JORDAN WATTS FLAGON

オーディオ歴の長い人ならば、一度は、ジョーダン・ワッツのフラゴンの名前を聴いた事があるのではないでしょうか? Module UNITというアルミコーンのフルレンジユニットを陶器の壷に組み込んだ、変わり種のスピーカーです。 私の所有するスピーカーの中でも、もっとも有名かつ珍品といえば、間違いなくこのFLAGONでしょう。

このスピーカーには、大きく分けて新旧2つのタイプがあります。旧タイプは、エンクロージャーにスペイン製の 本物の陶器の壷を用いていたのですが、輸送の途中に割れやすかったためか(ベテランのオーディオ店の店員さんに聞いたことがあります。) 壷の供給や原価に難があったのか、後期型は壷をかたちどったアルミの入れ物になっていいます。

陶器のつぼの仕上げにも複数のバージョンがあったらしく、私の所有するタイプは上薬で表面がつやつやしています、 古いカタログを入手したところ、ざらざらした質感のタイプもあったようです。焼き物ですから、ロットのたびに 上薬をいろいろと工夫していたのかもしれません。

私が所有する旧タイプ


Front View


Rear View

ネット部分は短冊状の木と布の凝ったもので、取り外すことは出来きません。 スピーカーケーブルが直接引き出されています。 裏面に、JORDAN WATTSのマークである、四角の螺旋形が描かれているのが面白い。

たまに誤解している人がいますが、内部が螺旋型に処理されているわけではなく、 たっぷりのウレタンが詰め込まれています。

壺部分の開口部は、中に穴の開いたコルクのキャップがついていて、コルクの使用・未使用で低域の バランスをコントロールすることが出来ます。

後期タイプ

1998年の輸入オーディオフェアで、今井商事のブースで撮影したもの

ネットが取り外し可能になり、壷のデザインもスマートな感じになっています。 スピーカー端子は本体にバナナ端子がついています。(写真右下の赤と黒の出っ張り、お分かりでしょうか?)

現在、私がFLAGONとセットで使うことが多いのは、QUADの33+303です。 他のアンプで駆動すると、また別の印象があるのかもしれませんが、この組み合わせの範囲での印象は下記のとおり。

店頭で聞いたことのある、後期タイプについても同様の印象を受けました。

サブシステムとして、BGM的な再生として使っているが、なかなか良いバランスで音楽を楽しませてくれます。 いわゆる渋めの、大人の音。 構造的に平行面がなく、重さと内部損失の大きい陶器の良さが出ている気がします。

メインシステムとして使うには薦めないが、ある程度のメインシステムを持っている方が、 気楽なサブシステムとして使用するには面白い選択肢だと思います。 ただし、最近は中古でも見かけないし、オークションでは高騰するので、高騰した値段なりの価値があるとは思いません。

スピーカーユニットは、Jordan WattzのModule UNITと。設計者の E.J.Jordan氏 は、GoodmansのAXIOM 80 の設計等でも知られる有名なスピーカー設計者。現在は、E.J.Jordan Designと自らの名前でブランドを立ち上げ、 JXシリーズというフルレンジスピーカー、ウーファー、ツィーターを製造販売をしています。(現在、ウーファーはディスコン) また、ドイツのALR社との合弁、ALR/Jordanも好評です。Jordan氏はスピーカーの進歩に大きな貢献をした人物なので、いつか詳しく解説したいと思っています。

2000-03-18 訂正

Jordan氏はAXIOM80の設計者ではないそうです。AXIOM80は戦前から、 軍用などに使用されていたスピーカーの復刻版という位置づけのものとの事。 Jordan氏は、AXIOM80を民生に転化するときに、“特許ARUの箱を含めて、システム化した設計者で、ユニットの設計者ではない” そうです。Jordan氏 来日の際、本人の口からヒノオーディオの日向野社長が聞いたそうです。

2003-05-06 追記

ここしばらくは、寝室に液晶TVを持ち込み、上記セットにDVDプレイヤーを接続して使っています。 本来はそういう使い方をするスピーカーではないのだが、磁力漏れの多いモジュールユニットでも、 液晶TVとの組み合わせなら何とかなると気付いた次第。レンジが狭いなりに声がしっかりしているので実用になります。

