効率のよい書の学習方法について

 書を学習できる時間は個人で異なります。
 とかく会社勤めをしている方などは時間がありません。
 そこで、個人の生活のリズムにあった、できるだけ短時間で効率の良い学習方法を確立する必要があります。
 書は、腕や手指を微妙に使って行われ、また、筆の構えや姿勢も重要となる、いわば身体運動の一つです。
 身体運動は、その大部分が小脳や間脳、脊髄などの中枢神経系により行われており、これは一旦記憶されると忘れ難く、大脳による意識的な作用とは区別されます。
 最近の脳生理学では、この中枢神経系の働きは単に歩行や姿勢といった身体運動 にとどまらず、言語活動や定例的な思考活動にまで関与しているという研究結果も出されています。
 昔から「身体で覚えたことは一生忘れない」などと言われていますが、これは人間の中枢神経系による身体運動の記憶の仕組みを言い表しています。 コンピューターで言うところの記憶半導体RAMとROMの働きに似ています。 身体運動の中枢神経への効率の良い記憶方法は、同じ動作を繰り返し行う以外にありませんが、書を効率よく学習するためには、どのような動作をどのような方法で繰り返し行えば良いのかということが問題になります。
 私の経験から、50から100文字程度の漢字仮名交じりの現代文の手本を、毎日15分繰り返し練習すれば、1週間ほどで手本の全文が暗記できて、1ヶ月も経てば手本とほとんど変わらないほどにそっくりに書けてしまいます。その頃になると、もうその手本には飽きてしまうので、2ヶ月目にはまた違った手本を、今度は大筆でやってみようというふうに続けます。
 実際、かなり名の通った書家でさえ、1年に1つ、例えば今年は蘭亭序の全臨をやっていこうなどというように決めて、こつこつと中枢神経への記憶作業を行っています。
 だまされたつもりでこの勉強方法を3ヶ月も続けると、自分でも驚くほど何の抵抗もなく筆を扱えるようになり、書展にも出品できるくらいまでに上達することでしょう。
 長い一生の聞のうちのたったの3ヶ月間です。だまされたつもりで試してみる価値は十分にあると思います。