忠
公開年 1958年
評点[C]
感想  今日は、沢島忠監督の『殿さま弥次喜多 怪談道中』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 国元へ向かっていた尾張の徳川宗長(中村錦之助、のち萬屋錦之介)と紀州の徳川義忠(中村賀津雄、のち嘉葎雄)の行列に弥次郎兵衛(益田キートン)と喜多八(星十郎)の乗った暴れ馬が乱入。宗長と義忠は弥次喜多を手討ちにする代わりに、入れ替わって町人姿の旅を始めた。しかし、当然珍道中に……

 弥次喜多ものの設定を借りた一作(脚本:小川正)。明朗時代劇が得意な沢島監督らしく、二枚目俳優二人が主人公でもコメディタッチ。
 しかし、ギャグはドタバタ主体で空回り気味に見え、意外に面白くない。怪談と銘うっているのだから、錦之助と賀津雄に派手な悲鳴をあげさせるだけでなく幽霊話の部分をもっとリアルにして観客も怖がらせた方が、よりギャグの部分が面白くなったのではないだろうか。脚本・演出とも今ひとつのような気がする。二人のノリは悪くないので、ちょっともったいない。
 終盤の城を舞台にした殺陣は『死亡遊戯』をちょっとだけ彷彿とさせた。二人(の身代わりの弥次喜多)を暗殺しようとする浪人として田中春夫が出演していて、さすがに存在感がある。(2004/08/27)

飛び出したお嬢さん(飛び出したお孃さん) とびだしたおじょうさん
監督 渋谷実
公開年 1947年
評点[A’]
感想 今日は、渋谷実監督の『飛び出したお嬢さん』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 ある日、下町でミルクホールを営むお由(飯田蝶子)のところに、かつて世話になった問屋の娘である時子(水戸光子)が家出して転がり込んできた。お由は隣の清吉(河村黎吉)に頼んで時子が親元に帰るよう説得してもらおうとするが、かえって清吉は言いくるめられてしまう始末。その後も清吉は時子の口車に乗って金儲けを企んでお由や幼なじみの正六(坂本武)に迷惑をかけ、娘とみ江(三浦光子)をあきれさせる。

 昭和二十二年の作品だが、水戸光子・三浦光子の二大女優に加えて河村黎吉や坂本武など松竹映画の常連が登場して、戦前以来の松竹作品の雰囲気がある(脚本:斎藤良輔・中山隆三)。
 しかし、顔ぶれは昔ながらの面々だが、清吉を始めとして皆かなり利己的でがめつく、それが戦後の作品であり渋谷監督の演出であることを感じさせる。特に清吉の図々しさは徹底していて、よくこの作品は三浦光子あるいは水戸光子主演作品と言われているが、実際は河村黎吉の堂々たる(?)主演作になっている。
 途中、清吉が事件を巻き起こしては失敗をやらかすというパターンが続いてちょっとダレて、そしてめでたしめでたしで終わると思いきや、意外な展開を見せるところが渋谷実監督らしいだろうか。主に下町の商家を舞台としている中で、砂浜で突然登場する水戸光子はハッとするほどカッコイイ。上原謙も登場するが、ただ色男なだけでほとんど何もしない(笑)。
 1時間12分ほどの中編だが、水戸光子の風変わりなキャラクターと主役の河村黎吉を観られる珍しい作品かもしれない。(2004/11/19)

虎の尾を踏む男たち とらのおをふむおとこたち
監督 黒澤明
公開年 1952年
評点[A’]
感想
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虎の尾を踏む男達
虎の尾を踏む男達
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 3

 今日は、黒澤明監督の『虎の尾を踏む男たち』を観た。昭和二十七年(1952)の公開だが、製作は昭和二十年(1945)。

 平家を滅ぼした源義経(仁科周芳)は梶原景時の讒言を信じた源頼朝によって、全国で追われる身となった。義経主従は山伏に姿を変えたが、義経を捕らえるための安宅の関所にさしかかると、土地の
地頭・富樫(藤田進)に見破られる。しかし、弁慶(大河内伝次郎)は機略で切り抜けようとする。

 能の『安宅』と歌舞伎の『勧進帳』を基にした作品。終戦直後の作品なので、上映時間は一時間ちょうど、撮影も簡単なセットのみの商品だが、黒澤明自らによる脚本は古典を巧みに翻案し、オリジナルキャラである強力(榎本健一)を登場させたことによって、観客を飽きさせない作品になっていると思う。
 エノケンはよく動きよくしゃべり面白いが、今から観ると表情の演技がサイレント的というか少々過剰に見えるところもあった。大河内傳次郎も弁慶にしては小柄だが威厳があり、ラストの酔う演技が上手い。ただ、滑舌が悪くて何を言っているのかわからないところも多かった。(2002/08/30)

ドレミハ大学生 どれみはだいがくせい
監督 矢倉茂雄
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、藤原釜足主演の『ドレミハ大学生』を観た。監督は矢倉茂雄で、昭和十三年(1938)の作品。

