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酔いどれ天使 よいどれてんし
監督 黒澤明
公開年 1948年
評点[B]
感想
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酔いどれ天使
酔いどれ天使
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 2

 今日は、黒澤明監督の『酔いどれ天使』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 終戦直後、闇市の近くにある汚い沼地のそばで開業している医師・真田(志村喬)は酒好きでいつも飲んだくれているが、医療にかける熱意では評判の医者だった。
 彼のもとに、闇市の若い顔役・松永(三船敏郎)がケガの治療にやってくると、すぐさま真田は松永が肺結核に冒されていることを見抜いた。病気による衰えと兄貴分の岡田(山本礼三郎)が出所してきたこともあって、松永は窮地に立たされる。松永を救おうとする真田。

 三船敏郎が黒澤映画に初登場した作品。虚勢を張っているが実は気弱なヤクザを好演している。ただ、終盤のメイクはちょっと濃すぎると思う。志村喬は爺役というイメージが強いが、この作品では意外と若い印象だった。実際まだ四十代だし。
 内容は、今から観ると黒澤流ヒューマニズムがストレートすぎるような気もするが、さほど押し付けがましくはないので抵抗感は無い。映像的には、それよりあとの映画・マンガに影響を与えたと思われるショットが多い。特に、終盤のペンキの中でのカッコ悪いがゆえにリアルな立ち回りは、今観ても迫力がある。(2001/09/08)

陽気な殿様 ようきなとのさま
監督 森一生
公開年 1962年
評点[B]
感想  今日は、市川雷蔵主演の『陽気な殿様』を観た。監督は森一生で、昭和三十七年(1962)の作品。

 幕府の老中でもある姫路藩主・榊原忠次(南部彰三)の跡継ぎ隼之助(市川雷蔵)は襲封のため国元へ帰るよう父に命ぜられると、側用人(菅井一郎)たち共の者を置いて幼なじみの町人・八五郎(小林勝彦)と三次(佐々十郎)の二人と先に行ってしまう。旅路では、謎の浪人・挙手田多門(天知茂)に襲われたり浜松藩の家老(原聖四郎)には妙なことを頼まれるなど、いくつかの事件が起こる。

 五味康祐の原作の映画化(脚本:笠原良三)。題名通り、型破りな若様が主人公の明朗時代劇。
 大名の嫡子である主人公が勝手に江戸の街を出歩いている冒頭からして現実離れしているが、台詞にも時々現代語が出てきたりして、この作品がコメディであることを示す。コミカルな作品の雷蔵は大変に良く、のほほんとした表情が実によく似合う。
 ただ、コメディの割りにはテンポが今ひとつで間延びした感があった。いくつものエピソードがあるのだが、主人公をもっとコミカルにしても良かったと思うし、共の八五郎と三次というキャラも活躍させたかった。私は未読だが、どうも五味康祐の原作にはエロス的要素があったようなので(それを感じさせるエピソードがある)、それを映画では削り取った結果として間延びしてしまったのかもしれない。
 原作よりもコメディ色を強めた結果なのか、挙手田多門と伴角右ヱ門(千葉敏郎)の二人の浪人が関わるシリアスなエピソードがちょっと浮いているような気もする。終盤に登場する宇津井健は、生真面目さがかえってユーモアをかもし出しているような感じで良い。(2005/01/01)

楊貴妃 ようきひ
監督 溝口健二
公開年 1955年
評点[B]
感想
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溝口健二 大映作品集Vol.2 1954-1956
溝口健二
大映作品集Vol.2
『近松物語』
『楊貴妃』
『新・平家物語』
『赤線地帯』
「時代を越える溝口健二」
(NHKドキュメンタリー長尺版)

 溝口健二監督の『楊貴妃』(1955年)を観る。確かに傑作とまでは行かない。しかし、言われているほど駄作にも見えないので、凡打ってところだろうか。和製中国映画としては、昔映画館で観た『敦煌』よりは上出来だと思う。役者が違うしね。でも、京マチ子の楊貴妃はイイとして、森雅之の玄宗皇帝が楽器を弾くと、まんま芸術家にしか見えない(笑)。
 これ、外国人から観ると傑作らしい。『雨月物語』と共に溝口健二の代表作に挙げられたりして。西洋人には日本と中国の区別なんてつかないか(笑)。我々にとってのハリウッド製ヨーロッパ史劇みたいなもんだろう。(2000/02/07)

