書を学ぶ順序について

 書に限らず何を勉強するにも、ある一定の順序にしたがったほうが効率良く学ぶことができます。
 書を学ぶ順序は、普通は「楷書」から始めるのが一般的で、その次に「行書」と「かな単体」に移り、最後に「草書」と「かな連綿」、そして「創作」を学びます。
当然に小・中・高校の教科書もこの順序で書かれ、また、各書道塾などでもこれに沿った指導が行われます。
 この方式は、文部省の指導要領にも明確に定められ、既に長い歴史がありますが、最近になって、このような体系的な学習法は書道をはじめ芸術全般にはあまり適さないのではないか、または、この体系付けには誤りがあるのではないかという意見が教育審議会などで出されています。実際、10年以上も書を学んでいる人の中にも、未だに楷書以外は習ったことがないというのは珍しいことではなく、手紙一つ満足に書けないと真剣に悩んだりしています。教育審議会での意見は、少しはこの辺りの事情も汲んでいるのでしょう。
 楷書の重要なポイントである点画の均整は、点画一つ一つがただ単に機械的に組み立てられて出来上がっているものではありません。実は筆者の心の動きにしたがってリズムによって構成されているのです。
 運筆のリズムは、行書・草書の順にいっそう顕在化しますが、楷書だけの練習ではなかなかこのリズムの存在に気が付きにくいものなのです。王羲之の蘭亭序(これは行書ですが)は非常に均整がとれていることで有名ですが、これは「草書の大家」すなわち「リズムの大家」であるがゆえに成し得た技といえましょう。
 以上お話しした理由から、書を学ぶにはまず、リズムを適度に習得でき、日頃から書きなれていて、メモを取るときなど実用的な「行書」から最初に勉強するほうが良いと思っています。また、現代文で使用する仮名は草書のさらに簡略した書体であることを考えると、「草書」の勉強も早い時期から重要になってきます。
 書体を楷書・行書などのように区別して体系化して整理することは、知識の習得(事柄の記憶)の面からは大切なことですが、これがそのまま技術の習得(運動の記憶)に有効であると考えることには注意が必要です。