 学生の山野(藤原釜足)と海野(岸井明)は大の親友。海野は食堂の娘・純子(神田千鶴子)が好きで食堂に通いつめるが、純子は山野が好き。でも、その山野は資産家の娘・秋元冴子(江戸川蘭子)が好き。そんな時、音楽好きの冴子が婿を取るという噂が広まって、学園中ににわか音楽ブームが発生する。

 題名どおり歌の多いカレッジもので、尺がちょうど50分ほどの短編(脚本:伊馬鵜平・阪田英一)。
 古典的な学生もの映画なので大きな事件が起こるわけではないが、戦前映画ならではののんびりした雰囲気に満たされている。日中戦争二年目の作品だけれども、途中に「こんな御時世で」という台詞が一つあるだけで“時局”の影響は皆無(軍事教練帰りの学生の一団が出てきたが、学校に軍事教練があったのは日本だけではない)。戦前映画なので登場人物が好いた惚れたとはっきり言うわけではないが、それぞれの恋愛模様に味わいがある。
 途中、岸井明と江戸川蘭子が合唱のようになる場面で面白い工夫があって、おやっと思った。どことなくフランス映画のような洒落た感じがしたが、元ネタがあるのだろうか。
 どう見ても学生にしては老けている藤原釜足が学生服を着せられているのが珍しいけれども、藤原釜足も岸井明も演技が上手いので違和感は少ない。また、芸者役の多い清川玉枝が珍しくスーツ姿で登場するが、これが意外と似合っていて可愛らしくさえあるのでちょっと驚いた。(2005/12/02)

泥の河 どろのかわ
監督 小栗康平
公開年 1981年
評点[超A]
感想
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小栗康平監督作品集 DVD-BOX
小栗康平監督作品集
DVD-BOX(5枚組)
『泥の河』
『伽倻子のために』
『死の棘』
『眠る男』
特典ディスク


 今日は、小栗康平監督の『泥の河』を観た。昭和五十六年(1981)の作品。

 昭和三十一年。大阪は安治川の脇に立つ食堂の子・信雄(朝原靖貴)は、対岸に水上生活者の宿舟がもやったのに気づいた。そこの子きっちゃん(桜井稔)は信雄と同じ9歳で、二人はたちまち仲良くなった。きっちゃんには姉(柴田真生子)と美しい母(加賀まり子)がいて、信雄の両親(田村高広&藤田弓子)は、きっちゃんとなぜか遠慮がちな姉を息子の友として暖かく迎えた。

 篠田正浩・浦山桐郎・大林宣彦などの助監督を長く務めたという小栗監督の第一作。原作は宮本輝(脚本:重森孝子)。
 「もはや戦後ではない」という言葉が生まれた昭和三十一年、復興を終え高度成長へと向かいつつある日本で、それとは関係ないように社会の片隅で生きる人々。いまだ戦争の残した傷を忘れられない中年の父親。年が離れた夫婦である両親の結婚のいきさつ。信雄が見た水上生活者の暮らし。知ってしまったきっちゃん一家の秘密。等々を語り過ぎず、かつ克明に正攻法で描いた作品。
 皆それぞれ哀しみを抱いて生きる人たちの中で、最後に信雄が知る悲しみの大きさは、どれほどのものだったろうか。語る言葉もない。
 息子とその友を見守る父親・おとなしくあまり表情を動かさない信雄・表情豊かなきっちゃん・信雄に舟にはあまり来ない方が良いと言うきっちゃんの母親など、全て良い。
 1981年に昭和三十一年の風景を撮るための都合もあったろうが、白黒画面が効果的(撮影:安藤庄平)。

 『泥の河』は、もう十数年前になるだろうか、NHK総合で放映されたのを観て、物忘れの良い私としては割りに内容を覚えていて、長いこと再見したいと思っていた作品だった。NHK BSに感謝。(2004/07/27)

とんかつ大将 とんかつたいしょう
監督 川島雄三
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『とんかつ大将』を観た。昭和二十七年(1943)の作品。

 浅草の亀の子横丁に住むとんかつ好きの医師・荒木勇作(佐野周二)は皆から“とんかつ大将”と呼ばれて慕われていた。とんかつ大将は、若い女院長(津島恵子)が経営する長屋裏の病院の拡張による長屋の立ち退き問題や、かつての恋人(幾野道子)との再会など様々な事件に巻き込まれる。


 あの『姿三四郎』の作者・富田常雄の原作の映画化だという(脚本:川島雄三)。
 下町人情物のフォーマットにのっとったストーリーという感じで、坂本武などが演ずる長屋の住人たちや元恋人とその夫とのエピソードなどは、今の目で観てしまうとちょっと類型的。しかし、主人公に影があるように見える理由や女院長のと関係はオリジナリティを感じさせ、とんかつ大将の同居人である艶歌師(三井弘次)がいいキャラクターになっている。
 この作品も川島監督が職人としての腕を見せたという感じでエキセントリックなところはないが、一見人情家で実はいい加減なところが強調されているような長屋の住人の描き方に彼らしさが出ているだろうか。原作どおりかもしれないが。
 とんかつ大将を慕う女性(角梨枝子)の弟として高橋貞二が出演。このころはまだ主役を張る前の段階だったのだろうか。(2005/08/01)

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