用心棒 ようじんぼう
監督 黒澤明
公開年 1961年
評点[A’]
感想
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用心棒
用心棒
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黒澤明
黒澤明 :
DVD BOXSET 2

 今日は、黒澤明監督の『用心棒』を観た。昭和三十六年(1961)年の作品。
 ある宿場町に、ふらりと浪人(三船敏郎)が現れる。飯屋の権爺(東野英治郎)から、そこでは清兵衛(河津清次郎)と丑寅(山茶花究)という二人の親分が争いを続け、ゆえに町が荒れ果てていることを聞くと、浪人は桑畑三十郎と名乗って自らを双方に売り込み、共倒れさせようとする。

 これも有名な黒澤作品。誰もが面白いって言うね。なるほど確かに面白い(笑)。
実は、盗作のイタリア製西部劇『荒野の用心棒』の方を先にテレビで観たことがあるのだが、本当にそのまんま!イーストウッドよりミフネの方が役者としての魅力は上だな。
 キャラは類型的でマンガのようだが、全員そうなので違和感は無い。むしろ、昔の時代劇劇画の類の方が、黒澤時代劇の影響を受けているのだろう。哀感あるいは余韻のようなものは皆無なので、多少はあっても良いような気がするけれども、意図的に排除しているのだろう。(2001/05/05)

妖刀物語 花の吉原百人斬り(花の吉原百人斬り) ようとうものがたりはなのよしわらひゃくにんぎり
監督 内田吐夢
公開年 1960年
評点[A]
感想  今日は、内田吐夢監督の『妖刀物語 花の吉原百人斬り』を観たっす。昭和三十五年(1960)の作品。

 顔の右半分一面を覆う醜い痣(あざ)のある織物問屋の主人、佐野次郎左衛門(片岡千恵蔵)は、初めて吉原へ行き、そこでも下っ端の遊女(水谷良重、現・二代目水谷八重子)をあてがわれる。しかし、生まれて初めて人に優しくされた彼はすっかり入れあげてしまい、家産を傾ける。金の切れ目が縁の切れ目…と愛想づかしをされ、だまされていたと知った次郎左衛門は妖刀“籠釣瓶”を抜き、彼から巻き上げた金で太夫の披露をする女の行列に斬り込んだ…。

 歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒』(かごつるべさとのえいざめ)を元にしたこの作品、脚本は依田義賢。溝口健二と組んでいた人だ。
 昭和三十五年は、邦画の全盛期を過ぎかけていたとはいえ、まだまだ映画に金をかけられた時代で、遊廓の建物はもちろん調度品に至るまでリアルに復元されている。最近の吉原を舞台とした映画には無い格調を感じる。これは俳優のせいでもあるだろうけど。
 題名から想像するよりも殺陣は意外と短いが、内田吐夢監督の時代劇はアクションシーンをダラダラ分散させず、終盤にまとめるから迫力があるんだな。(2000/08/29)

与太者と小町娘(與太者と小町娘) よたものとこまちむすめ
監督 野村浩将
公開年 1935年
評点[B]
感想  今日は、野村浩将監督の『与太者と小町娘』を観た。昭和十年(1935)の作品。

 木曽山中で森林伐採をしている嘉平治(上山草人)組と虎造(山口勇)組は対立していた。嘉平治組の子分である磯野(磯野秋雄)・三井(三井秀男、のち弘次)・阿部(阿部正三郎)の三人トリオはドジなことばかりしているが、親方の娘・加代(坪内美子)のために奮闘していた。

