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山の音 やまのおと
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[A]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 2
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 2
『山の音』
『流れる』
『女が階段を上がる時』
『放浪記』
『乱れ雲』
「特典ディスク」

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山の音
山の音

 今日は成瀬巳喜男監督の『山の音』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 鎌倉で二世代同居している尾形信吾(山村聰)は、外に愛人がいる息子の修一(上原謙)の妻の菊子(原節子)を不憫に思う。何かにつけてやさしくするのだが、それがかえって家族の間に波紋を広げる。

 成瀬巳喜男作品をようやく観ることができた。この作品の舞台(鎌倉)や題材はちょっとだけ小津作品に似ているようだ。しかし、厳格な様式美の小津安二郎やドラマティックな溝口健二に比べると、演技も映像もナチュラルな印象だった。舅と若く美しい嫁との微妙な関係を細やかな演出で表現しきっている。
 原節子は小津作品よりも演技が上手く見えた。修一ってヤなやつだねぇ(笑)。しかし、上原謙って山村聰よりも年上のはずだけど、違和感が無い……。
 出来にバラツキがあるそうだが、他の成瀬作品も観たくなった。(2001/01/01)

闇の影法師 やみのかげほうし
監督 稲垣浩
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『闇の影法師』を観た。監督は稲垣浩で、昭和十三年(1938)の作品。

 時は大政奉還の頃。譜代大名の土井家は佐幕の方針を固め、家老の川勝丹波(香川良介)が中心となって勤皇派を弾圧していたが、“闇の影法師”と名乗る謎の人物が志士たちを助けていた。その頃、領内の商人宿“南屋”に煙草の行商をしている松造と名乗る男(阪東妻三郎)が長逗留していた。

 のちに『無法松の一生』など多くの傑作を生んだ阪東&稲垣コンビの第一作だという。冒頭からエンドマークが出るまで画面に大雨が降りまくりなのでビックリ(笑)。ただし画質は酷いが音声が意外とクリアなのでストーリーがわからないほどではない。しかし、フィルムの欠落が多い。
 定番ネタの勤皇の志士ものかと思ったら、冒頭の立ち回りが終わって場面が南屋に移ると雰囲気が明るくなり、明朗時代劇の雰囲気になる。南屋の息子と嫁(沢村国太郎&中野かほる)、南屋の娘おつる(轟夕起子)と松造の掛け合いが楽しいし、泊り客の猿回し(市川百々之助)もいい味を出している。それと、南屋の隠居(藤川三之祐)が寝ている寝床にはビックリ。誰のアイデアだろう……監督か脚本家か(原作・脚本:飯沼成治)。
 娘おつるの松造に寄せる淡い想いもストーリーの核の一つで、おつるが胸の内を打ち明ける海岸のシーンでは叙情あふれる稲垣演出が炸裂。懸命に想いを語る轟夕起子とそれを聞く阪妻の無言の演技、砂浜のきらめく波が相まって忘れがたい名場面となっている。宮川一夫の撮影も光る。
 脇役では、とぼけた妙味を感じさせる沢村国太郎と市川百々之助の他に、松造の同志・嶺秀坊を演じた山本礼三郎もチラッと登場するだけなのに存在感がある。

 海岸のシーンだけでも見ごたえがある作品なので立ち回り部分の欠落や話が所々飛ぶのはあまり気にはならないが、やはりもう少しマシなプリントは残っていないだろうか。戦前の日活作品だから、残っているだけでもありがたいと思わねばならないが……。(2004/07/14)

鑓の権三 やりのごんざ
監督 篠田正浩
公開年 1986年
評点[B]
感想  今日は、篠田正浩監督の『鑓の権三』(やりのごんざ)を観た。昭和六十一年(1986)の作品。

 出雲の国、松江藩の笹野権三(郷ひろみ)は、槍の名人で美男の聞こえも高い。彼が茶の湯によって出世しようとして、茶の師匠・浅香市之進(津村隆)が参勤交代で留守中であることから、その女房おさゐ(岩下志麻)から秘伝の教えを受けようとすると、権三をこころよく思わない川側伴之丞(火野正平)は、おさゐと権三が密通していると騒ぎ立て、二人は窮地に陥る。

 原作は近松門左衛門の同題の浄瑠璃(脚色:富岡多恵子)。篠田監督の近松作品は、『心中天網島』に続いて2作目だそうだ。
 郷ひろみと岩下志麻という異色の組み合わせ。岩下志麻は相変わらずの演技で、ヒロミ・ゴーは、ちょっと堅い感じがした。心中ものであるが、溝口健二作品のようなパッションの表出が無く、淡々と進んでいるように見えるため、二人が追い詰められる心情が少々わかりづらく、126分の上映時間が長く感じられる。浅香市之進が江戸から帰ってきてからは盛り上がってくるが。
 宮川一夫による映像は、シャープで美しい。チョンマゲや衣服など厳密な時代考証がされていて、溝口作品よりも画質が良くカラーなので、資料として役立つ作品かもしれない。(2001/08/26)

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