JORDAN WATTS社の図面に準拠した比較的大型の英国製のバスレフ箱を借りる機会があったので、 Flagonと音質を比較してみた事があります。勿論、低域方向のレンジ、容積に余裕のあるバスレフ箱の勝ち。 一方、声の帯域に限ると、中域が充実していてフラゴンは面白かったです。これが、陶器のキャビネットの 効果なのかもしれません。

陶器製のフラゴンが10kgと重かったのに対し、アルミ製のフラゴンは6kgと随分軽くなっています。 モジュールユニットは3.6kgあるので、後期型はエンクロージャーが2.5kg程度しかない事になります。 モジュールユニットを受け止めるには、強度や重量が不足しているのではないでしょうか?

About Jordan Watts Ltd.

1963年に、GEC出身の、Jordan氏とWatts氏が独立して作った会社がJordan Wattsです。 自社製のModule Unitを基本として、複数のスピーカーシステムを発表していました。 Jordan氏が自分の会社を立ち上げた後、Watts氏が引き継いでいましたが、 近年、Watts氏の逝去により無くなりました。

Jordan Watts Module UNIT SPEC (MKIIIのもの)

形式 シングルコーンフルレンジ
振動板口径  10cm
インピーダンス  8Ω(旧タイプには、4, 8, 16Ωの3タイプがあった)
感度 91dB/W/m
最大入力  20W(rms.), 40W(MUSIC)
再生周波数帯域  30〜20000Hz
外形寸法  W172*H155*D65mm
重量  3.6kg
特徴 アルミニウム振動板
一般的なダンパーではなく、リード線を兼ねる3本のベリリウム銅線による支持
参考文献 Stereo Sound別冊 セレクトコンポシリーズNo.14 いまだからフルレンジ 1939-1997

余談 GOODMANS AXIOM80の事

AXIOM80で検索してこのページをおとづれる人が多いので、一言二言。

当時のGOODMANSのカタログをみても、ダンパー構造、エッジレスなど、特殊なつくりのスピーカーで、 他のラインナップとの共通性はきわめて少ないです。 一説によると戦時中に軍用放送用に使われたユニットを民需に転化したもの、とも言われています。 声が通り低域が出ない特性は、たしかに軍用放送のモニターとしては適切ですが、確認は取れていません。

音質は、当時の他のGOODMANSのハイファイ系の音質とは異なり、かなり特徴的というのは、 AXIOM80に興味を持った方は、先人のレポートでご存知と思う。 したがって、このスピーカーの音は、気に入る人と、拒絶反応を 起こす人と、かなり両極端な特徴的なもので、フルレンジのスタンダード的音質ではありません。 従って、たまに見かける、AXIOM80を超えた究極のフルレンジユニット。といった広告は笑い話にしか思えません。 まあ、多くの人が名前を知っているが、音をしらない有名ユニットの名を借りた、下手な宣伝文句でしかないでしょう。 そういう広告の元で売られる商品がどういったものか?ご想像にお任せします。

余談 その2 FLAGONの模造品達

FLAGONは多くの人が知っているスピーカーで、オークションでも高騰傾向。意匠的にも魅力的。技術的な特殊性は少ない。 ということで、最近、市場でFLAGONの(よく言えば)オマージュのような陶器製フルレンジスピーカーシステムをみかけます。 (陶器製スピーカーの全てがフラゴンの盗作だというのではないので、念のため)ほとんどは、音質について真面目に考えた とは思えない、安物のフルレンジスピーカーユニット(モジュールは一本4万円以上する高価なスピーカーユニットです) を採用し、十万円単位のプライスタグを付けているものもあります。(フラゴンの定価は、ペアで10数万円程度でした) 作家性の認められるクラスの焼き物でも無い限り、高すぎます(陶器の作家性は、音質には無関係です)し、 なにより、製品としての志が低すぎます。皆さん、どうか、そういう粗悪品には関わらないようにしてください。

関連LINK

今井商事 : JORDAN WATTS / ALR JORDAN の輸入代理店

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