 昭和十年公開の作品だが、サイレント(正確には音楽と効果音が録音されたサウンド版)。サイレント時代に人気のあった“与太者”シリーズ末期の一本。
 当時としても小柄なトリオが見せるアクション主体のギャグが中心で、“追っかけ”アクションや敵の虎造親方と子分が大男とチビの凸凹コンビである設定などサイレント時代の洋画のコメディ作品に強い影響を受けていることがうかがえる。
 ドタバタ中心といった感じで、今観るとやはり時代を感じる。ただし、アクションは崖を使った“落っこち”スタントなど出演者が体を張って頑張っている。殴り合いの殺陣はちょっと嘘臭かったが。当時としても、トーキー化が進んでくる頃なので、そろそろこういう作品も古めかしくなってきていただろうか。
 山を舞台にしたオール・ロケ作品らしく、山の景色は美しく木材を運ぶ軽便鉄道なども風情がある。また、屋外撮影で光量が豊かなためか、昭和十年にしては映像がシャープ。
 嘉平治組の幹部として河村黎吉、加代の許婚として大日向傳が登場。(2005/02/24)

四つの恋の物語 よっつのこいのものがたり
監督 豊田四郎・成瀬巳喜男・山本嘉次郎・衣笠貞之助
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、『四つの恋の物語』を観た。四人の監督によるオムニバスで、昭和二十二年(1947)の作品。

 第一話は豊田四郎監督の「初恋」。脚本は黒澤明。父(志村喬)と母(杉村春子)と三人暮らしの高校生・正雄(池部良)の家に、父の知り合いの娘・由紀子(久我美子)が預けられてくる。彼女によって正雄の生活はすっかり変わり、母親はそれを心配する。まだ蛮カラを気取る気風の残っていた高校生とその家族が若い娘の登場に惑わされるという、戦後らしい作品。黒澤脚本だが、それらしいところは無く、舞台が家を出ないのでホームドラマの小品といった感じ。
 第二話は成瀬巳喜男監督の「別れも愉し」。脚本は小国英雄。離婚歴のある年上の女(木暮美千代)が、男(沼崎勲)に若い恋人(竹久千恵子)ができたと知り、身を引こうとする。これも部屋を出ることなく、ほとんど男と女の会話のみで終始する。正直言って古臭いメロドラマで、成瀬作品として観ると、かなり出来の悪い方ではないだろうか。
 第三話は山本嘉次郎監督の「恋はやさし」。脚本は山崎謙太。ある劇団の下っぱ役者・金ちゃん(榎本健一)は、同じ劇団のナミちゃん(若山セツコ)が劇団を辞めて大阪へ行くと聞いて気が気ではない。だが、金ちゃんは劇に出番があって彼女を見送りに行くこともできず……。エノケンが劇中劇の『ボッカチオ』を演じていて、その歌はいかにも昔の日本の翻訳劇っぽいが、エノケンだけに巧みで面白い。
 第四話は衣笠貞之助監督の「恋のサーカス」。脚本は八住利雄。あるサーカス団で、空中ブランコの最中に富蔵(河野秋武)という男がわざと手を離して仲間を落とすという殺人事件が起こった。刑事や検事たちが立ち会っての実況検証の最中、そのサーカス団の女まり子(浜田百合子)を中心とした複雑な人間関係が浮かび上がってくる。これもサーカスのテントの中が舞台。昔のサーカス団の貧乏くさい雰囲気が出ている。全体に、出演者の演技がちょっと過剰気味に見えた。

 監督に豪華な顔ぶれを揃えたせいか、皆一つの部屋やセットを舞台とした会話中心の物語で、低予算作品という感じがした。また、全体に時代を感じさせられるストーリー。中では、エノケン出演の第三話が、彼の芸の片鱗をかいま見ることが出来て面白いと思った。(2000/02/16)

酔っぱらい天国 よっぱらいてんごく
監督 渋谷実
公開年 1962年
評点[B]
感想  今日は、渋谷実監督の『酔っぱらい天国』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 会社員の渥美耕三(笠智衆)は生真面目な会計課長だが、大の酒好きで酒が入るととたんにだらしなくなってしまう。息子の史郎(石浜朗)も酒に目がないが、妻を亡くしている耕三は一人息子を溺愛していた。ある日、史郎はキャバレーで友人とプロ野球投手の片岡(津川雅彦)との喧嘩を止めようとして片岡のバットで殴られ、危篤に陥ってしまう。

