漢字仮名交じり文について

 通常私たちが手紙や報告書などに用いる現代文のことを「漢字仮名交じり文」などと言います。
 私たちはこの「漢字仮名交じり文」を当たり前のように日常使用しているので、 これを用いることについては特に何も気にしませんが、いざ書道界に目を向けると、少し変わった現象が見られます。
 日展に代表される各種書道展では、必ずと言っていいほど「漢字の部」「仮名の部」と言うふうに出品規定が別れていて、また、会派によっては平安仮名専門などというところもあったりして、実は「漢字仮名交じり文」の作品にお目に掛かることが少ないのです。
 この現象を反映しているかのように、世の中の書家と呼ばれる人たちは「漢字書家」「仮名書家」にはっきりと別れ、そればかりかお互いに他方は芸術でないなどと中傷しあったりするような茶番も珍しくありません。
 これらの現象は、様々の利害や立場があってのことでしょうから、これ以上はあまり詮索しないことにいたしますが、素直に書を学んでいこうとするならば、当然に日頃用いている文書が美しく書けるように勉強していくことが大切だと思い ます。
 平安仮名は平安時代の貴族たちの日常のものでしたし、優れた漢字の古典、例えば蘭亭序にしても王羲之が日常用いている文章を思い付くままにしたためた草稿なのです。
 「漢字仮名交じり文」が美しく書けるようになるためには、「漢字」と「仮名」が上手く調和するようにすることが大事ですが、以下にそのポイントを記しますので参考にしていただきたいと思います。
 まず、「漢字」と「仮名」とはその形状に若干の違いがあります。 「漢字」は「仮名」に比べ画数が多く、ほとんど直線で書かれるため、線質も勢いが付きやすく男性的です。
「仮名」は「漢字」に比べ画数が少なく、曲線を多く用いるため、線質は流麗になり易く女性的です。
 ですから、これらが交じった現代文を、その形状の違いがあるままにただ書いていったのでは、どうしても調和が取り難くくなってしまいす。従って、これらの形状の違いをできるだけ解消させるように、例えば「漢字」は画数が多ければ細めの線で、転折部はやさしく、直線と言えども肉厚に変化を付けて曲線味を出す。「仮名」は反対に太自の線で、転折部は厳しく、できるだけ直線的に勢いのある線質とするとよいでLょう。
 これらの技法の習得は、いろいろに試行錯誤を重ねる以外に方法はありませんが これらの技法のヒントが実は「草書」に見ることができます。「草書」は漢字の「楷書」をくずした書きぶりですが、それをもっと大きくくずせば「仮名」になってしまうからです。
 「草書」は「漢字」と「仮名」とを調和させるために必要な用筆の宝庫と言えます。