細太の変化

 書作品の美を構成する要素の一つとして、かなりの重要なものであるにもかかわらず、とかく見過ごされやすいのが線の「細太の変化」です。
 この理由は、日頃「細太の変化」による印象の違いを私たちは直感的に感じているためで、例えは極端ですが、私たちが日常においていちいち空気の重要性を意識しないのに似ています。
 試みに本の活字(この場合は明朝体)を観察してみましょう。
 活字を注意深く見てみると、大抵は「縦線が太く、横線が細い」ことに気付かれることでしょう。
 このように「細太の変化」は、文字を扱う上では、ほとんど私たちの日常と言っても過言ではありません。
 私たちが物を見る場合、直感的にその物の「重さ」を感じ取ろうとします。ただしその感じは、今までの私たちの実際の肉体的な経験に基づいていて、ある一定の基準を持っています。
 同じ長さの線であれば、太いほうが重たく感じます。
 活字で縦線が太くて横線が細い理由は、私たちの物を見る感覚の基準に「支える柱は頑丈に太くなければならない、支えられる各階の床は軽くなければならない」という経験に基づいたものがあるからです。この場合、縦線が柱で横線が各階の床です。
 文字を書いて、それが全体的に重たく感じ、どこか切れが悪い場合は、大抵は細太の変化に欠けていることが多いのです。
 細くならなければならない線が太かったり、縦横何本も同じ太さの線が交叉していたりしています。
 細太の変化を十分に認識するために、一度極端なことをしてみることをお勧めします。
 例えば、木偏の一画目の横画は、穂先の方向と送筆の方向を90度に違えて、筆の穂の長さ位に線の太さを出します。そして、二画目の縦画は、穂先の方向と送筆の方向を180度に直線上にして、筆圧を極端に抑えて針金のような細い線を書いてみます。
 これを何度か繰り返す内に、段々と起筆の扱いと筆圧の加減による線の細太の違いが解ってくるでしょう。
 今以上に「細太の変化」に注意してみて下さい。