 “原案”も渋谷実名義で、脚本は松本善三。風刺的なところは渋谷監督の色で、社会派的なところは松本善三の色だろうか?
 酒によって引き起こされる不幸が中心のテーマで、酒(酔っぱらい)に寛容な日本社会を諷刺している。実際には酒が飲めなかった笠智衆による落魄の酔っぱらい爺さんの演技が巧みなだけに、あまりにも哀れで見ていられなかった。とにかく描き方がストレートなので、もう少し笑いが欲しいが……。下戸な私も日本人の酒の飲み方はだらしなさ過ぎると思うので、そのメッセージ性には賛成できるのだが……。
 それと、渋谷監督は野球嫌いだったのかなぁ。野球選手や監督(山村聡)の描き方もかなりきつい。あるいはアンチ巨人だったとか(片岡の所属チームは後楽園球場を本拠地にする“東京ファイターズ”という設定)。私は、渋谷実監督本人のことはほとんど知らないので、酒が好きだったかどうかを含めて興味が湧いてきた。(2004/09/24)

夜の女たち よるのおんなたち
監督 溝口健二
公開年 1948年
評点[A’]
感想
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夜の女たち
夜の女たち

 今日は、溝口健二監督の『夜の女たち』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 終戦後数年の大阪で、ある女性(田中絹代)が乳飲み子を抱えて夫の復員を待っているが、戦病死していたことがわかり、子供も幼児結核で死んでしまう。婚家を出て闇取引をしている会社の社長秘書になるが(もちろん社長の手が付く)、偶然再会した妹と社長がデキちゃったのを知って家出をし、夜の街に立つようになる。そして…。
 なんつーか、やっぱり昔の邦画って売春婦ばっかり出てくるね(笑)。私は観てないんだけど、田中絹代は小津安二郎監督の『風の中の牝鶏』(1948)でも、子供の急病で一度だけ売春しちゃう主婦を演じている。ハマリ役?(爆)

 んでも、溝口健二の長期スランプの中で、力のこもった佳作ではあると思うっす。この時期の溝口作品の中では世評も高いし。いかにも啓蒙的な台詞とか悪い意味での“熱演”に見える部分もあって辟易する人もいるかもしれないけど、ラスト近くのパンパン(街娼)同士のリンチシーンはド迫力。女の暴力をよくここまで描いたなぁ。
 同時代だったというアドバンテージはあるにしても、五社英雄の何十年も前にこういうのを撮ってたんだから、溝口ってやっぱり凄い。(2000/05/09)

夜の河 よるのかわ
監督 吉村公三郎
公開年 1956年
評点[A’]
感想  今日は、吉村公三郎監督の『夜の河』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 京都の染物屋の長女みつ(山本富士子)は卓越したろうけつ染の技術で高名だった。彼女は構想を練りに訪れた奈良で大学教授・竹村(上原謙)と出会い、互いに惹かれあう。しかし、二人の間には様々なものが立ちはだかる。

 山本富士子主演の文芸路線映画の一本(原作:沢野久雄/脚色:田中澄江)。宮川一夫が撮影を担当した初期のカラー映画としても有名。
 山本富士子が和服を着た京女ときたら、まさにハマリ役で、上原謙の中年の大学教授も悪くない。カラーを強調した染物や京の宿の風景なども美しい。また、今から観ると控えめな二人も好ましいし、ストーリーも様々なエピソードや登場人物を積み重ねてできている。
 そこで、山本富士子が大変に美しく魅力的な女性と言うことはよくわかるのだが、もう少し恋愛していることを示す感情の動きを表現できていれば良かったと思う。京女らしい一筋縄では行かないところは少し見せるのだけれども。演出の問題なのか演技の問題なのか……。
 映像的には美しいのだけど、大映作品にしては褪色気味で音も悪いのが惜しい。放映されたのはたまたま状態の悪いプリントだったのだろうか。(2003/05/27)

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