美しい字形について(その2)

 美しい文字の形とは、一体どのようなことをポイントに成り立っているのでしょうか。また、何か法則のようなものがあるとすれば、どのようなことに注意して勉強すればよいのでしょうか。
 美しい形に対する感覚は、多少国や環境の違いはありますが、ほぼ私達人間に共通して備わっているものであるとされています。 たとえば、法隆寺の回廊の柱は単なる円柱ではなく、中央部分が少し膨らんだ形をしています。これはエンタシスと呼ばれる建築様式で、ギリシヤの神殿の柱にも見られるものです。柱の中程が少し膨らんでいることで、それに支えられている屋根やその装飾に重量感を覚えます。
 さて、美しい字形となるポイントをいくつか示します。 まず、均整しているということが重要なポイントになります。 これは単に各点画同士の均等ということのみならず、左右対称(シンメトリ) という要素も含まれ、それには形の対称や重量感の対称といったことも重要になります。
 また、もっと広い意味では、右上がりに対する右下がりといったことや、作品全体としての均整、例えば不均衡と不均衡が対称的である場合は、逆に均整を感じてしまうといったことも含まれます。
 次は、アクセント(集中とかコンセントレーションとも言われます)です。 これは、文字中の点画のうちどれか1つだけ長くしたり、太くしたりしてアクセントをつけます。また、作品全体としてもある部分を太めの線で表現したり、大きめの字粒で表現したりします。
 それから、文字の下部を小さめにしたり、作品全体について下部を軽めにしたりして、若干の不安定さを出すことも、私達人間の美意識を適度に刺激するよ うです。
 その他には、文字の特徴に沿った表現、例えば、縦長になりやすい文字はそのまま縦長にすることや、文字を書く状況に沿った表現、例えば、用紙に入りきらない場合は扁平に、隣の文字が大きく張り出している場合は、それを避けるように表現したりします。
 現実には、これらはいずれも複合的に作用し合っていて、結局、この形が一番美しいのだという短絡的な決まりはないと言えましょう。 あくまでも、美しい形とは相対的なのです。
 これらを厳密に分析することはできませんが、過去の優れた古典などを臨書することで、経験的に会得することができます。
 古人はこのようなことを「形が見えてくる」などと言っています。